帰ってきてから既に3日が経っていた。あれから大きく変わった出来事も無く、タルブの村へ行く前と殆んど同じ日々をすごしている。
変わったことがあるとすれば、私の所有物が増えたことぐらいだ。部屋に入れることができないほどでかい所有物だけどな。
所有物というのはもちろんタルブの村で手に入れたゼロ戦だ。置く場所も限られているため中庭に広場に置かれている。
しかし、普通こんな場所に置いておいていいのだろうか?普通なら文句を言われてもおかしくない。だというのに文句を言われることはなかった。
ルイズかコルベール、どちらかがここに置く許可を取ったのかもしれない。だとしたら許可を取ったのは後者だろう。前者がこんなことするわけが無いだろうし。
そして私は今、ゼロ戦の操縦席に座っていた。ゼロ戦の点検をするためだ。
普通そういったことはそれなりに技術を持つものでなければできないだろう。下手に弄れば故障の原因にもなりかねない。
しかし、私には『ガンダールヴ』のルーンがある。ゼロ戦は武器だ。だから触ればルーンが反応する。
操縦桿を握ったり、スイッチに触れるたび、ルーンの効果により頭の中に情報や各部の状況が流れ込んでくる。
つまり、私は武器であれば専門的な知識が無くても、故障しているかどうかを調べることができる。
本当に『ガンダールヴ』は便利だな。既に私はゼロ戦を操縦し空を飛ばすことぐらいできるほどだ。
そんなことに悦びを覚えながら私は点検を続けた。しかし、点検というのも暇だ。操縦席の中でただ弄くっているだけだからな。
そういうことだったら誰かと話しながらやれば少しは気がまぎれないか?しかも操縦席というのは密室だ。
誰かが邪魔するということは殆んど無い。たまに誰かが暫らく見るだけだ。触ることすらしない。触るのは私だけと言ってもいい。
ということはこの空間内なら大声で喋らない限り周りから気にされることはないわけだ。
なので普段持ち歩かないデルフをゼロ戦の操縦席へ持ってきたのだ。もちろん喋れる程度に抜いてある。なぜか猫も肩に乗せてるがな。
しかし、この時間帯に喋るのは久しぶりだ。
「相棒、もう一つある剣ってよ、ほら、前に相棒が使ってたやつ。あれもう使わねえの?すげえ埃被ってたぜ」
「ああ、どうしようか。別に必要ないからな。売るか」
といっても、それほど何か喋る話題があるわけでもなく、たまにどうでもいいことをちょろっと喋るぐらいなのだが。
「にしてもよ相棒、ほんとーにこれで空を飛ぶんかね?」
「ああ」
異常無し。
「ふ~ん。これが飛ぶなんて、信じられねえな。あ、でもマジで飛ぶみてえだな。わかっても信じられねえなこりゃ」
「ん?いきなり飛ぶと納得したみたいだがどうしてだ?」
ここも異常無し。
「こいつは『武器』だろ?ひっついてりゃ、大概のことはわかるよ。忘れたか?俺は一応、『伝説』なんだぜ」
「へえ」
……なぜ伝説なのだろうか?
そういえば前に『ガンダールヴ』の左腕だとか言っていたな。推測からすると、前の『ガンダールヴ』が左腕にデルフを持っていたってことか?
『ガンダールヴ』っていうのは聞く限り伝説の存在だ。だったらその『ガンダールヴ』が持っていた左腕の武器がデルフなら、確かにデルフは伝説だろう。
…………あれ?それって結構すごくないか?でも知っているのは私だけだし他人に話しても信じるわけが無いからな。自慢できることじゃない。
いや、自分だけが知っている秘密ってことでいいんじゃないか?うん、私だけが知っている秘密、いい響きだ。
それにしても本当にどこにも異常が無いな。これが『固定化』の呪文の効果か。恐ろしい。これなら科学が発展しないわけもわかるな。魔法がありゃ必要ねえもん。
まあいい。点検も終わったんださっさと降りてしまおう。
「ほら、降りるぞ」
肩に乗っかている猫に合図をし、デルフを掴む。
「お。終わったのか」
「お前には言ってない」
「ひでえ」
そんなことを聞きながら操縦桿から出、ゼロ戦から降りる。
さて、点検も終わったからな。あとは何もすることはない。正直暇を持て余す。デルフと喋り続けるか?バカな。それじゃあ変人じゃないか。
こんなときシエスタがいれば文字でも教えてもらえるんだがな。今シエスタは帰郷中だ。仕方が無い。部屋に戻って文字の復習でもしておくか。
そんな結論に達し、部屋へと足を向けたとき、何が聞こえてきた。なんだこれは?
