ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

『女教皇と青銅の魔術師』-3

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ギーシュの私室にて 午後3時
主と使い魔は召喚されてから約二日を経て、初めての意見交換を行っていた。
起きた瞬間暴れ出そうとしたミドラーを、グチャグチャに折れた左手で制止することから始まった話し合いは、
双方の微妙な誤解が解けぬまま進行していた。

ミドラーはエルフなど知らなかったのだが、ギーシュの生暖かい配慮(まあ、人間社会で名乗れないか)により
ギーシュの頭の中では
 ・DIO族長を崇めるエルフの里出身
 ・出身地のエジプトという里は色々な物が魔法で作られて繁栄しているらしい
 ・腕利きであったミドラーは国境付近で人間に変身して人間の侵入者を撃退しようとしたが、返り討ちにあった。
ということになった。
人間とエルフの戦いの情報は初耳だったギーシュだが、エルフに対して人間側が攻勢だと知って驚いていた。
(世界は広いな…エルフ相手に互角以上に戦えるメイジが沢山いるのか…)
明後日の方向に感心するギーシュ。

対するミドラーは
 ・ここはハルケギニアとかいうど田舎の、トリステイン呪術専門学校らしい。…エンヤ婆
 ・土水風火の魔法、とか云っていた。そういえば水はンドゥールが使っていた。
 そうするとここはタロットやエジプトの神に分類されないスタンド使いの養成所だろうか?
 ・海岸で倒れていたところを、遠距離の召喚魔法で拾われたらしい。
と、こちらも一部間違っている。
(どうやらヨーロッパの山中にある未開の国か?ここは)
ミドラーは中東から出たことが無かった為、砂漠地帯に居る少数の遊牧民のことを考え、
ヨーロッパにもそういう車などの文明を拒否する地方があるのか、程度の理解であった。

怪我の手当てをしながら、運ばせた夕食を食べながら話し合いは続く。
そして、話題が今日の昼の事件にさしかかる。

「あの爺、何者?」
震えそうになる手を隠してミドラーが問う。
(あれほどの凄み…DIO様にすら匹敵する!)
どう表現するか迷ったが、簡潔に応えるギーシュ
「伝説のメイジで、この国で一番の凄腕で、この学院の院長。
 あとそれと、このままだとばくらは師に殺される。」
「何よそれ!」

ギーシュは絶望に必死で抗いながら真実を告げる。
「師は『皆の前で証明しろ』と言われた」
「示せ、じゃない。証明しろ、だ」
「演舞だろうがなんだろうが、心の中まで示すことはできない」
「だから」
「皆の前で、証文を取った上で、真剣勝負をして、ぼくが勝つ」

ミドラーは、
(この子、馬鹿だと思ってたけど…予想以上ね…)
心底あきれていた。



「ねえボウヤ、今日アンタあの食堂で私の力、見たのよね?」
「もちろん」
「アンタ、あの吹っ飛ばされた奴らよりも強いの?」
「単純魔力で計算して、最初に吹っ飛ばした奴の、だいたい4分の1」
「打ち合わせして八百長?」
「即バレして二人纏めて殺される」
「その左手みたいな…よく判らない何か使う気?」
「そんなものは決闘じゃないって即殺されるよ」
「じゃあ…」

ギーシュは激発して立ち上がる。
「だ・か・ら!
 どうして気がつかないんだよ!
 師はもうぼくらを殺す気でいるんだよ!
 難癖を一つでもつける余地があったら死!
 決闘をする、しないの選択は無いんだ。
 あるのは決闘してどうなるか、だけなんだ!」



師の気に入らない事は何か?おそらくそれは『覚悟のできていない行為』
生き延びる為には、この凶悪なエルフを実力でねじ伏せ服従させなければならない。

「…そっちの最低限の保障はする。
 決闘に勝てたら、ぼくの遺産の一部を持って学院を出られるようにしよう。
 少なくとも学院を出るまでは命の保障はある。
 全力で逃げればもしかしたら逃げ切れるかもしれない」

「僕が勝てば使い魔に。負ければ僕は死んで君は自由だ。
 自由といっても多分、オスマン師は追っ手をかけるだろう。
 けど面子もあるから学院では襲ってこない。時間は稼げる。
 当座の資金と時間を得た上でここから出られる。悪い話じゃない」

ギーシュは真剣な目をして申し込む。
「この決闘、受けてくれ、ミドラー」
自らの命を賭けたその迫力に気圧される様に、ミドラーは頷いた。


その後。
今日は先生のところで治療受けてそのまま病室で一泊してくる、というギーシュを見送った後、
窓から外を眺めたミドラーは取り乱してギーシュを追いかけていた。
あまりの剣幕にすれ違ったマリコルヌがへたり込んでいたが放置。
病室のドアを蹴破る様にしてギーシュに詰め寄る。
「ちょっと!何で月が二つもあるのよ!」
麻酔で頭が曖昧になりつつあったギーシュは訥々と答える。
「そりゃ、月が二つなのは当たり前だろ?」
「普通、月は一つしか無いわよ!」
曖昧なままギーシュは考える。
確かどっかの蛮族は…月はそれぞれ16個あって日替わりで昇る、とか云っていたが…一つ、というのは初耳だ。
まあ隔絶された里にいたのでは天文学の学びようもないか、と納得する。

「いいかい、ミドラー。
 土地によって見える星は違ってくるんだ。
 何でも、極寒の地方では太陽が一日中沈んでいたりするらしい。
 君がいたエジプトとかいう里では一つしか見えてなかったのかもしれないが、本当は二つある。
 片方が地平線の下に隠れて見えてなかっただけだよ」

あまりに当然のように云われミドラーは言葉に詰まる。
云われてみれば自分は天文学など知らない。昇らぬ太陽も初耳だ。

「ほら、先生がびっくりしてるじゃないか。今日の所は僕のベッド使っていいから休んでてくれ」

納得がいかないながらもギーシュの私室に戻る。
途中、何度も月を見上げては
「…そういうものなのかなあ…」
と首を傾げるミドラーであった。

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