今、城下町では王女アンリエッタが大変な人気を集めている。いや、もはや王女ではなく女王アンリエッタだったな。
なぜ女王が人気を集めているのか?それはこの前の戦いで数で勝るアルビオン軍を打ち破ったからだという。そのおかげで『聖女』と崇めたてられるほどだ。
アンリエッタは女王となったため、当然のごとくゲルマニア皇帝との婚約は解消された。だからといって同盟も解消されるわけではないらしい。
何故かはよく聞いてないので知らないが、私には特に関係のないことだろう。さて、なぜ今こんなことを考えているのか、それはこれから聖女アンリエッタに会うからだ。
今朝、アンリエッタからの使者が私たち(正確に言えばルイズ)のもとへやってきた。用件は不明。ただアンリエッタが呼んでいる、とだけしかわからない。
そしてルイズがこれを断るはずも無く、私たち(もちろんデルフは連れて行く)は用意してあった馬車に乗って王宮にやってきたのだ。
やれやれ、今日もシエスタに文字を教えてもらう予定だったのにこんなことになるとは。シエスタにこのことを言う暇も無かったな。帰ったら一応謝っておこう。
一言謝ればシエスタはどうせ許してくれるに違いない。……多分だけどな。
それにしても一体どんな用件なのだろうか?やはり『虚無』のことだろうか?というかそれ以外に考えられない。きっとルイズもそう思っていることだろう。
使者に案内され王宮を歩いていると、やがてある部屋の前に到着した。扉の前には護衛のような人間が控えている。きっとここにアンリエッタがいるのだろう。
「陛下。お越しになられました」
「通して」
控えていた人間が部屋の扉を開く。開かれた扉の先には、アルビオンに行く原因を作ったアンリエッタがいた。当然といえば当然だが。
ルイズは一歩部屋に入り恭しく頭を下げる。私もそれに習い、帽子を外し頭を下げる。下げなかったらルイズに色々言われそうだからな。
「ルイズ、ああ、ルイズ!」
アンリエッタは嬉しそうな声を上げながら、ルイズに駆け寄りそのままルイズを抱きしめる。抱きしめられたルイズは頭を下げたままだ。
なので私も頭を下げ続ける。
「姫さま……、いえ、もう陛下とお呼びせねばいけませんね」
「そのような他人行儀を申したら、承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。あなたはわたくしから、最愛のおともだちを取り上げてしまうつもりなの?」
その言葉にルイズは顔を上げホッと一息ついたような顔でアンリエッタを見詰める。私も頭を上げる。さすがに帽子は被らない。
「ならばいつものように、姫さまとお呼びいたしますわ」
「そうしてちょうだい。ああルイズ、女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍。窮屈は三倍。そして気苦労は十倍よ」
アンリエッタは心底つまらなそうにそう呟いた。やれやれだ。王族ならそれを耐え切れ。それが義務なんだから。
それに最愛のおともだちなら、わざわざおともだちを死地に行かせるようなことはしないでほしい。死に掛けたんだぞ。私が。
「このたびの戦勝のお祝いを、言上させてくださいまし」
暫らくの沈黙ののち、ルイズはアンリエッタ向かってそんなことを言った。女王が何も話さないので、一応当たり障りのない話題を振ってみたのだろう。
この話題にアンリエッタは意外な反応を見せた。ルイズの手を握ったのだ。そして、この勝利はルイズのおかげだと言い切った。
ルイズはハッとした表情でアンリエッタを見つめ、私は何の反応も示さなかった。どうせバレるのはわかっていたんだから驚く必要も無い。
「わたくしに隠し事はしなくても結構よ。ルイズ」
ルイズはアンリエッタにそう言われながらもまだとぼけようとしたが、アンリエッタが渡した羊皮紙を見て観念した。羊皮紙には調査報告が書いてあるのだろう。
そんなことを思いながら二人を見つめていたが、不意にアンリエッタがこちらを向いてきたので少し動揺する。もちろん表には出さない。一体私に何の用があるのだろうか?
