本塔と火の塔の間にある一画、そこに私とルイズ、そしてようやく完全に落ち着いたコルベールが立っている。そしてそろいもそろってある一つの建物を見ていた。
「ここが私の研究室だ」
「…………研究室?」
「ささ、中に入りたまえ。遠慮することはない」
コルベール曰く『研究室』。しかし私が見るにこれはただの草臥れたボロ屋だぞ。
ルイズも私と同じようなことを思っているのか少し顔を顰め呆れ顔でコルベールを見ている。無理も無いが。
「初めは、自分の居室で研究をしておったのだが、なに、研究に騒音と異臭はつきものでな。すぐに隣室の連中から苦情が入った」
当たり前だ。研究云々の前に常識を考えろ。
ドアを開き中に入っていくコルベールのあとについていきながら心の中で毒づく。
そして小屋の中に入ると辺りを確認するしない以前に、
「うっ!?」
あまりにも嗅ぎなれない異臭に鼻元を押さえ立ち止まる。なんて臭いだ。別に臭いとは思わないが妙に鼻をつく。
「なにこの臭い!?」
最後に入ってきたルイズは甲高い声を上げ鼻をつまんだ。私でも鼻に臭いが入らないように手で押さえてるんだ。当然の反応だな。むしろこの臭いが平気なら引くぞ。
しかしこんなところにデルフを持ってくるんじゃなかった。臭いがついたらどうしようか。
「なあに、臭いはすぐに慣れる。しかし、ご婦人方にはなれるということはないらしく、この通り私は独身である」
そんなもん聞いてねえよ!というかお前が独身なのは当たり前だ!こんなので女が近寄ってくるとでも思ってんのか!
しかし、コルベールはそれを気にした様子もなく椅子に腰掛ける。そして手に持っていた壷の臭いを嗅ぎ始めた。
壷の中に入っているのはゼロ戦の燃料だ。ゼロ戦の燃料タンクの底にわずかにこびりついていたものを採取したのだ。
私とがここまで来た理由はコルベールが疑問に思ったことを答え、機嫌を取りゼロ戦の燃料を作らせるためだ。
さっきの様子から見て。コルベールなら機嫌を取らなくても嬉々としてやるだろうが、万が一途中で投げ出すなんてことも無いとは言い切れないからな。
そんなわけで、コルベールの研究室までついてきたのだ。いきなり自分の研究室で話そうとか言い始めたからな。
ルイズがついてきている理由はわからない。その場の乗りか、それともコルベールの研究室に興味が沸いたのか。まあ、どうでもいいけどな。
「ふむ……、嗅いだことのない臭いだ。温めなくてもこのような臭いを発するとは……、随分と気化しやすいのだな。
これは、爆発したときの力は相当なものだろう」
コルベールはそういいながら羊皮紙になにやらメモをし始める。
しかし、なんだかんだ言ってもさすが科学を研究している男だ。臭いを嗅いだだけでそこまでわかるとは。もしかしたら私が知らないだけかもしれないが。
それにしてもあの燃料何十年も前のものなんだよな。大丈夫なのか?普通なら化学変化を起こしていると思うんだが……
しかし、見た目は変化している様子はなかった。臭いもそうだ。燃料系の独特の臭いがした。特に変わった様子は見られなかった。
おかしくないか?何十年も前のものだぞ?化学変化していて当然じゃないか?
