ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ポルポル・ザ・ファミリアー-4

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「あんた達がどったんばったん暴れてるの、聞こえたわよ。せっかくの朝なのに、騒々しいったらなかったわ」
「いやぁ、悪いねえ。うちの『ご主人様』はちょいと御無体なもんでね」

金貨の充填された財布を顔面に打ち込まれたせいで出た鼻血を止める努力に心を砕きつつ、出来るだけ砕けた調子でポルナレフは答えた。
ここは『気さくなお兄さんキャラ』でいこう、とポルナレフは怜悧な計算をめぐらせ、会話を進める。

「ルイズの友達か?」
「・・・かもね。あたしはキュルケ。ルイズの支度はまだなのかしら?」
「さっきまで俺をしばくのに忙しくてな。まだ寝間着だよ」
「ほほほ、あの子ったらはしたないわねぇ。」

ルイズがネグリジェ姿で目の前の男とやりあっている姿を想像して、キュルケはほくそえんだ。
彼女をいじるネタがまた一つ増えたのだ。嬉しくないはずがない。
首筋をトントン叩きつつ、ポルナレフはキュルケに合わせて笑った。

「全くだ。貴族ってんならもっと大人にならなくちゃなあ・・・そ、例えば君みたいにさ」

胸も尻もな、と言う台詞は心の中のみに留めた。
首を傾げて目を細め、ポルナレフとしては最大限にキメたポーズのつもりだったが、
鼻血が垂れていてかっこよさは120%ほどマイナスであった。
媚び媚びの台詞ではあるが、幾分かの真実を含んでいた。キュルケは、ポルナレフがこの世界に来て初めてスムーズに会話を
進められそうな人間だったからだ。
当のキュルケは、そんな世辞は言われなれているので至って無感動だったが、言われて悪い気はしなかった。

「で、そんな大人な君に相談なんだが・・・」
「ん?」

ポルナレフは事情を話す。
医務室に行かねばならないこと。飯を抜かれたこと。ツンデレなんてチャチなもんじゃ断じてない、もっと恐ろしいものの
片鱗を味わったこと・・・

「うーん、ゴハンはどうにもしてあげられないけど、医務室への道は教えてあげるわ」

食堂まで行けば、医務室への行き方は簡単である。
そこまでなら面倒臭くはないだろう、とキュルケは算段していた。
ここで気位ばっかり高いヤツだったらにべも無く断っていただろうが、
成り上がり貴族の多いゲルマニア帝国出身の彼女は、厳格なトリステイン貴族であるルイズよりは平民に理解があった。
それに、自分の使い魔が宿敵キュルケに親切にされた、などと聞かされたら、プライドの高いルイズはどんな顔をするか!
キュルケにはそれも楽しみなのであった。

「ヤッホー!じゃよろしく頼むぜ!!」
「残念だけど、この時間じゃルイズはゆっくり朝食なんて出来ないわねぇ。
 折角あたしの使い魔を見せびらかそうと思ったのに・・・行くわよ、フレイム」

開けていた自室のドアに向かって顔を向けてキュルケが自分の使い魔を呼ぶ。
のっそりと出てきたモノはトラ程もある大きなトカゲだった。尻尾には轟々と炎がともり、
大きく裂けた口からはチロチロと蛇の舌のような火が飛び出していた。

「な、なんだこいつ!?」
「火トカゲを見るのは初めて?」
「ああ、えい・・・創作物の中でしか見たこと無いな。すげー、ホンモノだ」

気分ははじめてのサラマンダー、である。ポルナレフはまじまじと余り愛らしくは見えない火トカゲを見つめ、フレイムもシルバーブロンドの
柱の様な髪が珍しかったのかポルナレフを見つめ・・・と奇妙な空間が完成した。
映画、という単語はあえて出さなかった。説明にえらい時間を要するからだ。
元の世界のことは運良くこの色々とグンバツの女(使い魔を連れているのだからメイジなのだろう)とお近づきになれた時に話のネタとして使おう。
虎視眈々と未来予想図を練りつつ、ポルナレフはキュルケについて行った。
道中はキュルケの使い魔の自慢話だとか、ルイズについての笑い話だとか、ポルナレフにとっては興味深い話でもって過ごしたが、
ポルナレフ本人は別のことで頭がいっぱいだった。
キュルケとポルナレフは並んで歩いていたが、身長はポルナレフの方が15センチほど高い・・・
つまり・・・

