ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ポルポル・ザ・ファミリアー-2

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匿名ユーザー

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「で、お前の話を総合するとだ」
「お前って、あんた何様のつもり?わたしは・・・」
「まあそうカタイこと言うなって。話が進まねえだろ・・・で、ここはハルケギニアとかいう大陸の、トリステインという国で」
「・・・うん」
「この建物は魔法使いの学校」
「そうよ」
「貴族・・・メイジは魔法使いで、平民は魔法が使えない」
「常識よ」
「そんでお前は俺を何かの呪文で召喚して」
「サモン・サーヴァント」
「そうそう、そんで契約を交わして俺を使い魔にしたと」
「そ。左手のルーンがその証。」
「使い魔の仕事は主人の目鼻、耳になることと、薬の材料を集めること」
「一番大事なのは、主人を守ることよ・・・まああんたには全部無理そうだけど」
「つまりこういうことか?『つべこべ言わず、使い魔の仕事に従事しろ』・・・」
「Exactry(その通りよ)!」
「・・・お兄さん怒らないから、本当のこと言ってごら「あんたまだそんなこと言うの!?」

ポルナレフの現実逃避ぎみな問いかけを、ルイズはものすごい剣幕で遮った。
契約が終了したあと、なし崩し的にルイズと、彼女の母校である魔法学院へやってきたポルナレフは、
自分の主人を名乗るこの高飛車な少女からこの世界についての説明を受けていた。案内されたルイズの部屋は、ポルナレフが
想像したような女の子女の子したものではなかったが、フカフカのベッドとアンティーク風の家具が清楚に鎮座しており、
ルイズはベッドに腰かけ、ポルナレフは「そのベッドに手をかけるんじゃねェー!!わたしは上!あんたは下よ!!」
というルイズの厳命により床に座り込んでいた。
しかしポルナレフが気にしなければならないのはそんなことではない。
人が飛んでいくのも見た。飛んでいった集団の中に、明らかに自分の世界に居ない生き物が混じっていたのも見た。
キスの後、左手に妙な文字が浮き上がったのも事実(教師らしい禿の中年は、珍しいルーンとか言っていた。
同時に、指が二本欠けたポルナレフの左手にギョッとしていた)。
映画のセットとかそんなチャチなものでは断じてない、重厚な石造りの建物に自分が今いるのも、紛れもない現実。
しかし、ポルナレフは信じたくなかった。願わくば夢の中と思いたかった。
…ことごとくその願望は否定されてしまっているが・・・

「いい加減現実を受け入れなさいよ!っていうか魔法もメイジも知らないってどこのド田舎から来たのよ!?
 大体あんたの言うフランスなんて国、わたし聞いたこともないわ!」
「俺の祖国をバカにするな!!・・・いいか、俺はハルケギニアなんて大陸は知らんし、魔法が使える人間なんて聞いたこともない!
 それに!!」

ズビシっと窓の外を指差す。

「俺の世界に月はひとつしかない!!」

 ド―――――z______ン !!

ガラス窓の向こうには、二つの月が寄り添うように浮かんでいた。
宵闇に煌々と映えるそれらは、ポルナレフが見慣れた月よりもいくらか大きかった。
時刻は既に夜。先ほどから、ずっとこの調子で言葉の殴り合いは続いている。
基本的に女の子にはやさしいポルナレフだが、ルイズの余りにも居丈高でツンツンした態度につられてヒートアップしてしまっていた。
さすがは犬とも全力でやりあう男である。 

「・・・あんたがいた世界ってのは、月がひとつしかないの?ド田舎出身だからって嘘ついてんじゃないでしょうね」
「誓って嘘はついてない。」
「・・・怪しい・・・」
「嘘はついてないって!」
「ボロボロなのが怪しさを倍増させるわ・・・」

なんという堂々巡り・・・
ポルナレフもさすがにくじけそうだった。

「なんでもいいから、元の世界に帰してくれよォ・・・」

というかくじけていた。
泣きそうな声でポルナレフは懇願する。
パニックからではない。純粋に帰りたかったのだ。
敵討ちを果たし、旅を終え。これから彼の希望ある新しい人生が始まるはずだったのだ。
悔しくないはずがなかった。
ルイズも、絶対声に出して認めてはやらないと決心していたが、長々とした言い合いからそれは理解できた。
ポルナレフが話す、余りに詳細な異世界の様子。それを如実に示すような物は無かったが、
その話は貴族のルイズにも漠然と『別の世界』を信じさせるに足るものだった。
脱力気味におどけてはいるが、誠実で、嘘をついているようには見えないポルナレフの態度からも、それが『正しい』ことは伺えた。
しかし、ルイズとしてはそれに同情の意を示したり、ましてや元の世界に帰ろうとするポルナレフに協力する、なんてわけには行かない。
もとよりそんな方法も知らない。
こいつを使い魔として、立派に使役できるようにならねばならない。使い魔の契約は使い魔が死ぬまで。それこそ一生モノ・・・
ルイズの決心は固かった。
しかし自負は十分なのであるが・・・いかんせん相手は一歩も引かないし、ルイズにポルナレフをねじ伏せるような弁舌はないしで、結局
情報交換の名を借りた言い争いに帰結してしまっていたのだ。

「無理よ・・・世界と世界をつなぐ魔法なんて聞いたことない」
「そんなぁ!じゃあ何で俺はここにいるんだよ?」
「知らないわよ・・・あぁ、なんでこんな面倒臭い使い魔を召喚しちゃったのかしら・・・」
「こっちの台詞だ、バカ・・・」