「異国の飛行機械を操り、敵の竜騎士隊を誘導し撃滅したとか。厚く御礼申し上げますわ」
「身に余る光栄です」
アンリエッタの言葉に頭を下げる。だが、竜騎士隊を撃滅ってのは過剰だな。6騎しか殺してないのに。それに礼を言うより報酬をくれたほうが嬉しい。できれば現金だ。
なぜ女王が人気を集めているのか?それはこの前の戦いで数で勝るアルビオン軍を打ち破ったからだという。そのおかげで『聖女』と崇めたてられるほどだ。
アンリエッタは女王となったため、当然のごとくゲルマニア皇帝との婚約は解消された。だからといって同盟も解消されるわけではないらしい。
何故かはよく聞いてないので知らないが、私には特に関係のないことだろう。さて、なぜ今こんなことを考えているのか、それはこれから聖女アンリエッタに会うからだ。
今朝、アンリエッタからの使者が私たち(正確に言えばルイズ)のもとへやってきた。用件は不明。ただアンリエッタが呼んでいる、とだけしかわからない。
そしてルイズがこれを断るはずも無く、私たち(もちろんデルフは連れて行く)は用意してあった馬車に乗って王宮にやってきたのだ。
やれやれ、今日もシエスタに文字を教えてもらう予定だったのにこんなことになるとは。シエスタにこのことを言う暇も無かったな。帰ったら一応謝っておこう。
一言謝ればシエスタはどうせ許してくれるに違いない。……多分だけどな。
それにしても一体どんな用件なのだろうか?やはり『虚無』のことだろうか?というかそれ以外に考えられない。きっとルイズもそう思っていることだろう。
使者に案内され王宮を歩いていると、やがてある部屋の前に到着した。扉の前には護衛のような人間が控えている。きっとここにアンリエッタがいるのだろう。
「陛下。お越しになられました」
「通して」
控えていた人間が部屋の扉を開く。開かれた扉の先には、アルビオンに行く原因を作ったアンリエッタがいた。当然といえば当然だが。
ルイズは一歩部屋に入り恭しく頭を下げる。私もそれに習い、帽子を外し頭を下げる。下げなかったらルイズに色々言われそうだからな。
「ルイズ、ああ、ルイズ!」
アンリエッタは嬉しそうな声を上げながら、ルイズに駆け寄りそのままルイズを抱きしめる。抱きしめられたルイズは頭を下げたままだ。
なので私も頭を下げ続ける。
「姫さま……、いえ、もう陛下とお呼びせねばいけませんね」
「そのような他人行儀を申したら、承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。あなたはわたくしから、最愛のおともだちを取り上げてしまうつもりなの?」
その言葉にルイズは顔を上げホッと一息ついたような顔でアンリエッタを見詰める。私も頭を上げる。さすがに帽子は被らない。
「ならばいつものように、姫さまとお呼びいたしますわ」
「そうしてちょうだい。ああルイズ、女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍。窮屈は三倍。そして気苦労は十倍よ」
アンリエッタは心底つまらなそうにそう呟いた。やれやれだ。王族ならそれを耐え切れ。それが義務なんだから。
それに最愛のおともだちなら、わざわざおともだちを死地に行かせるようなことはしないでほしい。死に掛けたんだぞ。私が。
「このたびの戦勝のお祝いを、言上させてくださいまし」
暫らくの沈黙ののち、ルイズはアンリエッタ向かってそんなことを言った。女王が何も話さないので、一応当たり障りのない話題を振ってみたのだろう。
この話題にアンリエッタは意外な反応を見せた。ルイズの手を握ったのだ。そして、この勝利はルイズのおかげだと言い切った。
ルイズはハッとした表情でアンリエッタを見つめ、私は何の反応も示さなかった。どうせバレるのはわかっていたんだから驚く必要も無い。
「わたくしに隠し事はしなくても結構よ。ルイズ」
ルイズはアンリエッタにそう言われながらもまだとぼけようとしたが、アンリエッタが渡した羊皮紙を見て観念した。羊皮紙には調査報告が書いてあるのだろう。
そんなことを思いながら二人を見つめていたが、不意にアンリエッタがこちらを向いてきたので少し動揺する。もちろん表には出さない。一体私に何の用があるのだろうか?
