「オールド・オスマン。食堂で生徒が騒いでいまして、
何事かと思い見てまいりましたら・・・・『彼』が、騒ぎを起こしています。」
「ほう、あのカメレオン君も、やっと人の目に映るようになったんじゃの。」
「真面目に聞いてください!大騒ぎなんですよ!」
何事かと思い見てまいりましたら・・・・『彼』が、騒ぎを起こしています。」
「ほう、あのカメレオン君も、やっと人の目に映るようになったんじゃの。」
「真面目に聞いてください!大騒ぎなんですよ!」
コルベールが血相を変えて、一冊の古書を差し出し『ガンダールヴです!』と部屋に飛び込んできたのはつい昨日の事だ。
なんでも、彼(ミス・ヴァリエールが彼を見なかったかと、散々聞いて回っていたので覚えてしまった。イルーゾォという変わった名だ。)
の左手に現れたルーンが、始祖ブリミルの伝説の使い魔、『ガンダールヴ』と同じものだというのだ。
「ガンダールヴが透明になれるという記述は何処にもないようじゃの」というと、やはりふざけないで下さいと突っぱねられた。
なんでも、彼(ミス・ヴァリエールが彼を見なかったかと、散々聞いて回っていたので覚えてしまった。イルーゾォという変わった名だ。)
の左手に現れたルーンが、始祖ブリミルの伝説の使い魔、『ガンダールヴ』と同じものだというのだ。
「ガンダールヴが透明になれるという記述は何処にもないようじゃの」というと、やはりふざけないで下さいと突っぱねられた。
「ミスタ・コルベールの言うように強力な使い魔なら、ミスタ・グラモンが危険ではないでしょうか?
『眠りの鐘』の使用許可申請も出ていますし・・・・」
「何、彼だってドットといえどメイジなのじゃ。そう一方的に負けはすまい。それに」
「それに?」
『眠りの鐘』の使用許可申請も出ていますし・・・・」
「何、彼だってドットといえどメイジなのじゃ。そう一方的に負けはすまい。それに」
「それに?」
鏡は再び、広場に対峙するイルーゾォを映し出していた。
ギーシュと彼の間には、青銅の甲冑兵『ワルキューレ』が立ちふさがっている。
その長い槍と反対に、イルーゾォの手には短いナイフが一本だけ。
ギーシュと彼の間には、青銅の甲冑兵『ワルキューレ』が立ちふさがっている。
その長い槍と反対に、イルーゾォの手には短いナイフが一本だけ。
「彼にはちと、分の悪い戦いかも知れんの。」
ヴェストリ広場についてみると、その中央に糞ガキが胸を反らせて立っていた。
「逃げずに来た事は褒めてやろう。『平民』に僕らの誇りが理解できるか不安だったんだ。」
いつの間にか食堂から流れていたギャラリーは、遥か遠くでわっと沸いた。
「この『青銅のギーシュ』の『ワルキューレ』が君の相手をしよう。平民には過ぎるぐらいだが、ライオンはウサギを狩るのでも全力を尽くす。」
「逃げずに来た事は褒めてやろう。『平民』に僕らの誇りが理解できるか不安だったんだ。」
いつの間にか食堂から流れていたギャラリーは、遥か遠くでわっと沸いた。
「この『青銅のギーシュ』の『ワルキューレ』が君の相手をしよう。平民には過ぎるぐらいだが、ライオンはウサギを狩るのでも全力を尽くす。」
『青銅のギーシュ』?(『鏡のイルーゾォ』みたいなもんか?)ならばこの銅像が奴の能力。
しっかりと地面を踏みしめこちらに近づいてくる――――実体を持っている?だとしたら願ったりだ。
しっかりと地面を踏みしめこちらに近づいてくる――――実体を持っている?だとしたら願ったりだ。
「勝負はどちらかが音を上げるまで。もっとも上げるとしたら君だけど・・・・立会人はここに居る全員だ、いいね?」
「構わない。」
「構わない。」
糞ガキの薔薇の動きを合図に、青銅像が馬鹿正直に殴りかかる――――
顔面を狙った攻撃を、姿勢を下げて避ける。そのまま後ろに抜ければ女騎士は緩慢に振り返った。
右腕から振り下ろされた槍(こんなもん止まって見えるぐらいだ)の横っ腹をマン・イン・ザ・ミラーが薙ぎ、
体制を崩したそいつの首元をナイフで掻っ切る・・・・!