そういえば、ゼロ戦には『固定化』の呪文がかけられていたんだったな。つまり魔法がかかっていたわけだ。
その『固定化』の呪文で燃料の科学変化が防がれたのか?これが一番可能性が高いな。やっぱり魔法って物理法則に反してるな。つくづくそう思う。
「これと同じ油を作れば、あの『セントウキ』とやらは飛ぶのだな?」
「はい、もちろんです。特に故障箇所も見られませんので燃料さえあれば飛ぶはずです」
「おもしろい!調合は大変だが、やってみよう!」
「ここが私の研究室だ」
「…………研究室?」
「ささ、中に入りたまえ。遠慮することはない」
コルベール曰く『研究室』。しかし私が見るにこれはただの草臥れたボロ屋だぞ。
ルイズも私と同じようなことを思っているのか少し顔を顰め呆れ顔でコルベールを見ている。無理も無いが。
「初めは、自分の居室で研究をしておったのだが、なに、研究に騒音と異臭はつきものでな。すぐに隣室の連中から苦情が入った」
当たり前だ。研究云々の前に常識を考えろ。
ドアを開き中に入っていくコルベールのあとについていきながら心の中で毒づく。
そして小屋の中に入ると辺りを確認するしない以前に、
「うっ!?」
あまりにも嗅ぎなれない異臭に鼻元を押さえ立ち止まる。なんて臭いだ。別に臭いとは思わないが妙に鼻をつく。
「なにこの臭い!?」
最後に入ってきたルイズは甲高い声を上げ鼻をつまんだ。私でも鼻に臭いが入らないように手で押さえてるんだ。当然の反応だな。むしろこの臭いが平気なら引くぞ。
しかしこんなところにデルフを持ってくるんじゃなかった。臭いがついたらどうしようか。
「なあに、臭いはすぐに慣れる。しかし、ご婦人方にはなれるということはないらしく、この通り私は独身である」
そんなもん聞いてねえよ!というかお前が独身なのは当たり前だ!こんなので女が近寄ってくるとでも思ってんのか!
しかし、コルベールはそれを気にした様子もなく椅子に腰掛ける。そして手に持っていた壷の臭いを嗅ぎ始めた。
壷の中に入っているのはゼロ戦の燃料だ。ゼロ戦の燃料タンクの底にわずかにこびりついていたものを採取したのだ。
私とがここまで来た理由はコルベールが疑問に思ったことを答え、機嫌を取りゼロ戦の燃料を作らせるためだ。
さっきの様子から見て。コルベールなら機嫌を取らなくても嬉々としてやるだろうが、万が一途中で投げ出すなんてことも無いとは言い切れないからな。
そんなわけで、コルベールの研究室までついてきたのだ。いきなり自分の研究室で話そうとか言い始めたからな。
ルイズがついてきている理由はわからない。その場の乗りか、それともコルベールの研究室に興味が沸いたのか。まあ、どうでもいいけどな。
「ふむ……、嗅いだことのない臭いだ。温めなくてもこのような臭いを発するとは……、随分と気化しやすいのだな。
これは、爆発したときの力は相当なものだろう」
コルベールはそういいながら羊皮紙になにやらメモをし始める。
しかし、なんだかんだ言ってもさすが科学を研究している男だ。臭いを嗅いだだけでそこまでわかるとは。もしかしたら私が知らないだけかもしれないが。
それにしてもあの燃料何十年も前のものなんだよな。大丈夫なのか?普通なら化学変化を起こしていると思うんだが……
しかし、見た目は変化している様子はなかった。臭いもそうだ。燃料系の独特の臭いがした。特に変わった様子は見られなかった。
おかしくないか?何十年も前のものだぞ?化学変化していて当然じゃないか?
そういえば、ゼロ戦には『固定化』の呪文がかけられていたんだったな。つまり魔法がかかっていたわけだ。
その『固定化』の呪文で燃料の科学変化が防がれたのか?これが一番可能性が高いな。やっぱり魔法って物理法則に反してるな。つくづくそう思う。
「これと同じ油を作れば、あの『セントウキ』とやらは飛ぶのだな?」
「はい、もちろんです。特に故障箇所も見られませんので燃料さえあれば飛ぶはずです」
「おもしろい!調合は大変だが、やってみよう!」
勝った……計画通り。…………って違う!私はこんなキャラじゃないだろう。またキラ違いな気がしたぞ。というかキラ違いってなんだ!
