ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

狂信者は諦めない-5

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匿名ユーザー

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ここハルケギニアにおいて、竜騎士は戦場の華である。
その機動力と打撃力は他の兵科の追随を許さない。
しかし、竜騎士は極端な脆弱性をも同時に持ち合わせてもいた。
その上一旦消耗してしまえば補充もままならない。
つまりは切り札だった。

その竜騎士達であるが、竜騎士の特権として彼らは最上等の防寒衣を与えられていた。
なんといっても空高く飛ぶのであるから、十分な装備を整えなくてはならない。
そうでなくては十分に戦闘力を発揮できないし、第一命に関わる。

それはエンリコ・プッチにとっても同じことだった。
ヴィンダールヴの異能故に、彼は誰より風竜を巧みに乗りこなしたが、厚着はしなければならなかった。
大き目のブーツを履き、足との隙間へぼろ布を詰める事さえしている。
背中にはやはり同じ格好をした、ジュリオがしがみついていた。
吹き付ける風に、流れ行く景色にいちいち感嘆しながら目を輝かせている。
と、いってもただ純粋に楽しんでいたわけではない。
敵の姿を探していたのだった。

彼らは既にトリステイン領内へ侵入していた。
正式は訪問では無い。
潜入任務だった。

とはいえ、二人は自分達が攻撃を受ける可能性が少ないことを知っていた。
ここは代々ロマリアと友誼を交わしている貴族の所領だったからだ。
風竜を駆りながらプッチは地上を見渡した。
目標を発見して嘆息する。
疲労もあるが、それよりも憂鬱さのほうが強かった。
それなりの規模の森に、ぽっかりと開いた隙間へ降下する。
そこには竜を繋ぐための施設があり、悪くはない見た目の小屋がある。
森にはこれから利用する馬車が隠されており、必要な人員までが用意されていた。

何もかもを手際良くこなし、無事滞りなく馬車へ乗り込んだ後もプッチの表情は晴れなかった。
あれこれ話しかけてくるジュリオに対しても適当な相槌しか打たない。
ジュリオなりの気遣いも、功を奏した様子は無かった。
それどころか、遠まわしに黙れと言われて不貞腐れていた。

プッチが憂鬱になるのも無理は無かった。
彼らは、トリステイン魔法学園にて召喚されたという使い魔について、調査を命じられていた。
プッチ自身はあまり乗り気では無かったのだが、ヴィットーリオの前へ出て張り切っていたジュリオに押し切られてしまったのだ。
ヴィットーリオは当初、ヴァリエール家が三女、ルイズこそが虚無の担い手であると考えていた。
ヴァリエール家は傍流とはいえブリミルの血統ではあったし、なにより生まれて以来一度も魔法を使いこなせたことが無い、というではないか。
それこそが少女がブリミルの力を授かった証拠だ、とヴィットーリオは見ていた。
しかしある日、彼のそんな確信を揺るがすような出来事が起きた。
トリステイン魔法学園にて、四人の人間が召喚さる、というのがそれだった。
教皇は報せを受けて直ちに決断した。
即ち、エンリコ・プッチをトリステインへ派遣することを決めたのだ。
プッチはそれに対し反対した。
四人、ということだけしか判っていない状況で、軽々しく動くのは危険だと思ったからだ。
仮に全員がスタンド使いだとして、その全員と敵対してしまったならば。
九死に一死を加えなお余る。
必死とはまさにこのことだ。
しかし、若さだろうか、ヴィットーリオは珍しく自らの考えに固執した。
己の理想が、現実味を帯び始めたことで気が急いているのかもしれない。
一刻も早く。
それが教皇の決定だった。

(・・・・・・まあ、仕方が無いか)

プッチはひとりごちる。
酷く嫌な予感がするが仕方ない。
別に接触する必要はないのだから。
首府で適当に情報を集めた後、引き返せばいい。
トリステインは情報の管理に疎い、というよりうっかりもの揃いだったのから、それだけで事足りるはずだった。

しかし、プッチは忘れていた。
運命とでもいう何者かに、彼が受け続けてきた仕打ちを。
王都トリスタニア。
この地にて、彼は信じられない不運に見舞われることとなる。


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