ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-46

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匿名ユーザー

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「ふん…何人か足りないね」
人質が集められている食堂に来たフーケだが、集められている生徒と教師を見て数が合わない事に気づいた。
「1、2、3…あの火の小娘とタバサ、コッパゲに…モンモランシーか
   最後のはともかく、トライアングルが三人…何企んでるんだかね」
もっとも、フーケ自身はコルベールを自分より下と見ているため、あまり勘定には入れていないが。

「戻ったよ」
「土くれか。どうだ?」
「収穫無しさ。特に何もありゃしない。街で手に入る情報なんてたかが知れてるって事さね」
確かに嘘ではない…が内心では心臓が跳ね上がりそうだ。
焦ったりすれば、メンヌヴィル曰く『感情が乱れれば、温度も乱れる』らしいから、何かしら疑われかねない。
下手打ってバレれば焼かれかねないし、生き延びたとしても異変を察知したあのドSが自分諸共巻き込んであの力を使いかねない。
前門の虎、後門の狼とはこの事だろう。泣きたくなってきたが耐える。

2、3、5、7、11、13、17、19…そんな幻聴が聞こえてきたが、そんなもので平静を保てる人間はそうは居ない。
「温度が乱れている。何かあったな?」
しかし、現実はフーケにとって非常に非情である。
どうもあの義眼を見ると全てを見透かされているようで平静を保てない。
故に、自分でも気付かないぐらい微妙に体温が上がっていたのだが、あっさりメンヌヴィルに気付かれた。
ヤバイ。このままだと本格的にボロが出て焼かれかねない。
思わず辺りを見回したが後ろ手に縛れらているオスマンを見付け咄嗟に言葉が出た。

「ああ、少し借りがあるヤツが居てね…あのジジイさ」
これまた嘘ではない。ロングビル時代に散々に尻を撫でられ、モートソグニルを介して下着を見られ、挙句婚期を逃すとまで言われた。
一度や二度蹴り倒したぐらいでは到底鬱憤を晴らせるものではない。
「少し借りるよ。いいね」
予想外な事ははあったが、ここまでは順調だ。
「ミス・ロングビル、いや今は土くれだったか」
「あら、学院長先生。その節ははお世話になりましたわ。是非ともお礼がしたいんですがよろしいでしょうか?」
口調はロングビル時代のそれになったが、地の底から湧き上るようなドス黒い声だ。
この辺りは演技ではなく本気だ。だからメンヌヴィルにもそれは見抜けなかった。
「それはいいが大事な人質だ。やりすぎるなよ。土くれ」
「そんなに心配なら何人かよこしな。わたしは構わないよ」
オスマンを連れて行くフーケに一人の傭兵をメンヌヴィルが付けたが、その時のオスマンの目は売られていく子牛のようだったという。

場所は変わって通称『悪魔の手のひら』ことヴェストリの広場。
原因が原因だけに、普段から余程の事が無い限りは人が居ない場所ではあるが、一つの人影がそこにあった。
木の陰から顔を出したり引っ込めたりする事数度。完全に不審者だが、状況が状況なだけに仕方ないのだろう。

「な、なに…戦争なんてアルビオンでやるんじゃなかったの?」
金髪縦ロールという典型的なおぜうさまな髪型のご存知モンモランシーだ。
偶然にも目が覚めて、眠れなかったので寮の外をブラついていたら、傭兵が押し入ったので逃げてきたというわけである。
杖は持ってきたものの、相手はプロの上に人数も多い。ついでに言えば、自分は水のライン。
腰抜かして捕まらなかっただけマシだろう。

とてもじゃないが、プロシュートに喧嘩売った時と同じと思えない。
が、あの時はギーシュが逝ったばかりで色々スイッチが入っていた。
捨て身になった人間は非常に強いが、そうでなくなれば案外脆いものだ。
早い話、要はまだ死にたくないという事になる。
実際あの後、緊張からの開放で過呼吸に陥り本気で死に掛けた。それだけ一杯一杯だったのである。
「調子乗って、勝手に死んじゃって…結構寂しいんだから」
かつてギーシュが首をヘシ折られた場所に来るとそう呟いたが、近くで少し物音がした。

