ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-28

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学院長室を退出したロングビルは、コルベールがいる図書室ではなく、その足で下の階にある宝物庫へと向かった。
階下に着いたロングビルは、鉄の巨大な扉を見上げる。
扉にはぶっとい閂がかかっていて、その閂もまた、巨大な錠前で守られていた。
この宝物庫には、魔法学院成立以来の様々な秘宝が納められているのだ。
ロングビルは、慎重に辺りを見回し、ポケットからエンピツほどの長さの杖を取り出した。
ロングビルが手首を振ると、するすると杖は伸びて、指揮棒ほどの長さになった。
仕込み杖だ。
ロングビルは、低い声で『アンロック』の魔法を唱え、錠前に向けて振った。
が……何の反応もない。
もちろんそれは想定内だ。
ロングビルはくすっと笑うと、自分の十八番である『錬金』の呪文を唱え、分厚い鉄のドアに向かって杖を振った。
が……やはり何も変化は無い。
これも予測済みだったが、自分の特技をあっさり跳ね返されて、ロングビルは少しムッとした。

「スクウェアクラスのメイジが、『固定化』の呪文をかけているみたいね…」
ロングビルはポツリと呟いた。
『固定化』は、物質を酸化や腐敗から保護する魔法だ。
物質をそのままの状態で文字通り永遠に固定化する。

これでは『錬金』の魔法も形無しだ。
自分が、その相手よりも格上のメイジなら話は変わってくるが、生憎とロングビルは『トライアングル』だった。
ロングビルはかけたメガネを持ち上げて、扉に手を当てた。
そして、コツコツコツと規則正しい足音をさせながら、ロングビルは扉に当てた手をするすると滑らせた。
別段意味など無いのだが、これから彼女の獲物となる相手を確かめたいような気持ちが、彼女をそうさせた。
---と、不意に手のひらに違和感。
ロングビルは片眉を上げて、その箇所をまじまじと見つめた。
よく見ると、その部分には、不可思議な凹みがいくつもいくつも刻まれていた。
ロングビルはさらに目を凝らして、それが何かわかった瞬間あっと声を漏らしそうになり、慌てて口を押さえた。
これは……拳だ。
壁を殴りつけた拳の跡が、無数に刻まれているのだ。
ロングビルは一瞬分けが分からなくなった。
この拳の後は、つい最近つけられたようだ。
少なくとも『固定化』がかけられた後につけられたものだ。
ロングビルはすぐさま頭で否定した。
…バカな。スクウェアクラスのメイジがかけた『固定化』を、生身で打ち抜ける人間なんて、この世に存在するはずがない。

だが、事実、壁には無数の凹みからくるヒビすら刻まれていた。
しかも間近で見てみると、その拳はどうみてもそんな大男の物ではない。
子供か、それとも華奢な女性ほどの大きさしかない。
ロングビルは信じられないといった表情で、その拳跡の一つに指で触れた。
---すると、ビシッという音を立てて、壁に刻まれている亀裂が大きくなった。
後悔しても時すでに遅く、一端きっかけを与えられた亀裂は、ロングビルが触った場所を中心に、
放射状に瞬く間に広がっていった。
そして、ガラガラと派手な音を立てながら、壁の一部が崩れた。

「……………………ウソ」
ロングビルは間抜けな声を出した。
信じられない…有り得ない…。
そんな言葉が頭の中でフラフープを回していた。
しかし結果は変わらない。
人一人は優に通れそうな穴が、ぽっこりと口を開けていて、中から煌びやかな光が漏れている。
ロングビルの頬に、冷や汗がつぅっと垂れた。
……まずい。
なんだかわからないが、壁が崩れてしまった。
このまま便乗して、仕事に入っても良いのだが、今は昼だ。
さっきの豪快な音を聞きつけて、教師達がすぐにもやってくるかもしれない…。
仕事に移るのは夜だ。

今は、なんとかやり過ごさねば…!
ロングビルは、悩みに悩んだ末、『レビテーション』を壁の破片にかけた。
壁の構成に変化を加えるわけではないので、破片はすんなりと浮かび上がった。
ロングビルはまさに指揮者のように杖を操って、破片を元の通りにはめなおし、穴を塞いだ。
無駄に力んだせいか、ロングビルはハァハァと息をあらげていた。
なんとかバレないくらいに体裁を整えたロングビルは、ふぅと一息ついた。
どうやら誰も気づかなかったらしい。
すぐ上にいるあの老獪なオールド・オスマンが気付かないのは腑に落ちなかったが、結果オーライだ。
ロングビルは杖をしまうと、逃げるようにしてその場から立ち去った。
早歩きで去っていく途中、ロングビルはさっき起こったことの原因を頭の片隅で考えていたが、ついぞ答えに行き着かないままであった。

ちょうどその頃、上の学院長室では、オールド・オスマンが、粉々に砕け散った『遠見の鏡』を前にして、いろんな意味で放心状態になっていた。
ロングビルは運がよかった。

to be continued……


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