「事故死?」
「そ。詳細は分からないけどそのスジの情報だから確かよ。おかげで今朝から『家に戻れ』って家族が
うるさくて大変だわ」
「なんで王子の事故死とあんたの帰郷が関係あるのよ」
「はぁ・・・これだからゼロは・・・いいこと? おそらく今回の件で確実にアルビオンは負けるわ。
自分たちの頭か死んじゃったんだから」
「そりゃそうよね・・・ゼロっていうな」
「そうなれば次連中と戦うことになるのはどこ?」
「あ・・・」
「そ。詳細は分からないけどそのスジの情報だから確かよ。おかげで今朝から『家に戻れ』って家族が
うるさくて大変だわ」
「なんで王子の事故死とあんたの帰郷が関係あるのよ」
「はぁ・・・これだからゼロは・・・いいこと? おそらく今回の件で確実にアルビオンは負けるわ。
自分たちの頭か死んじゃったんだから」
「そりゃそうよね・・・ゼロっていうな」
「そうなれば次連中と戦うことになるのはどこ?」
「あ・・・」
そうだ。恐らくアルビオンのクーデターが成功すれば次は間違いなくこのトリスティンが狙われる。
間違っても新政府とトリスティンが和平を結ぶなんてことはないだろうし。
間違っても新政府とトリスティンが和平を結ぶなんてことはないだろうし。
「てわけで家族が戦争になる前に戻ってこいってさ。馬鹿馬鹿しい・・・トリスティンが落ちれば次はゲルマニアなのに」
キュルケの家系はそもそも戦好きだがだからと言って旧来の怨敵に手を貸す必要はない。そう考えているようだ。
「そう、じゃ戻るのね。せいせいするわ。あなたの顔見ないで済むと思うと」
「あら、私は寂しいわよ。頭脳がマヌケなあなたを見れなくなると思うとね」
「なんなら今ここで見れなくしてあげましょうか? 永遠に」
「遠慮しとくわ。それに生きてればまた会えるでしょ、戦場でね」
「いいわ。その時はヴァリエールの名の下に叩き潰してあげるわ」
「私もツェルプストーの名誉にかけて燃やし尽くしてあげる」
「あら、私は寂しいわよ。頭脳がマヌケなあなたを見れなくなると思うとね」
「なんなら今ここで見れなくしてあげましょうか? 永遠に」
「遠慮しとくわ。それに生きてればまた会えるでしょ、戦場でね」
「いいわ。その時はヴァリエールの名の下に叩き潰してあげるわ」
「私もツェルプストーの名誉にかけて燃やし尽くしてあげる」
そう言ってキュルケは立ち去った。恐らくもう会うこともないだろう。
ルイズ夕方までかかって片づけを済ませいざ自分の部屋に帰ろうとしたところ
「ミス・ヴァリエールですね?」
「そうですが、王国騎士の方が何用で?」
「姫がから勅命を受けてまいりました。城までご同行願えますか?」
「姫様が?」
「そうですが、王国騎士の方が何用で?」
「姫がから勅命を受けてまいりました。城までご同行願えますか?」
「姫様が?」
ルイズは城のアンリエッタの部屋に立っていた。
姫と会うのなんて何年ぶりだろうか。しかしなんで急に私なんかを。
そう考えていると、
姫と会うのなんて何年ぶりだろうか。しかしなんで急に私なんかを。
そう考えていると、
「・・・・・おっと。どうやら姫様のお客人が見えられたようです。私はこれで」
部屋から枢機卿のマザリーニが退出した。枢機卿はちらりとこっちを見ると何事もなかったように去って行った。
「・・・姫殿下。失礼いたします」
ドアを三回ノックしてルイズがドアを開けると、
「ああルイズ、よく来てくれました。私のことを忘れていたらどうしようかと」
「姫殿下を忘れる人間などこのトリスティンにいるはずがございません」
「もう、ルイズ。そういう形式ばった呼び方はよして頂戴。あなたにまでそういう態度を取られると悲しくなってしまいます」
「・・・わかりました、姫さま。しかし一体どうしたのですが? 私を及びつけになるなんて」
「姫殿下を忘れる人間などこのトリスティンにいるはずがございません」
「もう、ルイズ。そういう形式ばった呼び方はよして頂戴。あなたにまでそういう態度を取られると悲しくなってしまいます」
「・・・わかりました、姫さま。しかし一体どうしたのですが? 私を及びつけになるなんて」
もしかして私に何か任務を?