頭を振り払いそんな考えを頭から追い出そうとする。
クソッ!きっとのこの臭いで頭が少しおかしくなったんだ。早いとこここから出たいもんだ。
「きみは、ヨシカゲくんとか言ったかね」
不意にコルベールが何か意味不明な作業をしながら私に聞いてくる。
「ええ、そうですが」
「きみの故郷では『セントウキ』で空を飛ぶことは普通なのかね?」
「まあ、ある程度普及しつつはあります」
もちろん嘘だ。戦闘機で空を飛ぶのが普通なわけが無いだろう。飛行機で飛ぶのは普通だがな。
「素晴らしい。エルフの治める東方の地は、なるほど全ての技術がハルケギニアのそれを上回っているようだな」
「はっきり言ってしまえばそうですね。私たちの国から見ればこの国は随分技術の発達が遅れています。魔法の頼りすぎでしょう」
「そういえばヨシカゲの国って貴族もいないしメイジもいないんだったわね」
コルベールと話していると、突然ルイズが話しに入ってきた。
「それは本当かね?」
ルイズの言葉にコルベールは驚いたような顔をする。
ちっ!ルイズめ、余計なことを喋りやがって。極力喋りたくないというのに。仕方が無い。
「ええ。その通りです。そして私たちの国は魔法が使えない代わりに技術で国を発達させました」
「なるほど、ますますおもしろい」
は?おもしろい?一体どこがおもしろいというんだ。変人の考えは理解できん。普通驚きはすれどおもしろいなんて思わないと思うが。
「さっききみは言ったね。この国は魔法に頼りすぎたと」
あきれ半分でいると、コルベールが突然何時にも増して真剣な声で呟く。
「その通りだ。そしてトリステインだけではない。
ハルケギニアの貴族全体が、魔法をただの道具……、何も考えずに使っている箒のような、使い勝手のよい道具ぐらいにしかとらえておらぬ。私はそうは思わない。
魔法は使いようで顔色を変える。従って伝統にこだわらず、様々な使い方を試みるべきだ」
コルベールが私の目を射抜くかのように見詰めてくる。
「それが私の……、変わり者だ、変人だ、などと呼ばれようと、嫁がこなくとも、貫くべき私の信念だ!嫁がこなくてもね」
いや、その信念は立派だが、嫁がどうのこうのは明らかの余計だろ。色々台無しだ。というか強調するぐらいだから結婚したいのか?
「ヨシカゲくん、きみの知識は私に新たな発見を、私の魔法の研究に、新たな1ページを付け加えてくれるだろう!だからヨシカゲくん。
困ったことがあったら、なんでも相談したまえ。この炎蛇のコルベール、いつでも力になるぞ」
ああ、せいぜい利用させてもらうよ。
頭を振り払いそんな考えを頭から追い出そうとする。
クソッ!きっとのこの臭いで頭が少しおかしくなったんだ。早いとこここから出たいもんだ。
「きみは、ヨシカゲくんとか言ったかね」
不意にコルベールが何か意味不明な作業をしながら私に聞いてくる。
「ええ、そうですが」
「きみの故郷では『セントウキ』で空を飛ぶことは普通なのかね?」
「まあ、ある程度普及しつつはあります」
もちろん嘘だ。戦闘機で空を飛ぶのが普通なわけが無いだろう。飛行機で飛ぶのは普通だがな。
「素晴らしい。エルフの治める東方の地は、なるほど全ての技術がハルケギニアのそれを上回っているようだな」
「はっきり言ってしまえばそうですね。私たちの国から見ればこの国は随分技術の発達が遅れています。魔法の頼りすぎでしょう」
「そういえばヨシカゲの国って貴族もいないしメイジもいないんだったわね」
コルベールと話していると、突然ルイズが話しに入ってきた。
「それは本当かね?」
ルイズの言葉にコルベールは驚いたような顔をする。
ちっ!ルイズめ、余計なことを喋りやがって。極力喋りたくないというのに。仕方が無い。
「ええ。その通りです。そして私たちの国は魔法が使えない代わりに技術で国を発達させました」
「なるほど、ますますおもしろい」
は?おもしろい?一体どこがおもしろいというんだ。変人の考えは理解できん。普通驚きはすれどおもしろいなんて思わないと思うが。
「さっききみは言ったね。この国は魔法に頼りすぎたと」
あきれ半分でいると、コルベールが突然何時にも増して真剣な声で呟く。
「その通りだ。そしてトリステインだけではない。
ハルケギニアの貴族全体が、魔法をただの道具……、何も考えずに使っている箒のような、使い勝手のよい道具ぐらいにしかとらえておらぬ。私はそうは思わない。
魔法は使いようで顔色を変える。従って伝統にこだわらず、様々な使い方を試みるべきだ」
コルベールが私の目を射抜くかのように見詰めてくる。
「それが私の……、変わり者だ、変人だ、などと呼ばれようと、嫁がこなくとも、貫くべき私の信念だ!嫁がこなくてもね」
いや、その信念は立派だが、嫁がどうのこうのは明らかの余計だろ。色々台無しだ。というか強調するぐらいだから結婚したいのか?
