ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい Dive in the sky

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匿名ユーザー

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目の前に立つキラヨシカゲは見れば見るほど普通の男だった。
体形が普通だ。やせてもいなければ太ってもいない。
おそらく筋肉はそれほどないだろう。だからといって、筋肉を蔑ろにしているという印象も受けない。
身長も175を過ぎているぐらいで日本人としては在り来り。
格好はスーツ、そして少し派手なネクタイ。しっかり着こなしており、ネクタイもその派手さがスーツにばっちり合わさっていて印象に残らないほど似合っている。
顔はどことなく気品漂うような、しかし影の薄い顔立ちをしている。
話は変わるが、私は今まで何人もの人間を見てきた。男だったり、女だったり、子供だったり、老人だったりと色々だ。
それはどんな人間でも同じだと思うが、私のは他の人間とは違う。その人間のありのままの姿を見ることができる。何故なら、私が幽霊で他の人間からは見えないからだ。
普通人間は他人から見られていると察知した瞬間、意識的、あるいは無意識的に何らかの反応がある。その反応の殆んどが自分にとって不都合なものを隠そうとする反応だ。
そして反応する場所というのが主に顔、特に眼だと私は思っている。
顔にはその人物が今何を考えているのかというのが非常に出やすい。その一番顕著なものが表情だ。
喜怒哀楽、これらは全て表情で表現することができる。その人間が笑顔であれば、今その人物が楽しんでいるな、見たいな感じでな。
眼は、表情ほどではないが感情を表している。そして感情以外のものも必ず秘めている。それが重要だ。
表情なんていくらでも偽れる。笑顔でいながらも心の中では全く楽しんでいない、とかな。
そういうのが聞かないのが、眼だ。眼は目を瞑らない限り隠すことはできないからな。
世間ではよく『人の目を見て話せ』と言われているが、それは眼から情報を読み取るためだと私は思っている。
しかし、それすらも隠す人間は少なからずいる。どんな人間でも訓練や生き方次第でそういった方法は身についたりするものだ。
私は幽霊だった。生きている者が死んでいる者を見ることはできない。もちろんあの尼みたいな例外もあるが……
それはともかく、人間に幽霊は見えないのだ。だから私が見る人物というのは基本的に見られているということを察知できない。
ゆえにその人間を殆んど包み隠さない様子を見ることができる。
家でどう過ごしているのか、一人でいるときは何をしているのか、風呂で体を洗うときはどこから洗うのか、などそういったことをだ。
そしてその中で私が一番重要視するはやはり眼だ。
その人物が今何を考えているか?ということが私にとってもっとも興味深いことだからな。
見ている人間が都合よく自分が今考えていることを口に出すか?出すわけがない。いちいち自分の考えを口にしながら行動する奴なんて、いればそいつは変人確定だ。
とにかく、その人間が都合よく考えを口に出さないのなら、自分でその人間がなにを考えているか探らないといけない。
だから私は眼を見る。そいつが今どんな感情を秘めているか、どんな思いをしているのか、何を考えているのか。眼を見ればそれが推測だがおおよそわかる。
何が言いたいのかというと、人間の眼はその人物を表しているといっても過言ではないということだ。
それを考慮した上で目の前に立つキラヨシカゲの眼を見た私は、この男のやばさを確認した。
その目は、その眼には、何も映していないのだ。感情を、考えを、思いを、一切が見出せない。隠しているとかいう次元ではない。言葉通り映していない。
まるで絵の具で塗り消したかのように。
その瞳を、その眼差しを、私は素直に気持ち悪いと思った。
本当に、舞台で見たときも気持ち悪かったが、こんな近くで、しかも目の前で見たら予想以上に気持ち悪いもんだ。
しかもその気持ち悪さが見た目とかそんな目に見えるもんじゃないってところがより気持ち悪さを増長させる。
目の前に立つこのキラヨシカゲを心から生理的に受け付けていない証拠だと思えるからだ。
気に入らない。
私のキラヨシカゲに対する感情を突き詰めてしまえば、この感情に行き着くだろう。
この感情だけで相手を排除したいと思うのは決して間違った想いじゃないと思っている。
そう、私は今、このキラヨシカゲを排除したいと考えている!今更過去が出しゃばってくるんじゃない!
