ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

奇妙なルイズ-17

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匿名ユーザー

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朝早く、まだ生徒達が目覚める前。
ルイズとギーシュは馬に鞍をつけ出発の準備をしていたが、ギーシュはなぜか地面を気にしている。
「何キョロキョロしてるのよ」
「いや、実はだね…僕の使い魔を連れて行きたいんだ」
と、ギーシュが言ったとたんに、ルイズの足下が持ち上がり、ジャイアントモールが現れた、ギーシュはそれに抱きいて「僕の可愛いヴェルダンデ!」とのたまっている。
「臭いを嗅ぐなッ!」
ルイズは顔を真っ赤にして、ヴェルダンデの頭をべちん、と叩いた。

地面に降りたルイズは、連れて行っちゃダメだと告げた。行き先が『アルビオン』だからだ。
話を聞いているのかいないのか分からないがヴェルダンデは突然、ルイズを押し倒した。
「何なのよこのモグラ!やめなさいったら!」
鼻で体をまさぐり始めたヴェルダンデは、ルイズの右手の薬指に光るルビーを見つけると、それに鼻をすり寄せた。
アンリエッタ姫から預かった水のルビーを見ながら、ギーシュは「なるほど」と呟く。
「なるほど、指輪を見つけて喜んで居るんだね。ヴェルダンデは宝石が大好きだからねぇ」
「感心してないで助けなさいよ!」

そんな風にモグラとルイズが戯れていると、一陣の風が舞い上がり、モグラだけを吹き飛ばした。
「誰だッ!」
ギーシュが怒りを隠しもせずわめく、風の吹いた方向を見ると、朝もやの中から長身の貴族が現れた。
羽帽子をか被ったその男は、グリフォンから降りてギーシュを一別した。
「貴様、ヴェルダンデになにをする!」
ギーシュが杖を掲げようとすると、それより一瞬早く、長身の貴族が杖を引き抜いて、風の魔法でギーシュの杖を吹き飛ばした。
「僕は敵じゃない。姫殿下より同行を命じられていてね…。君たちだけでは心許ないらしい。」
そう言いながら帽子を取る。
「お忍びの任務であるゆえ、部隊つけるわけにもいかぬ、そこで僕が指名された…ってワケだ」
帽子を胸の前に置き、長身の貴族が一礼した。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」

ギーシュは魔法衛士隊と聞いて、相手が悪いと知った。
魔法衛士隊とは、家柄だけでは決して与えられない、実力がなければその地位には決して就くことができない、若きメイジ達のあこがれの地位なのだ。
「あのジャイアントモールは君の使い魔かね? だとしたら、すまない。婚約者がモグラに襲われているのを黙って見ているわけにはいかないのでね」
「ワルドさま……」
立ち上がったルイズが、震える声で言った。
「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」
ワルドはルイズを抱き上げた。
そんな人物がルイズの婚約者だと知って、ギーシュはあんぐりと口を開けた。
「ワルド様、この間馬車の中で『またすぐ会える』と言っておられたのは、この事だったのですね」
「ああ、…ふふ、相変わらず、きみは羽のように軽いな」
ワルドは抱きかかえていたルイズを地面に下ろすと、朝靄の向こうから聞こえてくる蹄の音に耳を傾けた。
「お取り込み中失礼致しますわ、ミス・ヴァリエール」
馬に乗って現れたのは、ミス・ロングビルだった。

そして簡単な自己紹介が始まった。
封書と、水のルビーを預けられたルイズ。
アルビオンに入るまでの間、護衛を任せられたロングビル。
道中の護衛をつとめるワルド。
おまけのギーシュ。

ギーシュは『自分よりはるかに腕の立つ男』と、『学院長の秘書になるほど腕の立つメイジ』に挟まれ、この任務を手伝うことが出来た幸運に体を震わせた。
ロングビルは生徒に魔法を見せたことは無いが、学院長の秘書になるぐらいだから実力があるのだろう…などと、生徒達の間で噂されているのだ。

顔見せが終わった後、ワルドはグリフォンに跨り、膝の上にルイズをのせた。
「では諸君! 出撃だ!」
グリフォンが駆け出して、ギーシュとロングビルの馬が後に続き、アルビオンに向けて走り出した。

そんな出発の様子を見ている者が居た。
学院長室の窓から、アンリエッタ姫がルイズ達を見ていたのだ。
アンリエッタは目を閉じて祈る。
「彼女たちに、加護をお与えください。始祖ブリミルよ…」
その隣ではオスマンが鼻毛を抜いていた、アンリエッタは緊張感のないオスマンが気になり、オスマンの方に振り向いた。
「見送らないのですか?」
「ほほ、ワシは友達のお願いを聞いた生徒が勝手に出かけていくとしか聞いておりませんでな」
意地悪そうに呟くオスマンに、アンリエッタは少し嫌そうな顔をした。
オスマンではなく、自分が嫌になる。
自分は、どれだけ『おともだち』に迷惑をかけたのだろうか。
今までのアンリエッタであれば、王族の不始末は貴族がぬぐって呵るべき、と考えていたかもしれないが、今は『王族』と『友達』の間で苦しんでいる。
ただ、今はこの任務を引き受けてくれたルイズに感謝し、無事を祈るほか無かった。

「ところで、オールド・オスマン」
「はい、なんでございましょうかな」
「このミス・ロングビルを派遣して、学院に不都合はないのですか?」
「ほっほっほ、ワシの秘書と言っても大して仕事はありませんでな、それに彼女は土のトライアングル、実戦慣れもしておりますからのう」
「そうですか…ミス・ロングビルを信頼なさっているのですね」
「生徒のことも信頼しておりますじゃ」
その返事に、アンリエッタは少しだけ笑顔を見せた。
「それにしても、実戦慣れしている方を秘書に着けられるだなんて、オールド・オスマンの人脈には驚かされますわ」
「なぁに!それほど大したことでもありませんでな、酒場でワシがお尻を触っても嫌とも何とも言わない、いやこれは実に出来たお嬢さんだと思いスカウトした訳ですじゃ!」
「ハァ?」
「しかも雇ってから彼女がメイジだと分かりまして、大したことは出来ないと謙遜しておりましたが、滲み出る実力はトライアングルで上の方だと感じまして……あっ」
オスマンは自分がよけいなことまで喋ってしまったことに気づき、慌てて口をつぐんだ。
「…あ、あの、今のは冗談! あのー、なんちゃって! ハハハハ…」
ぼけ老人のふりをしようと思ったが、もう遅い。

「…そ、そんな人物を護衛に…ああ、ルイズ…」

アンリエッタは、ルイズに謝りながら気を失った。

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