「…………くん!ヨシカゲくん!ヨシカゲくん!」
この声は、コルベールか!どうやら私を呼んでいるらしいな。一体何事だ?
「どこかね!?ヨシカゲくん!?ヨシカゲく――ん!?」
声はさらにこちらに近づいてくる。
ええい!私を大声で呼びながらうろつくんじゃない!変な噂がたつかもしれないじゃないか!
コルベールに叫ぶのをやめさせるため、声のする方向へ足を向ける。
「相棒、モテモテだな」
「男にモテてなにが嬉しいと思うか?私に特殊な趣味は無いんだぞ」
しかし、こちらが少し進んだところでコルベールが曲がり角から姿を現した。
「ヨシカ、おお!ヨシカゲくん!捜していたぞ!」
コルベールがこちらに狙いを定めたかのように歩みを進めてくる。その両手にはワインの壜が握られている。
「ヨシカゲくん!ヨシカゲくん!できたぞ!できた!調合できたぞ!」
「本当です……!?」
そこまで言いかけて気がついた。このコルベールは今どの程度なんだ!?エンジンを見せたとき位か?それともついこの間ゼロ戦を見たとき位なのか?
「どうしたのかね?そんな脅えた顔をして」
「え?」
ふ……つう?普通の状態なのか?
「まあいい。それよりほら、見たまえ!ちゃんとできているだろう!?」
そう言ってコルベールが私の眼前にワインの壜を突きつけてくる。ワインの壜の中には確かに茶褐色の液体が存在していた。燃料と同じ色だ。そして臭いも燃料と同じ臭い。
驚いた……まさかこんな短期間で作り上げるなんて。
「ええ、見た目、臭い、共に完璧じゃないですか」
「そうだろう!そうだろう!では早速使えるかどうか試してみてはくれんかね!?」
「もちろんです」
早速燃料を入れようと、風防の前にある燃料コックの蓋を開こうとする。しかし、開かない。どうやら鍵がかかっているらしい。
「どうかしたのかね?」
「ええ、どうやら鍵がかかっているようで、開かないんですよ」
「どれ」
コルベールが杖を取り出し蓋に魔法をかける。すると蓋の鍵がひとりでに開き、蓋を開けることができた。
マジかよ。魔法は鍵まで開けれるのか。いや、むしろそれぐらいできないとおかしいか。これよりすごいことなんていくらでもするからな。
燃料コックの中に燃料を注ぎ込む。
「まず、きみにもらった油の成分を調べたのだ」
注ぎ込んでいると、コルベールが頼みもしないのになにやら語り始める。正直うっおとしい。
「微生物の化石から作られているようだった。それに近いものを探した。木の……」
「相棒、あれちっと自分に悦が入りすぎてねえか?」
「だが、それを補ってあまる優秀さがある。見逃してやれ」
コルベールの燃料誕生までの道のりを適当に聞き流しながら私は燃料を全て入れ終えた。
「ところでこの油はなんというのかな?」
「ああ、ガソリンですよ」
確かな。
「そうか。それじゃあ早くその風車を回してくれたまえ!わくわくして、眠気も吹っ飛んだぞ!」
「わかりました。それじゃあその風車を回してもらえますか?動かすにはまず風車が動かないといけないんですよ」
生憎、このゼロ戦にはクランクを回すための道具が無かった。なのでプロペラは手動で回すしかない。
「ふむ。これは、あの油が燃える力で動くわけではないのだな」
コルベールはなるほど、といった感じで観察しながら再び杖を取り出す。
それを確認して私は操縦桿へ乗り込むと、準備をはじめた。そんなすぐに動かせるほど単純じゃないからな。
そして全ての準備が整った。プロペラもコルベールがしっかり回している。どうせ魔法だろう。
「さてさて、うまくいっているかどうか」
「さあ?俺にはどうでもいいけど」
スロットルレバーを気持前に倒し開いてやる。すると大きな音を立てながら見事プロペラが回転し始めた。それにあわせ機体も振動する。
どうやらコルベールは完全にガソリンを作り上げたようだ。まさに天才だな。計器を確認してもどこにも異常は見当たらない。よしよし。
