ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-27

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匿名ユーザー

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「ではモット伯、私はこれで」
「へ?」
笑顔でそう告げるミス・ロングビルに、思わずマヌケな顔で返事をしてしまう。
「もう夜も遅いですし、学院に帰らないと…」
「いやいやいやいや!夜道は物騒ですし、是非我が館にお泊りください!」
モット伯も必死である、なにせおっぱいメイドに手を出せないだけでなく、秘蔵のコレクション2冊+2千エキュー相当の貴金属を渡すハメになったのである。
これでミス・ロングビルのおっぱいを堪能できないとあれば、もう泣くしかない。
「あら、護衛の実力は十分に理解されたと思ったのですが?」
「う…は、はい…」
しかし現実は非常である。

モット伯は自分の部屋に行き、2時間ねむった…そして………
目を覚ましてからしばらくして、寂しさを紛らわすためエアおっぱいを揉み…
もう、いろんな意味で悲しくなったので……泣いた……

後日この時の虚しさを、オールド・オスマンに伝えたところ、エアおっぱいの極意を伝授される事になるのだが、はっきりいってどうでもいい話である。

「シエスタさんは大丈夫なんでしょうか?」
馬に乗る育郎が、背中のミス・ロングビルに話しかける。
「それは心配ないでしょう、もし何かあったら彼の名誉は地に堕ちますし」
すぐにシエスタを連れて帰りたかった育郎であるが、それでは決闘で勝った事が明白だと、ミス・ロングビルに諭されたのである。
「それと…はい、イクロー君の分です」
そう言って、懐から取り出した宝石を育郎にわたす。
下手に何も要求しないと、モット伯が疑心暗鬼に陥って、危害を加えようとするかもしれない。
口止め料を要求した方が、逆にモット伯も安心し、唯の平民のシエスタも、後々の安全が保障されるのである。
もちろん、再び金をせびるような真似さえしなければだが。
「いえ、僕はいいです…ロングビルさんの好きにしてください」
手渡された宝石を返そうとする育郎に、ミス・ロングビルが言葉を返す。
「じゃあ、イクロー君が貰ってください」
「え?」
「貴方の言ったとおり、私の好きにしました」
「し、しかしこんな高価なもの僕が持っていても…」
「いざと言う時にお金に変えればいいんですよ。学院ではあまり使い道は無いですが、これから帰る手段を探す為に、必要となるでしょうし…
 それに、こんな高価なものをプレゼントされたら…本気にしますよ?」
「本気って………い、いえ、そんなつもりじゃ!」
真っ赤になる育郎に、ミス・ロングビルが続ける。
「では持っててくださいね。でも、そんなに強く否定されるとちょっと傷つきます…」
「す、すいません!」
「冗談ですって。本当に真面目なんだから」
そう言って笑うミス・ロングビルにつられて、育郎の顔にも笑みが浮かんだ。



ちなみに、ミス・ロングビルが育郎に渡した取り分は、モット伯が渡した貴金属の十分の一程度である。

「私も随分と気前が良くなったもんだねえ…」
「何か言いました?」
「いえ、何も」


その日、シエスタは唐突に解雇された。突如部屋に呼び出したモット伯が
「手続きはしてある。とっとと学院に帰れ!」
と名残惜しそうな顔で胸を見ながら、一方的に言ったのである。
3日前、学院関係者の女性、話を聞く限りミス・ロングビルだろう、その護衛として来た男が、恋人のメイドを救う為、モット伯と決闘をしたという話は聞いていた。
その時シエスタは、ひょっとして育郎が自分を…と考えたが、すぐに自分を助けに来るはずないと考え直し、誰が来たかすら確かめようとしなかったのである。
そして、結局その男はモット伯に負けたと聞いて、育郎ではなかったと考えた。
モット伯はトライアングルだが、シエスタは学院内で、トライアングルを含めた学生二十人余が育郎を襲ったが、逆に返り討ちにあったと言う話を聞いている。
とにかく、もし育郎だったらモット伯に負けるはずもない。
しかし、自分はモット伯に指一本触れられる事も無く解雇された。

「良かったな嬢ちゃん。ま、あの兄ちゃんに感謝するこったな」
「あ、あの…!」
学院まで自分を送り届け、立ち去ろうとする衛兵にシエスタは声をかける。
「なんだい?」
「あの、先日の決闘はモット伯が勝ったのでは?」
「ああ…どうせあの親父に黙っておくように頼まれたんだろ?
 おかげで賭けには負けちまったが…
 とにかく、変な恨みを買いたくなけりゃ、嬢ちゃんも黙っといた方がいいぜ」
そう言って再び背を向けようとする衛兵に、さらに呼び止める。
「すいません、もう一つだけ…モット伯の決闘の相手はどんな人だったんですか!?」
どういう事かと、いぶかしげな顔をしながらも、衛兵は答える。
「どんなって、変わった服と喋る剣を持った、そういや嬢ちゃんと同じ黒髪だったな…なんだ、恋人かと思ってたがひょっとして兄弟だったか?」
「そうですか…ありがとうございます…」
沈んだ顔をするシエスタに、衛兵は助けに来たのが恋人でないのがショックなのかと勝手に納得して帰っていった。


