ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

凶~運命の使い魔~第三岩

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familiar_spirit

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男はどこにでもいる平民の風体だった。
しかしその男の雰囲気は明らかに平民のものとは別格だった。
なんというか・・・悟りを開いた坊主というか・・・そんな感じの雰囲気だ。

「あなた誰? この学園の人間じゃないわね、名を名乗りなさい」

しかし男はその質問には答えず、変わりにルイズを驚愕させる言葉を吐いた。

「彼は・・・ウェールズ君といいましたか、彼はもうすぐ死ぬ運命でした」
「! あんた・・・」

ウェールズ皇太子の死はまだ公にはされてないがキュルケを筆頭に噂として囁かれていた。
まだ噂のレベルではあるが。
しかしこれはそんな瑣末な問題じゃない。明らかに男は確信を持って言っているのだ『死んだ』と。
            ・ ・
「彼は自分の死の・・・いや死後の運命を知った。死んでもなお自分の愛する人を苦しめると知った彼は
 岩を・・・運命を受け入れた。岩は彼を・・・二度と利用されぬよう粉々に叩き潰した。決して生き返れないように」
「あは・・・なにいってんのよあんたわけわかんない・・・要するにあなたが皇太子を殺したってことね」

ウェールズ皇太子が岩石につぶされて死んだのはまだ公になってない。知ってるのは城の一部の人間と犯人だけ。
必然的に目の前に不審者はウェールズ殺しの下手人となる。

「それは違う。言ったはずだ、彼は運命を受け入れたのだと。私自身何故ここにいるかは皆目見当がつかない。
 考えられるとすれば私は岩が刻んだ相手に説明を行う・・・ただのメッセンジャーなのだろう」
「だから意味が分からないって言ってるでしょ! 人を馬鹿に・・・」

ルイズはその男が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
いや全部分からなかったわけじゃない、ただ『岩』と言う単語だけは理解できた。理解してしまった。

「岩は死期の近いものの前に現れる。自らに彫られた運命の力で動くスタンド。
 それが『ローリングストーンズ』」
「あ、あんたがなんでその名前を知ってるのよ・・・冗談でしょあいつは私が呼び出した使い魔・・・」

「ふむ、君も同じ名をつけたのか。私はこの世界のルールもしきたりも何も知らない。
 君が呼び出したと言うならばそれは・・・不幸か、はたまた幸福か。どちらにしろ君の死期は近い」
「ふざけないでよ! 何で私が使い魔に殺されなくちゃならないのよ!」
「殺されるのではない、元より君は・・・」
「そんな話信じるわけないじゃない。だってあいつは・・・」


ゴトリ

その時扉の側で物音がした。
その音にビクッして振り向くと、そこには岩が転がっていた。
ローリングストーン。彼女が昨日契約した使い魔だ。
ただ、今までと違うことは、

ゴトリ

いつのまにか『いる』のでなく、

ゴロリ

確実に、

ゴロリ

『彼女』に近づいてきていることだ。
顔などない岩に表情があるわけないのだが今の彼女には岩が笑っているように見えた。
・・・それも自分と同じ顔をして。

「あ、あ、あ・・・」

この時彼女はやっと理解した。
こいつは使い魔じゃない、使い魔よりもっとおぞましい『何か』だ。

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

ルイズの絶叫が教会に木霊する。

バン!

ルイズはローリングストーンをジャンプで飛び越しものすごいスピードで礼拝堂を脱出し夜の闇へと消えていった。

ゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・

岩もまた彼女の追跡を開始する。
今ここに、生死をかけた鬼ごっこが始まった。



一人残された男は、静かにつぶやいた。

「愚かな・・・運命を受け入れれば楽になれるというのに・・・何故人は運命に抗おうとするのだ・・・」
「あら、まるで殉教者のような台詞ですわね。答えは簡単、それが生きるってことなのよ」

今度は男が驚く番だった。
いつの間にか礼拝堂には赤々と燃える炎とそれに照らし出される二人の女性の姿が合った。
一人は妖艶な美女。一人は本を黙々と読んでいる小さな少女。


「初めまして不審者さん。私の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルスプトー。
 生憎あなたは私の趣味ではないので単刀直入に用件だけ済ませますわ」

そう言って彼女はさらに手の上の炎を滾らせる。

「死にたくなければ、あの子の召喚した岩のこと洗いざらい白状なさい。もちろん解決法もね」


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