ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-36

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匿名ユーザー

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「……」
「……」
「……」
「……」
暫らくお互いが喋らなかった。
私は伝えたいことは全て喋ったので言うこと何もない。
デルフは最後に一言呟いただけであとは何も喋らない。
沈黙自体は別に耐え難いものではない。
しかし居心地がいい沈黙でもない。
そしてその沈黙を破るきっかけは私にはなかった。
そんな中、
「なんていうかよ。俺が剣だからかもしれねえけどよ」
そのなんとも言いがたい沈黙を破りデルフが喋りだす。
私はそれを黙って聞くことにした。
「相棒はさ、ちと悩みすぎだな」
悩みすぎ?
そうだろうか?
自身の存在意義に係わることに悩みすぎも糞もあるだろうか?
しかし口出しはしない。
それは相手の話の腰を折ることになる。
それにこれは私の考えへのデルフなりの考えなのだ。
それを私が聞かないなどということがあるだろうか?いや、ない。
「さっきの相棒の話を自分なりに何とか理解しようとして聞いて、理解できない部分は自分で解釈したんだけどな。まず相棒は昔の記憶がないんだな?」
デルフの問いに頷いてみせる。
「うんで、色々省いて相棒の言いたいことをまとめるとだ。記憶がなくなる前の自分と、今の自分が同じじゃないかもしれないってことで悩んでるんだろ?」
なんだか多少違う気もするが頷いておく。
さっきの説明でわからないのならまた説明したとしてわかるはずもあるまい。
それに他人からしたら大体同じようなものだろうしな。
「それで俺が解釈した相棒の考えってのはな。相棒は『キラヨシカゲ』を深く考え過ぎてる。なんで自分がキラヨシカゲじゃないかもしれないなんて思う必要があるんだ?」
「だから、過去の私と今の私じゃ成り立ちが違う。精神のあり方が違うんだ。だから私は過去の自分のように『吉良吉影』と言えるかどうか「それだよ」……それ?」
私の言葉遮りデルフはそう言った。
それとはなんだ?
今の言葉の中に何かあったのか?
「相棒は過去の『キラヨシカゲ』を唯一無二と考えてるんじゃねえか?んなわけねえだろ。そりゃ過去の自分も大切かもしれないけどよ。
なんでそこまで過去にこだわる必要があるんだ?思い出せねえ過去の『キラヨシカゲ』にこだわるより、自分なりの『キラヨシカゲ』を新しく作りゃいいだろうがよ」
……なんだって?
「自分なりの『吉良吉影』?」
「別に同じである必要なんて無いもんだって俺は思ってる。世の中にゃ剣なんざ五万とある。『キラヨシカゲ』が剣だとしたら『キラヨシカゲ』も五万とあるわけだ。
んで、剣にはいろんな種類がある。種類なんて用途に合わせて千差万別だ。でもそれが悪いってわけでもねえ。むしろその方が便利だから種類があって万々歳だ。
それと同じようにって……わけじゃねえけどよ、『キラヨシカゲ』もいろんな種類があってもいいじゃねえか?と俺は思うわけよ」
「私なりの『キラヨシカゲ』……」
「まあ、別に真面目に受け止めなくても全然構わないぜ。ただ言ってみただけだし、人間とは考え方が違うからな。俺剣だしさ。
それでもこんな考え方もあるんだなっていう参考ぐらいにはなるだろ?」
「……全然ならんな」
「ひでえ。でも許す。俺の相棒だかんね」
「言ってろ」
デルフを鞘に入れながら歩き出す。
「お、戻るのか」
「ああ、それともう黙れ」
デルフに言葉を返す暇を全く与えず、完全に鞘に収めきる。
そしてそのままシエスタの家に向かって歩き出す。
まさか、デルフにあんなことを言われるなんて思ってもいなかった。
私なりの『キラヨシカゲ』……か。
そうだな。言われてみれば確かに私が過去の『吉良吉影』と同じである必要は無いよな。
私が作る新しい『キラヨシカゲ』。
いや、もう既に私という『キラヨシカゲ』は作られている。
それを自覚した瞬間、過去に対する『吉良吉影』へのこだわりが消えていく。
あとは掴み重ねていくだけじゃないか?自分という存在を。
デルフを肩に担ぎ上げる。
私は既に新たな自分を作っていた。
自分でそれに気がつかなかっただけ。
『吉良吉影』という拠り所の影にあったのだ。
デルフは私にその影の退かし方を教えてくれたのだ。
「本当に……」
キュルケの剣を使っていた頃も、デルフの言葉が私の見る眼を変えた。
「凄い奴じゃないか」
長年の存在と人間とは違う観点というのは想像以上に意外な点をつくもんだな。
もうすっかり心のヘドロは無くなっていた。
今あの女に何を言われようがなにも動じないだろう。
あの腕いともたやすく振りほどけるんじゃないか?
そんな想像が頭に浮かび上がってくる。
最高に『ハイ』ってやつだー!
心が軽くなったからといって調子に乗ったのがいけなったのだろうか。
それともただ単に運が悪かっただけだろうか?
結末はいったい誰の罪なのか?
それは偶然道の正面からやってきた。
歩いてきたのは若い女だった。
別にこの時間に起きている人間の少なからずいるだろう。
驚くようなことではなかった。
ないはずだった。
その女がふとこちらに視線を向ける。
「あ」
「ん?」
「へ、へ、へ、へ、へ」
「いや、あの、どうかしましたか?」
「変態ー!顔をにやけさして半裸で剣を担いだ男がーーーー!しかもなんか汗しっとり!」
「ちょっと待てぇえええええええ!」


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