ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

学院! メイジとメイド その①

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学院! メイジとメイド その①

朝、先に目を覚ましたのは承太郎だった。
承太郎がまずした事は窓を開けて換気をし、空を見上げる事だった。
さすがに朝になっては月は見えない。だが昨晩、確かに月はふたつあった。
「…………」
どうしたものかと思って、承太郎はルイズを見る。スヤスヤと眠っていた。
そういえば昨晩、下着を洗濯しろとか言っていたが冗談じゃない。
小言を言われる前に退散しようと、承太郎は部屋を出た。
――と、廊下にある戸がひとつ開き、中から扇情的な美女が現れる。
「あら? どちら様かしら」
「…………」
「あっ、もしかしてルイズが召喚したっていう使い魔? へぇー、本当に人間なのね」
感心したように承太郎を見る美女だったが、どこか馬鹿にした態度があった。
「ねえあなた、名前は? 人間なら名前あるんでしょう?」
「……空条承太郎だ」
「クージョージョータロー? 変な名前。
 私はキュルケっていうの、そしてこの子が私の使い魔、フレイムよ」
キュルケの背後から現れたのは尻尾に火が点いた巨大なトカゲだった。
「火竜山脈のサラマンダー、好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
「ほう、そいつはすごいな」
何気なく承太郎がフレイムの頭に手を伸ばすと、フレイムは嬉しそうに頭を撫でさせた。
それを見てキュルケが、今度は馬鹿にした含みを持たず素直に感心する。
「へえ、フレイムが懐くなんて。それに……結構いいルックスしてるじゃない」
キュルケの周囲には常に美形に分類される男子が群がっている。
だがこの男承太郎は彼等とは違い、男前である。そして理知的な眼差し。
「惜しいわねぇ。あんた平民じゃなかったら人気者になれたかもよ?」
「興味ねぇな。ところでキュルケ、訊ねたい事があるんだが」
「なぁに?」

笑い声でルイズは目を覚ました。誰だろう、朝っぱらから。
あくびをしてベッドから出て、毎朝の習慣として顔を洗い服を着替える。
「ん~……何か忘れてるような」
着替え終わってから、床に落ちている毛布を見て思い出す。
自分が、平民を召喚した事を。
「……あいつ、どこ行ったのよ?」
疑問に答えるように、ドアの外で話し声が聞こえる。
よく聞こえないけど、承太郎かもしれない。ルイズはドアを開けた。
承太郎がキュルケと楽しそうに談笑していた。
ルイズの怒りがメラメラと燃え上がる。
それはもうクロスファイアーハリケーンスペシャルの如く。
「ちょっと! 私の使い魔と何してんのよ!?」
「あーらルイズ、お寝坊さんね」
キュルケがルイズに視線を移しニヤニヤと笑う。
承太郎は相変わらずの無表情でルイズを見た。何を考えているのか全然解らない。
「ジョジョ、ジョータロー。あんた、キュルケと何してたのよ」
「別に……学院や寮の事で幾つか質問していただけだぜ」
「それにしては楽しそうだったじゃない」
「プッ」
吹き出したのはキュルケだ。承太郎は視線をそむけて帽子のつばを下ろす。
「な、何よ?」
状況が解らないルイズは一人苛立ちをつのらせる。
「まあいいわ。じゃあお先に失礼、平民君もがんばってね」
手を振りながら立ち去るキュルケの後姿をルイズはギリギリと睨んだ。
「何よあれ。ジョータロー! キュルケには金輪際近づいちゃ駄目よ!」
「それより……いいのか? そろそろ朝飯の時間らしいぜ」
「え? あ、そーじゃない! ジョータロー、ついてきなさい」

