ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-45

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匿名ユーザー

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ルイズを見ながら私は声を出そうとして、
「が、ご、う、おぇえええええええええええ……」
「きゃ――――――――!?」
胃液を吐き出した。
「ちょ、ちょっと!?だれか―――!」
ルイズが慌しく部屋を出て行く最中、私は胃液を吐くのを止められなかった。

寝ていたベッドの毛布を取り替えてもらい右手と左手を確認してもらう。
そして、
「安静にしとりんさいよ。そうすりゃ自然に治るけ」
そういいながら医者(色気もない老婆だ)は部屋から出て行った。ルイズにはシエスタの家に行ってもらっている。デルフと猫を連れてきてもらいにだ。
さっき医者といったが学院のように水のメイジではない。
骨折や傷などの怪我の対処法に詳しい程度の人間だ。まあ、ここは田舎らしいので水のメイジなんていないだろう。
怪我に詳しい人がいただけで十分だ。出なけりゃ今負っている怪我の手当てをしてもらうことすら出来ないからな。
そして何故吐いてしまったのか?それは一つの体の変化が原因だった。
この変化をどう表現すればいいのか?答えはたった一つだ。
『痛』
これだ。漢字一文字で表現できる。
まず、自分の右手の小指と薬指が折れている。さらに左手も痛みで指一本動かせず、腹はまるで穴でも開けられたように異常な痛みを信号として脳へ送っている。
何故、こんなことになっているのか?もちろん予想はついている。おそらく、あの夢(厳密にいうと夢じゃないけど)が原因だ。
あの夢を、私はひどく鮮明に憶えている。
対峙したキラヨシカゲ。
傷つけられた右腕。
放たれた左手、シアーハートアタック。
自分の腹を貫通するキラークイーンの左腕、そのときの感触。
再び放たれたシアーハートアタックを受け止めるキラークイーンの右腕。
シアーハートアタックを右腕の能力で爆破したときの瞬間、そして同時に爆破される自分とキラヨシカゲの左手。
懐から銃を取り出しキラヨシカゲに狙いをつけたとき、絶望した表情のキラヨシカゲ。
キラヨシカゲの額に銃弾を撃ち込み頭を爆破し、自分自身の『世界』を、存在を確立した瞬間。
あの夢の全てを憶えている。今まで『幸福』を目指して行動してきたが、私はスタートラインに立ってもいなかった。
しかし、自分の『世界』を確立した瞬間、私はスタートラインに立つことができたのだ。その瞬間を忘れられるだろうか?忘れたくない、忘れられるわけがない。
私はキラヨシカゲだ。私という名の『キラヨシカゲ』なのだ。これからもずっと……
だが、そんないいことばかりではなかった。
それがこの痛みだ。腹と左手の尋常ならざるこの痛み、あの夢が原因だというのは明々白々だ。
イワシの頭も信心だ。あの夢の中で私が受けた傷が、思い込みで本物の肉体にも影響を及ぼしたのだろう。嫌なプラシーボ効果だ。
腹や左手や右手が異常に痛いだけで、シアーハートアタックの爆発の余波を受けた体も中々痛い。
さっき吐いたのはこの腹の痛みに体が拒絶反応を起こした結果だと思っている。そしてそれが答えだろう。
さて、ここで疑問が一つ出る。夢の中で私は右腕に傷を受けはしたが指を骨折したわけではない。
それにこの骨折は滅茶苦茶に折れている。手当てをしたばあさんがいうには指がねじれ折れていて、骨が肉を突き破り見えていたほどだという。
夢の中でこれと同じことをしても、現実で同じことになることはないだろう。せいぜい小指と薬指が動かなくなる程度だ。
指が勝手に捻れるか?捻れるわけがないだろ?いくら指に力を入れたところで指がひとりでに捻れ、あまつさえ折れるなんてありえない。
人間の指はそんな風にできていない。じゃあなんで折れてるんだ!?
まったくわかんねぇ!
クソッ!腹が立つ!痛いしこれじゃ右腕が不自由だしよ!左手も使えないんだぞ?