などとルイズが考えてると
などとルイズが考えてると
「・・・ルイズ!・・・ひっく、私、私は・・・・」
アンリエッタはルイズの肩を掴んで泣き出したのだった。
「ルイズ、あなたは知らないかもしれないけど、私は・・・アンリエッタはウェールズ様を愛しておりました」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
知っていました、といおうとしてルイズはやめた。無粋だと感じたからだ。
「昔よくあなたに影武者をしてもらいましたよね。告白するとあの時私はあの方に会いに行っておりました」
「・・・そうでしたか」
「あの方はいつも私の告白をはぐらかしました・・・そうですよね、私とあの方は所詮・・・」
「・・・そうでしたか」
「あの方はいつも私の告白をはぐらかしました・・・そうですよね、私とあの方は所詮・・・」
ひっく、うっくと再びアンリエッタは嗚咽を漏らす。
「今日、ウェールズ様が亡くなったと連絡を受けました」
「・・・・・・・・・」
「事故死だそうです。もとよりあの方は国と命を共にするつもりだとは分かっておりました。覚悟もできてました。
ですが・・・やはり事実を受け止めるのは辛い・・・辛いのです」
「姫さま、好きなだけお泣きなさい。今日だけは・・・今だけは始祖ブリミルをお許しになりましょう」
「ルイズ・・・・・・ルイズゥ~~~~~~~」
「・・・・・・・・・」
「事故死だそうです。もとよりあの方は国と命を共にするつもりだとは分かっておりました。覚悟もできてました。
ですが・・・やはり事実を受け止めるのは辛い・・・辛いのです」
「姫さま、好きなだけお泣きなさい。今日だけは・・・今だけは始祖ブリミルをお許しになりましょう」
「ルイズ・・・・・・ルイズゥ~~~~~~~」
アンリエッタは子供のように泣きじゃくった。今まで姫と言う立場上泣けなかった分。ただひたすらに。
それこそ涙を流しすぎて眼がベコベコにならないか心配な位に。
それこそ涙を流しすぎて眼がベコベコにならないか心配な位に。
それから一時間ほどしただろうか。泣き疲れたアンリエッタをベットに寝かせ、ルイズは部屋を退出した。
「ミス・ヴァリエール殿」
扉の横には枢機卿マザリー二が立っていた。
「城門までお送りいたします」
「そんな、わざわざ枢機卿様が・・・」
「遠慮なさらずに。どうぞ」
「そんな、わざわざ枢機卿様が・・・」
「遠慮なさらずに。どうぞ」
しばらく二人で廊下を歩いていると
「ありがとうございます」
「え?」
「殿下がああやって自分を包み隠さずぶつけれるのはあなたぐらいです。ほんとうにありがとうございました」
「いえ、そんな・・・」
「殿下は今朝ウェールズ皇太子の訃報を聞き、大変ショックを受けておられました。
それこそこのまま気が触れてしまわないか不安なくらいに」
「・・・・・・ウェールズ皇太子は本当に事故死なのですか?」
「アルビオンに潜ませている間者からはそう報告を受けておりますしアルビオン王国からも正式に報告を頂きました」
「・・・そうですか」
「しかし・・・いくつか腑に落ちぬ点はございますがな」
「腑に落ちぬ点?」
「え?」
「殿下がああやって自分を包み隠さずぶつけれるのはあなたぐらいです。ほんとうにありがとうございました」
「いえ、そんな・・・」
「殿下は今朝ウェールズ皇太子の訃報を聞き、大変ショックを受けておられました。
それこそこのまま気が触れてしまわないか不安なくらいに」
「・・・・・・ウェールズ皇太子は本当に事故死なのですか?」
「アルビオンに潜ませている間者からはそう報告を受けておりますしアルビオン王国からも正式に報告を頂きました」