「異国の飛行機械を操り、敵の竜騎士隊を誘導し撃滅したとか。厚く御礼申し上げますわ」
「身に余る光栄です」
アンリエッタの言葉に頭を下げる。だが、竜騎士隊を撃滅ってのは過剰だな。6騎しか殺してないのに。それに礼を言うより報酬をくれたほうが嬉しい。できれば現金だ。
「あなたは救国の英雄ですわ。できたらあなたを貴族にしてさしあげたいぐらいだけど……。あなたに爵位をさずけるわけには参りませんの」
「当然ですわ。使い魔を貴族にするだなんて」
五月蠅い。化け物は黙ってろ。しかし爵位か。できるものならほしいものだ。そうすればルイズのもとにいなくてもいい暮らしができる。
ルイズを殺した場合のデメリットが一つ減るわけだ。
その後、アンリエッタは私たちを褒め称えた。ルイズは小国を与えられ大公の位を授けてもいいくらいだとかなんとか。
正直よくわからないが、すげえ地位を与えてもいいことらしいな。そんなことを言われルイズは恐縮した様子で謙遜するが、
「あの光はあなたなのでしょう?ルイズ。城下では奇跡の光だ、など噂されておりますが、わたくしは奇跡など信じませぬ。
あの光が膨れ上がった場所に、あなたたちが乗った飛行機械は飛んでいた。あれはあなたなのでしょう?」
そんなふうに言ってくるのだ。否定する暇すら与えないとはこのことだな。
ルイズはさすがにもう否定するのは無駄だと諦めたのだろう。始祖の祈祷書のことを、『虚無』のことを、あの空で起こったことを話し始めた。
その話を聞くとアンリエッタは、こんなことを話し始めた。始祖ブリミルは三人の子に王家を作らせ、それぞれに指輪と秘宝を遺したという。
そしてトリステインに伝わるのが『水』のルビーと始祖の祈祷書らしいのだ。これだけ聞くと、アンリエッタはかなりありえないことをしたんじゃないか?
王家に代々伝わるものを簡単に人にあげたんだぜ?しかも『水』のルビーは売り払ってもいいとか言っていたはずだ。
無計画なのか、それとも迷信と思って信じてなかったのか。多分両方かもな。
それと、もう一つ驚くべきことがわかった。始祖の力、つまり『虚無』は王家にあらわれると、王家の間では言い伝えられてきたらしい。
つまり、『虚無』を使えるルイズは王家の血を引いてるってことだ。それはアンリエッタの口からもはっきりと明言された。
ラ・ヴァリエール公爵家の祖は、王の庶子。なればこその公爵家だってな。いやいや、本気で驚いたね。
身分が高いとは思っていたがまさか王家の血を引いているとは。そうなると殺した後は私が考えている以上に追及されるよな。絶対に。
ルイズはルイズで自分が王家の血なんて引いていないと思っていたらしく、結構驚いていた。
「では……、間違いなくわたしは『虚無』の担い手なのですか?」
「そう考えるのが、正しいようね。これであなたに、勲章や恩賞を授けることができなくなった理由はわかるわね?ルイズ」
確かに、もしルイズに恩賞を与えればルイズの功績は白日の下に晒されるだろう。それは『虚無』が白日に晒されるのと同じだ。
