ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

奇妙なルイズ-2

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匿名ユーザー

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「うーん…」
ルイズはベッドの上で目を覚ました。
どう見ても自分の部屋だ。
しかし何か違和感があった。大事なことを忘れているような気がしてならない。
ベッドから体を起こし背伸びをする。外は明るい。いつもの朝だ。
とりあえず顔を洗い、着替えて、鏡を見て身だしなみを整える。
欠伸をした時、ふと、鏡に誰かが映ったような気がした。
「…?」
ルイズは訝しげに部屋を見渡すが、自分以外は誰もいない。
目の錯覚だろう。そう考えたルイズは眠気が残ったまま部屋から出たが…
廊下を歩く同級生達と、その傍らを歩いたり飛んだりしている使い魔達を見て、
一瞬で目が覚めた。
「あーーーっ!」
ルイズの突然の叫びに一部の臆病な使い魔達が驚いているが、
同級生達にとっては、ルイズの失敗魔法ほどの驚きはなく、またかと言った表情でルイズの前を通り過ぎていった。

と、廊下にある戸がひとつ開く。中から出てきたのは褐色の美女、兼同級生、兼宿敵のキュルケだった。
「朝から騒がしいわねえ、どうしたのよ」
「…………」
放心状態のルイズにかまわず続ける。
「それにしても昨日のうちに召喚出来ないなんて残念ねえ。あ、そうそう、私の使い魔を見せて無かったわよね。この子が私の使い魔、フレイムよ」
キュルケの背後から現れたのは尻尾に火が点いた巨大なトカゲだった。

「火竜山脈のサラマンダー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
「………」
呆然としながらも、視線をフレイムに向けるルイズ。
それを見てキュルケが、今度は馬鹿にした含みを持たず素直に心配する。
「ちょっとあんた大丈夫? まだ時間はあるんだから、サモン・サーヴァントが成功するまで頑張んなさいよ」
「…あんたが同情するなんて、何よ、今日は雪?」
「なに言ってんのよ。『ゼロのルイズ』がどんな使い魔を召喚するのか楽しみなのよ」
クスリ、と何かを含んだような笑みを見せるキュルケに、思わず怪しむような視線を向けてしまう。
「あ、そうそう、あんた後でタバサにお礼言っておきなさいよ。倒れてたあんたを見つけて連れてきたのはあの子と…あの子のドラゴンなんだから」
そう言って、フレイムを連れたキュルケは食堂の逆方向へと歩いていった。
サラマンダーは種類によってはドラゴンに匹敵する使い魔として、高い能力を持つと教わった。
きっと、フレイムを見せびらかすために遠回りして食堂に行くのだろう。
それに比べて自分は使い魔を持つどころか、召喚に失敗。
その上ドラゴンを召喚したメイジもいると聞いて、あまりにも情けない自分に目眩がした。

朝食を取るために食堂に入る。もう既にほとんどのメイジ達は席に着いていた。
先生と生徒を含めた沢山のメイジ達が、ひとときの談笑を楽しんでいた。
周囲から聞こえてくる会話は使い魔の話ばかり。
今年はどんな種族が多かったとか、一番強そうなのは何だとか。
上級生である3年生は使い魔の値踏みを。
下級生である1年生は、使い魔を召喚した二年生への憧れを話し、
同級生である2年生は自分の使い魔自慢をしている。
召喚出来なかったルイズは、自分がバカにされるのを覚悟していたが、
皆自分の使い魔のことで頭がいっぱいらしく、自分のことを噂しているような声は聞こえなかったが、なぜか寂しい気がした。

しばらくして、朝食を終えた生徒達が教室へ移動を始める。
ルイズも教室へと移動し、適当な席に座った。
教室にはクラスメイトが召喚した様々な使い魔達がいて、少し騒がしい。
しばらくすると、土系統のメイジであり教師でもある『赤土のシュルヴルーズ』
がやって来て、授業が始まった。

授業は一年のおさらいと、練金に関する内容だった。
『火』『水』『土』『風』『虚無』
この手の話は、何度も何度も聞かされていた。
もう使い手の居ない伝説の属性『虚無』
ある者はそれに憧れ、ある者はそれを伝説だと笑う、
『ゼロのルイズ』とあだ名されるルイズにとって、『虚無』の魔法が伝説だと言われ笑われるのが、自分への皮肉にも聞こえた。
授業は進み、退屈な時間が過ぎていき…
ルイズは、机に突っ伏して眠ってしまった。

 『………!』
 『…倫……』
 『…!……徐………倫…!』

「ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
「授業中の居眠りとは何事ですか!」
突然の声に驚き、ルイズは飛び起きた。
こっちを睨んでいる声の主を見て、自分が居眠りしていたことに気づき、ルイズは慌てて謝った。
「す、すみません!」
「…それに、なんですか、その顔は。
練金をあなたにやってもらおうと思いましたが、それ以前の問題ですね。
早く顔を洗ってらっしゃい」
「はい…」
力なく答えて教室を出て水場に行く。水場に備え付けられた鏡で顔を見て、
やっと自分が泣いていたことに気付いた。

なんで泣いたのか分からなかったが、一つだけ思い当たることがあった。
夢の中でルイズは誰かと闘っていた。
その戦いの中で、敵を倒すか、娘を助けるかの二者択一を迫られたのだ。
一瞬の葛藤。けれども深い葛藤の末に、娘を助けることを選んだわたしは、
敵に切り裂かれて…そこで目が覚めた。

この涙は、敵を倒せなかった無念ではなく、娘の無事を願っていたのでは…
思わず涙を流しそうになり、それを誤魔化すかのように顔を洗った。


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