ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

『女教皇と青銅の魔術師』-4

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匿名ユーザー

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某教師の日記

ミス・ロングヒルが実家の急用とかで逃げた。無理もないが。
そんなわけで今日からオスマン師の秘書業務をすることになった。
一日、オスマン師の後をついて歩く。
髪が抜けていくのがわかる。
死にたい。



ギーシュがあの大暴れした使い魔と決闘する、という話はすぐ全校に広まった。
朝、オスマン宛にギーシュが書状を送り、オスマンはそれを一読するとこの事をすぐに朝一番の授業で皆に伝えるよう、教師に伝えた。

大暴れし多大な損害を出したあのエルフの責任を取る為、ギーシュは詰腹を切らされる。
生徒の間での評判はそんなところに落ち着いた。
しかし、自分たちには関係ないと思っていた彼等は、間違っていた。
上機嫌のオスマンが、授業を参観するようになったのだ。

この日ギーシュは授業を休み、決闘の現地である広場でミドラーと模擬戦闘を始めた。
始めた直後から、ギーシュは宙を舞い救護室に運ばれた。
午前中に、三回宙を舞った時点で、先生が広場に救護テントを設営した。
ギーシュは、怪我を治す片端から怪我をし続けた。

午前11時
広場脇の建物で授業中であったクラスは、地獄を見た。
まず、最初からオスマンが教室の後ろに陣取っていた。
教師も緊張のあまり手が震え、初級の呪文詠唱も必死の形相でしている。
生徒も居眠りなど不可能。それどころか使い魔すら身動ぎもできないほど緊張感に溢れていた。
そして
何度目かの爆音が広場の方から響くと同時に、水をバケツでかけたような音と、柔らかいものが叩きつけられた音が聞こえ、教室の天窓ガラスに赤い液体と人の手形が付いた。

この時、教師は腰を抜かし、生徒の数人は口から泡を吹いて昏倒する事態になったが誰一人悲鳴を上げたりはしなかった。
いや、できなかった。
オスマンは立ち上がり、睥睨しながら窓に近づくと窓の外に落ちていた左手を拾い上げ、教室から出て行った。
なお、この後の昼食にこのクラスの生徒は誰一人出席せず、マルトーは残飯の山に頭を抱えた。


オスマンが広場に現れた時、そこは血の海であった。
ギーシュが歯を食いしばって止血し、ミドラーは土気色の顔をしていまにも倒れそうであり、救護の教師はまだ慌てていて有効な対策が取れずにいた。
「オ…オスマン師!」
無言でギーシュに近付くと、オスマンは治癒呪文を唱え始める。
見る見るうちに切断された左手が繋がる。
目線で教師に治療を続けさせると、オスマンはギーシュに声をかける。

「…苦戦しておるな」
「申し訳ありません。自らの不手際で不覚をとりました」

傍らに落ちていた血塗れの小剣を見る。
剣はギーシュのものだ。
あの地面から生える鉄塊に斬りつけてそのまま体当たりされ、腕が飛んだようだ。

「…よい。実戦で勝てればそれでよいのだ。」
云いながら特設テントの椅子に座るオスマン。
「…オスマン師?」
「儂が回復させてやる。
 ギーシュ・ド・グラモン、存分に戯れよ。」
ミドラーは、心底恐怖した。
この老人は、今のギーシュの重傷を見てもなお止めようとしない。
自分の生徒をさらなる苦痛に追い込むことをなんとも思わない、いや、楽しんでいるのか?

さらに数度、ギーシュを叩きのめしているうちに、ミドラーは思い至る。
(この爺、隙あらば私を殺す気だ!)
手元が狂ってギーシュに致命傷を負わせたら、だけではない。
使い続けてミドラーの精神が疲弊した様子を見せたなら、ギーシュが気絶した頃を見計らってこちらを潰しに来るだろう。
致命傷を避け、気絶もさせないように最新の注意を払いつつ、疲弊を毛ほども見せてはならない。
命をすり減らす作業を、主と使い魔は夕刻まで続けた。


「ありがとうございました、オスマン師」
辺りが暗くなったころ、ギーシュがオスマンに感謝の言葉を述べる。
傍らに顔面蒼白のミドラー。
綱渡りのような苦行と、狂気じみた師弟の行動で精神的にかなり追い詰められていた。
(この師弟は、狂ってる)
しかし、そんな思考もギーシュの言葉で消し飛ぶ。
「…勝算は掴めたか」
「はい。明後日の決闘にて披露いたします」

(今なんといった…?)
(勝算がある?私の女教皇に勝てる?)
(ありえない!今日一日この子はやられっ放しだったじゃないか!)
(なのに、勝てる?)
(何故!どうやって!)
(ジョースター達にだって、最後の力押しで敗れただけで、戦略としては負けていない。)
(この子がどうやったら私に勝てる?)


混乱の中部屋に戻る。
またも治療の為外泊するというギーシュに、ミドラーは尋ねる。
「アンタ、さっき勝算があるって言った?」
「うん、今日一日で大体判った」
即答されて狼狽する。
「ちょ…いったいどんな手が…」
「それは本番まで秘密」
絶句する。この子は本気で勝てると思っている。

「アタシとDIO様以上に実力に差があるのに、勝てるわけないでしょうが!
 いい?今日一日でアンタ数十回死んでておかしくないほど負けてるのよ?
 あとたった一日半で何かすごい必殺技でも作る気?
 頭打ちすぎて計算もできなくなったの?」
「練習を何回しようが、それはニセモノだ。本番で勝てばいいんだよ。…あとそれと、その族長さんから腕利きの部下を奪おうってんだから多少の無理くらいするさ」
(この子は…ッ!)
ミドラーはかつてDIOに戦わずして軍門に下った。
戦わなくても判るほどに実力に差があり、戦う前に負けたのだ。
あのカリスマにひれ伏すことで、自分のプライドを差し出すことで、安息を得たのだ。
そしてここに、当時の自分とDIO様の実力差以上に絶望的な戦いに、正面から挑もうとする少年がいる。
ミドラーのプライドを、ミドラー自身よりも高く評価して、自分の命を賭けて買い取ろうとしている。
ミドラーは、すこし、自分が恥ずかしくなった。

じゃあ明日は必要なものを揃えに町にでるから、という言葉でギーシュは部屋を出ていく。
もうちょっと話したいとミドラーは思ったが、明日もあるかと寝る。

その晩ミドラーは、ギーシュがDIO様に戦いを挑んでいる夢を見た。

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