『虚無』の力欲しさにルイズは様々な輩に狙われるに違いない。
「ルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。これはわたくしと、あなたとの秘密よ」
それが妥当だろうな。というか二度と使うなくらいは言ってほしい。ルイズもアンリエッタの言葉ならきちんと聞いて以後使わなくなるだろうからな。
そしたら私は万々歳だ。恐怖が完全に拭い去られるわけではないが、随分と減ること間違いない。
アンリエッタの言葉にルイズはなにやら考えているような態度で口を噤んでいた。しかし、何かを決めたような表情をするとルイズがゆっくりと口を開き始める。
それはアンリエッタに『虚無』を捧げたいというものだった。それに対してのアンリエッタの答えは、
「いえ……、いいのです。あなたはその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」
というものだった。私の言ってほしいことをずばりと言ってくれたから、このときばかりは女王を見直したね。このときだけだけどな。
しかしルイズは、この力はアンリエッタを助けるために神様が授けてくれたものだとか言って聞きやしない。
さらに自分がいかに『虚無』をアンリエッタに捧げたいかを力説までし始めた。そして『虚無』を受け取ってくれないなら杖をアンリエッタに返すという。
『虚無』を捧げられることを拒否していたアンリエッタだが、そんなことを言われて心打たれたらしく、二人はお互いを抱きしめあった。つまり受け取るということだ。
「これからも、わたくしの力になってくれるというのねルイズ」
「当然ですわ、姫さま」
どうやら三文芝居はこれで終わりらしい。
「当然ですわ。使い魔を貴族にするだなんて」
五月蠅い。化け物は黙ってろ。しかし爵位か。できるものならほしいものだ。そうすればルイズのもとにいなくてもいい暮らしができる。
ルイズを殺した場合のデメリットが一つ減るわけだ。
その後、アンリエッタは私たちを褒め称えた。ルイズは小国を与えられ大公の位を授けてもいいくらいだとかなんとか。
正直よくわからないが、すげえ地位を与えてもいいことらしいな。そんなことを言われルイズは恐縮した様子で謙遜するが、
「あの光はあなたなのでしょう?ルイズ。城下では奇跡の光だ、など噂されておりますが、わたくしは奇跡など信じませぬ。
あの光が膨れ上がった場所に、あなたたちが乗った飛行機械は飛んでいた。あれはあなたなのでしょう?」
そんなふうに言ってくるのだ。否定する暇すら与えないとはこのことだな。
ルイズはさすがにもう否定するのは無駄だと諦めたのだろう。始祖の祈祷書のことを、『虚無』のことを、あの空で起こったことを話し始めた。
その話を聞くとアンリエッタは、こんなことを話し始めた。始祖ブリミルは三人の子に王家を作らせ、それぞれに指輪と秘宝を遺したという。
そしてトリステインに伝わるのが『水』のルビーと始祖の祈祷書らしいのだ。これだけ聞くと、アンリエッタはかなりありえないことをしたんじゃないか?
