シエスタに案内してもらった先は食堂の裏にある厨房だった。
中に入ってみるとコックやメイドが忙しげに働いていた。その姿自体は地球のそれと大差は無かった。
厨房の隅の椅子に座らせてもらい、
(魔法で金属は作れても料理までは出来ないのか。魔法とは言え、万能とはいかないのか…)
と思っているとシエスタがシチューを持って来てくれた。
「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューですが…」
「いや、すまない。恩に着る。」
「いえいえ、困ったときはお互い様です。」
ポルナレフはこの世界に来て初めて他人から優しくされ、何年ぶりかの精神的、身体的安らぎを感じた。
冷めない内に、と言われたのでスプーンを取り一口食べてみる。
「…懐かしいな…」
「どうかしましたか?」
「いや、ただこのシチューの味がお袋が昔、作ってくれたのと同じ気がしてな…本当に美味しいよ。」
「そうでしたか。お腹が空いたら何時でもいらして下さい。
私達の食べているものでよかったら、お出ししますから。」
中に入ってみるとコックやメイドが忙しげに働いていた。その姿自体は地球のそれと大差は無かった。
厨房の隅の椅子に座らせてもらい、
(魔法で金属は作れても料理までは出来ないのか。魔法とは言え、万能とはいかないのか…)
と思っているとシエスタがシチューを持って来てくれた。
「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューですが…」
「いや、すまない。恩に着る。」
「いえいえ、困ったときはお互い様です。」
ポルナレフはこの世界に来て初めて他人から優しくされ、何年ぶりかの精神的、身体的安らぎを感じた。
冷めない内に、と言われたのでスプーンを取り一口食べてみる。
「…懐かしいな…」
「どうかしましたか?」
「いや、ただこのシチューの味がお袋が昔、作ってくれたのと同じ気がしてな…本当に美味しいよ。」
「そうでしたか。お腹が空いたら何時でもいらして下さい。
私達の食べているものでよかったら、お出ししますから。」
…この時、ポルナレフは心の内の半分しか話さなかった。
彼にとって食事自体が懐かしかったのだ。
しかし、まさか「死んでた」などと言っても信じられまいと思ったので黙っておくことにしたのだ。
彼にとって食事自体が懐かしかったのだ。
しかし、まさか「死んでた」などと言っても信じられまいと思ったので黙っておくことにしたのだ。
「ポルナレフさんは先程ご飯抜きにされたと言ってましたが何をなされたんですか?」
「うん…まあ私が悪いような気もするのだが…しかし半分は違う気もする。朝にちょいと揉め事があってな。授業後にもな」
ポルナレフが一部始終を語ると
「あはは、やっぱり半分は貴方のせいじゃないですか」
とシエスタは笑った。
その笑顔をまともに見れずポルナレフは辛そうに顔を背けた。
「うん…まあ私が悪いような気もするのだが…しかし半分は違う気もする。朝にちょいと揉め事があってな。授業後にもな」
ポルナレフが一部始終を語ると
「あはは、やっぱり半分は貴方のせいじゃないですか」
とシエスタは笑った。
その笑顔をまともに見れずポルナレフは辛そうに顔を背けた。
「さて、では約束通り何か手伝おうか。」
食べ終わると立ち上がってそう言った
「あ、別に気にしなくて構いませんよ。ゆっくりしていてください。」
「いやいや、これからも当分世話になるんだ。一方的に世話になってたんじゃ私の誇りに傷がつく。」
シエスタは遠慮がちに
「それじゃあ、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな。」
ケーキの並んだトレイをポルナレフが持ち、シエスタがひとつひとつ貴族に配っていく。(亀は厨房に残してきた。)
「あれ?あんな給仕いたっけ?」
「新入りだろ。多分」
「変な髪型だな」
(何で亀がいないと俺は使い魔だと気付かれないんだ?そんなに亀が好きか貴様等…。)
そんなことを考えているとふと金色の巻き髪に造花の薔薇をフリルのついたシャツのポケットに挿したキザな少年が友人達と何か喋っているのが目に入った。
食べ終わると立ち上がってそう言った
「あ、別に気にしなくて構いませんよ。ゆっくりしていてください。」
「いやいや、これからも当分世話になるんだ。一方的に世話になってたんじゃ私の誇りに傷がつく。」
