ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

狂信者は諦めない-2

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眠りは突然に破られる。
熱と痛みが負け犬から安息を取り上げた。
それから三日。
目覚めてからの三日間を、エンリコ・プッチは呆けて過ごした。
それも当然といえるかもしれない。
ゴールの手前で振り出しに戻る、とあってはいくらなんでも。
何もする気が起きなかった。
まるで大感動の末に完結した漫画に、いつの間にか出来の悪い続編が付いていたような脱力感を感じる。
呼吸を止める気にもならず、結果として生きている。

しかし、そんな怠惰な日々も三日で終わりを告げた。
運命の四日目。
敗残者は死に、その中から新しいものが生まれる。

それはエンリコ・プッチであって、エンリコ・プッチでない。
あえていうならば、そう、ザ・ニュー神父であろうか。

エンリコ・プッチは迷いを知らない男だった。
明晰な頭脳に鋼鉄の意志。
己の理想のために何を犠牲としても躊躇わない。
ある意味で、宗教者の鑑といえるかもしれない。
しかし、そんな彼も今は深く悩んでいた。
自分は何かを間違えていたのではないか。
何かが足りなかったのではないか?
だからこそ、自分は運命に対し惨めな敗北を喫したのではなかったか。

その思いが彼にひとつの霊感を与えた。
今、目の前にもう一人の自分がいる。
ヴィットーリオ・セレヴァレ。
彼は自分と同じものだ。
彼はおそらく自分と同じように戦い、そして敗北するだろう。
しかし、その様を観察し、分析することで何かが掴めるのではないだろうか。
自分に勝利をもたらす何かを、得られるのではないか?
それに、万が一ということもある。
もしも、自分の助けにより彼が運命に勝利したとすれば、それは。
それは、それは、それは―――――

こうして、エンリコ・プッチは新たな生を得る。
かつてよりも正しく、しかしそれでも決定的に間違ったまま。
彼は気が付いていない。
自分の願いが、自分だけの願いだということに未だに気が付いていない。

    ・・
だから、彼らが現れたことは、当然のことだった。
時は下り、場面は変わる。

「おい、見ろよ。 ルイズの使い魔を」

その日、トリステイン魔法学園は大騒動であった。

「あんた、誰」

少女がそう問えば

「やれやれだわ」

女はそう答える。

あらゆる障害、矛盾を乗り越えて、彼らはやってくる。
例えどれほど離れようと、彼らは必ず追ってくる。

現実は(プッチにとって)非情である。
何時だってそうなのだ。
エンリコ・プッチの願いは、決して叶わない。


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