シエスタは平民で貴族の世話をするために奉公に来ているそうだ。
シエスタに連れられ食堂裏の厨房に行く。そこにはコックやシエスタと同じ格好をした人間が多くいた。
皆忙しげに料理を作ったり運んだりしている。
そういった様子を見ているとシエスタがなにやら持ってきてくれる。シチューだった。貴族の料理の余りで作ったらしい。
食べやすいものでとてもありがたい。早速食べてみる。
「うまい」
思わずそういってしまうほどうまかった。空腹なのもあるだろうが作った人は相当料理が上手なのだろう。
胃に負担が掛からないようゆっくりと、しかし確実に食べていく。シエスタはそんな私を笑いながら見ていた。
「ご飯貰えなかったんですか?」
シエスタが聞いてくる。これだけ夢中になって食べていればそう思うかもな。
「ああ、これから1週間食事無しだそうだ」
正直に答える。シエスタは相当驚いていた。
「お腹が空いたら、何時でもいらしてください。私たちが食べているものでよかったら、お出ししますから」
初めて人の優しさという奴に触れた気がする。シエスタはひょっとしたら聖母の生まれ変わりなんじゃないだろうか?
やがてシチューをすべて食べ終える。
「ありがとう。本当にうまかったよ」
「いいんですよ」
シエスタは笑顔でそう言ってくる。
「何か手伝えることは無いかな?」
「え?」
「さすがに世話になりっぱなしというわけにもいかないだろ」
それに良好な関係を保っていれば何かと便利だ。なんせ1週間の食事が掛かっているからな。手伝いを申し出ればこちらに好印象を持つだろう。
「なら、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」
シエスタは笑みを浮かべながら言う。私はもちろん頷いた。彼女がいればすぐに脱走しなくもいいだろう。
シエスタに連れられ食堂裏の厨房に行く。そこにはコックやシエスタと同じ格好をした人間が多くいた。
皆忙しげに料理を作ったり運んだりしている。
そういった様子を見ているとシエスタがなにやら持ってきてくれる。シチューだった。貴族の料理の余りで作ったらしい。
食べやすいものでとてもありがたい。早速食べてみる。
「うまい」
思わずそういってしまうほどうまかった。空腹なのもあるだろうが作った人は相当料理が上手なのだろう。
胃に負担が掛からないようゆっくりと、しかし確実に食べていく。シエスタはそんな私を笑いながら見ていた。
「ご飯貰えなかったんですか?」
シエスタが聞いてくる。これだけ夢中になって食べていればそう思うかもな。
「ああ、これから1週間食事無しだそうだ」
正直に答える。シエスタは相当驚いていた。
「お腹が空いたら、何時でもいらしてください。私たちが食べているものでよかったら、お出ししますから」
初めて人の優しさという奴に触れた気がする。シエスタはひょっとしたら聖母の生まれ変わりなんじゃないだろうか?
やがてシチューをすべて食べ終える。
「ありがとう。本当にうまかったよ」
「いいんですよ」
シエスタは笑顔でそう言ってくる。
「何か手伝えることは無いかな?」
「え?」
「さすがに世話になりっぱなしというわけにもいかないだろ」
それに良好な関係を保っていれば何かと便利だ。なんせ1週間の食事が掛かっているからな。手伝いを申し出ればこちらに好印象を持つだろう。
「なら、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」
シエスタは笑みを浮かべながら言う。私はもちろん頷いた。彼女がいればすぐに脱走しなくもいいだろう。
シエスタと共にデザート配っていく。食堂は皆が喋っていて五月蠅いな。
そう思いながら配っていると一際五月蠅い集団がいた。その中の一人のポケットから何かが落ちる。
拾ってみると中に紫色の液体が入った小瓶だった。
「落としたぞ」
そう言ってテーブルの上に置いてやる。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
しかし渡してやった少年はそう言ってくる。
「おお?その香水は、もしやモンモランシーの香水じゃないか?」
その一言をきっかけにまた五月蠅くなる。どうやら少年の彼女の品らしい。持っているのが恥ずかしかったのだろうか?