「・・・そうですか」
「しかし・・・いくつか腑に落ちぬ点はございますがな」
「腑に落ちぬ点?」
思わずルイズは聞き返した。マザリーニはしまったという顔をする。
しかしマザリーニはアンリエッタには絶対に言わない、という条件をつけて話を続けた。
しかしマザリーニはアンリエッタには絶対に言わない、という条件をつけて話を続けた。
「ウェールズ皇太子が発見されたのは深夜、玉座の間だそうです」
「玉座?」
「最初に発見したのは城の侍従。何かが倒れるような大きな音を聞いて玉座に向かったところそこには」
「ウェールズ皇太子が倒れていた・・・と」
「はい・・・もっとも最初はそれがウェールズ皇太子様だとは分からなかったそうです。
なにせ遺体は巨大な岩に押しつぶされもはや原型を留めていなかったそうですから」
「玉座?」
「最初に発見したのは城の侍従。何かが倒れるような大きな音を聞いて玉座に向かったところそこには」
「ウェールズ皇太子が倒れていた・・・と」
「はい・・・もっとも最初はそれがウェールズ皇太子様だとは分からなかったそうです。
なにせ遺体は巨大な岩に押しつぶされもはや原型を留めていなかったそうですから」
想像してルイズは口にすっぱいものが広がる。王族の死に様にしては酷い部類だろう。
「なぜ深夜に皇太子が玉座にいたのか、また彼を押しつぶした岩石はどこか落ちてきたものか当はまだ何も分かっておりません」
「・・・つまり事故死でない可能性もあり得ると?」
「穿った見方をすればそうなりますな。自殺か他殺か・・・どちらにせよトリスティンとしては渡りに船ですが。
姫にはとても言えませんがな」
「渡りに船? どうしてです、アルビオンが滅べば今度はこのトリスティンが」
「アルビオンはもうレコンキスタに降伏いたしました」
「・・・つまり事故死でない可能性もあり得ると?」
「穿った見方をすればそうなりますな。自殺か他殺か・・・どちらにせよトリスティンとしては渡りに船ですが。
姫にはとても言えませんがな」
「渡りに船? どうしてです、アルビオンが滅べば今度はこのトリスティンが」
「アルビオンはもうレコンキスタに降伏いたしました」
「!」
ルイズの目は驚愕で見開かれる。
アルビオンが降伏? こんなに早く?
ルイズの目は驚愕で見開かれる。
アルビオンが降伏? こんなに早く?
「自分たちの主人の凄惨な死に様を見てどうやら残った王族や貴族連中は完全に戦意を喪失されたようで。
これも先ほどアルビオン新政府から連絡を受けました」
「それなら尚更危険じゃないですか!」
「それが外交の不思議なところでしてな。皆殺しなら早く済むことも降伏されると面倒になるのですよ」
これも先ほどアルビオン新政府から連絡を受けました」
「それなら尚更危険じゃないですか!」
「それが外交の不思議なところでしてな。皆殺しなら早く済むことも降伏されると面倒になるのですよ」
相手が最後まで降伏しなければ殲滅の後新政府を樹立し外交なり戦争なりへ進めることができる。
しかし降伏された場合樹立と外交、戦争の間に裁判というものが割って入る形になる。
無論人権など無視して皆処刑してしまえば大して変わらないだろうが、そうなれば外交の道はなくなる。
降伏した相手を皆殺しにする連中が和平を申し込んできても信用できるわけがない。
戦争するにも今の状態でトリスティンゲルマニアを敵に回すのが圧倒的不利になる。
結局正式に裁き、他国の信用を得る必要があるのだ。
しかし降伏された場合樹立と外交、戦争の間に裁判というものが割って入る形になる。
無論人権など無視して皆処刑してしまえば大して変わらないだろうが、そうなれば外交の道はなくなる。
