ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔はゼロのメイジが好き 第一話

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浮かぶ雲によって太陽が遮られた草原の真ん中で、少女は呆然と目の前の地面を見つめていた。
周りからは先程までの喧騒が消え、異様な静寂で満ちている。
何回も失敗を重ね、他の生徒に嘲笑されながらもやっと「サモン・サーヴァント」に成功した
その少女、ルイズ・フランボワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの前には、彼女が今召喚したばかりの使い魔がいた。
しかしその使い魔は、彼女が望んでいたドラゴンやサラマンダーなどの幻獣の類ではない。
また、烏や梟、猫や大蛇などの普通の動物でもなかった。 彼女が使い魔として呼び出したもの、そう、それは――――


植木鉢に植えられた、一本の『草』だったのだ。


「…………何なのよ、これ」

彼女の呟きは、静寂の中を悠々と横切る風に流されていった。


  使い魔はゼロのメイジが好き 第一話


何故使い魔を呼ぶ神聖なる儀式「サモン・サーヴァント」で単なる『草』が召喚されたのか、
そしてこれは、一体何なのかというルイズの疑問は、

「…………ぶあっははははははははは!!」
彼女の召喚を見ていた生徒の一人が発した笑い声によってかき消された。

ガラガラ声で笑い続ける彼はその手でルイズを指さし、可笑しくてたまらないというような声で喋り出す。
「流石は『ゼロ』のルイズだぜ!召喚の儀式でただの草を呼び出すなんてよ!」
その声で我に返ったほかの生徒は、彼に同調するように笑い出す。中には、ルイズに罵声を浴びせる者までいた。
「そうよ、珍しく成功したと思ったらこれだもの」
「使い魔ぐらいきちんと呼べよ、ゼロのルイズ!」
「どういう事だよッ!クソッ!草って、どういう事だッ!魔法ナメやがってクソッ!クソッ!」
「……ちょっと間違っただけよ!失敗なんかしてないわ!」
彼らの嘲笑混じりの罵声に、彼女は耳まで真っ赤にして反論する。
そして後ろを振り返り、儀式の監督を行っていた教師に叫んだ。
「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しをさせて下さい!」
すると、生徒達の間からローブを纏った頭髪が寂しい男が姿を現した。その表情は困惑しきっている。
彼こそが儀式を監督していた教師、コルベールだった。
「うむ……これは……」
滅多に見ない彼の困った表情を見て、ルイズはもう一度チャンスが貰えるかもしれないという淡い期待を抱いた。
だが、その期待は次の言葉により砕かれることになる。
「いや、それは駄目だ。どんなものを呼び出そうと、召喚だけはやり直す事は出来ない」
その返答に、ルイズは少し苛立つ。やり直せないならどうすればいいのだ。こんな草が使い魔になっても、一体何を
してくれるというのだろうか。
いつのまにか出てきた太陽に照らされて、強く輝く彼の頭。それを見るも無残な事にしてやろうか、そんな事を考えている間も
コルベールの話は続いていた。
「君も分かっているだろうが、今回呼び出した使い魔で今後の……」
そこまで話したところで、唐突に彼の言葉が止まる。
想像の中で彼の頭の焼畑農業を行っていたルイズも、それに気付いて顔を上げた。
「どうかしましたか?ミスタ・コルベー…」
「み、ミス・ヴァリエール!君、あの『草』に何かしたか?」

その視線はルイズの方には向いていない。ルイズの後ろ、さっき召喚した草の方に向けられていた。
コルベールの顔からはさっきまでの困惑が吹っ飛び、ただ驚きと狼狽の色だけが浮かんでいる。
「『草』ですか?別に私は何もしてませんけど」
急に変わった彼の表情を、彼女は訝しみながら質問に答える。あんな草の何に驚いているんだろう、この人は。
「ならッ!ならあれは何なんだミス・ヴァリエール!答えなさい!」
彼の表情が「驚き」から「焦り」に変わった。まるで、信じられないものでも見たかのように。
その表情に圧倒され、ルイズも後ろを振り返る。半分はこの男に対する呆れの気持ちで、そしてもう半分は恐れの気持ちで。
そして彼女は、本当に信じられないものを見る。魔法を自由に扱うメイジでさえ、思わずうろたえるものを。
後ろを振り返って草を見たルイズ、その鳶色の瞳が瞬時に驚きと困惑、そして恐怖に塗り替えられた。 


彼女が呼んだ『草』――――さっきまで確かに萎れて土の上に倒れていたはずの『草』が、起き上がっていた。 


言葉さえも出ないルイズとコルベール、そして事の異常さに気付いた生徒達が見守る中、その草はゆっくりと起き上がる。
乾いた地面に水が染み込むように、ゆっくりと、だが力強く。
そして完全に起き上がった『草』は、一度大きく震えると、人間でいう『頭』のような部分を持ちあげる。そこには、猫のような
目と口が存在していた。
不意に、生徒達の一群がどっと崩れた。未知の植物に恐怖した生徒が、この場から逃げ出そうとしたらしい。
逃げようとした生徒と留まろうとした生徒が入り乱れ、たちまち辺りは混乱した。
そんな混乱を愛らしい二つの瞳で見つめながら、この世界に召喚された『猫草』は、そんなの関係ないねとでも言うように
小さな欠伸をして、ウニャンと鳴いた。


To Be Continued...?

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