ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ポルポル・ザ・ファミリアー-6

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匿名ユーザー

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「あーあ、めんどくせーぜ」
「・・・」
「それもこれも、誰かさんが派手にやらかしたおかげだぜ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」

何度目かの文句であったが、会話は一瞬で終了した。ポルナレフもそれ以上追及する気になれない位の重い空気だった。
至る所にルイズが爆発させた石が散らばる広い教室には、ルイズとポルナレフしかいない。
教師を吹っ飛ばしたかどの罰清掃。ルイズとしてはいい気分のはずはなく、机を面倒そうに拭く真似をしたと思ったら、
ため息をついて座り込んだりと、全く清掃をする気は無い。
状況に流されて清掃しているポルナレフはその様子を苦々しい表情で睨み付けつつ、こちらもテキトーに
散らばった石くれを集めていた。その身体にはピンポン玉大の青あざがいくつも出来ている。
失敗魔法の余波を食らったものであるが、ポルナレフにとっては怪我のうちに入らないものである。

「・・・なんか喋れよ」
「・・・」

ルイズはうつむいたまま答えない。前の口論では強気に吊り上っていた眉は、元気なく垂れ下がっていた。
気まずい沈黙が流れる。いっそ口論になった方が清清しい・・・ポルナレフは思った。

「ま、まあ、先生に当てられて失敗しちまうってのは恥ずかしいけどよ・・・人間、
 そういうのをバネに成長するもんだぜ?」

あんまりルイズが負のオーラを放っているので、ポルナレフは励ましの言葉をかけることにした。
気位の高いルイズのことだ、使い魔に励まされるのを良しとしないだろう。
噛み付いてきたら御の字。口論の一つでもすれば、この空気も払拭できる・・・そう計算しての発言だった。
昨日出会ったばかりのルイズにそんな気遣いをしてしまうほど、ポルナレフはこの沈黙を痛く感じていた。

「・・・」

予想に反してルイズは答えない。むしろ負のオーラが増幅したように見える。
ポルナレフの背に、冷たいものが走った。

「・・・う」
「へ?」
「本当に・・・そう思う?」

今朝方自分をぶっ飛ばした娘っ子と同一人物とは思えない、弱々しい声音を、ポルナレフの耳は聞き取った。
愕然とした。この目の前の少女は決して嗜虐壁の持ち主などで無く、案外脆い性格の持ち主ではないのか。
罪悪感の伴う予測だった。もし本当なら、今までの所業からしてポルナレフは完璧悪人になってしまうからだ。

「あ、ああ!そうだぜ。今失敗しても次になんとかすりゃいいんだよ!
 成長だね成長。だから気に病む必要はねえんだよ!」

ちょっと必死に励ますポルナレフ。

別に恩も何も無いが(むしろ恨みのほうが大きい)、女の子を悲しませたとなっては流石に気分が悪いからだ。
ルイズはその言葉に反応したのか、前髪で瞳を隠すように俯いてからすっくと立って、ポルナレフに歩み寄りはじめた。
その表情は伺えないが、ポルナレフはみなぎる根拠の無い自信をもって、彼女が自分の言葉に感動して感謝の辞を述べるために
自分に近づいているのだと確信した。

『なんだかんだいって、結構しおらしいんじゃねえか?』

ポルナレフの口の端がくっとつり上がった。
やれやれ、という感情と、かんしゃくを起こした妹を見る兄の様な感情がないまぜになった瞳で目前に迫ったルイズの桃色頭を見つめる。
しかし、待っていたのは予想したような感謝の言葉でも、ツンデレ入った否定の言葉でもなく。

メメタァ。

奇妙な擬音を伴った、金的へのトーキックであった。

「ハァッオ゛ォォォ!?」

あんまりの突然さと素早さに、ポルナレフは回避することはおろか、股を締めて防御することすら出来なかった。
185センチの長身が折れ曲がり、全身から脂汗が噴出す。
金的特有の薄ら寒い感覚が背中を這い回り、若干のタイムラグをもって、野郎にしか分からない激痛が股間からあふれ出した。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「・・・この・・・バカッ・・・!!」