「ヨシカゲくん、きみの知識は私に新たな発見を、私の魔法の研究に、新たな1ページを付け加えてくれるだろう!だからヨシカゲくん。
困ったことがあったら、なんでも相談したまえ。この炎蛇のコルベール、いつでも力になるぞ」
ああ、せいぜい利用させてもらうよ。
コルベールの曰く『研究室』、私曰く『草臥れたボロ屋』から退出し、私とルイズは自分たちの部屋に帰ってきていた。
「先生、気合が入ってたわね」
ルイズが旅の荷物を整理しながら私に話しかけてくる。
「そうだな」
ルイズはワインを暫らく見詰めていたがやがてしまう。そして古く大きな本を取り出した。始祖の祈祷書だ。
そして『水』のルビーを指に嵌める。
「ねえヨシカゲ」
「なんだ?」
「旅行、楽しかったわね」
「……そうだな」
ルイズが始祖の祈祷書を開く。そういえば詔は考えられたのだろうか?あの夕食のとき、ルイズは最高の詔を考えられると言っていたが。
「ヨシカゲ」
「……なんだ」
さっきからなんなんだ?ルイズの瞳を見詰める。ルイズはこちらを向いてはいない。目は始祖の祈祷書に釘付けだ。
しかし、その瞳には、何か悩みのようなものを秘めている。おそらく、ルイズは何か私に言いたいことがあるのだろう。
それを今、話すべきかそうでないかを迷っている。私の予想としては、あの草原でのことなんじゃないかと思っている。
きっとルイズはあそこであった真相を知っているはずだからな。
「……………………」
「……………………」
喋るなら早く喋れ。じれったい。
「……………………指の治療にでも行ったほうがいいわよ。もしかしたら手遅れになるかも」
「……………………マジで?」
こうして指の治療を受けに入った私は、思わぬ再開をすることになる。
語ることはない。しいて言うのなら、苦かった、とだけ言っておこう。
「先生、気合が入ってたわね」
ルイズが旅の荷物を整理しながら私に話しかけてくる。
「そうだな」
ルイズはワインを暫らく見詰めていたがやがてしまう。そして古く大きな本を取り出した。始祖の祈祷書だ。
そして『水』のルビーを指に嵌める。
「ねえヨシカゲ」
「なんだ?」
「旅行、楽しかったわね」
「……そうだな」
ルイズが始祖の祈祷書を開く。そういえば詔は考えられたのだろうか?あの夕食のとき、ルイズは最高の詔を考えられると言っていたが。
「ヨシカゲ」
「……なんだ」
さっきからなんなんだ?ルイズの瞳を見詰める。ルイズはこちらを向いてはいない。目は始祖の祈祷書に釘付けだ。
しかし、その瞳には、何か悩みのようなものを秘めている。おそらく、ルイズは何か私に言いたいことがあるのだろう。
それを今、話すべきかそうでないかを迷っている。私の予想としては、あの草原でのことなんじゃないかと思っている。
きっとルイズはあそこであった真相を知っているはずだからな。
「……………………」
「……………………」
喋るなら早く喋れ。じれったい。
「……………………指の治療にでも行ったほうがいいわよ。もしかしたら手遅れになるかも」
「……………………マジで?」
こうして指の治療を受けに入った私は、思わぬ再開をすることになる。
語ることはない。しいて言うのなら、苦かった、とだけ言っておこう。