王家に代々伝わるものを簡単に人にあげたんだぜ?しかも『水』のルビーは売り払ってもいいとか言っていたはずだ。
無計画なのか、それとも迷信と思って信じてなかったのか。多分両方かもな。
それと、もう一つ驚くべきことがわかった。始祖の力、つまり『虚無』は王家にあらわれると、王家の間では言い伝えられてきたらしい。
つまり、『虚無』を使えるルイズは王家の血を引いてるってことだ。それはアンリエッタの口からもはっきりと明言された。
ラ・ヴァリエール公爵家の祖は、王の庶子。なればこその公爵家だってな。いやいや、本気で驚いたね。
身分が高いとは思っていたがまさか王家の血を引いているとは。そうなると殺した後は私が考えている以上に追及されるよな。絶対に。
ルイズはルイズで自分が王家の血なんて引いていないと思っていたらしく、結構驚いていた。
「では……、間違いなくわたしは『虚無』の担い手なのですか?」
「そう考えるのが、正しいようね。これであなたに、勲章や恩賞を授けることができなくなった理由はわかるわね?ルイズ」
確かに、もしルイズに恩賞を与えればルイズの功績は白日の下に晒されるだろう。それは『虚無』が白日に晒されるのと同じだ。
『虚無』の力欲しさにルイズは様々な輩に狙われるに違いない。
「ルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。これはわたくしと、あなたとの秘密よ」
それが妥当だろうな。というか二度と使うなくらいは言ってほしい。ルイズもアンリエッタの言葉ならきちんと聞いて以後使わなくなるだろうからな。
そしたら私は万々歳だ。恐怖が完全に拭い去られるわけではないが、随分と減ること間違いない。
アンリエッタの言葉にルイズはなにやら考えているような態度で口を噤んでいた。しかし、何かを決めたような表情をするとルイズがゆっくりと口を開き始める。
それはアンリエッタに『虚無』を捧げたいというものだった。それに対してのアンリエッタの答えは、
「いえ……、いいのです。あなたはその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」
というものだった。私の言ってほしいことをずばりと言ってくれたから、このときばかりは女王を見直したね。このときだけだけどな。
しかしルイズは、この力はアンリエッタを助けるために神様が授けてくれたものだとか言って聞きやしない。
さらに自分がいかに『虚無』をアンリエッタに捧げたいかを力説までし始めた。そして『虚無』を受け取ってくれないなら杖をアンリエッタに返すという。
『虚無』を捧げられることを拒否していたアンリエッタだが、そんなことを言われて心打たれたらしく、二人はお互いを抱きしめあった。つまり受け取るということだ。
「これからも、わたくしの力になってくれるというのねルイズ」
「当然ですわ、姫さま」
どうやら三文芝居はこれで終わりらしい。
「ならば、あの『始祖の祈祷書』はあなたに授けましょう。しかしルイズ、これだけは約束して。決して『虚無』の使い手ということを、口外しませんように。
また、みだりに使用してはなりません」
「かしこまりました」
私的には、わたくしが使ってもいいと言うまで使うな、くらい言ってほしいんだがな。
そんなみだりに使用するなと言っても、ルイズなら感情に任せて周りを気にせず使いかねん。結局、私の恐怖心はこのままというわけだ。
「これから、あなたはわたくし直属の女官ということに致します」
アンリエッタはルイズにそう言うと、羊皮紙になにやら書き花押をつける。
それはアンリエッタ曰く、王宮を含む国内外へのあらゆる場所への通行、警察権を含む公的機関の使用を認めた正式な許可証らしい。
その許可証がルイズに手渡される。ルイズはこれで『虚無』という力だけでなく、強大な権力まで手に入れたことになる。どれだけ力をつけるのだろうか?
化け物がこれ以上の化け物になるのかと思うと憂鬱になりそうだ。これ以上調子付かなきゃいいんだが……
「あなたにしか解決できない事件がもちあがったら、必ずや相談いたします。表向きは、これまでどおり魔法学院の生徒としてふるまってちょうだい。
まあ言わずともあなたなら、きっとうまくやってくれるわね」
アンリエッタはルイズのそう語りかけると、また私の方へ向き直る。今度はなんだ?褒めるなら報酬で示してほしい。
アンリエッタは体中のポケットを探り始め宝石や金貨を取り出した。そして私に近づいてくると私の帽子にそれらを入れてくる。
……マジかよ。
「これからもルイズを…・・・、わたくしの大事なおともだちをよろしくお願いしますわね。使い魔さん」
マジ?これマジィ!?本物か!?本物だよな!?これって俺にくれるってことだよな!?マジで報酬をくれるのか!?