他の生徒が食堂に閉じ込められているのは見ているから、少なくとも生徒ではない。
つまり、傭兵か教師か火の塔に駐屯している銃士かになるのだが、傭兵は全員メイジの上この奇襲だ。
残っている教師ではどうなるか分からないし、銃士では相手にならないと思っている。
故に、傭兵が来たと思ったのだが、生憎広場のド真ん中で身を隠すような場所も無い。

確実に近付いてくる足音を聞いてモンモランシーがその場にへたり込んだが、この上なくテンパっている。
「どうしよう…どうしよう~わ…わたし…どうすれば…?」
逃げるのも忘れていい感じに混乱しているが、今の状態は『頭隠して尻隠さず』という諺未満の状態である。
なにせ、隠す場所が存在しないのに、その場で隠れようとしているのだがら、ある意味パントマイマーだ。
空き缶があって人が居れば小銭が稼げるかもしれない。
そんな事をしてても当然状況は変わらないので、遂にジャリ、という音が自分の後ろから鳴った。

その瞬間、モンモランシーの息が止まり、何となくだが感覚がスローモーションになる。
頭に浮かぶのは学院に入学してからの全記憶だ。
その中でも一際鮮明なのが、ギーシュ関係だろう。
ケティから本当に馬で遠乗りに行っただけと聞いた時はしばらく身動きが取れなかった。
ギーシュも悪いっちゃあ悪いが、ある意味決闘の原因になった香水を作ったのは自分だ。
プロシュートに攻撃を仕掛けたのも、そうした思いがあったのかもしれない。
覚悟決めたのか大人しくなったが、次に浮かんだのが何故か現ルイズの使い魔の才人である。
水の精霊との接触に協力してから、語呂がいいのかモンモンと呼んでくる。
極めて馴れ馴れしいのだが、今までそういう扱い方をされていなかったのである意味新鮮味はあった。
そうなってくると、元来気が強い方のトリステイン貴族だ。途端にネガティヴなイメージが消え去る。

「ゴメン、ギーシュ…」
やっぱり、わたしまだ『そっち』には行きたくない。

そう思うと杖を握り後ろを振り向いた。…いや、向いたのだが
「んな体勢で泣いたり謝ったり、麻薬でもキメてんのかオメーは」
と、届いてきたのはそんな想いと覚悟をキレイサッパリ全てブチ切れたギアッチョの如くブチ壊す非常に醒め切った声。
「あ…あ…あんたは…『メイジ殺し』!『悪魔憑き』!『ルイズの使い魔』!…プロひゅ」
「馬鹿かてめーは。お前一人だけなら喚こうが勝手だが、オレを巻き込むんじゃあねぇ」
大声出して人の名前を叫ぼうとしてくれやがったので咄嗟に口を押さえたが、モンモランシーがもがいている。
「…ぅ……ぁ…ム………!!」
一々口で言って大人しくさせるのも面倒なので鼻と口押さえたが、素直に大人しくなってくれたようでなによりだ。

「……ぶはぁ!はぁー…はぁー……何すんのよ!や、やっぱりわたしも殺す気ね!?この人殺し!」
正確に言うと、大人しくなったというより、ぐったりしたという方が正しいだろうが、過程はどうでもいいのである。
「死んで無いだろ、人聞きの悪い。つーか、んなアホな事やってる暇ありゃあ、前、オレに使った毒でも撒いてこい」
「あんな物騒な物とっくの昔に捨てたわよ!見つかったらチェルノボーグ行きよ!」
「てめー、んなもん人に使ってくれやがったのか…」
こいつ今、始末した方が良いんじゃあねーか?とも思ったが止めておく。
少なくともあれから攻撃は受けてはいないし、余計な面倒事は御免被る。

まぁ、そろそろフーケがどうにかしてオスマンを連れてくるはずだ。こいつに構っている場合ではない。
とりあえず放っておいて合流地点に向かおうとしたのだが、さすがにモンモランシーが放置されそうな事に反応した。
「ま、まま、待ちなさい!こんな時に一人にする気なの!?」
それを聞いて、少し後ろ見たが、淡々とした物だ。
「知るか。その杖は何だ?飾りじゃあねーだろ。生きたけりゃあ動け。死にたくなけりゃあそれを使え。それができねぇってんならのたれ死ね」
これがマルトーやシエスタとかの平民連中なら借りも色々あるし考えないでもないが
普段から、メイジだの貴族だの言ってるこいつらには、そこまでする義理も無いし、義務も無い。
この男、普段大口叩いてこういう時に何もしないヤツが一番嫌いなのである。