顔面を狙った攻撃を、姿勢を下げて避ける。そのまま後ろに抜ければ女騎士は緩慢に振り返った。
右腕から振り下ろされた槍(こんなもん止まって見えるぐらいだ)の横っ腹をマン・イン・ザ・ミラーが薙ぎ、
体制を崩したそいつの首元をナイフで掻っ切る・・・・!
やはり青銅、傷はついたが硬く、刺さったナイフが途中で止まる。(本体にダメージは無い様子)
舌打ち一つして引き抜き、バックステップで距離をとり――――次の瞬間には地面に突っ伏していた。
不意の攻撃だ、背中から!第二撃を警戒して素早く起き上がる。
舌打ち一つして引き抜き、バックステップで距離をとり――――次の瞬間には地面に突っ伏していた。
不意の攻撃だ、背中から!第二撃を警戒して素早く起き上がる。
「ギーシュ!一人相手にワルキューレ二体なんて酷いんじゃないの?!」
昨夜の女の声が聞こえた。二体!そう早くない動きの変わりにコンビネーションか、複数のスタンドだなんてついてない。
二体に背後を見せない位置まで身体をずらし・・・・更に腕をつかまれる。
「言っただろう?全力を出すと・・・・二体で終わると思われちゃあ困るね!」
昨夜の女の声が聞こえた。二体!そう早くない動きの変わりにコンビネーションか、複数のスタンドだなんてついてない。
二体に背後を見せない位置まで身体をずらし・・・・更に腕をつかまれる。
「言っただろう?全力を出すと・・・・二体で終わると思われちゃあ困るね!」
咄嗟相手の腕にナイフで傷をつけ、そこをマン・イン・ザ・ミラーで強打する。
右腕を失い一瞬動きを止める一体をカヴァーし、もう一体が切りかかる。すんでで避ける。全部で四体、まだいるか?
距離をとるのはナシだ、多いなら同士討ちを狙う。避ける逸らすなら出来るだろうが、これ以上背中から攻撃を貰うのはヤバい。
デカく振りかぶった一撃を避けて先の一体の横を抜け、再度首を狙う。先程のとは違う一体。
これも途中で刃が止まるが、引き抜きざまに肘で強打すると大分傾いだ。
正面、更に二体から攻撃。目の前の銅像で受け(弱った首が見事に吹っ飛んだ。相手は馬鹿か)マン・イン・ザ・ミラーで殴りかかる。
右手から落としたのが一体、首をもいで動きを止めたのが一体、さっき切れ込みを入れた奴もやはり容易に首が落ち、残り一体・・・・
右腕を失い一瞬動きを止める一体をカヴァーし、もう一体が切りかかる。すんでで避ける。全部で四体、まだいるか?
距離をとるのはナシだ、多いなら同士討ちを狙う。避ける逸らすなら出来るだろうが、これ以上背中から攻撃を貰うのはヤバい。
デカく振りかぶった一撃を避けて先の一体の横を抜け、再度首を狙う。先程のとは違う一体。
これも途中で刃が止まるが、引き抜きざまに肘で強打すると大分傾いだ。
正面、更に二体から攻撃。目の前の銅像で受け(弱った首が見事に吹っ飛んだ。相手は馬鹿か)マン・イン・ザ・ミラーで殴りかかる。
右手から落としたのが一体、首をもいで動きを止めたのが一体、さっき切れ込みを入れた奴もやはり容易に首が落ち、残り一体・・・・
「い、意外とやるじゃあないかッ!」
違う、増えた。無限増殖か?動かないのを抜かしたら5体だ。
おまけに痛覚なんざ無いようで、千切れた右腕で殴りかかってくる。5体同時は流石に避けきれず、いくらかマトモに食らった。畜生ッ!
「意外とよく動くな・・・・だけど僕のワルキューレは同時に7体、お前を確実に仕留めるぞ!」
おまけに痛覚なんざ無いようで、千切れた右腕で殴りかかってくる。5体同時は流石に避けきれず、いくらかマトモに食らった。畜生ッ!