帽子に入れられた宝石や金貨をマジマジと見つめる。
「え、これ……、私に、ですか?」
「ええ。是非受け取ってくださいな。ほんとうならあなたを『シュヴァリエ』に叙さねばならぬのに、それが適わぬ無力な女王のせめてもの感謝の気持ちです。
あなたはわたくしと祖国に忠誠を示してくださいました。報いるところがなければなりませぬ」
別に忠誠なんてしてないし、ここは祖国でもない。さんざん巻き込まれた結果、ここいるだけだ。だがそんなものはどうでもいい。
今注目するべきものはこの金貨と宝石だ。俺の、俺だけの金!俺が自由に好き勝手できる金だ!まさか化け物といることでこんな恩恵があるとは思っても見なかったぞ!
いや、働いたら報酬があるってのは当然なんだけどな。幽霊だって報酬がもらえるんだから。
「ありがたく受け取らせてもらいます」
アンリエッタに頭を下げ、一応感謝の意を表しておく。このほうが好感がいいだろう。また感謝の気持ちがほしいからな。なるべく好印象になるように心掛けなければ。
そして私とルイズはアンリエッタに別れを告げ王宮を出た。……帰りの馬車は用意されていなかった。
また、みだりに使用してはなりません」
「かしこまりました」
私的には、わたくしが使ってもいいと言うまで使うな、くらい言ってほしいんだがな。
そんなみだりに使用するなと言っても、ルイズなら感情に任せて周りを気にせず使いかねん。結局、私の恐怖心はこのままというわけだ。
「これから、あなたはわたくし直属の女官ということに致します」
アンリエッタはルイズにそう言うと、羊皮紙になにやら書き花押をつける。
それはアンリエッタ曰く、王宮を含む国内外へのあらゆる場所への通行、警察権を含む公的機関の使用を認めた正式な許可証らしい。
その許可証がルイズに手渡される。ルイズはこれで『虚無』という力だけでなく、強大な権力まで手に入れたことになる。どれだけ力をつけるのだろうか?
化け物がこれ以上の化け物になるのかと思うと憂鬱になりそうだ。これ以上調子付かなきゃいいんだが……
「あなたにしか解決できない事件がもちあがったら、必ずや相談いたします。表向きは、これまでどおり魔法学院の生徒としてふるまってちょうだい。
まあ言わずともあなたなら、きっとうまくやってくれるわね」
アンリエッタはルイズのそう語りかけると、また私の方へ向き直る。今度はなんだ?褒めるなら報酬で示してほしい。
アンリエッタは体中のポケットを探り始め宝石や金貨を取り出した。そして私に近づいてくると私の帽子にそれらを入れてくる。
……マジかよ。
「これからもルイズを…・・・、わたくしの大事なおともだちをよろしくお願いしますわね。使い魔さん」
マジ?これマジィ!?本物か!?本物だよな!?これって俺にくれるってことだよな!?マジで報酬をくれるのか!?
帽子に入れられた宝石や金貨をマジマジと見つめる。
「え、これ……、私に、ですか?」
「ええ。是非受け取ってくださいな。ほんとうならあなたを『シュヴァリエ』に叙さねばならぬのに、それが適わぬ無力な女王のせめてもの感謝の気持ちです。
あなたはわたくしと祖国に忠誠を示してくださいました。報いるところがなければなりませぬ」
別に忠誠なんてしてないし、ここは祖国でもない。さんざん巻き込まれた結果、ここいるだけだ。だがそんなものはどうでもいい。
今注目するべきものはこの金貨と宝石だ。俺の、俺だけの金!俺が自由に好き勝手できる金だ!まさか化け物といることでこんな恩恵があるとは思っても見なかったぞ!
いや、働いたら報酬があるってのは当然なんだけどな。幽霊だって報酬がもらえるんだから。
「ありがたく受け取らせてもらいます」
アンリエッタに頭を下げ、一応感謝の意を表しておく。このほうが好感がいいだろう。また感謝の気持ちがほしいからな。なるべく好印象になるように心掛けなければ。
そして私とルイズはアンリエッタに別れを告げ王宮を出た。……帰りの馬車は用意されていなかった。