ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サブ・ゼロの使い魔-3

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匿名ユーザー

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変わったな、とギアッチョは思った。何が?他でもない自分自身がである。以前の自分ならルイズの甘言になど耳も貸さなかっただろう。躊躇無く中庭を凍結し、学院中を凍結しただろう。己のスタンドの最強を信じて疑わなかったし、実際無敵であった「例え時を止めるスタンドがいよーと、オレの敵じゃあねーッ」ギアッチョはそう確信していた。10人にも満たないチームで組織に反逆するなどという無謀に乗ったのも、自分の能力ならばボスですら倒せると思っていたからだ。しかし現実はどうだ?グイード・ミスタと新入り、ジョルノ・ジョバァーナ。ホワイト・アルバムが奴らの能力に劣るところは一つとしてなかったはずだ。しかしギアッチョは敗北した。何故か。
「答えは簡単だ・・・」
あなどっていたからだ。奴らを・・・そして世界そのものを。同じ「覚悟」をしているように見えても、結局ギアッチョは心のどこかで己の勝利を確信していたのだ。
「もう二度と・・・ブザマな思い上がりはしねェェーーッ」
皮肉にも―彼は死んでから成長した。


ギアッチョの話にルイズは聞き入っているようだった。自室に戻るなりルイズはギアッチョにあれやこれやと質問を投げかけたのだ。ギアッチョは「色々と聞きてーのはこっちのほうだっつーんだよォォーッ」と言いたかったが、こんなガキにいちいち目くじら立てることもないと思いなおし、とりあえずは質問に答えることにした。キレてさえいなければ常識的な判断も出来る男である。

「・・・それで、あなたは情報を奪おうとして・・・逆に殺されたのね」
自分が殺されたシーンをわざわざ反芻されるのは勿論気分のいいものではなかったが、
自分への戒めだと思い文句を言うのはやめた。それにいろんなことに意識が行っていて
気付かなかったが、よく考えればこいつは自分の命の恩人なのだ。少しぐらい不快に
なったからといってすぐにキレるのは礼節に欠ける行為だとギアッチョは思った。無論
我慢の限界が来れば1・2発ブン殴るのに躊躇はないが。

「はぁ・・・まさか別の世界から・・・しかも殺し屋を召喚しちゃうなんてね・・・」
最初は別の世界の存在を疑っていたルイズだが、話を聞き終わる頃にはもう
すっかり信じていた。何故って自動車だとかDISCだとか常人の頭で創作出来る話じゃ
ないと思ったからだ。実際原理を聞いた今でもさっぱり理解が出来ない。
「気に食わない奴がいりゃあいつでも暗殺してやるぜ。「依頼」とあらばな・・・」
と、そこでハッとルイズは気付いた。
「ちょ、ちょっと待ちなさい いくら使い魔だからって人を殺せば罰されるのよ!」
「問題ねーだろォ~?この世界のことは全然しらねーが、例えば・・・『決闘』なんかで
死ぬならよォォ」
何故だか一瞬キザったらしいクラスメイトの顔が浮かんだが、ルイズはブンブンと
顔を振ってそれを打ち消した。

「そ、そうじゃなくて・・・ ああもう、言い方が悪かったわ 人なんか殺す必要はないし
殺しちゃダメだって言ってるのよ!」
「それは命令か?主としてのよォ」
「りっ・・・理解出来ないのなら命令するわ 殺人は許可しない!」
「なるほどな ここはオレのいたような世界とは違うってことか」
「・・・解ればいいのよ」
「だが断る」
「何ッ!?」
「極力ご期待に沿えるよう努力はするがよォォ~ 絶対殺さないなんて約束は出来ねーぜ
特に相手が下衆野郎の場合はな・・・」
殺し屋に下衆野郎と言われる人間ってどんなのよ、とルイズはツッこみたかったが、
こいつはどんなタイミングでブチ切れるか解らないので「お願いだから殺さないでよ・・・」
と音量3割減で言うにとどまった。


その後あらかたギアッチョにこの世界の事を伝え終わったので、ルイズはさっさと
寝ることにした。―なんだか今日はどっと疲れたわ・・・―
しかしルイズがベッドに潜り込んだ時、「待ちな」というギアッチョの声が響いた。

「なっ、何よ」
もはや話しかけられただけで怯えるルイズである。
「肝心なことを訊くのを忘れてたぜ」
ギアッチョはそこで一呼吸置いてから、最後の質問をした。
「オレの世界によォォ・・・戻れる方法は―あるのか?」
暗がりでギアッチョの顔は分からなかったが、今までとはうってかわって沈んだ声
だったので―ルイズは事実を伝えるのをためらった。考えてみれば、人を殺すなどと
いう己の人生が賭かった仕事をバカみたいに安い報酬でやらされていたのだ。
殺人などしたくなかった者も中にはいただろう―果たしてギアッチョがどうだったのか
 ・・・それは分からなかったが―なのに反逆という命がけの訴えに対してボスから
もたらされたものは「死」だった。仲間が次々と死んでゆき、ギアッチョまで死んで
しまった今、生き残っているのはリーダーのみ・・・或いは彼ももう死んでいるかも
知れない。ギアッチョからすれば自分が死んでしまったからといって諦めのつく
事であるはずがないだろう。今すぐにでもリーダーの元へ駆けつけたいはずだ。
「・・・・・・私は知らないわ だけどこの学院の図書室なら使い魔を送り返す方法が
あるかも ・・・今度探してみるわ」
「・・・・・・そうか よろしく頼むぜ」
勘違いのようなものだとは言え自分を殺そうとした男だというのに、その言葉に
ルイズの胸は奇妙に締め付けられた。
「・・・あなたのリーダー ボスを倒せてるといいわね・・・」
「・・・ああ」
そう呟くと、ルイズは罪悪感を振り払うかのように眼を閉じた。


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