ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偉大なる使い魔-21

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わたしたちは、ラ・ロシェールで一番上等な宿に泊まることにした。
ワルドさまは全員に向かって困ったように言った。
「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」
「急ぎの任務なのに・・・」
わたしは口を尖らせた、ウェールズ様が敵の手に落ちるのも時間の問題なのに。
「あたしはアルビオンに行った事がないからわかんないけど、
どうして明日は船が出ないの?」
キュルケの方を向いて、ワルドさまが答えた。
「明日の夜は月が重なるだろう?スヴェルの月夜だ。その翌日の朝、
アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近づく」
ワルドさまは鍵束を机の上に置いた。
「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋を取った。キュルケとタバサは相部屋だ。
そしてギーシュとプロシュートが相部屋」
キュルケとタバサ、ギーシュとプロシュートが顔を見合わせる。
「僕とルイズは同室だ」
わたしは、はっとしてワルドさまの方を見た。
「婚約者だからな。当然だろう?」
ワルドさまが、あたり前の様に言った。それを言ってしまえばプロシュートと
わたしが同室でも主人と使い魔で当然なんだけど・・・
「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」
そういわれて、断るわけにはいかなかった。

わたしとワルドさまは宿で一番上等な部屋に入った。
テーブルに座ると、ワルドさまはワインを杯につぎ一気に飲み干した。
「きにも腰掛けて一杯やらないか?ルイズ」
「はい、ワルドさま。いただきます」
わたしは言われるままにテーブルについた。
「ルイズ、その『ワルドさま』と言うのを止めてくれないか」
でも・・・
「僕達は婚約しているんだ、十年もほったらかしにしていたのは悪いと思っている。
その溝を少しでも埋めていきたいんだ」
信じられなかった。婚約といっても両親同士が勝手に交わしたもので、ワルドさまは
とっくに別の人を見付けているとばかり思っていた。
「わかったわ、ワルド」
「ありがとう、ルイズ」
わたしの返事にワルドは微笑み満足そうに頷いた。

「それで、ワルド大事な話って何?」
わたしはワルドに本題を促した。
「ルイズ、自分の系統は見つかったのかい?」
「いいえ、まだ見つかっていません」
「そうか、やはり・・・」
ワルドはわたしの返事に複雑そうな表情をした。
やっぱり婚約の事を後悔したのかしら。
「そうよ!やはり、わたしは『ゼロ』のルイズよ」
わたしは、堪らず声を荒げた。
「ルイズ、僕が君のクラスメイトの様にそんな事を言うと思っているのかい」
ワルドの目がつり上がった。
「だって本当の事ですもの」
自分で言って気持ちが沈んでいく。
「違うんだルイズ。きみは失敗ばかりしてたけど、誰にもないオーラを放っていた。
魅力といってもいい。それは、きみが他人には無い特別な力を持っているからさ。
僕だって並のメイジじゃない。だからそれがわかる」
「まさか」
「まさかじゃない。例えば、そう、きみの使い魔」
わたしの使い魔・・・異世界の暗殺者
「プロシュートのこと?」
「そうだ。彼の左手のルーン・・・。あれは、ただのルーンじゃない伝説の使い間の印さ」
「伝説の使い魔の印?」
「そうさ。あれは『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという伝説の使い魔さ」
ワルドの目が光った。

「ガンダールヴ?」
そういえば、以前コルベール先生がプロシュートのことをガンダーなんとかと言おうとして
オールドオスマンに口止めされてたっけ。
「誰もが持てる使い魔じゃない。きみはそれだけの力を持ったメイジなんだよ」
「信じられないわ」
わたしは首を振った。プロシュートの力は疑いようは無いが、自分がワルドの
言うようなメイジなんだろうか。
「四系統に当てはまらない系統、伝説の使い魔」
ワルドの目に妖しい光が灯る。
「これらの事は全て君が虚無の系統であることを示している」
虚無ですって!失われた伝説の系統。それが、わたしの系統だっていうの?
「この世界に始祖ブリミルが残した虚無の呪文が必ず何処かにある。僕がきっと
その呪文を見つけ出し君に差し出そう。その時こそ、虚無の系統の誕生・・・いや、復活だ」
ワルドは熱っぽい口調でわたしを見つめた。

「それを信じろというの、ゼロのわたしに?」
「かわいそうに、周りに馬鹿にされ自分に自信がもてないんだね・・・この任務が
終わったら、僕と結婚しようルイズ」
「え・・・」
けっ結婚ですって、だっ誰と誰が?
「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは国を・・・
このハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」
「で、でも・・・」
「でも、なんだい?」
「あの、その、わたしまだ、あなたに釣り合うような立派なメイジじゃないし・・・
もっともっと修業して・・・」
わたしは俯いて、続けた。
「あのねワルド。小さい頃、わたし思ったの。いつか皆に認めてもらいたいって。
立派なメイジになって、父上と母上に誉めてもらうんだって」
わたしは顔を上げて、ワルド見つめた。
「まだ、わたし、それができてない」
「僕は君を認めている、それじゃだめなのかい?」

「そんなことないの!そんなことないのよ!」
ワルドがわたしに結婚を求めている。・・・さきほどの伝説の使い魔、失われし
虚無の系統・・・。慰めなんかじゃなく、ワルドは本当にそれを信じているというの?
「わかった。取り消そう。今、返事をくれとは言わないよ。でも、この旅が終わったら、
君の気持ちは僕にかたむくはずさ」
ワルドの言葉に、わたしは頷いた。
「それじゃあもう寝ようか。疲れただろう」
ワルドが近づいて、唇を合わせようとした。わたしは無意識にワルドを押し戻した。
「ルイズ?」
「ごめんなさい、でも、なんか、その・・・」
ワルドは苦笑いを浮かべて首を振った。
「急がないよ。僕は」
わたしは再び俯いた。
どうしてワルドはこんなに優しくて、凛々しいのに・・・。ずっと憧れていたのに・・・。
結婚してくれと言われて、嬉しくないわけじゃない。
でも・・・わたしを認めてほしいと思う両親に、クラスメイトに。
そして、プロシュートに。


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