「意外とよく動くな・・・・だけど僕のワルキューレは同時に7体、お前を確実に仕留めるぞ!」
内臓にクる一撃を受けて、もんどりうって身体を投げ出す。続く攻撃が右足に降り、重たい金属の感触が脹脛の骨を踏み潰す。
「・・・・ッ、ぐ、ぁ」
絶えろ!まだ左足が動くじゃあないか、立ち上がれ・・・・!次いで右腕をもへし折ろうと迫る一撃を左手で受ける。
ビリビリ痺れ、左手の甲が溶けるように熱く滾る。一瞬視界が白んで頭を振った。
足を引きずり立ち上がる。再び右腕へ攻撃。倒れこむように避け、マン・イン・ザ・ミラーが再び頭を飛ばしにかかる
・・・・が、今度は明らかにパワーが負けた。一瞬怯んだ銅像は、構わず俺の腹を殴る。
「・・・・ッ、ぐ、ぁ」
絶えろ!まだ左足が動くじゃあないか、立ち上がれ・・・・!次いで右腕をもへし折ろうと迫る一撃を左手で受ける。
ビリビリ痺れ、左手の甲が溶けるように熱く滾る。一瞬視界が白んで頭を振った。
足を引きずり立ち上がる。再び右腕へ攻撃。倒れこむように避け、マン・イン・ザ・ミラーが再び頭を飛ばしにかかる
・・・・が、今度は明らかにパワーが負けた。一瞬怯んだ銅像は、構わず俺の腹を殴る。
痛い、痛い、泣きそうだ。右足は熱暴走したみたいに滅茶苦茶な信号を脳に送り、そのくせちっとも働かない。
無我夢中でナイフを振るい、三体目の首筋を抉る。「どうした『マン・イン・ザ・ミラー』、頭を・・・・ッ」
無我夢中でナイフを振るい、三体目の首筋を抉る。「どうした『マン・イン・ザ・ミラー』、頭を・・・・ッ」
背中に迫る斬撃をマン・イン・ザ・ミラーが受けていた。
実体からスタンドへの攻撃は無効。それでもパワー不足のマン・イン・ザ・ミラーは重圧に腕を震わせ、その衝撃はオレへと帰ってくる。
右腕から飛び火したみたいに左手まで熱を持つ。焦げ付く痛み同士相殺してやけに意識がハッキリする。
(また助けられた――――『マン・イン・ザ・ミラー』。背中は、お前に預けていいんだな?オレを守ってくれるんだな――――)
どっと安心感が押し寄せ、しかし同時にオレの刃は鈍る。『一人で殺る』と決めたって言うのに。
実体からスタンドへの攻撃は無効。それでもパワー不足のマン・イン・ザ・ミラーは重圧に腕を震わせ、その衝撃はオレへと帰ってくる。
右腕から飛び火したみたいに左手まで熱を持つ。焦げ付く痛み同士相殺してやけに意識がハッキリする。
(また助けられた――――『マン・イン・ザ・ミラー』。背中は、お前に預けていいんだな?オレを守ってくれるんだな――――)
どっと安心感が押し寄せ、しかし同時にオレの刃は鈍る。『一人で殺る』と決めたって言うのに。
渾身の力で三体目の首を思い切り殴り(拳の裂ける感触がした)それでも繋がった部分はナイフで裂いた。
ぐっと握りこむたびに、力が湧き出るような気がする。別のワルキューレが二体、そのナイフを叩き落とそうと手を伸ばし、
それを掻い潜る様に懐へもぐりこむ。胸を抉ってやったが、意にも解さない。細い部分じゃあないともぎ取る事も出来ないだろう。
背後、マン・イン・ザ・ミラーに逸らされた槍が、右肩を抉る。
大丈夫だ、傷は浅い!右足と違ってまだ動く・・・・!
ぐっと握りこむたびに、力が湧き出るような気がする。別のワルキューレが二体、そのナイフを叩き落とそうと手を伸ばし、
それを掻い潜る様に懐へもぐりこむ。胸を抉ってやったが、意にも解さない。細い部分じゃあないともぎ取る事も出来ないだろう。
背後、マン・イン・ザ・ミラーに逸らされた槍が、右肩を抉る。
大丈夫だ、傷は浅い!右足と違ってまだ動く・・・・!
そう。だが、右足は動かない。
フットワークを失ったオレは、マン・イン・ザ・ミラーが止められなかった刃のいくつかを避けられず、
全身に傷を増やしてゆく。
暫く一進一退の攻防が続き、動くワルキューレは残り3体まで減った。だが此処へきて、ついに青銅の重い打撃を右手で受ける羽目になる。
強い痺れに思わずナイフを取り落とす――――
途端。
今まで気にならなかった、全ての傷の痛みと熱が、倍以上に膨れ上がって襲ってきた。
とっくに全身ボロボロで、右足が無事だって立っていられる状態じゃあなかったのだ。
意思と関係なく身体が弛緩する。何度目か地面に横たわる感触で、戦意が音を立てて崩れていく。
(駄目だ、駄目だ、泣くなよイルーゾォ!ここで負けたらお前は暗殺者じゃない!)
