「こ、この世界に来てこっち、何も食っていないというのに・・・」
出るもんは出る。現実は非情である。
あれから下痢腹抱えてトイレを探し彷徨う運命となったポルナレフではあるが、さすがにトイレはすぐに見つかった。
貴族の学校だけあって広くて清潔なトイレに、ポルナレフは脂汗を垂らしながらウキウキ気分である。
しかも魔法で動いているのかは知らないが水洗!その快適さがポルナレフを嬉しくさせた。
少なくとも豚の頭が飛び出す心配は無い。
「トイレが綺麗で良かった・・・ナイスガイの俺はトイレの汚いのだけは許せ・・・ふぐぅッ!?
…畜生!『治癒』の呪文ってのは治した奴の腹を下すのかッ!?」
何度目かの痛みの波が襲う。
それをDIOとの戦いへの恐怖すら克服した黄金の精神力で押さえ込み、ポルナレフはひたすら腸内が正常化されるのを待った。
「この分じゃ、授業とやらは遅刻だな・・・」
そうひとりごちる。
二、三十分経過した後、ようやくポルナレフの腸に平和が訪れた。
痛みを耐え切れば、そこに待つのは達成感と平穏である。ポルナレフは大きく息をつく。
『そういや、こんなとこで敵に襲われたことがあったなあ・・・』
出来れば思い出したくないことであったが、今となってはあの世界・・・承太郎がいて、花京院がいて、
ジョセフがいて、イギーがいて、・・・えーっと、アヴドゥルがいた、元の世界に自分がいた証にさえ思えた。
そこではたと気付いた。自分がこの世界に来て一度も自分のスタンドを発動させていなかったことを。
「魔法なんてファンタジーやメルヘンがまかり通ってんだ、万一だが発動しないってこともあるな。
よし・・・やってみるか。」
尻を清めてズボンを上げ、再びどっかと便器に座る。
そして思う。強く思う。精神力の権化、『戦車』のカードの暗示・・・
「『シルバーチャリオッツ』!!」
ドギュ―――z___ン !!
異世界初発動が便所の中とは、いささか情けないものがあるが。
ポルナレフの体内から、銀の甲冑を纏い、刺突剣を構えた、半透明の騎士が飛び出した。
精神から生まれるエネルギーのビジョン。彼のスタンドはいつも通りに、便器に座るポルナレフに寄り添う様に発現した。
しかし変わった点が一つあった。その篭手を纏った左手の甲に、ポルナレフと同じ奇妙なルーン文字が浮かび上がっていること。
そして。
「な、なんじゃこりゃぁああ!?」
ポルナレフの左手のルーン文字が、光を放っていたことだった。
「こ、こいつはどんな仕掛けなんだ?『チャリオッツ』をだしたとたんに光り始めた・・・」
何かスタンドに関係があるのかと思い、ポルナレフは試しにチャリオッツを操作してみる。
チャリオッツは思ったとおりに、いや、それ以上の俊敏さと精密さで、ポルナレフの意思に答えた。
「LV7!LV8!LV9!・・・すっげえ。全部出来るぞ。しかもこんなに素早く・・・」
ふと便器から立つと、自分の身体にも変化が現れているのが分かった。
身体が羽のように軽くなり、四肢に力がみなぎっている。全体的に身体能力が向上しているのだ。
「これは・・・『使い魔のルーン』とか言っていたが、その力・・・なのか?」
この劇的な変化。まるで身体に生命のガソリンを注入されたようである。
大便所から出ると、純白の小便器が目に入った。身体が軽くなってテンション向上しているポルナレフは、
試し斬りをやりたくてしょうがなくなっていたので、
「ソラソラソラソラァッ!!」
本能に任せてチャリオッツの剣を振り回す。
小便器はたちまち粉微塵に破砕され、白い粉くずとなって地面にばら撒かれた。パイプが付いていないので、
水が吹き出すとかいうことはない。
この速さ!強さ!精密さ!今までのチャリオッツにはとてもじゃないが出来なかった芸当である。
「すげえ!!本当にすげえ!!今までで最高の速さだ!!さーいこうにハイってやつだぁ!!」
すっかり有頂天のポルナレフには、外から誰かがやってくるなんて予想を立てる知能は残っていなかった。
そして不幸なことに、
「うー、トイレトイレ・・・」
この日腹の調子が悪かったルイズの同級生、『風上』のマリコルヌがトイレにやってきたのだ!!
