ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-8

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匿名ユーザー

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「遅いから逃げ出したのかと思っていたよミス・ヴァリエール!」
ルイズたちが着くなり、ギーシュは奇抜なポーズをとりながら挑発を始めた。
コォォォォォォという奇妙な呼吸音も聞こえる。一瞬体が光ったような気もするが目の錯覚だろう。
ギーシュがさらに人体の構造を無視したポージングを決めると、観客から歓声があがった。
「ギーシュ!あなたが侮辱した全員に謝りなさい!まず私に!そうしたら許してあげてもいいわ!」
ルイズも負けじとポージングを決めながら強気の姿勢で答える。
以前図書館で見た学術書に乗っていた「究極生物」の登場シーンの挿絵と同じポーズだ。これには観客から失笑があがった。

「許してあげる?それはこっちのセリフさ!君と、その隣の君の使い魔が僕にした侮辱を謝罪するがいい!」
そう言うとギーシュは一本のバラの花をポケットから取り出した。
「ワルキューレ!」
ギーシュが派手な仕草でバラの花を振りかざすと7体のゴーレムがギーシュの前に横一列に現れた。
「本来貴族の決闘は1対1でするものだが、僕は君の使い魔にも用がある。分けるのは面倒だ。いっぺんに来るがいい。ただし!
 僕は『青銅』のギーシュ!従って青銅のゴーレム、ワルキューレ7体がお相手する!8対1になるわけだけど、よもや文句はあるまいね?」
それを聞いたルイズは疑問符を上げる。
ギーシュ+ワルキューレ×7=8は分かる。でもルイズ+ブラック・サバス=2ではないか。
足し算もできないのかこのド低脳がァーッ!
と、言おうとしたルイズよりも先にギーシュが口を開いた。

「ああすまない。『ゼロ』のルイズをカウントするのを忘れていたよ。8対2。だったね」
ギーシュはバラの花の香りを嗅ぎながら、ルイズにウィンクした。
いつもならこの挑発にのっているところなのだろうが
ギーシュのウィンクに寒気を覚えたルイズは幾分冷静さを取り戻すことができた。
「…………さっさと始めましょ。このままだと日が昇ってくるわ」
「フッ。覚悟は決まったようだね。行けワルキューレ!」

ギーシュのその掛け声に、2体のワルキューレが列を崩さぬまま突進してくる。
ルイズはそれを見ると冷静に、ブラック・サバスに命令を下す。
「サバス。ワルキューレを捕らえなさい!」
広場は相変わらず暗い。行こうと思えばきっとブラック・サバスは、ワルキューレを飛び越えてそのままギーシュを拘束できるはずだ。
実際ルイズはもしあの7体のワルキューレが、全部同時に襲ってきたらそうしようと考えていた。
しかし、あのキザ男はルイズたちを舐めているのだろう。今こっちに向かってきているのは2体
……まずはこの2体を軽く撃退して驚かしてやろうという魂胆だ。

(ギーシュ!あんたが勝ち誇った時、そのときすでに敗北しているのよ!)
ルイズが杖をワルキューレに向けると同時に、自分の隣で微動だにしていなかったブラック・サバスが、水中に潜っていくように地面に消えた。
このときルイズはまだ気づいていない。すでに自分が勝ち誇っていたことを。

消えたブラック・サバスは、ギーシュとルイズの立っている場所の、ちょうど中間地点に突如現れた。
予想外の出現に突進してきていたワルキューレの動きが止まり、観客から驚きの声が上がる。
ブラック・サバスが右手を上げ、ワルキューレを指差した。
観客はもちろん、ギーシュも次にブラック・サバスが何をするのか、思わず固唾を呑んで見守ってしまう。
「チャンスをやろう!」
ブラック・サバスは高らかに宣言した。
その言葉にルイズは思わずがっくりと膝をつき、それ以外の者は何がなんだかという顔で見ている。
「お前にh「いいから!かっこつけてないでさっさと行きなさい!」」