「あの、ミス・ロングビル!」
昼食を終え、学院長室に戻ろうとするミス・ロングビルをシエスタが呼び止める。
「あら?シエスタさんじゃないですか、今日戻ったんですね」
微笑むミス・ロングビルに、シエスタは頭を下げる。
「あの、助けていただいてありがとうございます!」
「そんな、いいんですよ。実際貴方を助けたのはイクロー君ですし」
「やっぱり…イクローさんが私を…」
そう言うシエスタの顔が、暗く沈んでいる事にミス・ロングビルが気付く。
「どうしたんですの?」
「私…私…」
シエスタは自分を助けてくれた育郎のあの姿を見て、恐くなって逃げ出した事を、そしてその後もずっと逃げ続け、お礼の言葉すら言えなかった事を話した。
「だから…私は助けてもらうような人間じゃ…」
そういって涙ぐむシエスタをなだめながら、ミス・ロングビルは考える。

まあ、身を守る術なんてありゃしない、ただの平民じゃしょうがないか。
こんな普通の娘があんな光景みせられたんじゃねぇ…

「シエスタさん…そんな事、イクロー君は気にしてません」
「で、でも…今でも私、イクローさんの前にでる勇気が…」
そう話すシエスタに向かって首を振り、ミス・ロングビルが優しく語りかける。
「…いいですかシエスタさん」

「そんな!」
シエスタがミス・ロングビルの話した事実に、思わず驚きの声をあげる。
「でも、だとしたら私…」
再び暗い顔に変わろうとするシエスタに、ミス・ロングビルが続ける。
「知らなかったんですもの、しょうがないですわ…
 それに、今からでも遅くないでしょ?」
「は、はい!私、イクローさんの所に行ってきます!」
決意の表情をするシエスタの顔を、ミス・ロングビルは満足げに眺めた。
「あ、それと先程の話ですけど、誰かに話すのはかまいませんが、私が教えたと言う事は内緒にしておいてください」
「はぁ、それはかまいませんけど…」
「学院長やイクロー君から、秘密にしてほしいと頼まれているもので」
「じゃ、じゃあ他の人にも話さないほうがいいんんじゃ?」
当然の疑問を口に出すシエスタ。
「貴方のように、イクロー君を誤解する人もいます。
 しかたがない事ですが…でも、それじゃあ悲しいじゃないですか?」
「…そうですね、わかりました!
 信じてもらえるか分かりませんが…皆にも話してみます!」
「ありがとうございます。それじゃあ、早速イクロー君のところに行ってあげてください、確か今は水場にいるはずです」
「すいません、何から何まで…」
そう言って、もう一度シエスタは頭を下げる。
「あの、いいですか?」
立ち去ろうとするミス・ロングビルに、シエスタが声をかける。
「あの…どうして、ミス・ロングビルまで私を助けようと?」
育郎の事に納得がいった途端、そんな疑問がシエスタの頭に浮かんだ。
「メイジですが私も平民ですし、それに…」
「それに?」
「ここだけの話………私貴族が嫌いなんですの」
「へ?」
「皆さんには内緒ですよ?」
少し悪戯っぽく笑って、ミスロングビルはそう答えた。


「イクローさん!」
洗濯の手を止め、育郎が声をかけられた方を向くと、シエスタが走りながらこっちに向かってくるのが見えた。
「シエスタさん!?」
「はぁ…はぁ…イクローさん…」
息を切らせたシエスタが、改めてイクローに向き直った後、深々と頭を下げる。
「あの…助けていただいてありがとうございます!」
「そんな…頭を上げてください」
困った顔をする育郎に、シエスタが首を振る。
「いえ…私、貴方に謝らないといけない事があるんです…」
そういった後に、もう一度頭を下げるシエスタ。
「あの後、お礼もいえなくてすいませんでした!
 それと……あの………」
少し迷ったそぶりを見せ、言葉を続ける。
「私イクローさんの事が………恐くて……それで…本当にすいません!」
「…シエスタさん、僕はぜんぜん気にしてません、そんな顔をしないでください」
「イクローさん…私ずっと外見だけで判断して、貴方に失礼な事を…
 でも……イクローさんは…イクローさんは…」
「シエスタさん…」
「こんなに優しい、人間の心を持った………

  悪 魔 さ ん な ん で す も の ! 」


「………はい?」
唖然とする育郎に、シエスタが感激した様子で続ける。
「イクローさんは人の心に感動して、この世界に来たんですよね!」
「え?いや」
「いいんです!例え悪魔でも、イクローさんはこんなに優しいですもの!
 みんないつかきっと分かってくれますよ!」
「いや、だからその」
「大丈夫です!私の保証なんかじゃ心もとないかもしれませんけど…絶対に!イクローさんなら絶対に大丈夫です!」
キラキラと輝く目でこちらを見るシエスタに、
「その…あ、ありがとうございます…」
育郎はそう答えるしかなった。


「ま、これで下手にフラグが立つこともないだろうさ」
「何か言ったかの、ミス・ロングビル?」
「いいえ、なんでもありませんわ………
 モートソグニルが私の下着を覗こうとしている事以外にはッ!」
「いや待て違うんじゃミスロングビル話せばわか」
「問答無用!!!」

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