ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-21

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匿名ユーザー

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ルイズの部屋へ戻ると、ルイズがベッドの上で本を広げていた。
やけに古ぼけた大きな本だ。
ルイズはそれを見ながらなにやらぶつぶつと呟いており私が部屋に入ってきたことにも気づいていないようだ。
いったいどんな本を見ているのだろうか?
ルイズの後ろに回って本を覗いてみる。私が部屋に入ったことすら気がつかないのだからこれも気がつかないだろう。
ルイズが見ている本にはなにも書かれていなかった。
真っ白いページを見ながらルイズはぶつぶつと小声で呟いている。小声なので何を言っているかはわからない。
もしかしたら魔法の本なのだろうか?読んでいる奴にしか見えないとかそんなやつだ。
だから私には見えない。もしそうでなかったらルイズの気でも違ったのかもしれない。気が違う理由が無いので違うと思うが。
とにかく私には関係ないことだな。
そのままルイズを放っておき椅子に座る。
するとルイズがこちらを向いた。
「あれ?いつの間に帰ってきてたの」
ようやく気がついたのか小首をかしげてそんなことを言ってくる。
「ついさっきだ。なにやら集中していて気がつかなかったみたいだけどな」
「そう」
ルイズは相槌を打ちながら本を閉じる。
そしてシーツを天井から吊り下げ始めた。どうやら着替えるらしい。
文句を言われないようにシーツから顔を逸らしておく。暫らくするとシーツが取り払われた。
ルイズはちゃんとネグリジェ姿に着替えている。さらに杖を振りランプを消す。
そしてそのまま布団へ潜り込んだ。もう寝るらしい。
ということは私も眠らないといけないのだろうか?
「ヨシカゲ。早くあんたも来なさいよ」
「もう寝るのか?」
「起きてたって考えがまとまるわけじゃないもの」
どうやら何かを考えているらしいが考えがまとまらないようだ。
しかし好きに眠れないならまだ床の方がよかったかもしれない。
だからと言って反発すれば今後ベッドで眠れなくなること間違いなしだろう。
今はいい状況なのだ。ルイズにあわせて少し我慢するだけでこの生活が続けられる。
これが幸福だとは思わないが少なくとも不幸ではない。食事も住居も保障されている。
今はまだこれでいい。
そう考え椅子から立ち上がりベッドへ潜り込む。
しかしベッドに潜り込んだからといって眠くなるわけではない。それに昼間寝ていたしな。
目をつぶる。なにか考え事でもしていよう。動かず喋らず目をつぶっていれば気がつかないうちに眠っているだろう。
そう思いながら眠るのに3時間掛かった。


「これがサンライトイエローって読むんですよ」
「じゃあこれは?一文字もわからないんだが」
「えっと、虎の眼先生ですね」
「……意味がわからない」
「剣を使う凄い人みたいですね。虎の眼流っていう剣術を使ったって書いてあります」
ここ数日暇なとき、シエスタの都合がいい時に文字を教えてもらっている。
おかげで少しは文字が読めるようになってきた。あくまで少しだ。
なぜ異国の文字というのはこうも覚えにくいのだろうか?やはり慣れ親しんでいる文字とは違うからだろう。
形や文法が国によって違うからな。
この世界で暮らすのなら最低限文字を覚えないとだめだ。だからこうして文字を教えてもらっているのだが、
「ユア・レンリ・コーエン?」
「ユナ・ナンシィ・オーエンですよ。こことここが違うでしょう?あとここが前に来るから……」
なかなか覚えられない。
というより選んだ本が悪かったのかもしれない。シエスタも結構難しく書かれているといっていたし。
しかしそれでも構わないといったのはこの私だ。だから文句を言うのは筋違いだろう。
だけど本当にこの本は意味がわからない。一体何の目的があってこんな本を書いたのだろうか?
さらに言葉がわからないよりも腹が立つものがある。
「あ、猫ちゃん。それは食べちゃダメ。それはヨシカゲさんのなんだから」
この猫だ。
最近天気もいいし青空が素敵だ。そういう日はその青空を十分楽しみたい。
だからシエスタに頼んで外で勉強をしているのだ。
人目を避け誰も近寄らないような場所を探して、小腹が空いた時のためにつまむ物も持ってだ。こんな素敵な青空なのに部屋で過ごすというのはあまりよろしくないからな。
だが、私が外にいると何故かこの子猫が近寄ってくるのだ。
しかも何をするわけでもない。ただこっちを見たり、寝転がったり、蝶を追いかけたり、餌をねだったりするだけだ。
最近ではシエスタが猫用の食べ物を作ってくる。つまりそれほどこの猫はそれほど頻繁に来ているのだ。
こっちが必死に勉強しているのにただごろごろと遊んで食っちゃ寝食っちゃ寝しやがって。お前も頭抱えて悩めよ!
正直掴んで投げ飛ばしたいが、どうやらシエスタがこの子猫を気に入っているらしい。その猫を投げ飛ばしたりしたら印象が悪くならないだろうか?
確実に悪くなるだろう。だから抑えるしかないのだ。
猫が食べようとしたもの手に取り口の中に放り込む。食ってやったぞ、ざまあみろ。
「おいしいですか?」
シエスタが訊ねてくる。
「ああ。うまいぞ」
確かにおいしい。文句をつける場所は無い。
「えへへ、たくさん食べてくださいね」
シエスタが嬉しそうにそういった。腹がすいていれば食うさ。
「そういえば、飛行機でしったけ?」
シエスタが突然そんなことを言い出す。
「飛行機がどうかしたのか?」
昨日、シエスタに元の世界の話をしたときに飛行機のことを話したのを思い出す。
「魔法ができなくても空が飛べるってすばらしいわ!つまり、私たち平民でも、鳥みたいに自由に空を飛べるってことでしょう?」
「そうだな。種類にもよるが」
シエスタは私の世界の話をちゃんと信じているようだ。
平民からしたら自分たちで空が飛べるというのは驚くべきことだろうからな。
「あのね?私の故郷も素晴らしいんです。タルブの村っていうんです。ここから、そうね、馬で3日くらいかな……。ラ・ロシェールの向こうです」
「……」
私はそれを黙って聞く。
「何もない、辺鄙な村ですけど……、とっても広い綺麗な草原があるんです。春になると、春の花が咲くの。夏は、夏の花が咲くんです。
ずっとね、遠くまで、地平線の向こうまでお花の海が続くの。今頃、とっても綺麗だろうな……」
その光景を思い出すかのようにシエスタは目をつぶった。
「そりゃあ一度は見てみたいもんだな」
私は素直にそう思った。青空の下、目の前に咲き誇る花を見ながらそれを絵に描くのだ。
疲れたら一休みして本を読む。音楽が聴けないのは少し寂しいが、それでもそれはこの上なく幸せな生活じゃないだろうか?いや、間違いなく『幸福』だ。
「だったら!」
シエスタは胸の前で手を合わせ、突然大きな声で叫んだ。
一体なんだ!?子猫も目を丸くさせ尻尾をピンと伸ばしている。
「どうしたいきなり?」
「ヨシカゲさん、私の村に来ませんか?」
シエスタは私を見詰めながらそう提案してきた。
シエスタの村へ行く?…………………いいかもしれない。


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