そして私は点火スイッチを切り、ゼロ戦から降りた。その瞬間、眼前に何かが現われる。
「おお!やった!やったぞぉ!動いたではないか!」
「ぐへぇ!?」
「ミャオ!?」
「メラミ!?」
そして物凄い勢いで抱きつかれた。猫が衝撃で肩から転げ落ち、デルフもぶっ飛ばされてしまう。
ミシミシミシミシ!非常に強い力でコルベールに抱きしめられ骨が悲鳴を上げ始める。
せ、背骨が……
「しかし、なぜ飛ばんのかね?」
コルベールは自分のその一言で気持ちが醒めたのか私を離した。背中を擦りながらコルベールから距離を取り立ち上がる。
クソッ!油断した私がバカだった!
「燃料が足りないんですよ。そうですね、樽5本分ぐらいでしょうか?」
「そんなに作らねばならんのかね!?まあ乗りかかった船だ!やろうじゃないか!とくれば、こうしちゃおれん!早く研究室へ戻って量産だ!」
コルベールはそう言うと物凄い勢いで走り去っていった。
……なんとかならないのか?あのテンション。
そう思いながらデルフと猫を拾い上げる。デルフは落下の衝撃でか、完全に鞘に収まっていた。さて、部屋に戻ろう。この短時間でなんだか妙に疲れた。
痛む背中を擦りながら私は部屋へと帰っていった。
変わったことがあるとすれば、私の所有物が増えたことぐらいだ。部屋に入れることができないほどでかい所有物だけどな。
所有物というのはもちろんタルブの村で手に入れたゼロ戦だ。置く場所も限られているため中庭に広場に置かれている。
しかし、普通こんな場所に置いておいていいのだろうか?普通なら文句を言われてもおかしくない。だというのに文句を言われることはなかった。
ルイズかコルベール、どちらかがここに置く許可を取ったのかもしれない。だとしたら許可を取ったのは後者だろう。前者がこんなことするわけが無いだろうし。
そして私は今、ゼロ戦の操縦席に座っていた。ゼロ戦の点検をするためだ。
普通そういったことはそれなりに技術を持つものでなければできないだろう。下手に弄れば故障の原因にもなりかねない。
しかし、私には『ガンダールヴ』のルーンがある。ゼロ戦は武器だ。だから触ればルーンが反応する。
操縦桿を握ったり、スイッチに触れるたび、ルーンの効果により頭の中に情報や各部の状況が流れ込んでくる。
つまり、私は武器であれば専門的な知識が無くても、故障しているかどうかを調べることができる。
本当に『ガンダールヴ』は便利だな。既に私はゼロ戦を操縦し空を飛ばすことぐらいできるほどだ。
そんなことに悦びを覚えながら私は点検を続けた。しかし、点検というのも暇だ。操縦席の中でただ弄くっているだけだからな。
そういうことだったら誰かと話しながらやれば少しは気がまぎれないか?しかも操縦席というのは密室だ。
誰かが邪魔するということは殆んど無い。たまに誰かが暫らく見るだけだ。触ることすらしない。触るのは私だけと言ってもいい。
ということはこの空間内なら大声で喋らない限り周りから気にされることはないわけだ。
なので普段持ち歩かないデルフをゼロ戦の操縦席へ持ってきたのだ。もちろん喋れる程度に抜いてある。なぜか猫も肩に乗せてるがな。
しかし、この時間帯に喋るのは久しぶりだ。
「相棒、もう一つある剣ってよ、ほら、前に相棒が使ってたやつ。あれもう使わねえの?すげえ埃被ってたぜ」
「ああ、どうしようか。別に必要ないからな。売るか」
といっても、それほど何か喋る話題があるわけでもなく、たまにどうでもいいことをちょろっと喋るぐらいなのだが。
「にしてもよ相棒、ほんとーにこれで空を飛ぶんかね?」
「ああ」
異常無し。
「ふ~ん。これが飛ぶなんて、信じられねえな。あ、でもマジで飛ぶみてえだな。わかっても信じられねえなこりゃ」
「ん?いきなり飛ぶと納得したみたいだがどうしてだ?」
ここも異常無し。
「こいつは『武器』だろ?ひっついてりゃ、大概のことはわかるよ。忘れたか?俺は一応、『伝説』なんだぜ」
「へえ」
……なぜ伝説なのだろうか?