しかし騒ぎはどんどん大きくなる。一人の少女が少年に近寄り泣きながら頬を引っ叩く。そして別の場所からも少女が来てテーブルの上に置かれた
液体を少年の頭にぶちまけるけ、
「うそつき!」
と怒鳴り去っていった。どうやら少年は二股を架けていたらしい。
私には関係ないので再び歩き出す。
「待ちたまえ」
先程の少年に呼び止められる。が、無視して歩く。シエスタが心配そうにこちらを見てくる。
「待ちたまえと言ってるんだよ!」
少年が大きな声を出して私再度呼び止める。
振り向いて少年を見ると無視されたのが悔しかったのだろう。顔が少し赤い。
「君が軽率に、香水の壜なんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
そう思いながら配っていると一際五月蠅い集団がいた。その中の一人のポケットから何かが落ちる。
拾ってみると中に紫色の液体が入った小瓶だった。
「落としたぞ」
そう言ってテーブルの上に置いてやる。
「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
しかし渡してやった少年はそう言ってくる。
「おお?その香水は、もしやモンモランシーの香水じゃないか?」
その一言をきっかけにまた五月蠅くなる。どうやら少年の彼女の品らしい。持っているのが恥ずかしかったのだろうか?
しかし騒ぎはどんどん大きくなる。一人の少女が少年に近寄り泣きながら頬を引っ叩く。そして別の場所からも少女が来てテーブルの上に置かれた
液体を少年の頭にぶちまけるけ、
「うそつき!」
と怒鳴り去っていった。どうやら少年は二股を架けていたらしい。
私には関係ないので再び歩き出す。
「待ちたまえ」
先程の少年に呼び止められる。が、無視して歩く。シエスタが心配そうにこちらを見てくる。
「待ちたまえと言ってるんだよ!」
少年が大きな声を出して私再度呼び止める。
振り向いて少年を見ると無視されたのが悔しかったのだろう。顔が少し赤い。
「君が軽率に、香水の壜なんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「自分の尻拭いもできないのか?」
呆れ気味にそう返すと少年の周りはどっと笑う。少年の顔が鋭くなる。
しかし、貴族とは本当に器が小さいな。この程度で怒るとは。これじゃ平民の不満は多そうだ。
「君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「礼というのは立場が上の者にすることだ。少なくともお前にするもんじゃないな」
そう言ってからかってみる。少年が立ち上がり体を翻す。
「ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終わったら、来たまえ。君に礼儀を教えてあげよう。ちょうどいい腹ごなしだ」
相当怒りを押し殺した声で言うと食堂を去っていく。少年の友人たちも後を追う。
私は喧嘩を売られたのだろう。少しからかっただけで喧嘩を売るとは……
シエスタが震えながらこちらを見る。
「あ、あなた、殺されちゃう……貴族を本気で怒らせたら……」
シエスタはそう言うと走って逃げていった。
無理も無いな。平民にとって貴族の力はとても恐ろしいものだろうからな。魔法があれば平民が束になってもかなわないだろう。
ま、私も全く無策と言うわけではない。後ろからルイズが来た。ちょうどいい。
「あんた!何してんのよ!見てたわよ!何勝手に決闘なんか約束してんのよ!」
約束してないし一方的なものなのだがな。
「ルイズ、そのことで話しがある」
「え?」
突然そう言われて勢いが止まる。
「早くさっきの少年に謝って来い」
ルイズは口をあけたまま放心していた。
呆れ気味にそう返すと少年の周りはどっと笑う。少年の顔が鋭くなる。
しかし、貴族とは本当に器が小さいな。この程度で怒るとは。これじゃ平民の不満は多そうだ。
「君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「礼というのは立場が上の者にすることだ。少なくともお前にするもんじゃないな」
そう言ってからかってみる。少年が立ち上がり体を翻す。
「ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終わったら、来たまえ。君に礼儀を教えてあげよう。ちょうどいい腹ごなしだ」
相当怒りを押し殺した声で言うと食堂を去っていく。少年の友人たちも後を追う。
私は喧嘩を売られたのだろう。少しからかっただけで喧嘩を売るとは……
シエスタが震えながらこちらを見る。
「あ、あなた、殺されちゃう……貴族を本気で怒らせたら……」
シエスタはそう言うと走って逃げていった。