尻の穴を精神力で拘束しつつトイレに入った彼が見たものは・・・
やたらはしゃいでいる柱髪男と・・・
「カ、カッチュウのお化けだぁあああああああああ!!!!」
なぜか小便器を切り刻んでいる、甲冑騎士の幽霊であった!!
「ニャニィ!?」
突然の闖入者にも驚いたが、それ以上にポルナレフが仰天したのは、そのメイジの少年に自分のスタンドが見えていた、ということ!!
ボギャァーーーッ!
「ゲェエーーーッ!!」
哀れ。逃げ出そうとしていたマリコルヌは身体能力の向上したポルナレフのとび蹴りを喰らい、洗面台に激突して意識を霧散させた。
ポルナレフはとっさに少年をやっつけてしまったことを心の中で詫びつつ、スタンドを戻す。
チャリオッツが体内に消えると同時に、ルーンの発光も止まってしまった。
「こいつ・・・お化けとは言ったがスタンドが見えてた・・・もしかして、メイジは皆見えるのか?」
ちろっと舌を出して気絶している小太りの少年はとてもスタンド使いには見えなかった。
とっさに逃げ出そうとしていることからも、彼がスタンドを見たことがないのがわかる。
ということは、元々備わっていた資質である、とするのが自然だ。『無意識のスタンド使い』である可能性も否定できなくは無かったが。
「どうやら、用心に越したことはないようだぜ・・・やれやれ。」
少年のマントの色がルイズのそれと同じであることを見たポルナレフは、最寄の教室で授業をやっていると踏んで、トイレを出た。
食堂ではマントの色が違うメイジを見た。きっとこれがメイジの学年分けの色なのだろうと思ったのだ。
マリコルヌは放置した。
しばらく探すと、人の声が中から聞こえてくる大扉を見つけることが出来た。
少年少女の声だが、何故か罵詈雑言に満ちている気がする。
「ここだなッ?」
意を決して、ポルナレフは大扉に手を掛け、力を込めた。
ここから先に起こることは読者自身であるあなたに判断していただきたい・・・
結末は一体誰の罪なのか?
教室の位置を教えなかったルイズか?
キュルケに聞くのを忘れたポルナレフか?
気を利かせて教室の場所を教えなかったキュルケか?
『運命』に導かれ、ポルナレフはこの瞬間に、ドアを開けてしまったのだ。
ドアを開け放した瞬間爆発音が響き、散弾の様な石くれがポルナレフを襲った。
完全なるアンブッシュ(不意打ち)。今のポルナレフの心境としては
『あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
俺は教室に入ったと思ったら次の瞬間得体の知れない攻撃を食らっていた・・・
黒板消し落としだとか消しゴムのカス飛ばしだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねえ、
もっと恐ろしい失敗魔法の片鱗を味わったぜ・・・』
という感じであろう。
「チャリぶぎゃぁああああああああああ!!!」
残念ながらチャリオッツを出すのは間に合わなかった。現実は非情である。
ポルナレフは全身に石くれを撃ち込まれ、ドアから後ろ向きに吹っ飛んでいった。
ちなみにその惨状を引き起こした爆心地では、
「・・・ちょっと失敗したみたいね」
バ―――z___ン !!
煤まみれになった彼の『ご主人様』が、ポリポリと頭を掻いていた。
J・P・ポルナレフ ---派手に吹っ飛んだが、距離があったおかげか軽傷。
『ゼロ』のルイズ ---派手に吹っ飛んだが、煤まみれになっただけでダメージはなし。
『微熱』のキュルケ ---うまいこと机に隠れて無傷。
『風上』のマリコルヌ ---トイレに気絶して転がっているのを発見される。
「トイレに強い恨みを持って死んだ騎士の亡霊を見たんだ!ホントだよ!!」
と触れて回るが、信じてもらえない。ポルナレフのことは記憶から吹っ飛んだ模様。
『赤土』のシュヴルーズ---名前すら出なかったが、二時間気絶。授業続行不可能。
to be continued・・・->
出るもんは出る。現実は非情である。
あれから下痢腹抱えてトイレを探し彷徨う運命となったポルナレフではあるが、さすがにトイレはすぐに見つかった。
貴族の学校だけあって広くて清潔なトイレに、ポルナレフは脂汗を垂らしながらウキウキ気分である。
しかも魔法で動いているのかは知らないが水洗!その快適さがポルナレフを嬉しくさせた。
少なくとも豚の頭が飛び出す心配は無い。
「トイレが綺麗で良かった・・・ナイスガイの俺はトイレの汚いのだけは許せ・・・ふぐぅッ!?