そういえば前に『ガンダールヴ』の左腕だとか言っていたな。推測からすると、前の『ガンダールヴ』が左腕にデルフを持っていたってことか?
『ガンダールヴ』っていうのは聞く限り伝説の存在だ。だったらその『ガンダールヴ』が持っていた左腕の武器がデルフなら、確かにデルフは伝説だろう。
…………あれ?それって結構すごくないか?でも知っているのは私だけだし他人に話しても信じるわけが無いからな。自慢できることじゃない。
いや、自分だけが知っている秘密ってことでいいんじゃないか?うん、私だけが知っている秘密、いい響きだ。
それにしても本当にどこにも異常が無いな。これが『固定化』の呪文の効果か。恐ろしい。これなら科学が発展しないわけもわかるな。魔法がありゃ必要ねえもん。
まあいい。点検も終わったんださっさと降りてしまおう。
「ほら、降りるぞ」
肩に乗っかている猫に合図をし、デルフを掴む。
「お。終わったのか」
「お前には言ってない」
「ひでえ」
そんなことを聞きながら操縦桿から出、ゼロ戦から降りる。
さて、点検も終わったからな。あとは何もすることはない。正直暇を持て余す。デルフと喋り続けるか?バカな。それじゃあ変人じゃないか。
こんなときシエスタがいれば文字でも教えてもらえるんだがな。今シエスタは帰郷中だ。仕方が無い。部屋に戻って文字の復習でもしておくか。
そんな結論に達し、部屋へと足を向けたとき、何が聞こえてきた。なんだこれは?
「…………くん!ヨシカゲくん!ヨシカゲくん!」
この声は、コルベールか!どうやら私を呼んでいるらしいな。一体何事だ?
「どこかね!?ヨシカゲくん!?ヨシカゲく――ん!?」
声はさらにこちらに近づいてくる。
ええい!私を大声で呼びながらうろつくんじゃない!変な噂がたつかもしれないじゃないか!
コルベールに叫ぶのをやめさせるため、声のする方向へ足を向ける。
「相棒、モテモテだな」
「男にモテてなにが嬉しいと思うか?私に特殊な趣味は無いんだぞ」
しかし、こちらが少し進んだところでコルベールが曲がり角から姿を現した。
「ヨシカ、おお!ヨシカゲくん!捜していたぞ!」
コルベールがこちらに狙いを定めたかのように歩みを進めてくる。その両手にはワインの壜が握られている。
「ヨシカゲくん!ヨシカゲくん!できたぞ!できた!調合できたぞ!」
「本当です……!?」
そこまで言いかけて気がついた。このコルベールは今どの程度なんだ!?エンジンを見せたとき位か?それともついこの間ゼロ戦を見たとき位なのか?
「どうしたのかね?そんな脅えた顔をして」
「え?」
ふ……つう?普通の状態なのか?