「なによ…なによ、なによ、こいつーー!」
あまり大声出すと拙いのか微妙な音量のシャウトを聞きながら5歩程進んだが、そこで立ち止まる。
「ま…付いてくるってだけなら、それはオメーの勝手だ。どうするか好きにしな」
直接護衛する気は更々無いが、過程に敵が居れば排除せねばならんので、同じような物だろう。
つまり、かなり遠まわしに、必死こいて食らい付いてくるなら来い。と言っているわけである。
最初のほうで突き放し、後である程度引き寄せる。ペッシ相手に使われていた十八番が見事に炸裂していた。
「…礼なんか言わないわよ」
「いらん。ヘマしたら自分でどうにかしろ」
まぁ向こうが攻撃されれば、自分で何とかしろ。という事ではあるが。

それでも、どうも甘くなったかと思わないでもない。
ペッシあたりならば、あの時点で鉄拳制裁であるというのに。
どうもこちら側だと調子が狂う。久々に勘を取り戻せそうな状況下なのだが、それでもまだ本調子では無いというところだろうか。
前ならば、有無を言わさずこの辺り一帯がスデに老化に巻き込まれていてもいいのだが
後の事を考えたりするようになったあたり、やはり少しばかり甘くなったかと思い、『やれやれ』という言葉が無意識に出て頭に手がいく。
とりあえず、この次遭った敵は溜まったストレスと憂さ晴らしに徹底的にブチのめそうと誓い再び歩き出した。

再び場所が移って、半ば奴隷のような扱いのオスマンを引き連れたフーケだが、風の塔に着いた。
「さて…どうしてやろうかね。とりあえず、そこの糸と釣り針取ってきて。ああ、見たくないなら外で待ってな」
「良い趣味だな土くれ。あの有名な盗賊が拷問好きとは」
「人の事言えないだろ」
「…そりゃあそうだ。違いない。特に隊長はだ。で、何処にあるんだ」
「そこの奥にある。奥にね…」
いいや、限界だ!と言わんばかりのフーケに従い、道具を取りに行くため背を向けたが
傭兵が足元にあるロープを跨いだ瞬間、それが絡み付いて上半身を縛り、手を後ろ手に縛った。
「な…!土くれ、裏切ったのか!」
「悪いね。こちとらやたら性質の悪いのと組まされてる上に後が無いんだ。文句はそいつに言ってくれ」
「人が悪いの。それならそうと早く言って欲しいもんじゃ」
心底安堵したかのようなオスマンを見たが、続く言葉にフーケがキレた。

「やっぱわしに惚れてる?今度は本当の名前も教えて欲しいのぉ。それともロングビルちゃんってよベボォ!」
「調子に乗るんじゃないよ。このヒゲ!」
綺麗な蹴りが入って踏まれたオスマンが咽ているが心なしか嬉しそうなのは気のせいだろう。
「いや~この感触懐かしいわい」
…多分気のせいだ。

そんなやり取りをしていると、手を縛られただけで足は動く傭兵が逃げる。隙だらけなのだから当然だ。
「やば…」
このまま食堂に行かれでもしたら洒落にもならない。
焼死か老化かの二択になり、それは非常に拙い。
後を追おうとしたが、打撃音と共に傭兵が部屋に飛び込んできた。
正確に言うと吹っ飛ばされたのだが、似たようなものだろう。
食堂からは離れているが、異変を察知されると拙いので咄嗟にサイレントをかけたが、それがある意味仇になった。