降伏した相手を皆殺しにする連中が和平を申し込んできても信用できるわけがない。
戦争するにも今の状態でトリスティンゲルマニアを敵に回すのが圧倒的不利になる。
結局正式に裁き、他国の信用を得る必要があるのだ。
「っと、つきましたな。・・・くれぐれもさっきの話はご内密に。いやはや、どうにも今回の件腑に落ちぬ件が多すぎて
私もいろいろと鬱憤が溜まっておりましてな。お許しを」
「いえ、枢機卿様。いろいろと貴重なお話をありがとうございます。姫さまのことよろしくお願いします」
「心得ております。ところで・・・」
私もいろいろと鬱憤が溜まっておりましてな。お許しを」
「いえ、枢機卿様。いろいろと貴重なお話をありがとうございます。姫さまのことよろしくお願いします」
「心得ております。ところで・・・」
マザリーニは足元を指差していった。
「それは、あなたの使い魔ですかな」
ルイズの足元にはいつのまにかローリングストーンが転がっていた。
「きゃっ! あんた見ないと思ったら・・・もう帰るんだからじっとしてなさいよ」
「やはり使い魔でしたか」
「申し訳ございません! なにぶん昨日契約したものでまだ躾が済んでおりませんので・・・」
「ふむ・・・」
マザリーニはじろじろと岩を眺める。が、すぐにルイズに向き直った。
「やはり使い魔でしたか」
「申し訳ございません! なにぶん昨日契約したものでまだ躾が済んでおりませんので・・・」
「ふむ・・・」
マザリーニはじろじろと岩を眺める。が、すぐにルイズに向き直った。
「いえいえ、使い魔なら構いませぬ。魔法学園までは馬車を準備してますのでお気をつけて」
ルイズの乗った馬車を見送りながらマザリーニはさっきに岩について考えた。
似てるのだ。今日報告のあったウェールズを押しつぶした岩石と特徴が。
昨日契約したという話だしまぁ偶然だろう。
そう思い城へと戻ろうとしたマザリーニはあることに気づく。
似てるのだ。今日報告のあったウェールズを押しつぶした岩石と特徴が。
昨日契約したという話だしまぁ偶然だろう。
そう思い城へと戻ろうとしたマザリーニはあることに気づく。
「はて? ルイズ殿は使い魔を馬車に乗せられたのだったか?」
振り向くと岩はどこにもなかった。いつの間に・・・と思ったがマザリーニはそれ以上考えるのをやめた。
ルイズは学園に戻ると礼拝堂に向かった。
せめてウェールズ皇太子に冥福を祈ろうと思ったからだ。
せめてウェールズ皇太子に冥福を祈ろうと思ったからだ。
「・・・・・・・・・」
ルイズは手を組み瞑想する。今日はいろいろあった。
しかし・・・ウェールズは本当に事故死なのだろうか?
マザリーニの話を聞いたルイズは彼の死に疑問を持った。
ウェールズには彼女も何度かあったことはあるが、彼は貴族の、王族の鏡のような人だった。
決して国民を捨てて死を選ぶような人ではない。
だとすれば・・・やはり。
しかし・・・ウェールズは本当に事故死なのだろうか?
マザリーニの話を聞いたルイズは彼の死に疑問を持った。
ウェールズには彼女も何度かあったことはあるが、彼は貴族の、王族の鏡のような人だった。
決して国民を捨てて死を選ぶような人ではない。
だとすれば・・・やはり。
「・・・・・・・・・彼は運命を受け入れただけです。『死』は彼のすぐ側までやってきていた。
だから彼はその運命を受け入れたのです」
「!!」
だから彼はその運命を受け入れたのです」
「!!」
誰もいない礼拝堂から声が響く。
いや、いないわけではなかった。暗い礼拝堂の奥に誰かがいた。
いや、いないわけではなかった。暗い礼拝堂の奥に誰かがいた。
「人は運命には逆らえない・・・彼も私も・・・無論君もね」