ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

杖をとりかえしにいこう! その②

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匿名ユーザー

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無事フーケの隠れ家に着いたぼくら一行。そこは一見ただの炭焼き小屋だったが、
用心して他の人たちを少し離れたところで様子を見させ、ぼくが家を調べることになった。
もし中にフーケがいたら、ぼくがおびき出し、出てきたところを全員が魔法でしとめる、というわけだ。

「(この家から生命エネルギーは感じない。中に人はいないようだな……特に隠れるところもなさそうだし)」

誰もいないことを知らせた後、念押しでタバサが魔法で罠の確認をしてから中に入った。
続いてぼくとキュルケが入る。ルイズは外で見張っていると言った。
彼女一人残すのは少し不安だったが、そこまで離れるわけでもないし、ミスロングビルもついているので大丈夫だろう。

「とりあえず何か手がかりになりそうなものを探しましょう。隠れ家だとしたら何か置いてあるかも……」
「それにしても埃だらけね。本当にここが隠れ家だったの?」

確かにこの家はどの家具にも埃がたまっていて、人の住んでいる気配がなかった。
机を人差し指でなぞると、とたんに埃が塊となって指にたまるほどだ。
ミスロングビルの情報はガセネタだったのだろうか。

「ああもう、くもの巣が引っかかっちゃったわ。ジョルノ、ルイズ、早く出ましょう」
「ええ、特に何もありませんでしたし……タバサ?」

小屋の中は、一応家具がおいてあったものの不自然なくらいなにも置いていなかった。
このままいても無駄と思った矢先、タバサがなにかを抱えていた。

「それは……?」
「……破壊の杖」
「なんですって!?……破壊の……杖!?」
「な、なんでこんなとこに置いてあるのよ」
「……」

その箱の形は、確かにゴーレムが奪っていったそれと同じものだった。

「しかし、なぜ?」
「まあでもよかったじゃない。これもって早く帰りましょう
こんなほこりっぽいボロ小屋はもうこりごりよ」
「ちょっと、いいですか?」

ぼくはタバサから箱を受け取り、中をあけてみる。

「ちょっと、勝手に開けちゃっていいの?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

「……これは……馬鹿なッ! なんでこんなモノがッ!!」
「ああソレ、あたしも一度宝物庫で見たことあるけど、ヘンな杖よね。
杖の割には妙に太いし。材質も鉄かしら?」

そりゃあそうだ。なにせこれはこの世界のものではない。
これは……。

「きゃああああああああああああ!!!!」
「ルイズッ!?」

その時、ルイズの悲鳴が響き渡った。
ぼくは慌てて外へ飛び出そうとしたが、

ズドォン

という衝撃で屋根が吹っ飛ばされた。
取り除かれた天井から見えたのは青空と、巨大な怪物の影。

「あれは……ゴーレム!」

忘れもしない、ぼくを殺しかけた岩の巨人、ゴーレムだった。
ぼくが身構えようとしたとき、最初にタバサが前へ出て、杖の先から突風で攻撃する。
続いてキュルケもめまいがするほど強力な炎を撃つ。炎はゴーレムに襲い掛かる。
しかしッ! !ゴーレムには傷一つついてはいなかった。

「やっぱ無理よ! こんなやつにかないっこないっ!! 逃げましょう!」
「退却」

タバサは口に指を当て、合図の口笛を吹いた。
直後、風竜が小屋の前に降りる。

「ルイズも」
「わかった!」

僕は急いで小屋の外に出る。ルイズは一人、ゴーレムと対峙していた。
ルイズは何か呪文を詠唱し、ゴーレムに爆発を見舞うが、当然ゴーレムは無傷のままだ。

「ルイズッ! 戻ってください。杖は回収しましたッ!!」
「嫌よ。こいつは私が倒すわッ」

くそっ、こんなときにロングビルはなにをしているんだ!? まさか……。

「ばかな……ルイズッ、あなたは死ぬ気ですか!?」
「あなただってギーシュと決闘したとき言ったじゃない。『何かを成し遂げるには覚悟が必要』って。
それに魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃないわ……『敵に背を向けないもの』を貴族と呼ぶのよ!!」
「ルイズ、あなたの言っているのは『覚悟』じゃあない……『無謀』は『覚悟』ではない。
それは決して取り違えちゃいけません! とにかく今は逃げるんです!! ルイズ!」