そろそろフーケとの合流場所の塔の近くに来たプロシュートと必死になって付いてきているモンモランシーだったが
不意に部屋から飛び出してきた男とぶつかった。互いに倒れはしないが、後ろ手に縛られているだけあって体勢は向こうが悪い。
男の姿形を見たが、少なくとも教師でも無いし生徒でもないし、平民でもない。
なら残った選択肢は傭兵だ。つまり敵だ。排除しても問題無い敵だ。手加減なぞ一切合財する必要の無い敵だ。丁度いい。
腕を少し前に突き出し、指をゴキリと鳴らす。
それの動作と向けられている冷たい眼を見て杖を出すこともできない傭兵が後ずさったが、間髪入れずに距離を詰め肘撃ちが顎に入った。
傭兵が勢いで派手に吹っ飛んだが、その後の悲鳴は無い。フーケがサイレントをかけたらしい。
なら『何をやっても』『悲鳴』が聞こえる事は無いという事だ。丁度いい。

普段はやらない、というか直触り直行だが、それでは気がおさまらんというのがこの傭兵の不幸だろう。
グレイトフル・デッドで頭を掴み無理矢理立たされる形となったが、スタンド使い以外にそれを見る事はできない。
空いた方の手で傭兵の肩を掴み、プロシュートの口が開かれたが当然音は出ない。
読唇術ができるなら『別にお前でなくても良かったんだが…運が悪かったと思って諦めろ』と解読できたはずだ。
それから十数秒の間、近距離型スタンドの如く傭兵を殴り続ける悪魔が居たというのは、後のフーケの証言である。

トドメに直を叩き込んで終わりにしたプロシュートがフーケに近付いてきたが
顔に少し赤い物が付いているのを見て、顔を引きつらせながらフーケが目を反らした。
多分、別の赤い物か何かで血じゃない。例え万が一血であっても、返り血とかじゃあ絶対無い。

「まぁ、あそこまでやる必要無かったな」
目を反らしながらサイレントを解いたが、そこで出た言葉がこれだ。
「なら最初からやるな!」
思わずフーケが突っ込んだが、心の中で思ったならその時スデに行動は終わっているので仕方ないのである。

「気にすんな。で、連れてきたか?」
「まったく、こいつは…ああ、そこに居るよ」
赤い物を指で拭きながら視線を下に向けると仰向けに踏まれているオスマンがそこに居た。
もとい、踏まれているというより自ら下に潜り込んでいるような気がしないでもない。
「やはり白より黒に限ると思うんじゃが、どう…ごめん。止めて。痛い、痛いから」

「…こいつ殺してもいいかい?」
「我慢しろ。そんなでも一応ここのボスだ。それと殺してもなんて使うんじゃあねぇ。殺したなら使ってもいい」
フーケが更に蹴りを入れたが、その上で交わされている会話は非常に物騒である。
「あだだ…ひょっとして、わし命の危機?」
「そんなだから、こいつに付け込まれんだよ…つーか、案外反応が薄いな」
「年を取ると大抵の事では驚かなくなるものじゃ」
言ってる事は中々だが、依然として踏まれているため説得力は一切無い。

「オールド・オスマン…それにミス・ロングビル!」
ロングビルと呼ぶのは現状一人しか居ない。当然必死に付いてきたモンモランシーである。
「おお、ミス・モンモランシ無事じゃったか」
「はい。でも…その一体何を…?」
そりゃあ学院長が辞めたと言われた元秘書に踏まれているのだから気にはなる。
なお、あの一件は当事者(コルベール含む)を除いてロングビルがフーケだと知らされていない。
盗賊を学院長自らが雇ったなど知れたら洒落にもならないという事だ。

無論、そんな事情なぞ知った事ではないヤツには関係無いのだが。
「何だ知らねーのか。そいつが土くれだ」
「は?何?土くれってあの土くれ?それがミス・ロングビル………嘘ぉ!?」
「一々叫ばないと反応できねぇのかオメーは」

もはやリアクション大王と化しているモンモランシーを無視するが、フーケが意外そうな顔をしてオスマンから足を離した。
「わざわざ連れてくるなんてどういう風の吹き回しだかね。明日は槍でも振るんじゃあないか」
「勝手に付いてきただけだ。それよりどうなってる」
「人質は全員食堂に集められてるよ。メンヌヴィル達もそこに集まってる」
他に銃士が居ると聞いたが、人質を取られている以上あまり戦力にはならんと判断した。やはり老化で一気にカタを付けるしか無い。
「つーわけだ。全員老化させちまうが構わねーな」
老化と言っても、そう簡単に死にはしない。むしろ女子生徒や女で編成された銃士なだけあって老化は傭兵達より遅い。
というより、夜だけあって動かないヤツならそうそう進行はしない。
今まで動いていた傭兵連中も時間が経てば体温が下がり利き辛くなる。
仕掛けるなら今が最適なのだが…

