ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ポルポル・ザ・ファミリアー-1

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その日のフランス国営航空92便パリ行きの旅客機には、大分奇妙な客が乗り込んでいた。
190センチ近い長身に筋骨隆々とした肉体。ただでさえ目を引く男だったが、何より奇妙なのは、
その男が人身事故に遭ったけが人のように、全身包帯だらけであるということであった。
さらに細かく観察すれば、その男の左指が二本ほど欠損しているのも見て取れただろう。

「ふう…」

男…J・P・ポルナレフは、窓際のシートに深く座ると瞑目する。
思い出すのは、彼のこの一月半ばかりの旅の記憶。

『これで肉の芽がなくなってにくめないヤツになったわけじゃな、ジャンジャン!』

『我が名はJ・P・ポルナレフ…我が妹の魂の名誉のために!
 我が友アヴドゥルの心の安らぎのために…この俺が貴様を絶望の淵にブチ込んでやる…』

『だずげでーーーーーーッ!!!!』

『ありゃおれの変装だ』

『ああそうだ思い出した。髪の毛をむしる時人間の顔の前で「へ」をするのが趣味の下品なヤツだった』

『手も足も出なかったけど出してやったぜ!ざまぁみろ!』

『お!あのニャンコ右へ行ったぞ!』

『アヴドゥルゥゥゥーーーーーーッ!!!』

『おれには悲しい友情運があるぜ、助けるはずのイギーに助けてもらったぜ…』

辛い旅だったが、楽しい旅だった。
友情を確かめ合った仲間も出来た。
失ったものも大きかったが、しかしポルナレフの胸は達成感で満たされていた。
後は飛行機に身を任せ、祖国へ帰るだけ。思い出深い祖国へ。
故郷の風景を思うと、ポルナレフの胸は躍った。
アナウンスからしばらくして、ジェットエンジンが低い唸りを上げ、軽いGがポルナレフに降りかかる。
せめて最後に、この国を鳥瞰しようと思い立ち、ポルナレフは目を開けて窓の外を見ることにした。
少しずつ旅客機の速度が上がり、旅客機が浮き上がる。

「さよならだ、アヴドゥル、イギー、花京院…」

流れる景色に、ポルナレフは旅の終わりを確信していた。
彼らが戦った国から、飛び立っていく旅客機。雲間に消えていく町並み。
いつしかポルナレフはうとうとと舟をこぎ始めた。あるいは達成感と安心感が、ポルナレフの精神を緩ませていたのかもしれない。
しかしッ!
『運命』はまだ彼を手離しはしなかったのだッ!!
突如、ポルナレフの眼前に光る鏡のようなものが現れたのだ。
ポルナレフのシートと前のシートの間に出現したそれは、瞬く間にポルナレフへと突撃してきた。
霞がかかっていたポルナレフの思考は弾けとび、次の瞬間暗転した。

「…」
「あんた誰?」

声がする。目を開けると陽光が、光になれない目をチクチクと刺した。

青空をバックに、一人の少女がポルナレフを覗き込んでいた。
ピンクの長髪にとび色の瞳。高校生くらいだろうか。ポルナレフは素直にカワイイ娘だな、と場違いにも思った。
頭がクラクラしていた。ここはどこだ。帰りの飛行機の中の筈だが…どう見てもそうは見えない。
ふいにさらさらと頬をなでる感触に気付いた。美しい草原に、ポルナレフは横たわっていた。
広い青空には真白の千切れ雲が浮いている。

「あれ?…俺は一体…なあ、ここはどこ」
「質問を質問で返さないで!わたしはあんたの名前を聞いたのよ!?」

有無を言わせぬ高圧的な声色で少女は言った。
予想外の返答だったので、ポルナレフは思わず気圧された。

「ポ、ポルナレフ…ジャン・ピエール・ポルナレフだ…」

起き上がりながらそう答える。
自己紹介してから、つじつまの合わないことに気付く。

『飛行機に乗って、離陸して…うとうとしちまって…
 夢なのか?戦いの連続だったから疲れてんのかな…こんなよくわからん状況…』

スタンド攻撃にしてはやけに風光明媚な景色だ。遠くには中世のような石造りの城も見える。
ふと見ると、少女の背後には、彼女と似たような格好をした集団がいて、こちらを見ている。
皆同じ色のマントと、星の印の入った留め金をつけている。よく見ると、大きな杖を持っている者もいた。
ファンタジィィィィーーーーな集団である。
そして目の前には自分を覗き込むカワイイ少女(ちょいと凹凸が足りないが)。