「へえ~、あんたもキラヨシカゲなんだ?本当に奇遇だな。いや、マジに驚いたよ。ああ~びっくりした」
そんな気持ちを込めながら私は口を開いた。
さらに大仰に手を広げ顔を作りわざとらしく、相手を挑発するように話しかける。
「……何のつもりだ?そんな茶番劇をして。それが今することか?『吉良吉影』」
私の言葉にヨシカゲもこちらを見据えながらわざとらしく襟を正す。本当に嫌味ったらしい態度だ。奴のする動作の一つ一つが癪に障る気がする。
というか茶番劇?何を言ってやがる。
「いやいや、俺はキラヨシカゲ、あんたもキラヨシカゲ。それがこうして正面向き合って話してるんだ。これが茶番劇じゃないって言うんなら何を茶番劇だって言うんだ?」
そうだ。
キラヨシカゲ同士がこうして向き合うということ自体が既に茶番劇なんだ。
本来、ありえないはずの邂逅。ありえなかったはずの邂逅。何らかの原因によって発生してしまった万が一のIF。
本当に茶番劇だよな。その茶番に真剣になっている俺たちは周りが笑えないぐらい本当に滑稽だ。
「フン!確かに茶番劇といえば茶番劇だな。だが、私はこんな茶番劇を何時までも続けるつもりはない」
キラヨシカゲはこちらに向かって力強く一歩踏み出してくる。
「茶番は今ここで終わる。お前が消えてな」
……なんだと?
「頭がおかしいのか?どう考えても消えるのはお前だろ。それともボケたのか?」
「貴様は所詮私の代役に過ぎない。そうだろう?私が死んだらお前が生まれ、生き返るとこうして私の意識がちゃんと復活する。そしてお前は消えるんだ。
よくできたシテステムだよ」
「貴様……」
両手を力いっぱい握り締める。
俺が貴様の代役だと?よくできたシステム?俺が消える?
何を、何を、何を、何を、何を!
「ふざけたこと言ってんじゃねえ!殺人趣味のクソ野朗のくせしやがって!俺が代役なワケがねえだろ!」
「いくら否定したところで事実が変わることはない。代役は代役だ。お前は私だよ。間違いない。私はお前じゃないがね」
「そんなもんお前の勝手な決めつけだろうが!」
「じゃあ、試してみるか?」
キラヨシカゲはそう言うとこちらを見下したような薄笑いを浮かべる。
そして、
「『キラークイーン』」
キラヨシカゲの体から2mほどの右腕の無い人型が現われた。
肩や手の甲等に髑髏の装飾が施されており、どこか猫を想わせる頭部をしている。このキラヨシカゲのキラークイーンの右腕を、俺は持っている。
「今から私は自分の腕に傷を付ける」
キラヨシカゲがそう言って右腕を前へ差し出した瞬間にキラークイーンが動き、
「ッ!?」
いきなり自分の右腕に痛みが走った。一体なにが起こった!?
目の前に立つキラヨシカゲを見ると、差し出している右腕部分のスーツが破け、そこから血が滲んでいた。
「今、キラークイーンで右腕に傷をつけた。もちろん動かすのに支障がない程度にだ。そしてこれで証明されたはずだ……」
慌てて自分の右腕の袖を捲り上げる。
「お前は私だと」
「なんだとぉおおおおおおおおおおお!?」
そこにはキラヨシカゲと同じような、いや、同じ傷がついていた。
そんなバカな!?ありえない!
しかし、いくら疑おうとその傷は確かに本物だった。確かめれば確かめるほど傷が本物なのだと理解していく。
俺が、このキラヨシカゲが目の前に立つ殺人鬼だとでもいうのか!?