トリステイン魔法学院の食堂は敷地内で一番背の高い真ん中の本塔にあった。
そこへの道中、ルイズは承太郎に使い魔だという自覚を持たせるため話をする。
「まったく。いい事? あなたは私の使い魔なんだから、
 私より早く目が覚めたのなら私が寝坊しないようちゃんと起こしなさい!
 それから、あんたがいるって忘れてたから、自分で着替えちゃったじゃない」
「……ガキじゃねーんだ、着替えは自分でするもんだろ」
「貴族は下僕がいる時は自分で服なんか着ないのよ」
「……男に服を着せろと言っていて……何とも思わねーのか?」
「思わないわよ。あんた、使い魔じゃない」
「…………」
呆れたような承太郎の態度にルイズはカチンと来た。
一方承太郎も、恥じらいというものを知らないルイズに呆れていた。
空条承太郎十七歳。好みは日本人的な女性。つまり大和撫子。
ルイズのような傲慢でわがままな貴族のお嬢様など問題外だった。
それはルイズの方からも言える事で、
こんな無愛想で無口で威圧的でしかも平民の男なんて微塵も眼中に無い。
しかし、である。しかし自分の使い魔なのだから、主従関係はしっかり教え込みたい。
どっちが上で、どっちが下か。それを教えるために、朝食の待遇を決めた。

学年別に分けられたテーブルすべてにいくつものローソクが立てられ、
花が飾られ、フルーツが盛られたかごが乗っている。
『アルヴィーズの食堂』と呼ばれるここは、まさに貴族のための絢爛豪華な食堂だった。
当然それぞれの席の前に並ぶ食事も貴族らしい物が並んでいた。
朝っぱらからワインまである。
「ほう、なかなかうまそうじゃねーか」
少し上機嫌になった承太郎を見て、ルイズは胸の内で「フッフッフッ」と笑う。
この平民、メイジと同じ食事を食べられると思っている。そして腹を空かせている。
せいぜい盛り上がるといい、とルイズは思った。

席に着いたルイズ。承太郎はその隣に座ろうとして、ルイズに手で止められる。
そして、ルイズは床を指差した。そこには皿が一枚。
申し訳程度に小さな肉のかけらが浮いたスープ、皿の端っこに硬そうなパンが二切れ。
一方テーブルの上には豪華な料理がズラズラと並んでいる。
「…………」
承太郎は無言で抗議の視線を向けた。ルイズはしてやったりと笑う。
「あのね? ほんとは使い魔は、外。あんたは私の特別な計らいで、床」

始祖ブリミルと女王陛下にお祈りをしてから、ルイズ達は食事を始めた。
承太郎も始めた。あっという間に無くなった。全然足りない。
「……おい、てめーの飯を少し分けろ」
「仕方ないわね」
ルイズはホックホクの鶏肉、の皮を剥いで承太郎の皿に落とす。
「中身が見当たらねーが……」
「癖になるから、肉は駄目」
「…………」
ルイズは勝ち誇った笑みを浮かべて、床に座る承太郎を見下ろした。
どうだ、ご主人様に逆らったら食事すらままならないのだ。
自分の立場を思い知るがいいわ、と。
しかし承太郎は文句ひとつ言わず立ち上がり、スタスタと食堂から出て行ってしまった。
鳥の皮にすら手をつけず。
「……何よ、あの態度。後でお腹空いたって言っても何も上げないんだから」
そう呟いて、ルイズはホックホクの鶏肉を食べようとフォークを伸ばした。
カチン。フォークが皿を叩く。
「あれ?」
なぜか鶏肉が無くなっていた。
まさか承太郎が、と思ったが、
彼はずっとコート(学ラン)のポケットに手を突っ込んでいた。
ルイズは首を傾げる。

食堂から出た承太郎は、学ランの中から未開封のワインの瓶と、
いくつかのフルーツを取り出した。
口をもぐもぐと動かしながら。
「なるほど……貴族の料理だけはある」
そう、承太郎は自身が持つスタンド……スタープラチナの能力で、料理を盗んだのだ。
油で濡れていて持ち運びにくい鶏肉は大胆にも食堂の中で口の中に放り込み、
それを頬張りながら学ランの中に隠しても学ランが汚れそうにない食べ物、
すなわちフルーツとワインをかっぱらったのだ。
承太郎はまずリンゴを丸かじりにし、ワインを瓶ごとあおった。
「やれやれ。いつまでもこうして飯を盗む訳にもいかねーし、どうしたもんかな」
食べながら、承太郎はある事を考えていた。
食べ物を盗んだ時、スタープラチナの姿がメイジ達に気づかれないよう、
余所見をしているところを狙って素早く盗んだ。