嫌がるルイズを無理やり引っ張って、ゴーレムが襲う前に何とかタバサの龍に乗せることが出来た。
風竜は翼を広げ、空へと昇る。さすがにここまではゴーレムも追ってはこれない。

「ふう……とりあえず一安心ね」
「まだです、ミスロングビルがまだ……しかしどこに?」
「これ……破壊の杖?」

ルイズが例の箱を持ち上げた。その表情は心なしか、どこか思いつめた節がある。

「ええ、なぜかそれだけ小屋に置いてあったんです。罠の可能性もありますが、
とりあえず任務は果たせたようなので……」

ルイズは僕の話を聞いちゃあいなかった。僕はルイズの動向をもっとよく見ておくべきだった。

「タバサッ! 『レビテーション』お願い!」

言うが早く、ルイズは風竜から飛び下りた。あまりに突然のことだったので、ぼくは止めることが出来なかった。

「何をしてるんだルイズ――――ッ!!」

タバサは間一髪ルイズに魔法をかけた。落下するルイズの姿がゆっくりと減速していく。
同時に僕も飛び下りる。すぐ後にキュルケの叫び声が聞こえる。僕に魔法をかけるのに失敗したらしい。
だが問題はない。激突寸前、ゴールドエクスペリエンスの能力で茂みのクッションを作った。
ギリギリだったが、なんとか無傷で着地した。僕は茂みから転がり落ちるようにして、ルイズの姿を探す。

かなり離れた場所で、ルイズはまたゴーレムと対峙していた。その腕には『破壊の杖』をかかえている。

「くらえっゴーレム! このっこのっ……あれ?」

ルイズはそれをブンブンと左右に振ったが、当然何も起きない。
それは魔法の道具ではない。というよりたとえそうだとしても魔法がろくに使えないルイズが使えるとは思えなかったが。
僕は急いで駆け出す。

「早く逃げるんだルイズ――ッ!」
「どうしてよぉ! 破壊の杖じゃないの!? このっ、このぉ!」

ルイズが振り回している間にも、ゴーレムは眼前の邪魔者を踏み潰そうと一歩一歩近づいてきている。
間に合うか……。

「このっ……あっ…」

ようやくルイズは状況に気づいたらしい。既にゴーレムはルイズの頭上に足裏を見せていた。
あんなのに踏み潰されたら、まず無事ではいられないだろう。ルイズは恐怖のためか、その場で動くことが出来ない。

「危ないッ! ルイズッ!!」

一か八か、僕は全力をこめて前へ跳んだ。ルイズに抱きつくようにして、ゴーレムの足の着地点から脱出を図った。
ズドォンという、屋根を吹き飛ばしたときと同じ音を聞いた。
そして次の瞬間。

「うぐうああああああああああああッ!!!!」

右足に激痛が走った。危うく意識が飛んでしまうところだった。
いや、飛んでしまったほうが楽かもしれない。とにかく他の思考が出来ないほどの苦痛がぼくを襲う。

「ジョ……ルノ? ジョルノッ! 大丈……」

ぼくの下では、状況がわかっていないのか、戸惑ったような、心配したような声でルイズがぼくに呼びかける。
そして上半身を起こし、うずくまっているぼくの様子を見たようだった。

「あ、あ……」

ルイズは絶句したようだった。声も、ぼくの肩に触れている手も震えている。
僕はなんとか体をひねって右足を見る。
僕の右足はグシャグシャに折れ曲がっていた。ゴーレムの攻撃を受けたのだろう。
ズボン越しだが血が滲み出し、折れ曲がったそれは別の生物のように不気味だった。

「ぐうう……ルイズ……逃げてください……あなただけでも、早く……」

しかしルイズは聞いてなかった。顔面は血の気が引いて真っ白だった。
自分の引き起こした大惨事が理解できず、思考が一瞬停止してしまったらしい。
ゴーレムは未だ攻撃を続けようとしている。
ここまでか、と思った矢先、轟音とともにゴーレムがうめいた。
同時に竜の鳴き声も聞こえる。タバサとキュルケがゴーレムの注意をそらしてくれたらしい。本当に助かった。


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