「さっきも言ったとおり、私はお前じゃない。だからお前が自分に傷をつけたとしても私には何も反映されない。私が傷つけばお前も傷つく。つまり一方通行だ。
もしお前が私を殺せば自分も死ぬことになる。だから諦めろ。自分が代役だということを受け入れて素直に消えれば痛い目を見なくてすむぞ」
キラヨシカゲのその言葉が、自分の中にある何かを刺激した。
それにより、急激に気持ちが落ち着いていく。
「……そうだな。たしかに痛い目を見たくはない。受け入れてしまえば楽だ。だが」
右腕に力を込め、キラヨシカゲを睨みつける。
「痛みを伴ってでも貫かなくちゃならないときがある。それが今だ!俺がお前だなんて絶対認めねぇ!俺の『世界』に入り込んでくるな!」
「フ~~。仕方が無い。あまり手荒な真似はしたくなかったんだがね。疲れるから」
そしてこちらに相手のキラークイーンがこちらに左手を向ける。
「では、右腕を返してもらおうか」
キラヨシカゲの様子は自分が消えるということを全く考えていないように見える。そして実際自分が消えるなんて考えていないのだろう。
こちらがキラヨシカゲに攻撃すれば、相手が傷を負う度こちらも同じ傷を負う。そしてこちらが傷ついても相手には何の影響もない。
だから余裕だと考えているのだろうか?もう既に結果が出ていると思っているのだろうか?きっとそうなのだろう。
だが、そううまくいかせるわけにはいかない。私はお前の言葉で自覚したからな。私の意志を……
「『キラークイーン』!」
右腕からもう一つの腕が現われる。その瞬間、白い世界は灰色へと変わった。
何故?と思う間も無く、二人の間にあるはずの透明な壁がなくなっているということが理解できた。
「行け、『シアーハートアタック』!」
突然キラヨシカゲがそういったかと思うとキラークイーンが差し出していた左腕から何かが発射された。
それは真っ直ぐこちらへ向かってくる!
なかなかの速さだ。しかし目視できないほどじゃない。そして目視できるということは!
キラークイーンの右腕が飛んでくる何かを思いっきり打ち払う。
目視できるということは、こんな風に打ち払えるってことだ。
しかし、今のでわかったことがある。さっき打ち払ったあれは物凄く硬く、そして力強かった。
あの左手はそういった弾丸を撃ち出す能力なのか?
「コッチヲ見ロ」
「!?」
キラヨシカゲを警戒しながら考えているとふと耳元でそんな声が聞こえてきた。
慌てて声が聞こえて方向に振り返ると何かが顔にぶち当たる。
それを反射的に掴み取る。
「コッチヲ見ロッ!コッチヲ見ロッ!」
ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル!
何かが大きな音を立てて回転していて、それが顔の肉を抉っていく。
やばい!こいつに触ってたら爆発する!
「うぉおおおおおおおお!」
それを阻止するためキラークイーンにシアーハートアタックを掴ませ力任せに投げつける。
しかし投げるのが遅かったのか、投げてそのすぐにシアーハートアタックは爆発した。当然十分な距離を取れていなかったため自分も爆発の余波を受ける。
体の所々が焼け、服もボロボロになる。
だが、そんなことすら意に介さない驚きが自分の体を貫いていた。
「何故……」
何故、私がそんなシアーハートアタックだの触れていると爆発するだのわかったんだ!?これはキラヨシカゲしか知らないはずだろ!?
右腕がキラークイーンってわかったのは自分が右腕を持っていたからということで説明がつくが、これは説明がつかない!?
もしかすると、今私はキラヨシカゲの記憶が読めるんじゃないか?あの見えない壁がなくなったことで私たちを仕切るものがなくなって……!?
腹部に突然の衝撃が走る。そしてすぐ目の前にキラークイーンの顔があった。
すぐ下に目を目を向けるとキラークイーンの腕が自分の腹を貫いている。
「ゴフッ」
咽喉を血が駆け上り、口から血を吐き出す。
「何に気を取られていたのかは知らないが、これで終わりだな」
キラークイーンの腕が引き抜かれる。そして血があふれ出した。
「油断さえしなければ私は誰にも負けることはない。そして今私は油断をしていない。つまり負ける要素はなかったというわけだ」
キラークイーンが左腕をこちらへ向ける。
「止めは『シアーハートアタック』で刺す。爆破して粉々に砕くとしよう」
それを見ながら私は考えていた。
キラークイーンは左腕に何か特殊な効果を持っている。それはシアーハートアタックという爆弾戦車を1発だけ発射する能力だ。
それなら右腕にも何か能力があるんじゃないか?
