ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

『Do or Die ―2R―』後編

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匿名ユーザー

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「えー・・・、第一回『で、これからどうするよ?』会議~。司会進行は俺、ウェザーが務めさせてもらいます」
「学校じゃないんだからさあ・・・」
「ご託はいいから進めるべきだ」
 女性陣から早速非難が上がるこの会議は、夜も更け仕事もはけた所でフーケの部屋にて開催されている。恰好は当然元に戻っている。最も、会議とは言え床には酒につまみが山積みされ、宴会と言った方が正確なほどだ。
 不平不満を述べる女性陣に対して、ウェザーも不満げな表情で答えた。
「うるせえなあ。元はと言えばお前らの仲があまりに悪いから俺が明るく振る舞わなきゃならないんだろうが」
 ウェザーの言葉に二人はお互いを見て、心底嫌そうに眉をしかめた。
「まあ、使い魔に盗賊、あげくが銃士隊長と揃いも揃ってろくな職について無い者同士だ。共通点があれば少しは仲良くできるだろ?」
「組み合わせ的にはアンタがいなけりゃおかしいこともないんだけどねえ・・・番犬」
「"表に出れる"という共通点からして、抜けるべきは貴様だろう。引き際が寛容だぞ盗賊」
 憎まれ口しかたたけないのかこいつらは。ウェザーはそう毒づきながら頭を抱えた。が、すぐに切り替える。
「オッケー、わかった。じゃあ俺たちは利害の一致でくっついているだけでいいから、話を進めよう」
 親睦はゆっくりと深めるしかないとわかってはいても、二人の間にある溝はバリバリ裂けるドス黒いクレバスのように深い。が、そこは現実主義者そうな二人であるから、いざとなれば折り合いを付けてくれることに期待するしかない。
「貴様から話せ。その話の信用度如何でこちらも話す」
「けぇっ。何様のつもりだよ」
 フーケは不承不承、唇を尖らせながら語りだした。
「あたしが掴んだ情報は敵のアジトさ。あ、あ、あ。興奮すんなよ、本部じゃあない。いくつかの小さなアジトだ。実際にこの足と目で確かめてきているから間違いはないだろうね。当然『土くれ』としての証拠は残さないように務めたよ。
 チクトンネ街とブルドンネ街の辺りはあらかた見たけど、それらしいところはなかったし、怪しげな事をするにはさすがに人が多すぎる。あたしの調べで残ってるのはあと二つだよ」
「随分と簡単にいったものだな」
「まあ『組織』自体はできて間もないベイビーだし」
「ならば早めに手を打てば簡単に潰れるとでも言うのか?」
「それができてりゃアンタの顔なんざ見ないですんだんだけどね」
 フーケの挑発に噛みつくアニエスを手で制してウェザーは先を促す。
「ふん。ところがどっこい、この場合はベイビーの親が問題でね。たらふく食わしてやったらしくて、『組織』は規模だけはそこそこデカくなっちまいやがった。身体は大人おつむも大人って悪い冗談だよ」
「パトロンがいるというのか・・・・・・まさかッ!」
「イェス、その親バカなバカ親はトリステイン貴族さ。『組織』ができてから声をかけたのか、創設に関わっていたのかは知らないけどねぇ」
「まてフーケ。アルビオンの時もトリステイン貴族が援助していたのか?空の上だぞ?」
「そこら辺は詳しくは解ってないけど、他にも強力なパトロンが付いていると見てよさそうだね」
 予想以上に敵が膨れ上がってきていることに、ウェザーもアニエスも不気味さを感じずにはいられなかった。
「『組織』の特徴はその細かな分担。護衛や麻薬、果ては暗殺専門のチームもいるって噂さね。いい考えだよ、バカには簡単な役割を一つ与えておけばそれがベストだからね。しかも大人数と来ている。
 ま、人数はいてもまだまだ統率を取り切れてないってところが唯一の付け入る隙かな。ただ・・・」
