ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-14

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「良かったじゃねーか相棒。とりあえず出てかなくても良いみたいだぜ」
「いや、そういう訳にはいかないよ、デルフ」
育郎が首を振って手の中のデルフに答える。
「なんじゃい?遠慮なんぞせんでもええぞ」
「いえ、違うんです。さっきの決闘で…僕は意識が無いまま闘っていたんです」
その話に怪訝な顔をするオスマン氏。
「しかし君は『力』を制御できるようになったと、さっきの話で言ってなかったかの?」
「………自分でもそう思っていました」
「君は傷ついたミスタ・グラモンを癒したじゃないか?」
遠見の鏡で決闘を見ていたコルベールが、その場面を思い出して言った。
「その時は」
育郎が説明しようと口を開いた時。
「それはだな、おっさん。あん時は相棒だったけど、その前は今の相棒じゃなかったんよ
 ん?なんだよおめーら、なに呆けた顔してんだ?」

意外ッ!
育郎の身体の秘密の鍵を握るのはデルフリンガーだった!

「そ、そういえばあんた、さっきもそんな事言ってたわよね?」
その場の全員が唖然とする中、ルイズが先程の事を思い出して口を開く。
「『あっち』のとか…ひょっとして、あんたイクローの身体のことわかるの!?」
全員の注目がデルフに集まる。

「…まあ、何となくだけどな」
ゴホン、と咳払いの真似をしてデルフが続ける。何処となく嬉しそうだ。
「あーまずはだな、あの貴族の小僧をぶっ倒した時の相棒はだ…
 要は相棒が危ねーってんで、相棒の変わりに出てきて『敵』を倒したわけだ。
 んで、『敵』を倒してこりゃ安心ってなったから、あの相棒はひっこんだ。
 それから相棒が、あの小僧の為にってあの姿になろうとしたから、あっちの相棒は
 相棒の言う事を素直に聞いてだ、あっちの相棒の姿になっても相棒の意識は残して、
 相棒は相棒のまま相棒の力を使えるように、相棒が相棒の為に相棒を」
「…なんかややこしくなってきたから、ちょっと待ってくれない?」
「そうかい?」
ルイズの言葉に従って、話を止めるデルフリンガー。
「つまり…イクロー君の中にはもう一人の、おそらくその『力』の源になる
 何者かが存在していると、そういいたいんですね?」
ミス・ロングビルが、デルフリンガーの話を、彼女なりに纏めて話した。
「あーまぁそういう事かね?」
「そういう事かねって…あんた本当に分かってんの?」
「だーから、なんとなくしかわかんねーって、俺は言ったろう娘っ子」
二人のやり取りを無視して、ミス・ロングビルが育郎に向き直る。
「イクロー君は、彼の話に何か心当たりはありませんか?」
思い当たるところがあるのか、育郎がハッと顔を上げる。
「そういえば……おぼろげですが、僕が僕の意思で『力』を使っている時も、
 僕以外の何かの意思のようなものが、あったような…」
「ふむ…ひょっとして悪魔でもとりついておったりしてのう………なんつって!」
『だから洒落になってねーよジジイ』という視線がオスマン氏に突き刺さる。

「と、とにかく、その剣の話では、少年が危険な目にあわん限り大丈夫と…
 そういうわけじゃから少年、がそんなに心配する事の程でもないじゃろう」
「しかし……」
「今日の決闘を気にしておるのなら、相手が誰であろうと、決闘をすれば罰すると
 規則を改める事にする。それでももし襲い掛かるものが居るようなら…
 なに、遠慮する事は無い…いや、そのような事態になった時は、
 積極的にその『力』を使えばええ。そっちの方が安全じゃろ」
しかし、オスマン氏のその言葉にも育郎は厳しい顔を崩さない。
「………君がその姿を忌み嫌うのは分からんでもない。
 だがのう、君が得たのものも、所詮ただの『力』という事を忘れてはいかん。
 確かに一人の人間には重すぎる『力』かもしれん…だがのう、
 それでも君はその『力』で少女を助けたのじゃろ?」
「しかし、スミレが…彼女が捕まったのは僕のせい」
育郎の言葉をオスマン氏がさえぎる。
「それでもじゃ、誰かの為に、正しく『力』を使えるというのなら…
 何か…きっとその『力』は君が何かを成し遂げる助けになる。
 正しい事を成し遂げる助けにな……それが例え忌まわしい力だったとしても…
 ワシはそう信じとるよ…君もそう思うじゃろ、ミスタ・コルベール?」
「はい、オールド・オスマン」
コルベールが、自分自身に言い聞かせるような口調で、重々しく頷く。
「ま、ワシが言っても説得力ないかもしれんがの?」
少しおどけた調子のオスマン氏に、今度こそ場が少し和む。

よっしゃぁぁぁ!!

心の中でガッツポーズをとるオスマン氏であった。

「では少年、この魔法学院にとどまってくれるかね?」
「………分かりました、僕もおじいさんを信じます!
 よろしくお願いしますおじいさん。それにコルベール先生、ロングビルさん…
 そしてルイズ、これからも僕が使い魔で良いかな?」
「い、良いに決まってるじゃない!あんたを召喚したのは私なんだから!」
「ありがとう…ルイズ」
「だ、だからそんな、お礼なんて言う必要は無いんだって…もう」
そのやり取りを微笑みながら眺め、オスマン氏は椅子から立ち上がり、育郎に向かって
手を差し出す。
「では、改めて…トリスティン魔法学院にようこそ、異世界からの来訪者よ!」
育郎はそのオスマン氏の手を、力強く握り返した。

感激してくれるのは嬉しいが…ちょっと痛いのう…

オスマン氏はそう思ったが、雰囲気を壊さないよう我慢した。

         偉 い ぞ !!



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