『こ、こいつは・・・なんというボリューム・・・』

数多の男共を撃墜してきたキュルケ自慢のバストを、ほぼ直上から拝むことが出来たのだ!!
歩くたびにゆっさゆっさと揺れるバストはブラウスにピッタリ張りつき、ボタンがいくつか外されているおかげで谷間が丸見えである。
例え朝っぱらでも、こんなもの見せられて興奮しねえ野郎はいねえッ!!
ポルナレフは会話も程ほどにチラチラと巨乳を拝み、幸せな時間を過ごしたのであった。

「ここが食堂よ。本当だったら使い魔は外で食事するけれど、ルイズの許しが出たら、あなたもここで食べられるかもね」
「へーー、こいつはでっけぇーなー・・・」

大広間に長ーいテーブルが三つ。それぞれマントの色が違うメイジ達が朝食を摂っているのが入り口から見える。
ズカズカ入って無理やり飯を食うという傍若無人な方法も考えたが、とてもじゃないが許可が無ければつまみ出されてしまうだろう。
空腹のポルナレフには生殺しの状況だったが、キュルケには今後のためにも無理強いするわけにはいかなかった。

「医務室はさっき教えたとおりよ。それじゃね」
「ああ、ありがとうな。」

素直なお礼。下心はアリアリだが、悪い男ではない。宿敵、というかなんというかという関係の少女の使い魔を、キュルケはそう評価した。
キュルケが食堂に入るのを見送ってから、ポルナレフはぐうぐうと腹を鳴らしながら医務室へと向かった。

「魔法ってんだから、こうパパーッと治してくれるのかねぇ。やっぱり呪文唱えるときはテレテレテレって音が鳴るんか?」

はじめて間近で見る魔法、『治癒』の呪文にポルナレフは興味津々であった。
そう、キュルケに、授業がある教室の位置を教えてもらうのを忘れてしまう位に。
これが後に、ポルナレフを恐怖のどん底に叩き落す事故の一因となるのだが、未だに彼はルンルン気分であった・・・

「・・・よし。こいつで終わりだ」
「おお、か、身体全体が楽になった感じだ!すげえ!」

医務室のメイジは、呪文が成功したことに胸を撫で下ろす。
ベッドに寝かされていたポルナレフは、傷が癒えた充実感に満たされて跳ね起きる。
折れていたアバラも痛まない。包帯をほどいた左手を見ると、抉られた傷には既に薄皮が張っていた。
波紋治療は生命エネルギーを送り込むことによって治癒を早めるが、この呪文による治療は明らかに異質なものだった。

「もっと時間が経てば、自身の治癒力で完治する」
「ありがとよ、助かったぜぇ!魔法って大したもんだなぁ!」
「水の『トライアングル』ならばこれ位当然だ・・・しかしミス・ヴァリエールは本当に平民を召喚したのか。面白いこともあるものだ」

満面の笑みでメイジの背中をバンバン叩いて嬉しさと感謝の意を表すと、メイジは結構迷惑そうな顔で医務室を出て行った。
ポルナレフはベッドから降りて、足の傷の調子を確かめる。飛んだり跳ねたりは出来ないが、今までよりもかなりマシだった。

「ちょっと面倒だが、換えの包帯は貰っていくか」

メイジに心の中でゴメンナサイをしつつ、薬棚から包帯を黙って借り、医務室を出る。
授業が近いのか、もう始まったのか。廊下には人っ子一人居ない。

「あ。」

そこで、今朝ルイズに言われた事を思い出した。
教室に来いと言われていたのだ。

「まじーなー、ちょいと歩き回っただけじゃこの広い学院から教室を見つけるのは無理だぜ・・・」

さてどうするか。
キュルケに教えてもらえば良かったと後悔しつつ、ポルナレフは少し考え、即決した。

「まずはトイレだ」

グウグウという腹の虫は、いつの間にかゴロゴロという腸の蠕動音に取って代わっていた・・・

to be continued・・・->

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