腕を伸ばしてナイフを掴もうとしたところで、ワルキューレが『それ』を踏み砕いた。
フットワークを失ったオレは、マン・イン・ザ・ミラーが止められなかった刃のいくつかを避けられず、
全身に傷を増やしてゆく。
暫く一進一退の攻防が続き、動くワルキューレは残り3体まで減った。だが此処へきて、ついに青銅の重い打撃を右手で受ける羽目になる。
強い痺れに思わずナイフを取り落とす――――
途端。
今まで気にならなかった、全ての傷の痛みと熱が、倍以上に膨れ上がって襲ってきた。
とっくに全身ボロボロで、右足が無事だって立っていられる状態じゃあなかったのだ。
意思と関係なく身体が弛緩する。何度目か地面に横たわる感触で、戦意が音を立てて崩れていく。
(駄目だ、駄目だ、泣くなよイルーゾォ!ここで負けたらお前は暗殺者じゃない!)
腕を伸ばしてナイフを掴もうとしたところで、ワルキューレが『それ』を踏み砕いた。
「ハハ・・・・そんなにコイツが怖いのか、坊ちゃんよお。ナイフが怖くて仕方ないんだな・・・・」
「負け惜しみを言うなよ、平民。」
「負け惜しみを言うなよ、平民。」
オレの右手は歯痒さとともに残骸を掴む。柄も刃も砕けて欠片ばかり、とてもナイフとは言えなかった。
先ほどまで溢れていた力が戻らない。何故だろう?武器を手にすれば戦える。そんな確信があったのに。
考えて、思い至る。
先ほどまで溢れていた力が戻らない。何故だろう?武器を手にすれば戦える。そんな確信があったのに。
考えて、思い至る。
欠片だって急所に突き立てれば命を奪えるだろう
だが、そこまで手を伸ばす余力すらなかった。
オレはもう、どうやったって――――コイツを『武器』だと思えないのだ。
だが、そこまで手を伸ばす余力すらなかった。
オレはもう、どうやったって――――コイツを『武器』だと思えないのだ。
ギーシュ、『青銅のギーシュ』と呼ばれる彼は、造花の杖を振りワルキューレを退ける。
悠々とした足取りでイルーゾォに近づき悪戯に、蹲る男を覗き込んだ。
油断と驕りからくるその行動は『暗殺者』を激昂させるに十分だったが、その激情があって尚、イルーゾォの身体は動かなかった。
「謝れば許してやるさ。本当は土下座ぐらいさせてやりたいが、今のお前には無理だろうしね!」
「・・・・・・・誰、が・・・・・・ッ」
悠々とした足取りでイルーゾォに近づき悪戯に、蹲る男を覗き込んだ。
油断と驕りからくるその行動は『暗殺者』を激昂させるに十分だったが、その激情があって尚、イルーゾォの身体は動かなかった。
「謝れば許してやるさ。本当は土下座ぐらいさせてやりたいが、今のお前には無理だろうしね!」
「・・・・・・・誰、が・・・・・・ッ」
頭上から振る嘲笑に打ちのめされる。
欠片を引き寄せ、これで戦うんだと自身に鞭打つのに、歯向かうように動かない全身。
欠片を引き寄せ、これで戦うんだと自身に鞭打つのに、歯向かうように動かない全身。
「強情を張るね。そんなもんでどうしようって言うんだよ、そんなのもう――――」
強く握りすぎて血の滲む銀の欠片に映る、自分の情けない泣き顔と、それを笑う『青銅のギーシュ』。
強く握りすぎて血の滲む銀の欠片に映る、自分の情けない泣き顔と、それを笑う『青銅のギーシュ』。
「『鏡』くらいにしか使えないじゃないか。」
少年の嘲笑は刹那、銀の欠片に飲み込まれて消える。
「『マン・イン・ザ・ミラー』・・・・オレも、奴も『鏡』だと思うなら・・・・・『許可』、出来る・・・・・ッ!!」
「『マン・イン・ザ・ミラー』・・・・オレも、奴も『鏡』だと思うなら・・・・・『許可』、出来る・・・・・ッ!!」