無理も無いな。平民にとって貴族の力はとても恐ろしいものだろうからな。魔法があれば平民が束になってもかなわないだろう。
ま、私も全く無策と言うわけではない。後ろからルイズが来た。ちょうどいい。
「あんた!何してんのよ!見てたわよ!何勝手に決闘なんか約束してんのよ!」
約束してないし一方的なものなのだがな。
「ルイズ、そのことで話しがある」
「え?」
突然そう言われて勢いが止まる。
「早くさっきの少年に謝って来い」
ルイズは口をあけたまま放心していた。
「何でわたしが謝らないといけないのよ!謝るならあんたが謝るのが普通でしょ!」
ルイズは気を取り戻すとそう怒鳴ってきた。
「簡単なことだ。私が使い魔の事を聞いたときに君がなんて答えたか忘れたのか?」
そう、実に簡単なことだ。
「使い魔の手柄は主人の手柄、使い魔の不祥事は主人の不祥事なんだろう?なら私が起こしたことの責任を君が取るのは当然じゃないか」
ルイズは確かにそう言った。そうすれば私は無駄に戦わなくても済む。
元々私は争うつもりなんて無いのだから。こういったことは他に任せるに限るな。
「なんでわたしがあんたのために頭下げなくちゃいけないの!」
完全に口を閉ざす。この少女に何かを期待するのはよそう。いや、期待した私がバカだった。
そう思いながらデザートの配膳を再開した。まだ何か言ってくるが無視する。
やれやれ結局戦わないといけないのか?そうなら対策でも立てるとしよう。どうせ逃げても何かしてくるだろうからな。
魔法使いの弱点はルイズの説明と今日の授業で理解している。後はさっきの少年がどんな魔法で戦うかだ。
相手は当然魔法を使ってくるだろう。シエスタの反応やわたしの貴族の見解からして間違いない。
さてどんな対さ「ちょっと!聞いてるの!」本当に五月蠅いな。いや、ルイズは知識はあるからな。それは利用できる。
「ルイズ聞きたいことがあるんだがね」
「何よ!」
怒鳴り返さなくてもいいだろう。
「さっきの少年はどんな魔法を使うんだ?」
「え?ギーシュの魔法?そんなの聞いてどうするのよ」
多少落ち着いたようだ。初めから落ち着いていられないのか。
「まさか、決闘する気なの?」
「ああ」
お前が当てにならないからな。
「素直に謝って来なさい。そうすれば許してもらえるかもしれないわよ。戦ったら絶対勝てないし、怪我するわ。
いや、怪我で済んだら運がいいわよ!」
「御託はいいからさっさと説明してくれ」
「聞きなさい!平民は絶対メイジに勝てないの!」
そんなやり取りをして時間はかかったが情報は聞き出せた。
少年の名はギーシュ。二つ名は『青銅』で青銅のゴーレム『ワルキューレ』を使って戦うという。杖は造花の薔薇。
これだけ聞ければ十分だな。
そう思いながらデザート配りつつ準備を開始した。
ルイズは気を取り戻すとそう怒鳴ってきた。
「簡単なことだ。私が使い魔の事を聞いたときに君がなんて答えたか忘れたのか?」
そう、実に簡単なことだ。
「使い魔の手柄は主人の手柄、使い魔の不祥事は主人の不祥事なんだろう?なら私が起こしたことの責任を君が取るのは当然じゃないか」
ルイズは確かにそう言った。そうすれば私は無駄に戦わなくても済む。
元々私は争うつもりなんて無いのだから。こういったことは他に任せるに限るな。
「なんでわたしがあんたのために頭下げなくちゃいけないの!」
完全に口を閉ざす。この少女に何かを期待するのはよそう。いや、期待した私がバカだった。
そう思いながらデザートの配膳を再開した。まだ何か言ってくるが無視する。
やれやれ結局戦わないといけないのか?そうなら対策でも立てるとしよう。どうせ逃げても何かしてくるだろうからな。
魔法使いの弱点はルイズの説明と今日の授業で理解している。後はさっきの少年がどんな魔法で戦うかだ。
相手は当然魔法を使ってくるだろう。シエスタの反応やわたしの貴族の見解からして間違いない。
さてどんな対さ「ちょっと!聞いてるの!」本当に五月蠅いな。いや、ルイズは知識はあるからな。それは利用できる。
「ルイズ聞きたいことがあるんだがね」
「何よ!」
怒鳴り返さなくてもいいだろう。
「さっきの少年はどんな魔法を使うんだ?」
「え?ギーシュの魔法?そんなの聞いてどうするのよ」
多少落ち着いたようだ。初めから落ち着いていられないのか。
「まさか、決闘する気なの?」
「ああ」
お前が当てにならないからな。
「素直に謝って来なさい。そうすれば許してもらえるかもしれないわよ。戦ったら絶対勝てないし、怪我するわ。
いや、怪我で済んだら運がいいわよ!」
「御託はいいからさっさと説明してくれ」
「聞きなさい!平民は絶対メイジに勝てないの!」
そんなやり取りをして時間はかかったが情報は聞き出せた。
少年の名はギーシュ。二つ名は『青銅』で青銅のゴーレム『ワルキューレ』を使って戦うという。杖は造花の薔薇。
これだけ聞ければ十分だな。
そう思いながらデザート配りつつ準備を開始した。