 と、そこでアニエスはひどく思案顔になった。まるで喉に引っかかった小骨が気になってしょうがないとでもいうような顔だ。
「ここ最近になってやり方が変わった。ひどく粗野で強引な感じに・・・。誕生はひっそりと――そして大きくなってからは暴れる・・・。一見すれば当然の流れに見えるけど、違和感は拭いきれないのよ」
「宗旨変えしたのか――」
「頭がすげ換わったか・・・・・・」
 内部で分裂でもあったのかはわからないが、
「迷惑なことに変わりはない。換わったというならばその新しい頭ごと叩き潰すまでだ」
「癪だがあたしも同意見だね。奴らは悪性の病気だ。やられる前に取り除く」
 二人の表情に変化はないが、その声に怒気が含まれていることは十分すぎるほどに理解できた。
 各人がここまでのことを整理するためにしばし黙り込んだが、おもむろにアニエスが口を開いた。
「本拠もわからないのか・・・・・・ならばせめて頭の情報はないのか?逆に"暗殺"という手もある」
「「はぁ?"暗殺"ぅ?」」
 ウェザーとフーケがハモった。だが二人の驚愕も当然と言えよう。よもや騎士から"暗殺"を持ちかけられるとは夢にも思わなかったのだ。
この意外性にフーケは少しアニエスに気をよくしたようだが、ウェザーは黙ったまま眉根を寄せた。
「へえ・・・・・・騎士様はなかなか過激なことを言う」
「貴様らのように常に薄汚い策を弄するわけではない。国を思えばこの程度どうと言うことはないだけだ」
「はっ。言ってくれるじゃないかい。吠える上にホラまで吹けるなんて芸達者な犬だねぇ」
「貴様ら程でもないさ、盗賊」
「埒が明かん。フーケ、先を」
 へいへい、と組んでいた腕を解いて肩をすくめる。
「結論から言やあ、現段階での暗殺は不可能だね」
「なぜ?」
 そのアニエスのもっともな問いに、
「ボスの顔がわからないからさ」
 フーケはもっともな顔で答えた。
「な・・・ッ!貴様調べたのではないのか?」
「調べたよ。調べたけど何もわからなかった。それだけさ。影も形もどころか、本当にそんな存在がいるのかどうかも掴めない。さらに恐ろしいことに、『組織』の構成員でさえその素顔、姿を見たものは誰一人としていないと来てる」
「だが・・・・・・現に『組織』はこうして存在し、絶望を振りまいているじゃないか!もし本当に頭がいないというのならばッ!それはもはや『組織』とは呼べない、ただの集団だ!」
 それっきり皆一様に黙り込んでしまった。
 強力な後ろ盾。組織化された構成員。どちらも脅威だ。
 が、やはり気になるのは決して姿を見せないボスだった。よほどの用心深さだ。古株にさえその姿は愚か声すら聞かせていないのだから。情報の伝達は恐らく紙か何かによる伝言だろう。
 それでも『組織』を纏め上げているということは、相当のカリスマの持ち主か、相当の力の持ち主ということになる。
「あたしの手札はここまでだよ。で、あんたは何を歌ってくれるんだい?」
「・・・・・・我々が掴んだ情報は、パトロンについてだ。川向こうにある貴族街、その一部にまでは絞れているが・・・」
「へえ、すごいじゃあないか。で、その貴族の名前って言うのは?」
「・・・っ」
 しかしアニエスは喉まででかかった言葉を飲み込んだ。二人は気づいていない。
 この名前を言う必要はない。この名前は私が奴を殺したとき、憎悪を込めて呼ぶ名なのだから・・・・・・。
 アニエスは瞬時に話をすり替えた。
「その前に気になったんだが・・・。貴様、肩にケガをしているだろう?着替えの時に包帯をしていたな」
 アニエスの言葉にウェザーはいぶかしむようにフーケを見た。
「・・・実は前に侵入したとき、一度返り討ちにあっててね。ウェザーを呼んだのもそのためさ」
「つまりスタンド使いに遭遇した・・・と?」
「そう言う名前なのかい?あたしはただ何となく、感覚があんたに似ていたから参考までにと思っていたんだけどね。詳しい説明が欲しいんだけど・・・・・・」
 拒む理由もないウェザーは、スタンドについて話し出した。