「まあいい。それよりほら、見たまえ!ちゃんとできているだろう!?」
そう言ってコルベールが私の眼前にワインの壜を突きつけてくる。ワインの壜の中には確かに茶褐色の液体が存在していた。燃料と同じ色だ。そして臭いも燃料と同じ臭い。
驚いた……まさかこんな短期間で作り上げるなんて。
「ええ、見た目、臭い、共に完璧じゃないですか」
「そうだろう!そうだろう!では早速使えるかどうか試してみてはくれんかね!?」
「もちろんです」
早速燃料を入れようと、風防の前にある燃料コックの蓋を開こうとする。しかし、開かない。どうやら鍵がかかっているらしい。
「どうかしたのかね?」
「ええ、どうやら鍵がかかっているようで、開かないんですよ」
「どれ」
コルベールが杖を取り出し蓋に魔法をかける。すると蓋の鍵がひとりでに開き、蓋を開けることができた。
マジかよ。魔法は鍵まで開けれるのか。いや、むしろそれぐらいできないとおかしいか。これよりすごいことなんていくらでもするからな。
燃料コックの中に燃料を注ぎ込む。
「まず、きみにもらった油の成分を調べたのだ」
注ぎ込んでいると、コルベールが頼みもしないのになにやら語り始める。正直うっおとしい。
「微生物の化石から作られているようだった。それに近いものを探した。木の……」
「相棒、あれちっと自分に悦が入りすぎてねえか?」
「だが、それを補ってあまる優秀さがある。見逃してやれ」
コルベールの燃料誕生までの道のりを適当に聞き流しながら私は燃料を全て入れ終えた。
「ところでこの油はなんというのかな?」
「ああ、ガソリンですよ」
確かな。
「そうか。それじゃあ早くその風車を回してくれたまえ!わくわくして、眠気も吹っ飛んだぞ!」
「わかりました。それじゃあその風車を回してもらえますか?動かすにはまず風車が動かないといけないんですよ」
生憎、このゼロ戦にはクランクを回すための道具が無かった。なのでプロペラは手動で回すしかない。
「ふむ。これは、あの油が燃える力で動くわけではないのだな」
コルベールはなるほど、といった感じで観察しながら再び杖を取り出す。
それを確認して私は操縦桿へ乗り込むと、準備をはじめた。そんなすぐに動かせるほど単純じゃないからな。
そして全ての準備が整った。プロペラもコルベールがしっかり回している。どうせ魔法だろう。
「さてさて、うまくいっているかどうか」
「さあ?俺にはどうでもいいけど」
スロットルレバーを気持前に倒し開いてやる。すると大きな音を立てながら見事プロペラが回転し始めた。それにあわせ機体も振動する。
どうやらコルベールは完全にガソリンを作り上げたようだ。まさに天才だな。計器を確認してもどこにも異常は見当たらない。よしよし。
そして私は点火スイッチを切り、ゼロ戦から降りた。その瞬間、眼前に何かが現われる。
「おお!やった!やったぞぉ!動いたではないか!」
「ぐへぇ!?」
「ミャオ!?」
「メラミ!?」
そして物凄い勢いで抱きつかれた。猫が衝撃で肩から転げ落ち、デルフもぶっ飛ばされてしまう。
ミシミシミシミシ!非常に強い力でコルベールに抱きしめられ骨が悲鳴を上げ始める。
せ、背骨が……
「しかし、なぜ飛ばんのかね?」
コルベールは自分のその一言で気持ちが醒めたのか私を離した。背中を擦りながらコルベールから距離を取り立ち上がる。
クソッ!油断した私がバカだった!
「燃料が足りないんですよ。そうですね、樽5本分ぐらいでしょうか?」
「そんなに作らねばならんのかね!?まあ乗りかかった船だ!やろうじゃないか!とくれば、こうしちゃおれん!早く研究室へ戻って量産だ!」
コルベールはそう言うと物凄い勢いで走り去っていった。
……なんとかならないのか?あのテンション。
そう思いながらデルフと猫を拾い上げる。デルフは落下の衝撃でか、完全に鞘に収まっていた。さて、部屋に戻ろう。この短時間でなんだか妙に疲れた。
痛む背中を擦りながら私は部屋へと帰っていった。