ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アンリエッタ+康一-6

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匿名ユーザー

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日光が窓から入り始めたころにアンリエッタは目覚めた。
何度か目をパチパチしていると違和感に気が付く。
むくりとベッドから起き上がり周りを見回し、ここが自分の部屋ではないことを思い出した。

昨晩自分は城内に忍び込んだ曲者に襲われ、その際魔法で居室が見るも無残にされたのだった。
それを思い出したアンリエッタはベッドの下を覗く。
毛布に包まれ熟睡している様子の自分の使い魔がそこにいた。

康一は元々アンリエッタとは別の部屋で寝ようと考えていたが、アンリエッタがどうしてもと引きとめ同じ部屋で寝たのだ。
純情派な康一は渋ったが、アンリエッタの安全と自分の心と葛藤した末に床で寝るということで落ち着いた。
もちろん初めはドキドキして眠れるわけがなかったが、召還された疲れでストンと眠りに落ちてしまった。

アンリエッタは康一を見ていると、新鮮な今までとは違う目覚めに軽い昂ぶりを覚える。
小さなころに何処かでお泊りしたような、そんな不思議な感覚。

そんなアンリエッタの気配を感じたのか、康一がもぞりと動いて毛布から顔を出す。
ぼやける視界を目をゴシゴシ擦って治す。
アンリエッタを見て、ん?という顔になるが頭が覚めるにつれて少し顔が赤くなった。

「おはようございます、コーイチさん」
「あ、おはようございます」
少し照れながら話す康一に、苦笑気味に微笑んでアンリエッタは言った。
「そろそろお食事の用意が出来るころです。行きましょうか」


食堂…でいいのだろうか。
康一が支度をして案内されたのは、何だかかなり豪華で広い所だった。
ハルゲニアと地球の一般庶民は生活基準に大きく差があるが、ここは庶民の家ではなく王家の居城。
よく分からない二人分の豪華そうな食事に、お金持ちのパーティーのような飾りつけ。
大きく長いテーブルの下には高そうな絨毯が敷かれている。

はっきり言って康一は庶民なのでアンリエッタに促されテーブルについてもガチガチなままだった。
「コーイチさん。そんなに硬くならなくても大丈夫ですよ」
「そんなこと言われても無理ですよォ…」
クスクスと笑いながらアンリエッタは言うが、そんなこと庶民に生まれてみないとこの気持ちは分からない。
それにアンリエッタと康一以外だれもテーブルにいないというのも問題だった。
改めて康一は自分が異世界に紛れ込んでしまったのだと実感した。

「それで今日はどうするんです。昨日のヤツから話を聞いたりするんですか?」
慣れないテーブルマナーに四苦八苦し、味の分からない料理を食べながら康一が聞いた。
「そうですね。侵入者を取り調べた方からどうなってるのかを説明されると思います」
アンリエッタは姫という立場上、普段あまりこういう仕事に関わることはなかったが、さすがにそうも言っていられない。
今回は康一が何とか凌いだからよいものを、康一も気付かなければ間違いなくアンリエッタは死んでいたのだから。

そう想像を働かせたところで、アンリエッタは背筋が冷たくなった。
「ところでコーイチさん、どうしてあの侵入者がいたことに気付いたのですか?」
気を取り直すようにアンリエッタは康一に聞いた。
んー、と康一は辺りをキョロキョロするように見回してから口を開く。
「ここで話すのもなんですし、僕ご飯食べ終わりましたから落ち着けるところで話しませんか?」




天気に恵まれ植えられている木々が葉を伸ばす。
食事を終えたアンリエッタと康一は城の中庭、それも木や植木で上手く隠れられる場所に来ていた。
人がいない落ち着ける場所ということで、アンリエッタは自分のお気に入りの場所に康一を案内したのだ。

「いいですね~、ここ気持ちいいやァ」
「仕事の合間に抜け出してここに来るんです。内緒ですよ?」
悪戯っぽい口調でアンリエッタは言う。

「はい。えーと、それでどうして昨日のヤツがいたことに気付いたかですよね?」
「えぇ、城の者に全く気付かせずに忍び込んだ者にどうして気付けたのかが不思議で。 やはりスタンド能力というものなのですか?」

