ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-20

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匿名ユーザー

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「お待たせしました」
猫を寝させないために鼻を塞いでいたところにシエスタがお盆を持って戻ってきた。
お盆の上にはティーポットとカップがのせられている。
「すまないな」
「いいえ。好きでやってますから」
シエスタは私の隣に座るとティーポットからカップにお茶を注ぐ。
そしてお茶が注がれたカップを私に差し出してくる。
「ありがとう」
猫から手を離しカップを受け取る。
お茶の色は少し緑色っぽい。もしかしたら緑茶かもしれない。
カップを口元に近づけ香りを嗅いでみる。
いい香りだ。なんとなく落ち着くような感じがする。
猫も鼻をヒクヒクさせティーポットの匂いを嗅いでいる。シエスタはそれを見て微笑んでいる。
香りを十分堪能し、今度はカップを口につけ、お茶を口に含む。
なんと言ったらいいだろうか。何というか独特の味だった。
しかしそれがいやなわけではない。むしろ自分の舌にあっていておいしく感じられる。
「懐かしい」
ふとそんな言葉が口から漏れた。
懐かしい?何を言っているんだ。お茶なんて初めて飲んだじゃないか。
どうしてそんな言葉が漏れるんだ?
……そうか。私は日本人だ。生前がそうだったからな。そしてお茶は生前よく飲んでいたはずだ。日本人だからな。
そのときの記憶がよみがえって懐かしいなんて言葉が漏れたのかもしれない。
「懐かしい?そっか、ヨシカゲさんは、東方のご出身なんですね」
私の呟きを聞いたのかシエスタがそう言ってきた。
その顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいる。一体何が嬉しいんだ?
「そうだけど」
とりあえずシエスタの言葉を肯定しておく。否定する意味も無い。文化的に考えたら確かにここから東方だしな。同じ文化があるとは限らないが。
しかしこのお茶は東方のから運ばれてきたんだよな?たしかロバ・アル・カリイエとかいう場所から。
もしかしたらロバ・アル・カリイエは、西洋的な文化のこことは違い私の世界と同じく東洋的な文化かもしれないな。
「ねえ、ヨシカゲさんの国ってどんなところなんですか?」
私が考えに耽っているとシエスタが突然そんなことを切り出してきた。
「私の国?」
「うん、聞かせてくださいニャー」
シエスタは子猫を自分の顔の高さまで持ち上げ言ってくる。
その様子はまるで猫が話しているようだ。
「ほら、猫ちゃんも聞きたいって」
そういいながら子猫の前足を上に持ち上げ万歳させる。そのポーズに意味は有るのか?
それにしても、
「私の国ねえ」
シエスタは異文化に興味でもあるのかね?
いつか世界を見て回りたいとか。
まあ、話しても問題は無いだろう。月が1つしかないだとか矛盾したことを言わなければあやしまれないだろうし。
「私の国には、まず貴族がいない。そしてメイジもいない。こことは食生活が違うし宗教も沢山ある」
「いやだわ。貴族やメイジがいないだなんて。私が村娘だと思って、バカにしてるんですね」
ここは貴族やメイジがいて当たり前な文化だからな。信じなくて当然か。
「別に嘘だと思うなら信じなくてもいい。それだけ文化の違いがあるというわけだ」
「……ほんとにいないんですか?」
否定せずそう言った為かシエスタが半信半疑な顔をして聞いてくる。
「ああ。貴族は昔いたけど、今はいない。魔法使いは昔はからいなかった」
シエスタが信じられないといったような顔をする。
「他にも色々こことは違うことがあるさ」
それから私はこことは矛盾しないあたりでいろいろなことをシエスタに話した。
シエスタは私が話すたび驚いたり、笑ったり、悲しそうな顔をしたりと、色々な表情を私に見せた。
たまにはこういったことも面白いもんだな。
「お茶のおかわりもらえるか?」
「あ、わかりました」
カップを差し出すとシエスタがお茶を注いでくれる。
そしてカップを口元に持っていき、お茶を口に含む。やはりうまい。
ん?そういえばシエスタはお茶を飲んでいないな。
「シエスタはお茶を飲まないのか?」
「え?ああ。急いでいたものですから自分のカップを忘れちゃいまして」
お盆の上を見ると確かにカップが無い。どうやらカップは私が持っているカップだけのようだ。
一人で飲むのも別にいいんだが、これだと印象が悪くならないだろうか?シエスタの目はなんとなくお茶に注がれているような気がするし。
「飲むか?」
カップをシエスタのほうに向け聞いてみる。
まだ一口しか飲んでないしそんなに量は減ってないはずだ。足りなかったら注ぎ足せばいいし。
「ええ!?」
「なんでそんなに驚くんだ?」
「え!そ、その!い、いいんですか?」
「いいもなにも飲むかって聞いてるんだからいいに決まってるだろ。厨房でも飲めるかもしれないけど外で飲んだほうがおいしい時があるって言ったのはシエスタだろ」
「ヨシカゲさん……」
シエスタの手にカップを渡す。
シエスタは暫らく動かなかったがやがてカップを口元へ持っていった。
そしてお茶を口に含む。
「おいしいですね」
「だろ」
シエスタは静かにそう呟いた。
もしかしたらこっちに付き合ってそういっただけかもしれない。シエスタなら嘘をついて場の空気を壊さないようにするかもしれないしな。
初めてのものが口に合わないっていうのもよくあることだ。
「これがヨシカゲさんの故郷の味なんですね」
しかし、そう呟くシエスタの顔を嘘とは思えなかった。


「ありがとうございます。とても楽しかったです。お茶もおいしかったですし、ヨシカゲさんのお話も素敵でした」
お茶を二人でなくなるまで飲み、お茶会はお開きになった。
二人とも既に立ち上がっている。
「いや、こっちもなかなか楽しかった」
そう言うとシエスタは嬉しそうに笑う。
「また話を聞かせてくれますか?」
「ああ。その代わり字を教えてくれないか?こっちと私のいたところでは文字が違ってて読めないんだ」
「はい!任せてください!」
会話の流れによりさりげなく字を教えてくれるよう頼んだが、どうやらうまくいったようだ。
「それじゃあまたなシエスタ」
「はい。それじゃあまた。猫ちゃんもね」
シエスタがさりげなく私の足元の猫に言う。まだいたのかよ。
そして私たちはそれぞれの場所へ戻っていった。


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