『俺はうとうとしていた…そしてこのファンタジーな状況…えーと、つまり…』

ポルナレフはひとつの答えにたどり着いた。

「なーんだ、夢か!じゃ寝よーっと!」

なんだかデジャヴュを覚えるが気にしない。
ポルナレフは再びゴロリと寝転がり、腕を枕にして睡眠を開始した。
そう考えれば、昼寝には絶好の状況だ。適度な日光と、青い草原のなんと心地よいことか。
夢の中で昼寝、なんてのもオツじゃないか。
少女が愕然とした顔でポルナレフを見ているが気にしない。どうせ夢の中のことだ。
ナンパだったら祖国に帰ってからしよう。今は包帯だらけでちょいと体裁が悪いが、傷が癒えたら…

「グガーーーー……」

ポルナレフの意識はあっという間に闇へ沈んでいった。
正直ある程度の矛盾は無視できるくらい、彼の疲労は蓄積していたのだ。
何故、夢の中にまで疲労感を持ち越しているのか?
何故、夢の中で眠れるのか?
そんなことはどうでもよろしかった。

「グゴーーーー……」

少女…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはまさに愕然としていた。
春の使い魔召喚。魔法学院の神聖な行事。
『サモン・サーヴァント』にも失敗しまくり、何度目かの挑戦でやっと何かが出現したときは嬉しかった。
自分は少なくとも、使い魔も呼び出せない落ちこぼれではなかったと、胸が震えた。
しかし、現れたモノ…自分の使い魔は、平民。どこの馬の骨ともわからん平民。しかも包帯だらけの傷だらけだ。

「おい、ゼロのルイズが呼び出した平民、眠りだしたぞ!」
「平民を召喚しただけでアレなのに、契約もできんのか、やっぱりゼロのルイズだな!!」

背後から自分をはやし立てる声が聞こえる。
担当教官のコルベールにやり直しも求めたが、「やり直しは許可しないィィィーーー!!」と突っぱねられた。
この平民と契約を交わさねばならないのだ。どうしても。
しかし、このド畜生は契約の前に、こともあろうかイビキをたてて眠り始めたのだ。
ただでさえ平民なんか召喚して同級生にはやし立てられているのに…
有り体に言えば『飼い犬に首輪をつけようとしたら昼寝しはじめた』のと同じようなものだ。

「グゲェーーーーー……」

平民がことさら大きなイビキをかいた瞬間。

「……この……この……」

ルイズの中で何かが切れた。決定的な何かが。

「……ド平民がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ボゴン!

「ドベェーーーー!!」

気が付いたら、平民…ポルナレフと名乗っていた…の横っ腹に、ルイズの爪先がぶち込まれていた。
悶え苦しむ平民の、がっちりしたアゴをひっつかみ、にらみつける。

「あんた、感謝しなさいよ。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから。」
「…へ?」

未だ苦悶の表情を浮かべる平民を無視して、ルイズは呪文の詠唱を始める。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

杖を平民の額に置く。
そして…

「ちょ、ちょっとキミ…」

ズギュウウウウウン!!!

うろたえる平民を無視して、口付けた。
平民は目を丸くしている。ルイズだって恥ずかしかった。
なんてったってファーストキスだ。
そっと唇を離す。平民はまだ何が起こったか理解できていない顔だ。

「い、今の感触…」
「?」
「夢じゃねえ!!ホンモノだ…!!」

ポルナレフは困惑していた。
いきなりトーキックをわき腹にぶち込まれたと思ったら、今度はキス。
スタンドも月までぶっ飛ぶ衝撃だった。しかもどうやら夢ではない…

「っぐぅ!?」

いきなり左手に熱を感じた。
焼き鏝を当てられるような熱に、ポルナレフはすっかりそっちに気を取られ、草原を転げまわる。

「あちちちちち!!」
「すぐ終わるわ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ。うっさいわね」

ルイズは内心安堵していた。
『コントラクト・サーヴァント』はどうやら一発成功だったようだ。
しかし、その後のことを考え、ルイズは再び困惑する。
この平民を、果たして使い魔として使役できるのだろうか。見たところ傷だらけで、とても使い魔の任を果たせるようには思えない。
熱さで悶える平民を尻目に、ルイズは頭を抱えていた。
しかし、ルイズはまだ知らない。
この誇り高き騎士(ナイト)の真の実力を…

to be continued…->

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