…畜生!『治癒』の呪文ってのは治した奴の腹を下すのかッ!?」
何度目かの痛みの波が襲う。
それをDIOとの戦いへの恐怖すら克服した黄金の精神力で押さえ込み、ポルナレフはひたすら腸内が正常化されるのを待った。
「この分じゃ、授業とやらは遅刻だな・・・」
そうひとりごちる。
二、三十分経過した後、ようやくポルナレフの腸に平和が訪れた。
痛みを耐え切れば、そこに待つのは達成感と平穏である。ポルナレフは大きく息をつく。
『そういや、こんなとこで敵に襲われたことがあったなあ・・・』
出来れば思い出したくないことであったが、今となってはあの世界・・・承太郎がいて、花京院がいて、
ジョセフがいて、イギーがいて、・・・えーっと、アヴドゥルがいた、元の世界に自分がいた証にさえ思えた。
そこではたと気付いた。自分がこの世界に来て一度も自分のスタンドを発動させていなかったことを。
「魔法なんてファンタジーやメルヘンがまかり通ってんだ、万一だが発動しないってこともあるな。
よし・・・やってみるか。」
尻を清めてズボンを上げ、再びどっかと便器に座る。
そして思う。強く思う。精神力の権化、『戦車』のカードの暗示・・・
「『シルバーチャリオッツ』!!」
ドギュ―――z___ン !!
異世界初発動が便所の中とは、いささか情けないものがあるが。
ポルナレフの体内から、銀の甲冑を纏い、刺突剣を構えた、半透明の騎士が飛び出した。
精神から生まれるエネルギーのビジョン。彼のスタンドはいつも通りに、便器に座るポルナレフに寄り添う様に発現した。
しかし変わった点が一つあった。その篭手を纏った左手の甲に、ポルナレフと同じ奇妙なルーン文字が浮かび上がっていること。
そして。
「な、なんじゃこりゃぁああ!?」
ポルナレフの左手のルーン文字が、光を放っていたことだった。
「こ、こいつはどんな仕掛けなんだ?『チャリオッツ』をだしたとたんに光り始めた・・・」
何かスタンドに関係があるのかと思い、ポルナレフは試しにチャリオッツを操作してみる。
チャリオッツは思ったとおりに、いや、それ以上の俊敏さと精密さで、ポルナレフの意思に答えた。
「LV7!LV8!LV9!・・・すっげえ。全部出来るぞ。しかもこんなに素早く・・・」
ふと便器から立つと、自分の身体にも変化が現れているのが分かった。
身体が羽のように軽くなり、四肢に力がみなぎっている。全体的に身体能力が向上しているのだ。
「これは・・・『使い魔のルーン』とか言っていたが、その力・・・なのか?」
この劇的な変化。まるで身体に生命のガソリンを注入されたようである。
大便所から出ると、純白の小便器が目に入った。身体が軽くなってテンション向上しているポルナレフは、
試し斬りをやりたくてしょうがなくなっていたので、
「ソラソラソラソラァッ!!」
本能に任せてチャリオッツの剣を振り回す。
小便器はたちまち粉微塵に破砕され、白い粉くずとなって地面にばら撒かれた。パイプが付いていないので、
水が吹き出すとかいうことはない。
この速さ!強さ!精密さ!今までのチャリオッツにはとてもじゃないが出来なかった芸当である。
「すげえ!!本当にすげえ!!今までで最高の速さだ!!さーいこうにハイってやつだぁ!!」
すっかり有頂天のポルナレフには、外から誰かがやってくるなんて予想を立てる知能は残っていなかった。
そして不幸なことに、
「うー、トイレトイレ・・・」
この日腹の調子が悪かったルイズの同級生、『風上』のマリコルヌがトイレにやってきたのだ!!