「駄目」
「それじゃあ…何ィ!?構わねぇだろうが。死にゃしねぇよ」
「駄目」
「……ガキが小遣いせびってるのを断ってるんじゃああるまいし駄目はないだろーが。何かあんのか」
「…使い魔とメイジは一心同体と言うしな。それが死んでしまえば同じ事じゃて」
確かにまぁ、鼠やフレイムみたいなのは確実に死ぬ。
だからと言って、最も確実な方法をやらないというわけにもいかないが。
「本人が死ぬよりマシだろ。第一贅沢言える状況かよ。切り捨ててでも預かり物を守る。それがお前の任務だろーが」
「生徒も守る。その使い魔も守る。両方しないといけないのが学院長の辛いところじゃよ」

「……ちッ!あのヤローと同じ事言いやがって。……仕方ねぇな。条件付きの仕事は高く付くから覚悟しとけ」
どうして、こいつらはたまにマジになりやがるか。
そう思ったが、その覚悟を持ったブチャラティに敗れたのだから仕方無いと思う事にした。
「まぁ、お主とコルベール君が居ればなんとかなるじゃろうて」
「あいつか…?まぁいい。言うまでも無いだろうが、一応説明しといてやる
  スタンド名は『ザ・グレイトフル・デッド』。オレの半径200メートル以内の生物は全て朽ち果てると知れよ」
こいつらは知っているため、対処法以外は教えても特に問題は無い。
無論、言葉尻にあまり人に言うなという事は匂わせているが。

「さて、そろそろ戻らないと勘付かれるね」
「気付かれてもオレの事言うんじゃあねぇぞ。つーか言ったらてめーも巻き込むからな」
「さっき仕方ないって言ったばかりだろ…ホント頼むよ」
肩を落としながらフーケがオスマンを連れて食堂に戻ろうとしたが、それを見て呼び止めた。
「待て。オメーなんつってそいつを連れてきた」
「え?ああ。咄嗟だったから借りがあるって言って………ああ、拙いか」
「どうしたんじゃね」
二人の視線の先には極めて元気そうなオスマンが写っている。
フーケは借りがあると言って連れてきたのに、このままというのは非常に拙い。

「まぁ、これも報酬の内だ。諦めろ」
「むむ。そりゃあ一体どういう」
感情の篭ってない声でオスマンにそう言ったが、今一状況が掴めていないようだ。
「いつも鼠を使って下着を除いたり、散々色んな所を撫でてくれた借りを返して貰うって事さ」
「えー、その、つまり…わし大ピンチ?」
杖を取り出し、無言で金属製の鞭を作り出したフーケを見てオスマンが後ずさったが見えない何かに捕まれた。
もちろん、グレイトフル・デッドである。

「と、年寄りをそんな乱暴に扱ったらいかん!平和的に、話し合いで解決をじゃな!」
「話し合いですか。確かにわたくしもこんな事はしたくありません」
「そ、そうじゃろう。だからここは一つ穏便に」
「だが断る。この土くれの最も好きな事の一つは、ボケジジイに裁きの鉄槌を下してやる事だ!」
「OH MY GOD!プロシュート君!ミス・モンモランシ!彼女を止めてくれんか!」
必死になって助けを求めたが、プロシュートは元より、モンモランシーも醒めた眼をしている。
「言ったろ。覚悟しとけって。纏めて老化させてりゃあ、んな目に遭わずに済んだんだよ」
モンモランシーは何も言わないが、土くれとは言え、それだけのセクハラかましていたのだからオスマン株最安値更新大暴落というやつだろう。

「さぁ、お仕置きの時間だ。殺しはしないから安心しな!」
何時に無く生き生きとしたフーケがそう宣言すると、夜も明けない学院に憐れなボケ老人の叫びが木霊した。

←To be continued


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