ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アンリエッタ+康一-16

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匿名ユーザー

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体中を氷と風で切り裂かれ、男は膝を折って地面に倒れこむ。
一瞬の早業でメイジを倒したタバサ。
だが未だ、敵は見える限りでも二人いる。
そしてその二人は味方が倒されて、のうのうとしている奴らではなかった。
「どうやら来るぞッ!」

魔力の気配が場に満ちる。
男二人は即座に口を開き、魔法の詠唱に入る。
タバサは対抗呪文が間に合わないことを悟り、冷静に行動を決めた。

「間に合わない。逃げる」
脱兎のごとく逃げる康一達、三人は瓦礫の山から飛ぶように駆け出す。
当然その逃げる間にも敵の詠唱は続き、そして発動した。

先に発動したのは氷の魔法。
宙に氷の矢が生え、そして降り注ぐッ!
逃げる三人、しかしこの逃げは時間稼ぎだ。
逃げる間に敵が詠唱を行うなら、タバサに出来ぬ道理はない。

「エア・ハンマー……!」
不可視の風の槌が振るわれた。
エア・ハンマーが自分達に当たる分だけを選び、最小限の魔力で打ち払う。
しかし敵はこうなることを見越していた。
だから同時ではなく、時間差で攻撃を仕掛けてきたのだから。

「今度は別の」
先ほど小屋を貫いた石のツララが宙を落ちてくる。
二重に包囲をしておけば、命中率は格段に上がる。
どうやら残った二人は戦いなれしているようであった。

「二人とも掴まってッ、飛びます!!」
二重の包囲が迫る中で康一がムンズと、アニエスとタバサを引っ掴む。
「ACT2、僕を吹っ飛ばせーーーッ!!」

ドヒュウゥゥ!!

康一の体にACT2のドヒュウゥゥの文字が張り付く。
瞬間、人を吹き飛ばすほどの強い突風が吹いた
ACT2のしっぽ文字が、突風が吹く実感を生み出し康一を吹き飛ばしたのだ。
康一はアニエスとタバサを掴みながら、攻撃の範囲外へと飛んでゆく。

「これなら走るより速く、この攻撃をかわせます!」
康一が予想外のスピードで吹っ飛んでゆくので、狙いが定まらずに地面に石のツララが突き刺さる。
しかしかわしたはいいが、問題が発生。
どうやらACT2では三人飛ぶにはパワー不足らしく、だんだんとスピードが落ちて高度も下がっていく。
このままでは飛ぶ距離が足りずに攻撃を喰らってしまうだろう。

「来る」
しかしタバサは焦ったりはしない。康一も、アニエスも。
何故ならもう一匹同行している仲間がいるからだ。
それは空からやってきた。
墜落する飛行機のように直滑降しながら、地面スレスレで康一達を背中に乗せて再び空へと飛び立つ。


「きゅいきゅい!!(おねーさま、ダイジョブですかー。きゅいきゅい!!)」
タバサの無事に、嬉しさを隠し切れず鳴くシルフィード。
その意思はハッキリとタバサにも届いた。
「大丈夫、ありがとう…」
「きゅきゅう!(ありがとうって言われちゃったわ!)

「きゅいー(小さい人も、おねーさま助けてくれてありがとうですー)」
「小さいって、何か傷つくなぁ………」
苦笑いして言う康一。
タバサはアレ?何かおかしくないかな、と思った。

思ったが、時は考える時間を与えてはくれない。
「呑気にお喋りしている時間はないぞ、お前たち!」
「そうですね。このままシルフィードさんに乗って逃げるって手もありますけど、どうしますか?」
確かに敵のアジトらしき所を見つけたし、明日手勢を引き連れてきて調査するという手もある。

「たぶん、それはダメ。次には何も残らない」
「確かに。これだけ周到にやる奴らなら、何の手がかりも残すことはないだろうな。
それになるべく奴らを生け捕りにして、知っていることを吐かせたい」
「じゃあ、決まりですね」


方向が決まったところでタバサが気付いた。
「逃げてる」
康一とアニエスがシルフィードから少し身を乗り出して下を覗く。
ちょうど二人組みは森の中に飛び込んで姿が消えたところであった。

「このままでは逃げられるッ。ミス・タバサ、あなたの使い魔で追えるか!」
「無理。暗いし木の葉に隠れて何も見えない」
いかに鋭い目を持つシルフィードでも、新月の夜に生い茂る木々に隠れた二人を見つけることは出来ない。

「じゃあ僕が音を聞いて、大体の場所を先導します。それなら追えますよね?」
僅かに思考の間を置いてタバサがコクンと頷く。
「こんな上空から聞き取れるのか?」
康一の音を聞く能力を知っているアニエスが聞いた。

「大体の位置ですけど。今は夜で静かだし、大体ならそんなに難しくはないです」
射程距離50メートルのACT1が康一を離れて、地面に耳をつけた。
神経を集中するために康一は目を閉じ、アニエスとタバサは口を噤む。
シルフィードは自分の羽音が影響しないように、出来るだけ静かに宙を舞う。


音のレーダーと化したACT1が、大地に駆け巡る音を捕捉してゆく。
地面の下で蠢く虫達の音。地面を走る小動物の足音。川の水がバシャバシャと流れていく音。
しかし大の大人二人が走る音とはまるで違う。
探すのはもっと大きな音だ。大人二人がゼェハァ息を嗄らしながら走っている足音だ。

「……見つけたッ!向こうです。結構先へ進んじゃってます、急いでッ!」
了解の意思にタバサは頷いて、シルフィードに康一の指差す方向へ進むように指示する。
「危ない、掴まってて」
そうタバサが言うと、グインとシルフィードが急加速する。

「ウワァッ!!」
アニエスはシルフィードの背びれに捕まっていたが、康一はそうはいかなかった。
ズルリと滑って落下しそうになり、慌ててアニエスの腕に掴まる。
「おい!引っ張るなッ、落ちる落ちる!!」
「そ、そんなこと言ってもッ!」

ACT1を発現しているため、ACT3のパワーで体を持ち上げられずに宙吊りになる康一。
しかしシルフィードは止まらない。
慌てる康一とアニエスに構わず、タバサは更に加速するように指示をした。

「まずい、もう無理だッ。私も自分の身がかわいい、許せコーイチ……ッ!」
「ちょ、ちょっと待って下さいいイィィッ!アニエスさーーーーーーーんッ!!」




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