「ふうん・・・。能力以前に見えないっていうのが怖いわね。先制されたら対処のしようがないじゃない」
「まあな。だが、『スタンドはスタンドでしか触れない』と言うルール、ここでは少々変わってくるようなんだ。ワルドと戦った時、奴の魔法は俺のスタンドにダメージを与えている」
「『スタンドのダメージはスタンド使いに反映する』・・・成る程ね」
「恐らくはスタンドも魔法も精神的な要素が大きいからだろうと推測しているが、確証はない。もしもこの仮説が当たりなら、見えなくとも感じられるはずだ。その辺については体験済みだろうがな・・・」
 学生組よりも頭の回転はいいらしく、フーケと先に知っていたアニエスは色々と対策を講じ始めているらしい。
「ま、なんにせよ、アダルトチーム結成だ。門出に乾杯といこうぜ」
「平均年齢はいくつくらいになるんだ?私は23だが・・・」
「やーい!行き遅れー!」
「そういう貴様は?」
「・・・・・・23」
 そんな泣きそうな顔で言われても。
「うるさいうるさいうるさーい!じゃあウェザーはどうなんだよ!あたしらより下って事はないだろう?」
「39だが?」
「さんじゅ・・・・・・と、言うことはアダルトチームの平均年齢は約28歳ということに・・・」
「お前が一人で平均上げてんじゃねーか!って言うかその年で独り身かよ。いい加減腰を落ち着けろって・・・・・・・・・言ってて悲しくなってきたや。ちくしょう!飲むぞッ!」
 そう言って酒がなみなみと満たされたグラスを一気に空ける。それを横目で見ていたアニエスが小馬鹿にしたように笑った。
「ふっ。そうやってガバガバとやけ酒をして、明日に響いてさらに歳を実感して嘆くのがオチだぞ」
「はんっ、んなこと言ってるが・・・どうせお前は下戸なんだろ?よかったでちゅねー、おこちゃまで。23歳のお子様だぜ!あっはっは!」
「なんだとッ!」
「結成早々お前ら・・・」
 何だか雲行きがよろしくない。そう悟ったウェザーが仲裁に入ろうとするが、先にフーケの挑発が入ってしまった。
「悔しかったらグイッと飲ってみなよ!」
「面白い!受けて立つッ!」
「グッド!」
 結果は絶対にバッドだと理解できたが、ウェザーにこの二人を止める勇気はなかった。
 そして当然の帰結として二人は出来上がった。フーケに至っては何が楽しいのか一人でわいわいと騒いでいる始末である。
「にゃはははははは!ウェザー飲んでるぅ?」
「飲んでる飲んでる」
 絡み酒らしく、落ち着かない様子で酒を飲んでいる。酒でタガが外れているせいか一オクターブくらい声が上擦っていた。
 アニエスはと言うと、酒瓶を抱き枕にして床に転がっていた。酔いつぶれているとしても、床で寝るのは体によくないだろうと様子を見てみる。
「おい、寝るならベッドに入れ」
「くっくっく・・・」
「笑ってる?なんだ、起きてるのか・・・・・・」
「フハハハ・・・・・・ハァーッハッハッハッハ!」
「悪の三段笑い!?」
 しっかりと酔っていたようだ。
「お前らいい加減に・・・・・・」
「よっしゃ、好きな人告白大会しようぜ!」
「またコイツは何を言い出すやら・・・・・・それこそ修学旅行じゃねーんだから」
「一番フーケ!ウェザーが好きれす!」
 そう叫ぶやウェザーめがけて飛び込んだ。ウェザーも危機を察知していたらしく、頭を押さえてそれを阻止する。が、酔いのせいか一切加減せずに突っ込んでくるのだ。
「あ、ずるいぞ!私もだ!」
 おまけとばかりに、あろうことかアニエスまでもが悪のりしだす始末である。ふざけている子供なら可愛いものだが、酔った大人は始末に負えない。
「最後ウェザーはられが好きぃ?」
「少なくとも酔っぱらいはねーな」
 そう言って抑えていた二人をベッドに向けて突き飛ばす。二人はバランスも取れず、無様にベッドに沈んでしまった。
「おら、とっくに消灯時間だぜ。そんなに欲求不満なら二人で仲良く乳繰りあってろ」
 呆れたように言い捨て、絡まってもぞもぞしている二人を残してウェザーは部屋を後にした。
 しかし、まさかアニエスが絡み酒だったとは意外だった。悪酔いというのもあったが、そうなるとアニエスも実は年齢を気にしていると言うことだろうか?・・・・・・いや、それはないだろう。
 フーケならまだしも、アニエスでそれは考えづらかった。おかしな表現ではあるが、腐ってもアニエスとでも言うのだろうか。とは言え、あの様子ではさしもの『鉄女』アニエスも明日は二日酔いだろう。
 と、そんなことを考えながら自室の扉の前に立ってようやく明日のことを聞いていなかったことを思いだした。今のフーケから聞き出せるかは定かではなかったが、聞くだけ聞いてみるかと来た道を戻る。
「WAWAWA忘れ物~」などと鼻歌を歌いながらフーケの部屋の扉を開く。だがすでに部屋は薄暗く、もう寝たのかと一歩踏み込んだその時――
「あ・・・はあ・・・引き締まった良い体してるわぁ・・・・・・」
「はぅぅ・・・・・・そこはダメだぁ・・・」
「ふふふ・・・・・・かーわいーの。そぉれ!」
「うああああ、ダメもうダメ~っ!」
 ホントに乳繰りあってるー!
 心の叫びが体を突き破って出そうな勢いだった。
 月明かりに晒されたベッドの上、そこではまるで蛇が絡み合うようにフーケとアニエスが艶めかしく縺れ合っていた。衣服もはだけ、露わになった肌を重ねている様は、『ヴィーナスの誕生』のように美しい。
 ウェザーは口を塞ぐことが出来ずにしばらく立ち尽くしていたが、「ごゆっくり・・・」と小さく呟いて部屋を後にした。
 ウェザーは当てられた自室のベッドの上で天上を眺めながら、「本当は仲いいんじゃねえか?」「というかこんなんでこの先大丈夫か?」という不安に悩まされ、悶々としたまま眠ることが出来なかったという・・・・・・。


   To Be Continued…


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