尻の穴を精神力で拘束しつつトイレに入った彼が見たものは・・・
やたらはしゃいでいる柱髪男と・・・
「カ、カッチュウのお化けだぁあああああああああ!!!!」
なぜか小便器を切り刻んでいる、甲冑騎士の幽霊であった!!
「ニャニィ!?」
突然の闖入者にも驚いたが、それ以上にポルナレフが仰天したのは、そのメイジの少年に自分のスタンドが見えていた、ということ!!
ボギャァーーーッ!
「ゲェエーーーッ!!」
哀れ。逃げ出そうとしていたマリコルヌは身体能力の向上したポルナレフのとび蹴りを喰らい、洗面台に激突して意識を霧散させた。
ポルナレフはとっさに少年をやっつけてしまったことを心の中で詫びつつ、スタンドを戻す。
チャリオッツが体内に消えると同時に、ルーンの発光も止まってしまった。
「こいつ・・・お化けとは言ったがスタンドが見えてた・・・もしかして、メイジは皆見えるのか?」
ちろっと舌を出して気絶している小太りの少年はとてもスタンド使いには見えなかった。
とっさに逃げ出そうとしていることからも、彼がスタンドを見たことがないのがわかる。
ということは、元々備わっていた資質である、とするのが自然だ。『無意識のスタンド使い』である可能性も否定できなくは無かったが。
「どうやら、用心に越したことはないようだぜ・・・やれやれ。」
少年のマントの色がルイズのそれと同じであることを見たポルナレフは、最寄の教室で授業をやっていると踏んで、トイレを出た。
食堂ではマントの色が違うメイジを見た。きっとこれがメイジの学年分けの色なのだろうと思ったのだ。
マリコルヌは放置した。
しばらく探すと、人の声が中から聞こえてくる大扉を見つけることが出来た。
少年少女の声だが、何故か罵詈雑言に満ちている気がする。
「ここだなッ?」
意を決して、ポルナレフは大扉に手を掛け、力を込めた。
ここから先に起こることは読者自身であるあなたに判断していただきたい・・・
結末は一体誰の罪なのか?
教室の位置を教えなかったルイズか?
キュルケに聞くのを忘れたポルナレフか?
気を利かせて教室の場所を教えなかったキュルケか?
『運命』に導かれ、ポルナレフはこの瞬間に、ドアを開けてしまったのだ。
ドアを開け放した瞬間爆発音が響き、散弾の様な石くれがポルナレフを襲った。
完全なるアンブッシュ(不意打ち)。今のポルナレフの心境としては
『あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
俺は教室に入ったと思ったら次の瞬間得体の知れない攻撃を食らっていた・・・
黒板消し落としだとか消しゴムのカス飛ばしだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねえ、
もっと恐ろしい失敗魔法の片鱗を味わったぜ・・・』
という感じであろう。
「チャリぶぎゃぁああああああああああ!!!」
残念ながらチャリオッツを出すのは間に合わなかった。現実は非情である。
ポルナレフは全身に石くれを撃ち込まれ、ドアから後ろ向きに吹っ飛んでいった。
ちなみにその惨状を引き起こした爆心地では、
「・・・ちょっと失敗したみたいね」
バ―――z___ン !!
煤まみれになった彼の『ご主人様』が、ポリポリと頭を掻いていた。
J・P・ポルナレフ ---派手に吹っ飛んだが、距離があったおかげか軽傷。
『ゼロ』のルイズ ---派手に吹っ飛んだが、煤まみれになっただけでダメージはなし。
『微熱』のキュルケ ---うまいこと机に隠れて無傷。
『風上』のマリコルヌ ---トイレに気絶して転がっているのを発見される。
「トイレに強い恨みを持って死んだ騎士の亡霊を見たんだ!ホントだよ!!」
と触れて回るが、信じてもらえない。ポルナレフのことは記憶から吹っ飛んだ模様。
『赤土』のシュヴルーズ---名前すら出なかったが、二時間気絶。授業続行不可能。
to be continued・・・->