ブラック・サバスがルイズの方を向く。ルイズは腰に手をあて、目で「さっさと行きなさい」と意志を送る。
すると予備動作なくブラック・サバスがワルキューレに突撃していく。
それに反応するように、キレイに並んでいた2体のワルキューレのうち、右側のほうが槍を片手に立ち向かってくる。
両者の距離があっという間に縮む。あと数歩と言うところでワルキューレが槍を前方に構えた。
この勢いではブラック・サバスは自らその槍に突っ込んでいってしまう。
しかし、ブラック・サバスは半歩体を横にそらすだけで、槍の直線的な軌道から外れた。
まるで闘牛士のように、ブラック・サバスの黒いマントがはためき、ワルキューレをひらりとかわす。

「なかなかやるね。でも!」
不敵に笑うギーシュ。実際彼の中ではもうルイズの使い魔をチェックメイトしていた。
2体のワルキューレのうち、動いていなかったほうがいつの間にか距離を詰めている。
そして今度は槍を突くのではなく、なぎ払うために構える。
もう横に逃げても意味を成さない。すでに必殺の間合いだ。
(勝った!第三部完!)
ワルキューレが槍を横一線に振りぬく!

しかし、その軌道上にやはりブラック・サバスはいなかった。
もう横に逃げるには遅すぎるし、突っ込んできている勢いがあるため後ろには飛べない。
だからブラック・サバスは前転するように頭から突っ込んでいったのだ。
回りから見たら単につまづいて、こけた様にしか見えなかっただろう。
(い、今こけてなかったら、首が飛んでたわよ!)
……ルイズもそう思っていた。
ブラック・サバスはワルキューレの足元で両肘、両膝をつき、四つんばいのポーズになっている。
正直、負けました許してくださいと土下座をしているようにも見える。
だが、ワルキューレは今度こそ止めを刺すために、槍を頭上に掲げる。後はコレを振り下ろすだけだ。
しかし先に動いたのはブラック・サバスだった。
ブラック・サバスは片手でワルキューレの腰布をめくり、もう一方の手をワルキューレの股の間に突っ込んだ。
「つかんだ!」
再びブラック・サバスは高らかに宣言した。

(な、な、な、な、何をやってんのよーー!!エロ犬ーー!)
今までで一番の意味不明の行動に、ルイズが声にならない心の叫びをあげる。

「なにをされてるんでしょうか?」
さっきまで戦いを恐々観戦していたシエスタが、少し顔を赤らめてキュルケに尋ねる。
「なにって…………」
「…………」
キュルケは苦笑するしかない。タバサは無言で見つめている。
回りからはブラック・サバスがワルキューレの股に手を突っ込んで、何かをまさぐっている様にしか見えない。
何をつかんだのかは分からないが、いろいろな考えが皆の頭に浮かぶ。なぜかマリコルヌが鼻血を出している。

これはルイズもまだ知らないことだったのだが、ブラック・サバスは影から魂を引き抜き動きを止める。
ルイズも2回それ体験していたのだが、魂を引き抜かれていたことには、気づくに至っていなかったのだ。
……とにかくブラック・サバス本人はいたって真面目に、ワルキューレの影から魂を引っ張り出そうとしているのだ。
しかし何度やっても上手くいかない。影を触っているはずなのに、地面にガリガリ爪を立てるばかりだ。
ブラック・サバスも気づいていないことがあったのだ。ワルキューレが魂を持たぬ人形だということに。そして。
「僕のワルキューレに、なにハレンチなことをするだァーーーッ!ゆるさん!!」
ギーシュの怒りの叫びに合わせて、ワルキューレの槍がブラック・サバスの後頭部めがけて振り下ろされた。
「サバス!!!」
ルイズの悲鳴にも似た声をかき消す様に、ドゴォという鈍い音がヴェストリの広場に重く響いた。


To Be Continued 。。。。?

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