「『シアーハートアタック』」
左手からシアーハートアタックが発射され私目掛けて向かってくる。私は向かってくるシアーハートアタックを…………キラークイーンの右手で掴み取った。
「まだ動けたのか!?」
キラヨシカゲが驚いたような声を上げる。それを聞きながら、私は、シアーハートアタックを、粉々に、塵にするように、爆破した。
その瞬間、左手に衝撃が走る。おそらく左手が爆発したのだろう。そしてキラークイーン、つまりスタンドが傷がつけばその本体も傷がつく。
私の左手が爆発したということはつまり、
「あ……ああ…ぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
キラヨシカゲの左手も爆発したってことだ。
キラヨシカゲは左手があった部分を押さえながらこちら睨みつけてくる。
「こ……この…この野朗ォ――――ッ!」
私はその反応に満足しながら体に力を入れしっかりと立ち上がる。
「今、俺はお前の記憶を読むことができる。そしてスタンドの性質、『キラークイーン』の能力を知った。
『キラークイーン』は触れたものをなんでも爆弾することができるらしいな。そして右手についているスイッチで爆発させることができる。
そしてを押さなくても爆弾に触れたものを爆発させることもできる。だろう?」
「何故動ける……。確かに腹を貫いたはずなのに……!」
確かに、普通腹にこんな向こう側が見えるような穴が開いていては立つことはおろか動くことすらできないだろう。
しかし、私は幽霊だった。
「ここは現実じゃない。意識の世界だ。そして私は幽霊だった。幽霊は他の生命に触れられるとやばいんだ。触れられた部分がごっそりもぎ取られっちまう。
そして、私も何度かそんな経験をした。一番焦ったのは胴体の半分がなくなったときだ。本当に焦ったね。なくても別にいいがうまく歩けなくなったからな。
それに比べれば、胴体の真ん中に穴が空いたぐらいなんでもない。千切れたわけじゃないんだ。痛みを耐えればしっかり体を支えられる。
つまり幽霊として生きた経験が俺をこうして支えている。人間になってからまだ数ヶ月しか経ってないが、幽霊として何年も存在してたんだ。
この空間じゃ、私の体は幽霊側に片寄っている。人間として生きてきたキラヨシカゲにはできない芸当だな。
私がお前の記憶を読めるってことはお前も私の記憶が読めるってことだ。だったら読んでみな。そうすりゃ俺の言ってることが少しは理解できるかもな」
そしてキラヨシカゲに向かって左手を見せ付ける。
「お前は自分が傷を負えば俺にも反映されると言ったな。お前の左手は完全になくなっている。だったら俺の左手も完全になくなっていなきゃいけないはずだ。
だが、見ろ!俺の左手は爆発しこそいるが、原型をまだ留めている!これがどういうことだかわかるか?」
指が欠け、肉が爆ぜ、骨が見え、血まみれになりながらも原型を留めている左手を見せながらキラヨシカゲに問いかける。
ヨシカゲは何も答えない。ただ目を見開いてこちらを凝視している。
「俺は確かにお前の代役だったかもしれない。自分では確立した一つの存在だと思い込んでいたのかもしれない。
デルフに言われたことを本当はまだ理解していなかったのかもしれない。だが、お前に代役だとを言われ、それを証明された時に!今日を思い出した。
デルフの言葉を、夕焼けに染まるあの草原を、その夜の食卓を思い出した。本当に短かったけど俺の人生観を変える1日だった。それを改めて確認した結果がこれだ。
今俺はお前から本当に独立しつつある!今度こそ、本当に俺というキラヨシカゲの存在が確立する!キラヨシカゲ、今あんたに残された手段はなんだ?
シアーハートアタックはもうない。足があるから蹴りか?それでもいい、かかって来い。その瞬間足を爆破する」
「こんな……こんなことが起こっていいはずがない……」
ハァ、ハァと荒い息を繰り返しながらキラヨシカゲがよろめく。
「これは『夢』だ。こんなもの『夢』に決まってる。私が自分に追い詰められるなんて、これが『夢』じゃなかったらなんだっていうんだ……」
懐から銃を取り出しキラヨシカゲの頭にしっかり狙いをつける。
「そうだな。これは夢だ。主人公が悪を倒してもとの世界へ戻る。そんなお話しだ」
パンッ!
そして引き金を引いた。
弾丸はキラヨシカゲの脳天へと吸い込まれ、キラヨシカゲの頭は内側から爆発し消えてなくなった。
「銃弾を爆弾に変えておいた。たとえ頭に当たらなくても別の部分に当たれば爆発する」
キラヨシカゲの体にどんどん亀裂が入っていく。大きく、そして細かく罅割れていく。
そして崩壊した。
「私は『幸福』にたどり着いてみせる。ここが始まりだ」
キラヨシカゲが完全に崩壊した瞬間、この世界も崩壊し、私の意識も暗転した。

目を開ける。とても日の光がとても眩しく感じられる。
そして、ふと何かが目に入る。それは頭に包帯を巻いたルイズだった。なぜかこちらに杖を突きつけている。
杖を突きつけられる様なことをしただろうか?そう思っていると突然杖を下ろし腰に差す。
「……心配かけさせないでよ」
そしてポツリとそんな呟きをもらした。


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