シエスタは遠慮がちに
「それじゃあ、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな。」
ケーキの並んだトレイをポルナレフが持ち、シエスタがひとつひとつ貴族に配っていく。(亀は厨房に残してきた。)
「あれ?あんな給仕いたっけ?」
「新入りだろ。多分」
「変な髪型だな」
(何で亀がいないと俺は使い魔だと気付かれないんだ?そんなに亀が好きか貴様等…。)
そんなことを考えているとふと金色の巻き髪に造花の薔薇をフリルのついたシャツのポケットに挿したキザな少年が友人達と何か喋っているのが目に入った。
「なあ、ギーシュ!お前、今は誰とつき合っているんだよ!」
「誰が恋人なんだ?ギーシュ!」
「つき合う?僕にはそのような特定の女性はいないのだ。
薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」
それを見てポルナレフは若き日の自分を思い出した。
ああ、自分があいつぐらいの頃はなあ、と思い出に浸っていると、
ギーシュと呼ばれた少年のポケットから何かの液体が入ったガラスの瓶が落ちたのにシエスタが気付き、
ポルナレフを待たせて取りに行った。
しばらくすると茶色のマントを着た女子生徒が近寄って行き、平手打ちした後、
今度はまた別の女子生徒が近寄るなりワインを頭からかけた。
あーあ、可哀相にと同情していると少年は立ち上がり怒りにわなわなと震え、シエスタに何か叱り付けた。
シエスタが異常に怯えているので気になり、トレイを近くのテーブルに置き、騒ぎの方へ向かった。
「誰が恋人なんだ?ギーシュ!」
「つき合う?僕にはそのような特定の女性はいないのだ。
薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」
それを見てポルナレフは若き日の自分を思い出した。
ああ、自分があいつぐらいの頃はなあ、と思い出に浸っていると、
ギーシュと呼ばれた少年のポケットから何かの液体が入ったガラスの瓶が落ちたのにシエスタが気付き、
ポルナレフを待たせて取りに行った。
しばらくすると茶色のマントを着た女子生徒が近寄って行き、平手打ちした後、
今度はまた別の女子生徒が近寄るなりワインを頭からかけた。
あーあ、可哀相にと同情していると少年は立ち上がり怒りにわなわなと震え、シエスタに何か叱り付けた。
シエスタが異常に怯えているので気になり、トレイを近くのテーブルに置き、騒ぎの方へ向かった。
「一体どうしたんだ?シエスタ。」
「あ…ポ、ポルナレフさ…」
「なんだい君は!?無関係ならどきたまえ。」
やたら高慢な態度に出るのでムッとして
「やれやれ、これで三人目だぞ。女の子を泣かすのが趣味なのか?小僧。」
と返した。
「何だと…!」
「さっきの娘達も泣いてたぞ。
何だっけな?『薔薇は多くの人を楽しませるために咲く』だったか?
ありゃ嘘だな。『薔薇は多くの人を泣かせるために刺がある』が正解だ。」
周りにいるギャラリーがドッと笑った。
「その通りだッ!」
「もう何人も泣かしてるしな!」
そんなギャラリーを睨みつけ、ギーシュは言った。
「貴様…!平民なら平民らしく貴族に話を合わせれば良かったんだ!
だからそいつに罰を与えようとしたんだ!」
ポルナレフはもう呆れ果て、こいつはただの上っ面から出た馬鹿だな、と思った。
「俺だって恋は富や名声なんかよりずっと大切だと思う。
だが、二股はいかん。全てを失うし、最も女性に失礼かつ嫌われる行為だ。
それを責任転嫁するのはもっと下劣だ。
今回のことを教訓にして新しい恋をするんだな。小僧。」
と言い捨て、後ろを向くとシエスタを促し、さっさと仕事に戻ろうとした。
「あ…ポ、ポルナレフさ…」
「なんだい君は!?無関係ならどきたまえ。」
やたら高慢な態度に出るのでムッとして
「やれやれ、これで三人目だぞ。女の子を泣かすのが趣味なのか?小僧。」
と返した。
「何だと…!」
「さっきの娘達も泣いてたぞ。
何だっけな?『薔薇は多くの人を楽しませるために咲く』だったか?
ありゃ嘘だな。『薔薇は多くの人を泣かせるために刺がある』が正解だ。」
周りにいるギャラリーがドッと笑った。
「その通りだッ!」
「もう何人も泣かしてるしな!」
そんなギャラリーを睨みつけ、ギーシュは言った。
「貴様…!平民なら平民らしく貴族に話を合わせれば良かったんだ!
