ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

風と虚無の使い魔-2

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「…で、俺はなにをすればいいんだ?」
あぐらをかく使い魔。

生徒たちが好き勝手な方向にクモの子を散らすように逃げ去っていった中、
歩いて少女の使い魔の部屋に到着したワムウと少女。

ワムウは、部屋に向かうまで真昼間であるはずの今、遮蔽物もなしに歩けることを不思議に思った。
しかし、それ以上に不思議に思ったのはッ!

(月がッ!月が2つあるッ!…どういうことだ?太陽の光も少し体の調子を下げる程度で十分に動ける…
長い間直射を浴びていればダメージを受けるだろうが…風のプロテクターを使うよりもスタミナは安上がりだな……
だが、油断はできんな…シーザーのやったように、鏡などで太陽の光を集中させれば、十分致命傷になりうる…
天敵である波紋使いが今のところ見当たらん…そのためにも唯一の『天敵』である太陽光…もっとも違う世界であるようだし
太陽とは呼ばないのかもしれないが…太陽光には十分気をつけなければいけないな…)


「さっきも言ったように…使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるはずなんだけど…なにも見えないし聞こえないわね……
次に使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。たとえば秘薬とかね。あんたどこの田舎に居たかしらないけど亜人なんだから
そういうの詳しくないの?」
「そもそもここはどこだ?それすらわかっていない…魔法学校などと言っていたな、ここはスイスではないのか?」
「スイス?そんなところ聞いたことないわ。トリステイン魔法学院くらいは知ってるわよね?」
「そもそも魔法自体俺は知らん。俺の知らない土地で人間は二〇〇〇年の間にそこまで成長していたのか?
……ああ、ここは違う世界だったな、まあ似たようなものだろう。」

一呼吸空く。

「あ、あんた?なに言ってるの?違う世界から来て、しかも二〇〇〇年前から生きてるなんて言わないわよね?」
「正確には二〇〇〇年前から眠っていたというところか。念のために聞いておくがここは『地球』という言葉を知らないよな?
もしくは『Tellus』『Earth』…それに似たような言葉でも構わん。」
「チキュウ?それがあんたのいた国?聞いたことないわね。大体二〇〇〇年間寝てて、ご飯とかどうしてたのよ?他にもいろいろ
生きてく上で必要あることあるでしょ?さすがに私でもそんな嘘にひっかからないわよ。」
「石と同化して二〇〇〇年間眠っていた。食料も二〇〇〇年程度いらん…が、こちらに来てなにも食べていないな。
お前ををまず食ってみようか?」

しばしの沈黙。

「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」

大声で悲鳴をあげる。
窓を思いっきりあけ逃げようとする少女。

「冗談だ、それほど騒ぐな」
「冗談って、あ、あんた二〇〇〇年眠ってたってのも?」
「それは本当だ。人間を食うこともな」

「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」
二度目の悲鳴。先ほどの悲鳴より強いようだ。

「ルイズッ!うるさいわよッ!」
悲鳴を聞きつけたのか、赤髪のグラマーな女性が彼女の部屋に怒鳴り込んでくる。

「ひとりで逃げるのよキュルケ。あんたを逃がすのは私であり……そこのサラマンダーであり、あたしの魔法 爆発…
生きのびるのよ あんたは『希望』!来いッ!ワムウ!」
「あ、あんた、何を言ってるのよ…脳みそがクソになったの?」
「……なにを勘違いしているんだ。お前の使い魔になったといっただろう。起きている間でも二〇〇〇年やそこら人間を食わなくても済む。
他の…人間どもの一般的な食事があればな」
「な、なんだ……じゃあやっぱり私の使い魔で私を食べたりはしないのね」
「うむ。少なくともお前はとりあえずしばらくの間は食わないし、食う価値も今のところはなさそうだ」

「やっぱ逃げてええええキュルケェえええええッ!」

もう既に赤髪の女は居なかった。

 * * *

「先ほどの女はなんだ?そういえばお前の名前も聞いていなかったが。ルイズというのはわかったがな」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、由緒正しきヴァリエール家の三女よ」
「さっきの女、キュルケとやらは?」
「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。忌々しきツェルプストー家の尻軽女よ。
ああ、憎たらしい!あんな女逃がそうとなんかしなきゃよかったわ。とっくのとうにいなくなってるしね……」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。

「ツェルプストー家になにか因縁でもあるのか?」
「数え切れないほどあるわよ!キュルケのひいひいひいひいおじいさんのツェプルストーはわたしのひいひいひいおじいさんの恋人を
奪ったのよ!今から二百年前に!それから、わたしのひいひいおじいさんは……」
「人間どものつまらん話など聞く必要はない。それより飯だ。まさか使い魔にはないとは言わないよな?」

先ほどの『食料は人間』という話を思い出す。
顔が青ざめていき、高ぶっていた心は一気に冷めていった。
彼女の口の動力機関はぴたっと止まった。

「え、ええ。食堂はこっちよ。」
(数段ランク落ちたものを食べさせて威厳を見せつけようと思っていたのに、こんなんじゃそんなものあげるにあげられないじゃないッ!
はあ、私なにを呼び出しちゃったのかしら……い、いえ!ポジティブに考えるのよ!『ゼロ』だってバカにしてた奴らを追い払うくらいの…)