股間を押さえてのた打ち回るポルナレフを見下ろして、ルイズは吐き捨てるように一言残して、教室を飛び出した。
理不尽な痛みに歯を食いしばりながら、ポルナレフは見ていた。
ぶっ倒れる瞬間自分を見下ろした、ルイズのつり上がった眉毛を。
そしてその下で同様につり上がったとび色の瞳が、溢れそうな涙で潤んでいたのを。

彼女・・・ルイズはわかっていた。
ポルナレフが自分を励まそうとしてくれていた、と。
その言葉を肯定して、それをバネに成功へ向け努力することが出来たら、どんなに幸福だったか。
ポルナレフは何も知らない。だからこそ、その言葉は彼女に厳然と突きつけられた。
メイジでありながら、『ゼロ』の二つ名を持つ少女。
彼女の苦悩は、まだポルナレフには理解出来ていない。

ポルナレフのシルバー・チャリオッツ(股間の)がやっと復活した頃には、既に正午を回っていた。
太陽は真上から金色の光を降らせ、真っ白な千切れ雲がフワフワと漂っている。昼寝にはもってこいの陽気だった。
もっとも空腹と股間の痛みで昼寝どころではないポルナレフは、当ても無くふらふらと学内を彷徨っていた。
教室の清掃などくそ食らえである。

『腹減った・・・』

先ほどからその言葉だけが脳内を無限に反射する。
それだけを考えることによって、股間への痛みを考えないようにしているのかもしれないが。
飯がもらえないとわかっていても、自然とその足は昼時になって良いニオイが漂う、食堂のほうへと向かっていた。
食堂では、既に昼食が始められているらしく、銀器のカチャカチャという音が聞こえていた。
ふと良い事を思いついたポルナレフは食堂には目もくれず、その裏手へと回る。

「大抵この手の食堂にはよ・・・」

果たしてそこには、使用人たちが出入りしているドアがあった。ドアの中からは、鼻腔を優しくくすぐる
料理の良いニオイが流れ出している。そこは厨房の関係者用出入り口だった。
見る限り、他のどこかから料理を運んでいる風でもなかったので、厨房はこの辺にある、とポルナレフは踏んでいたのだ。

「背に腹は代えられねえからな・・・黙って頂くしかないぜ。」

物取りの様なマネをするのも罪悪感が伴うが、股間の痛みと空腹感が免罪符となった。
いざ鎌倉、と厨房に忍び込もうとしたポルナレフは

「あの・・・何か御用ですか?」
「んげぁお!?」

背後からの控えめな呼び声に思わず跳び上がって驚いた。

「わー、ごめんなさーい!!・・・ってアレ?」

振り向くと、質素なメイド服に身を包んだ少女が立っていた。
ポルナレフのオーバーアクションに逆に驚かされて、目を丸くして身をちぢこませている。

「き、君は?」
「わ、私はこの学院に奉公させて頂いてる、シエスタと申します・・・こんなところで、どうかなさいました?」

怯え気味に挨拶するシエスタに敵意は感じられない。泥棒しようとしていたことはバレていないらしい。
ポルナレフは素直に受け答えすることにした。

「あー・・・俺の名前はポルナレフ。えーと、ここに来た理由は・・・だな・・・」

まさか厨房に侵入して盗み食いしようとしていましたとは言えず、まごまごしている間に、ぐうと腹の虫が鳴ってしまった。
口で何を言おうと身体は正直である。

「もしかして・・・お腹が空いていらっしゃるんですか?」
「・・・はい」

厳しい体つきに似つかわしくない、ポルナレフのコミカルな動作に、シエスタは思わずふき出してしまう。

「ならこちらにいらして下さい。賄いで良ければ、ですけど」
「えーッ、飯くれるの!?」

オーバーに喜ぶポルナレフの問いに、シエスタは柔らかい微笑みで肯定した。
ポルナレフが異世界で触れた、初めての人情だった。

「・・・ところで、どちらからいらしたんですか?」
「いや、この学院の関係者・・・というか使い魔ってやつだ。いや、本当に怪しいモンじゃないんだ。誓うよ」

氏素性は後で話すとして・・・
今はこの優しい女の子にホイホイとついていくことにしたポルナレフであった。

to be continued・・・->

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