「そうですね。僕のスタンド「エコーズ」は3つの能力を持ってるんです。 その1つが音を操る能力。だからなのか僕って音に敏感なんですよ」
「…どういう意味です?」
アンリエッタが先を促す。



「昨日の夜、ベッドで寝てたら何だか妙な違和感を感じたんです。
それでエコーズを出して辺りの音を聞いてみたら、一箇所全く音が聞こえない場所を見つけました。
いや聞こえないというより、なんだか音が遮断されてる感じだったんです。
しかも其処がアンリエッタさんの部屋の辺りだったから、なんかヤバイと思って慌てて様子を見に行ったらアイツがいました」

説明を聞いたアンリエッタは少し考えるような仕草を見せてから言った。
「おそらくそれは音を掻き消す、風の魔法「サイレント」だと思います。
あの侵入者は風の魔法ばかり使っていましたし、おそらく間違いはないかと」

「そんな魔法もあるんですかァ。魔法って色々あるんですね」
「コーイチさんは魔法のない世界から来られたそうですから知らないでしょうが、時間は掛かりますが最上級の攻撃用魔法なら城さえも落とす力があります」
「……ワァオ」

魔法の凄さに呆れるしかない康一。
自分のスタンドが魔法に負けると思うわけじゃないが、そんな力を持ったスタンドはまずいない。
もちろんスタンドには得て不得手があり、昨晩のメイジと戦った感触では状況しだいのような気がする。

スタンド使いとの戦いと同じだ。
以前戦った殺人鬼の爆弾戦車などは自分のACT3で無効化できたが、一緒に戦っていた空条承太郎のスタープラチナでは危なかった。
スタンドにも相性があるように、メイジも個人の力量や戦い方次第でどうにでもなる。
多分そういうことなのだろうと康一は思った。


「それとコーイチさん、あなたのそのスタンドのことは内密にしていたほうがいいでしょう」
「え、何でですかァ?」
「…お恥ずかしいことですが、宮中に出入りする貴族の中には自分のこと以外はどうでもいいと考える者もいます。
そんな輩にスタンドのことが知れれば、表立ってはしないでしょうが捕らえて薬でも何でも使い詳しく調べようとするかもしれません。
殆んどの貴族は平民を軽く見ています。身分的にはコーイチさんは、私の使い魔と言っても平民の方ですから……」

別に言いふらすつもりもなかった康一だが、今度は悪い意味で呆れて頷いた。
「とりあえず何かあったらアンリエッタさんに相談しますね…」
「申し訳ありません。お力になれることでしたらなんでも」

本当に申し訳なさそうに頭を下げるアンリエッタ。
だが康一は目を鋭くし、強い口調で話し始めた。
「そういうことするヤツのせいで、アンリエッタさんが謝る理由なんてあるはずないじゃないですか。
それに僕はアンリエッタさんがスゴク立派な人に思えます。
理屈とかお姫様だからだとかそういうのじゃなく、人に対して敬意と尊敬を持って話をしてる。
そんな心を持った人が、バカなヤツらのために謝ってやることなんてありませんッ」

強くののしるような言い方をする康一に、アンリエッタはポカンと目を丸くして聞いていた。
「謝ってやる理由なんてない……ですか…?」
「そうですよッ、なんせ僕を召喚したアンリエッタさん何ですからッ!」

自分とは全く違う価値観。だが一本の筋が通ったような想いのこもる言葉。
それにアンリエッタは康一の奥深くにある、何かを見たようなそんな気がした。

だから自信持って下さいッ!とよく分からない根拠にフッとアンリエッタは吹き出す。
そうだ、あんな愛国心も欠片もないような輩のせいで「謝ってやる」理由などないではないか。
自分はこのトリステインの姫であり、ゆくゆくは国を担うべき者であるのだから。

「そうですね。「謝って」さしあげる理由なんてありませんよね。」
苦笑するアンリエッタに、そのいきですよッと意気込む康一。
噛み合っていないようではあるが、何かそこには二人だけが分かるような、通じ合えることがあるのかもしれない。

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