ついに言い争いも面倒になって、双方、がくっと頭を垂れる。
『元の世界談義』がダブルKOで終了したのを皮切りに、ちょっぴり頭の冷えたポルナレフは、冷静に自分のおかれた状況を考える。
右も左もわからない異世界に、何の因果かわからないがやってきてしまった。知り合いも居ない。法制度、通貨、交通手段、
全部わからない。おそらく中世に近い世界観であることはかろうじて考察できるが何の足しにもならない。
…頼りになるのは、この生意気な娘っ子だけ。ポルナレフは『覚悟』を決めた。

「おい」
「あによ」
「ルイズといったな・・・なってやるぜ、お前の使い魔に」
「なによ、その口の聞き方は。そこは・・・」
「ただぁし!俺が元の世界に帰れる方法を見つけたら、遠慮なく帰らせてもらう。いいな!?」
「いいわ。わたしとしてもそっちのほうが好都合よ。あんたがいなくなれば、新しい使い魔を召喚できるものね」

そう口では言うが内心嬉しくなったルイズは、ふとポルナレフ自身のことについて、話すことを思いついた。

「あんた・・・いろんなとこ怪我してるみたいだけど、やっぱりその『元の世界』で?」

ルイズがずっと気になっていたことを言葉に出すと、不意にポルナレフの顔が暗くなる。

「名誉の負傷だ」
「戦に出たの?あんた軍人?」
「違う・・・」

視線をそらし、遠くを見るような眼のポルナレフは、先ほどまでのコミカルな様子からは想像も出来ない、
何か重厚なものを感じさせた。

「だが俺にとっては、戦争よりも大事な『目的』を持った戦いだった・・・」

鋭い輝きを放つ眼が、再びルイズを見つめる。
今までルイズが会ったことのある男・・・同級生達や、親が決めた婚約者・・・とは違う、強い意志のこもった
瞳に射すくめられ、ルイズは言葉を無くした。
負傷したことに対する後悔は微塵も伺えない、それだけの『覚悟』を持った瞳だった。
それ以上そのことについて話すのは、今のルイズには出来なかった。

「・・・さ、さてと、喋ったら眠くなっちゃったわ・・・」

誤魔化して話題を切り替えることにしたルイズは、そう言ってベッドから立った。

「ところで・・・俺はどこで寝ればいいんだ?」
「・・・」

ここだっ。ルイズは思った。
使い魔に気圧されるわけにはいかない。上下関係をわからせてやらなければ・・・
ルイズは決心して、ビシィッと床を指差した。

「・・・マジですか?」
「ベッドは一つしかないもの」

ルイズはにべも無く言った。
そして、唐突に着ていたブラウスのボタンに手をかける。

「あ、ちょ、こら!何してんだ!!」
「寝るから着替えるのよ」
「俺がいるだろーがっ!恥じらいってもんがないのかおめーには!!」
「あんたは平民であり使い魔なのよ。使い魔に見られて、恥ずかしがるメイジなんていないわ」
「・・・」

貴族は皆こんな感じなのか。ポルナレフは愕然としながらも、放られた毛布を被って見ざるを決め込んだ。

「あ、そうそう。明日になったら、これ洗濯しといて」

しばらくして、毛布に何か当たった感触がしたのでそっと覗くと、そこにはホカホカの・・・

「パ・パンティぃーーッ!!?」
「いちいちうっさい使い魔ね・・・」

あわてて毛布を剥ぐと、ネグリジェに着替えたルイズが呆れた顔をしてベッドに潜り込むところだった。

「俺が洗濯するのか?これ・・・」
「普通の仕事は出来ないんだから、あんたの仕事は掃除、洗濯、雑用よ。当たり前でしょ」
「・・・俺の指の傷は、まだ塞がっていないんだが・・・」

言われてルイズはハッとする。
ポルナレフの左指は、薬指と小指の二本が欠損している。しかも傷を負って日が浅い。
水仕事なんてもってのほかだった。ルイズは逡巡する。
下手に優しくせずに威厳を保てる、何か上手い方法はないか・・・
いくら平民、いくら使い魔といっても、さすがにこれを厳命するのは無体だと理解はしていた。

「・・・わかったわよ!明日、医務室にいって治療してもらいなさい!」
「医務室・・・もしかして魔法で治してくれるのか?」
「そうよ。秘薬の代金とかはわたしが出すわ・・・全く、世話の焼ける使い魔なんだから・・・」

そう言って、ルイズはベッドに潜り込んだ。
ベッドから腕だけ出して、パチンと指を鳴らすと、勝手に照明が落ちる。

「!・・・全く、とんでもねえぜ・・・」

ポルナレフも、毛布を被って寝転がる。
冷たい床の感触が傷に沁みた。

『家族がいなくて良かった・・・余計な心配かけさせるところだった・・・』

たった一人の肉親だった妹が三年前に死んでから、ポルナレフは天涯孤独だった。
彼の帰りを祖国で待つ人間は居ない。
そんなポルナレフの心残りは、ジョセフ・ジョースターとの「なにかあったらすっとんで駆けつける」
という約束を、もう履行出来ないことであった。

「ジョースター・・・さん・・・グー・・・」

傷の痛みに疲労が勝った。意識が闇に落ちる。
二つの月に見守られ、ポルナレフの使い魔としての生活が始まった。

to be continued・・・->

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