「どうした、行くんじゃないのか?」
ワムウに声をかけられ、思考は中断する。

「ひゃっ、……は、はい。」

寮の出口へ2人は歩き出した。

 * * *

「うーむ、なんじゃあの使い魔は。あんなパワーを持った亜人みたことないぞい……多少鈍っているとはいえ、コルベール君、君が
本気を出して放ったファイヤーボールを片手で止めるとは……」

老人がいすの上で唸る。

「しかも、現状を一瞬で理解したことから、私たち以上といっても過言ではない判断力を持っているといっていいでしょう……
特に……戦闘の際の判断力は、私が見てきた軍人たちの中から探してもあれほどの人間は居ませんでした。」

髪の薄い男性も唸る。

「で、君が調べたあのルーンは間違いないのかね?」
「はい、私も何度も確かめましたが間違いないでしょう。喜ぶべきなのか困るべきなのか……」
「やれやれ、よりにもよって伝説の使い魔ガンダールヴとはな…」

老人はため息をつく。

「やれやれ、ミス・ヴァリエールもやっかいな者を呼び出したようじゃわい…」

外からノック音が聞こえる。
息を切らした様子の緑色の髪の女性が入ってくる。

「ミス・ロングビル、そんなに慌てていてどうしたんじゃ?そんなんだから婚期を逃すんじゃよ」
「婚期は関係ありません!そんなことより、ヴェストリの広場で決闘がおきて大騒ぎになっています!
止めに入った教師たちも、生徒たちに邪魔されて、止めるに止められないようです」
「なんじゃ、そんなことか暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」
「一人はギーシュ・ド・グラモン」
「あのグラモンのところのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。
おおかた女の子のとりあいじゃろう。相手は誰じゃ?」

「そ、それが……ミス・ヴァリエールの使い魔です…」

老人は二回目のため息をついた。
「やれやれ、今日は厄日かのう……」

 * * *

数十分前の食堂。
ややにぎわっており、生徒たちであふれている。給仕たちや料理人たちもいそがしそうである。

そこに入っていったルイズとワムウ。
教室での騒ぎを知らない者の一部は好奇の目を向け、知っている者はそそくさと立ち去る、ルイズが座る席から離れる、気づかない振りをするなど
多種多様だが、多くは友人たちとの会話や食事を続けている。

ルイズ達が席について少し経つと料理が二人の前に運ばれてくる。
運んできたメイドは、ワムウの顔に少しおびえたのか、目の前に立った瞬間怯んだものの、何事もなかったかのように仕事を再開した。

「なあ、ギーシュ、お前、今誰とつきあってるんだよ!」
「誰が恋人なんだギーシュ!」

気障な少年が数人の友人に囲まれて話をしていた。
「つきあう?僕にそのような特定の女性は居ないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」
今日も絶好調、気障なセリフが全快だッ!

友人の一人がギーシュのポケットの中のふくらみに気が付く。
「なあギーシュ、お前のポケットに入ってるものはなんだ?見せてみろよ」
「や、こ、これはだめだって!」
「いいじゃねえか。見られて困るものじゃないだろ?困るならなにか教えろよ」
「そ、それは……」

友人たちに迫られて後ずさりする。
ギーシュには幸運が二つあった!
友人が迫るスピードが遅かったために彼の影を踏むときにギリギリまで彼から遠くに居たこと!
そして!
幸いにも回し蹴りが下半身に行ったこと!

そのどちらの幸運がなかったとしても彼の人生は老化して首の骨を折られる以上の悲しい死因だったであろう。しかし彼はその大きな幸運より
目先の不運を恨んだのだった。

「うわらばッ!」
容器が割れる甲高い音と、彼の断末魔に似た声がする。


「な、なにしてるのよワムウ!」
「すまんな、坊主。俺は影に入られるのが嫌いでな。反射的に攻撃してしまった。まあ生きているようだし次からは気をつけるんだな。」

「お、おいギーシュ、大丈夫か?」
「なにか割れた音がしたけど……あれは!」
「モンモンラシーの香水の入った小壜じゃないか!割れてるけど」
「そうか、ギーシュはモンモンラシーとつきあってたんだな!」

「ああああああ!モンモンラシーからのプレゼントがあああッ!」

その嘆きを無視し食堂を出ようとするワムウに少年、ギーシュは叫び声を突きつける。

「お前!貴族になにをしたかわかっているのかッ!そして、お前が割ったのは僕の最愛の人モンモンラシーからのプレゼント!
謝罪ではすまないぞ!」

「ふむ、ではなにをすればいいんだね?」
ワムウが振り向きギーシュを見据える。


「決闘!それがグラモン家の流儀ィイイイイッ!ヴェストリの広場に来やがれッ!」

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\  TO BE CONTINUED .. | |_| |_|
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