ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

『女教皇と青銅の魔術師』-7

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匿名ユーザー

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なお、ミドラーがこの仕事(と、本人は言い張っている)を始めた初日には一騒動あった。
具体的には―――

「きゃあぁああぁあぁ!」
ひっくり返った悲鳴が教室にこだまする。
叫んだ本人は、香水のモンモランシー。
彼女の元に突然
(わが主殿…最早これまでですじゃ…)
と、使い魔から絶体絶命な思考が届いたのだ。
「ちょっとロビン!どうしたのよ!何が起きてるのよ!」
(不覚を取りました…網で捕らえられて…目の前には…黒い大蛇…)
「ああああダリオ!あんたの使い魔早く止めなさい!舌ッ!舌で舐めるのやめてーッ!」

騒然とする教室。
ほとんどのクラスメイトは使い魔の間で何事か起きていると理解する。
「え、何かのプレイ?うわぁ…」
ぶっとんだ解釈をする使い魔もいる。即座に主人に折檻されているが。
ダリオ、と呼ばれた少年はあわあわと無意味に杖を構えている。
実は彼は蛇を呼び出したはいいが爬虫類が苦手なのだ。精神リンクは恐怖以外の何物でもない。
しかし自分の使い魔が他人のに危害を加えているならば我慢せざるを得ない。
覚悟を決めた彼であったが、事態を理解していない人物の乱入によってそれは台無しになる。



「モンモランシーに何をするだぁーっ!」
ダリオが使い魔の舌で彼女に何かをしている、と何処かの使い魔並みにショートカット思考したギーシュである。
ひょっとしたら自分の使い魔の知力に影響され始めているのかもしれない。
椅子、机と駆け上がり綺麗に跳躍した彼は、格闘技の教本に載ってもおかしくない見事な蹴りをダリオにきめる。
両の手は頭上にYの字の如く、手首は返して二本指で標的を示す。
左足は胸に引き付け、右足は踏みつけるように。
気絶したダリオの顔面上でぴたりと静止するギーシュ。
完璧な蹴りであった。
状況さえ弁えていれば。

「アンタも変な誤解してないで使い魔止めなさい!
 ダリオ気絶させて誰が蛇止めるのよ!この馬鹿!」
ギーシュを張り倒しながらモンモランシーが叫ぶ。
モンモランシーにはすでに走馬灯を終えたロビンの辞世の句が届きはじめている。
(…井の蛙、姫に呼ばれて大海を知る…いまいちですな…駒鳥の名をどうにかして…)
蛙にしてはインテリらしい。



(ミドラー、一体何やったんだよ!)
めったにないギーシュからの思考をキャッチしたミドラーは、あたりを見回してからやっとリンクに気付く。
(ああギーシュ、珍しいじゃない。このてれぱしい?みたいなので会話ってどうやるの?)
(今できてるじゃないか!普通に喋るようにこちらに意識を向けてればいいんだよ!)
(なーるほど。便利ねーこれ)
(じゃなくて!今何やってるの!)
(えー。何か動物が集められてて。餌でもあげようかと思ったんだけど?)
(詳しく!)
(大きな黒い蛇がいたんで、池でカエル捕まえてきた。…このカエル色がすごいけど毒あるの?)
(それはモンモランシーの使い魔ー!すーぐーやーめーてー!)

―――という事件であった。
ちなみに蛇のディエゴはグルメであり、得体の知れないカエルなど食べるつもりは全くなかった。
食欲のない蛇を心配したミドラーが、
カエルを膨らませておいしそうに見せようとストローを探していた最中であった。

この事件以後、ギーシュの使い魔が他人の使い魔を世話している、という噂が広まった。
そして数日後には男子生徒のほぼ全員が使い魔を教室には入れずに厩舎に預けるようになる。
もちろん感触を楽しむ為に、である。
こういう時の年頃の男の結束は固い。女子生徒には全く悟られていない。
女子の使い魔の視界をがっちりブロックするほどの念の入れようである。

しかし、どんな組織にも裏切り者は現れる。


この日ミドラーがイノシシの子供のノミ取りを終えて、毛皮に「むぷー」と息を吹き込んで遊んでいる時。
その裏切り者―――ジョシュア(ケナガザル、雄)は、暗黙の了解を破ってミドラーの胸を鷲掴みにした。

主人(ジョージ。風のラインメイジ)にとってはもちろん冗談であった。
授業中に影で集まって水着のピンナップを見ている程度の認識であったし、動物に大した反撃はすまいと誤解していた。
彼の不幸は、ミドラーが猿の類を嫌っているということに気がつかなかった事にある。

ミドラーには、セクハラするオランウータン(フォーエバー:力のスタンド主)と死闘を繰り広げた過去があった。
(こういう調子に乗った動物はその場で躾けなければならないッ!)
即座にハイプリーステスを発現させる。
がちん、という音と共に小さなトラバサミがジョシュアの股間に噛み付いた。

同時刻、授業中の教室
「ぴ ぎ い」
豚のような悲鳴をあげる生徒が一名。痛さを想像して力なく呻く生徒が数名。
これはこれで学生らしいゆるやかな空気か、とギーシュは多少鈍くなった頭で考えていた。

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