これじゃあデルフを握れないかもしれないじゃないか!あ、デルフを持てばガンダールヴの効果が発動するから痛みが抑えられるじゃないか。
だったらこの痛みに対処する方法は武器に触れてガンダールヴの効果を発動させておくことだ。何か手近な武器といえば……
銃だ。いつも懐に入れているんだ。右手が痛むが何とか懐から銃を取り出し……あれ?今気がついたがこれは私の服じゃないぞ?
辺りを見回すと私の服が少し離れたテーブルの上に畳まれている自分の服を発見した。服の上には銃が置かれている。
誰かが触れたのだろう。興味本位で弄くられはしていないだろうか?まさか暴発はしてないよな?
まあ、今そんなことを考えても仕方がない。問題はあの銃を自分の手の内に納めることができるかどうかということだ。
そして答えは不可能。明らかに無理だ。
まず痛みで動けない。ベッドから転げ落ちただけでも想像を絶する痛みが全身を襲うだろう。
ではキラークイーンで取ればいいのではないか?それも不可能、射程範囲外だ。キラークイーン自体この痛みで出せそうにない。
出す意思も挫かれる。まったく、夢の中ならいくらでも我慢できるのにどうしてこんなときは我慢できないのだろうか?
それとも夢だから我慢できたのか?多分後者だろう。夢だからな。そのときの心意気がダイレクトに反映されたんだろう。
「う……いつつ…………」
それにしても痛い!痛すぎる!また新たに気がついたが顔も痛い。
何かに思いっきりぶつかった、あるいはぶつけられた感じだ。右手で触れてみると明らかに腫れている。
なんで腫れてんだ?どうして指が折れてるんだ?なんで服が着替えさせられてんだ?そういえばルイズも頭に包帯してたな。一体何がどうなっていやがる?
キラヨシカゲと対峙していた空白の時間に何があった!?
そんなことを思っていると、ドアが開き誰かが入ってくる。入ってきたのはルイズとシエスタだった。
ルイズはデルフを抱え肩に猫を乗せ、シエスタは手にバスケットを持っている。
「ヨシカゲさん……。よかった、起きたんですね」
私を見たシエスタの第一声がそれだった。目は少し涙ぐんでいる。なぜ?それに起きた?
「不思議そうな顔してるから答えるけど、あんた3日も眠ってたのよ」
「…………~~~!?」
声に出して言おうとしたが痛みで声が出せず悶絶する。しかし、3日だと!?私は3日も夢の中にいたのか!?
「何言ってるんですか!ミス・ヴァリエールだってヨシカゲさんが起きる少し前に起きたばっかりじゃないですか!本当はまだ寝てなさいって言われてるのに」
「いいのよ。ちゃんと起きたし頭に怪我してるだけで他には悪い所なんてないんだから。それと」
ルイズがデルフを壁に立てかけ子猫を床におろす。
「あんたが言ったとおりちゃんと持ってきてあげたわよ。勘違いしないでよ?たまたまシエスタの家に行く用があったついでなんだから」
ありがたいが、デルフにも猫にも皆ギリギリで手が届きそうにない。もしかして嫌がらせか?
そう思っているとルイズが机の上から銃を手に取りこちらに放り投げてくる。そして銃は何事もなく私のベッドの上に落ちた。
っておい!あぶねえ!暴発したらどうする!
「お守りなんでしょ?持ってなさいよ」
そういや前にお守りとかいったような記憶がある。あれを真に受けてたのか。別にいいけど。
銃に触れるとルーンが光り体から痛みが引いていく。よかった。これであの痛みから解放される。
「あの、ヨシカゲさん。起きたお祝いに私料理作ってきたんですけど食べませんか?もちろんミス・ヴァリエールも一緒に」
「わたしがおまけみたいに聞こえるんだけど」
「そんなことありませんよ~?」
ルーンの効果も発動して腹の痛みも殆んどなくなってるから食えるはずだな。よし、
「それじゃあ、いただこうか」
こうして私のベッドに二人が座り食事を始まった。そして2分後、二人の目の前で吐いてしまった。
痛みがなくなっているだけでダメージが回復しているわけではないというのを思い知りながら私は二人に謝った。


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