――スタンドはスタンド使いにしか見えない。

だからそんな事をする必要はまったく無い。
だが、相手がメイジだとしたらどうだろう?
スタンドは生命のエネルギー。精神力が具現化したもの。
などと言われているが、科学的にどうこう説明をつけられるものではない。
もしメイジが持つ魔力だとか能力だとかでスタンドを見る事ができたら?
このハルケギニアに自分以外のスタンド使いがいるかは解らない。
だがメイジはいる、確実に。
果たしてメイジと戦う事になった場合、スタンドはどこまで通用するのか?
最強のスタンド、ザ・ワールドを破ったスタープラチナとはいえ、
まったく未知の概念である魔法が相手ではどうなるか解らない。
自分の腕に、スタンドに、実戦経験に自信はある。
だが――ここ、ハルケギニアでそれがどこまで通用するのかは未知数。

(……考えすぎ、か。
 俺達があれだけ連続してスタンド使いと戦ってきたのは、
 DIOを倒すという目的があったからだ。DIOが刺客を送ってきたからだ。
 だが……ここには敵対するような相手はいねえ。
 野生のバケモノがいたとしても、学院の中にいれば安全だろう。
 突然こんな所に召喚されちまって警戒心が強まっているのか……?
 ここでは平和にすごせるといいんだがな。
 その方が元の世界に戻る方法を探すのもはかどるってもんだ)

しばらくして、朝食を終えた生徒達が教室へ移動を始める。
ルイズは承太郎を連れて教室へ向かった。
教室には、クラスメイトが召喚した様々な使い魔がいた。
で、教室の椅子はメイジの席であり、承太郎が座る席は無かった。
仕方なく承太郎は教室の一番後ろに行き、壁を背もたれにして立つ。
その後シュルヴルーズという土系統のメイジの教師がやって来て、
生徒達に魔法の基礎をおさらいさせたりした。

魔法には四大系統というものがある。
『火』『水』『土』『風』
そして今は失われた伝説の『虚無』

これ等の話は承太郎の興味を刺激した。そして思い出す、使い魔が選ばれる理由を。
コルベールという禿教師が言うには、
サモン・サーヴァントは今後の属性を固定し、専門課程へ進むものだという。
キュルケの系統は『火』……だから『火』のサラマンダーが召喚された。
とすると、ここに召喚されている生物は皆、四系統の属性に分類されるはず。
では……自分は何系統の使い魔なのだろう。

人間。火、水、土、風、どれに分類されるかと言えば……水?
人体の70%は水でできているのだから。
だが、自分はスタンド使いだ。スタンド能力も込みで召喚された。
火系統ならマジシャンズレッドのアブドゥルを、
土系統ならザ・フールのイギーを召喚できたかもしれない。
――もっとも双方故人であるため、召喚される事は決してありえないが。
だとしたら自分のスタープラチナは何系統だろう。
能力は……時を止める。
しかしDIOとの戦いが終わってから、何度か時間停止を試してみたものの失敗している。
DIOと戦っている最中にのみ精神力が高まり、時間停止を可能にしていた……という事か。
時を操る。四系統のどれにも属さない。
ならば虚無……と考えて否定する。すでに失われた伝説の系統というではないか。
承太郎が思案しているうちに教室がざわめき出す。
理由はルイズが前に出て錬金の魔法をやる事になったかららしい。
(ルイズ……か。あいつが何系統のメイジなのか解れば、俺の系統も解るって訳だ)
承太郎はちょっとした好奇心を抱いた。
どの系統に属されようがスタープラチナの能力は変わらない。
だが分類できるのならいったい何に分類されるのか興味はあった。

爆発した。

「…………」
あまりに突然の事だったので、承太郎は伏せるのが精いっぱいだった。
他の生徒達が伏せているのを見て不審には思っていたが、いきなり爆発とは。
爆心地はルイズ。
この後、承太郎は『ゼロのルイズ』という二つ名を覚える事となった。

戻る           目次           続く

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