だからそいつに罰を与えようとしたんだ!」
ポルナレフはもう呆れ果て、こいつはただの上っ面から出た馬鹿だな、と思った。
「俺だって恋は富や名声なんかよりずっと大切だと思う。
だが、二股はいかん。全てを失うし、最も女性に失礼かつ嫌われる行為だ。
それを責任転嫁するのはもっと下劣だ。
今回のことを教訓にして新しい恋をするんだな。小僧。」
と言い捨て、後ろを向くとシエスタを促し、さっさと仕事に戻ろうとした。
「どうやら君は貴族に対する礼を知らないらしいな。」
振り向くとギーシュは杖を握りしめ、こっちを睨んでいた。
「知らんな。ただ、貴様より女性に対する礼は知っているつもりだが?」
またギャラリーがドッと笑った。
「良かろう。君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ。」
「後にしてくれ。貴様なんかよりこっちの仕事の方がずっと大切だ。」
と言い、仕事に戻ろうとした。が、
「おのれ!また侮辱するかッ!この腑抜けが!」
ギーシュが放った言葉にポルナレフの動きはピタッと止まった。
「小僧…貴様…死んでも知らんぞ…?」
ポルナレフは明らかにキレていた。
久しぶりに自分の誇りを侮辱されたのだ。しかも女性を泣かした下劣なこの馬鹿にだ。
「それでいい…」
ギーシュはニヤリと笑うとくるりと背を向け、キザったらしく
「ヴェストリ広場で待っている。ケーキを配り終わったら来たまえ」
と言って友達を連れ立ち去って行った。
ポルナレフはヴェストリ広場の場所をシエスタに聞こうとして、
彼女の顔が強張っているのに気がついた。
「あ、あなた、殺されちゃう……。貴族を本当に怒らせたら……」
と言い残し逃げてしまった。入れ代わりにルイズが近寄ってきた。
「あんた、何勝手に決闘の約束なんかしてんのよ!」
「まあ、そうなってしまったようだな。」
「あんた、謝っちゃいなさいよ。今ならまだ許してくれるかもしれないわ。」
「嫌だな。仮に謝ったところであいつは許さんだろう。俺だったらそうだからな。」
「分からず屋ね。絶対に勝てないし、あんたは怪我するわ。いいえ、怪我ですんだら良い方よ!」
「そんなこと、元の世界じゃしょっちゅうだったが、最後まで死ななかったから大丈夫だ。」
というとポルナレフは厨房の方へと歩いていった。
『ある物』取りに行くために…。
振り向くとギーシュは杖を握りしめ、こっちを睨んでいた。
「知らんな。ただ、貴様より女性に対する礼は知っているつもりだが?」
またギャラリーがドッと笑った。
「良かろう。君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ。」
「後にしてくれ。貴様なんかよりこっちの仕事の方がずっと大切だ。」
と言い、仕事に戻ろうとした。が、
「おのれ!また侮辱するかッ!この腑抜けが!」
ギーシュが放った言葉にポルナレフの動きはピタッと止まった。
「小僧…貴様…死んでも知らんぞ…?」
ポルナレフは明らかにキレていた。
久しぶりに自分の誇りを侮辱されたのだ。しかも女性を泣かした下劣なこの馬鹿にだ。
「それでいい…」
ギーシュはニヤリと笑うとくるりと背を向け、キザったらしく
「ヴェストリ広場で待っている。ケーキを配り終わったら来たまえ」
と言って友達を連れ立ち去って行った。
ポルナレフはヴェストリ広場の場所をシエスタに聞こうとして、
彼女の顔が強張っているのに気がついた。
「あ、あなた、殺されちゃう……。貴族を本当に怒らせたら……」
と言い残し逃げてしまった。入れ代わりにルイズが近寄ってきた。
「あんた、何勝手に決闘の約束なんかしてんのよ!」
「まあ、そうなってしまったようだな。」
「あんた、謝っちゃいなさいよ。今ならまだ許してくれるかもしれないわ。」
「嫌だな。仮に謝ったところであいつは許さんだろう。俺だったらそうだからな。」
「分からず屋ね。絶対に勝てないし、あんたは怪我するわ。いいえ、怪我ですんだら良い方よ!」
「そんなこと、元の世界じゃしょっちゅうだったが、最後まで死ななかったから大丈夫だ。」
というとポルナレフは厨房の方へと歩いていった。
『ある物』取りに行くために…。
To Be Continued...