ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サブ・ゼロの使い魔-15

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武器屋に入っていくルイズ達を、キュルケ一行は影から観察していた。
「武器屋・・・?何しに行くのよあの子達」
「そりゃあ武器屋なんだから武器を買うんだろう?」
「普通はそうでしょうけど ルイズはメイジじゃない」
キュルケとギーシュがひそひそと話をしていると、
「ギアッチョ」
本を読みながら短く答えるタバサ。その言葉にキュルケが納得している横で、ギーシュはビクンと震えている。
それに気付いたキュルケが、
「ギアッチョ」
と呟くと、ギーシュは小さく「ひぃっ」と声を上げて縮み上がった。
「タバサ・・・コレどーにかならない?」
呆れた声でタバサに助力を求めるキュルケに、
「無理」
少女は簡潔かつ明瞭な答えを返した。

絹を引き裂くような悲鳴が聞こえたのはその時である。
ドグシャアァッ!だのドグチア!だのメメタァ!!だの何やら不穏な物音と共に、
「痛いって痛ギャーーーーーーーーッ!!」という大声が響いた。
音の発信源である武器屋にキュルケ達が眼を向ける。悲鳴と物音はなおも続き、
「ちょ、待って待って痛いから!ホント痛いからコレ!ね! 一旦落ち着こう!ってちょっとやめェーーーーーーーッ!!」
というどう聞いても被害者のものと思われる声に
「逃げてー!デル公逃げてーー!!」
という野太い声が重なり、「剣が一人で逃げられるかボケェ!!ってイヤァァァーー!!」
律儀にツッこみを返す先ほどの声、そしてその後に
「ちょ、ちょっと!何やってるのよギアッチョ!!やめなさいってば!!」
と何かを制止する少女の声が聞こえ、キュルケ達の99%の予想は100%の確信へと昇華した。
「・・・あの使い魔もなんとかならないかしらね・・・」
口の端を引きつらせるキュルケに、
「絶対無理」
簡潔な絶望を以って返答するタバサだった。
ちなみにギーシュは、あっけなくその意識を手放していた。


物音が聞こえなくなって数分、ルイズとギアッチョが武器屋から出てきた。
ギアッチョの手には古びた剣が鞘ごと鷲掴みにされている。
店主と思われる男が顔を出すと、
「生きろデル公ーーー!!」
と叫んでいた。
「デル公?」
誰の事だろう。キュルケがそう思っていると、ギアッチョの持っている剣がひとりでに鞘から顔――のように見えなくもない鍔――部分を露出させ、
「離せ!いや、離してくださいィィィ」とか「ゴミ山でもいいから俺を捨ててくれェェェ!」とかわめいている。
「インテリジェンス・ソードじゃない・・・また変なもの買ったわねルイズも」
当のルイズは、全力で魔剣から目をそむけていた。合掌。

「なぁ!ちょっと考え直そうぜマジに!剣買うなら安くてつえーの紹介すっからさ!
別に俺である必要はないわけじゃん?こんなオンボロよりもっと若くてイキのいいのが沢山あんだって!な!」
なおもわめき続けるインテリジェンス・ソードにギアッチョは目を落として言う。
「なるほど一理あるな・・・」
「だろ!?だったら早く俺を返品しt」
「でも断る」
「何ィィ!?」
ギアッチョは喋る剣を胸の高さに持ち上げて続けた。
「てめーはどうやらなかなか頑丈みてーだからよォォ~~ 武器兼ストレス発散装置として活用させてもらうとするぜ」
一片の光明も見出せないその返答に、デル公の微かな希望は崩れ去った。


「・・・ところでよォォ~~」
ギアッチョが急に声を大きくする。
「今日は大所帯じゃあねーか え?キュルケ いつまでコソコソ覗いてんだ?」
その言葉にキュルケの心臓が跳ね上がる。気付いていた!?いつから!?
「最初から」
と呟くように答えて、タバサは物陰から抜け出した。
「気付いてて放置してたってわけ・・・?これじゃまるでピエロじゃない」
こめかみを押さえて一つ溜息をつくと、未だ覚醒しないギーシュの首根っこを引っつかんで、キュルケは青髪の少女に続いた。
「キュ、キュルケ!?・・・に、ええと・・・タバサ・・・とギーシュまで どうして!?」
いきなり現れた三人にルイズは面食らっている。まさか見つかるとは思っていなかったキュルケは、そのストレートな質問に
「ど、どうしてって・・・えーと・・・」
しどろもどろで言い訳を考える。そして数瞬の沈黙の後、
「・・・そっ、そうよ!あなたが使い魔に振り回される所を見物しに来たのよ!」
と言い放った。
「な、なんですって~!?いくら暇だからって随分悪趣味なのねあんたって!!」
売り言葉に買い言葉で喧嘩を始める二人をやれやれといった眼で眺めるタバサがふとギアッチョに眼を向けると、同じような眼でルイズ達を見ていた彼と眼が合った。
「本題」
ギアッチョがキレる前にさっさと片付けようと思ったタバサは、そう言ってから身の丈よりも長い杖でポコンとギーシュの頭を叩く。
「あいたッ!もっと優しく起こし・・・ん?」
その衝撃で眼を覚ましたギーシュは、キョロキョロと辺りを見回し。汚い路地裏に倒れている自分を見、そしてその自分を眺めているギアッチョを見て――
魔剣もかくやと言わんばかりの悲鳴を上げた。


「「ちょっと、うるさいわよギーシュッ!!」」
ルイズとキュルケの見事なハモりに、「ヒィッ、すいません!」と思わず直立しようとしてしまったギーシュだったが、松葉杖が手元になかったせいで見事にスッ転んだ。
見かねたタバサが、物陰に捨て置かれていたそれをレビテーションで持ってくる。
「あ、ああすまない・・・」
タバサに礼を言って松葉杖をつかむと、ギーシュは今度こそ立ち上がり、

バッチィィィン!!

自分の顔を思いっきりひっぱたいた。その音に驚いたルイズ達が喧嘩をやめてギーシュを見る。
「・・・よ、よし 気合は入った・・・ッ」
強く叩きすぎたのか、フラつきながらもギーシュはルイズへと歩き出す。
「な、何・・・?私?何の用・・・?」
状況を把握出来ていないルイズの前に立ち、ギーシュはおもむろに松葉杖を投げ捨てた。
そして支えを失ってバランスを崩しながらも彼は地面に膝をつき――
「ラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに、グラモン家が四男ギーシュ・ド・グラモンが謝罪申し上げる!!」
ガツン!!と石畳に頭を打ちつける。
「申し訳ないッ!!僕が悪かった・・・今までの侮辱、どうか許して欲しい!!」
ルイズ達はあっけにとられていた。キュルケやタバサも、ギーシュはどうせギアッチョにビビって適当な礼もそこそこに逃げ戻ってくるだろうと思っていたのだ。
彼に家名と誇りをかけた謝罪をする決意があったなどと、夢にも思わなかった。
「ちょ、ちょっとギーシュ!何やってるのよ・・・もういいわ!顔を上げて!」
ルイズが慌ててしゃがみこむ。
「許してくれるかい・・・ルイズ」
自分を立ち上がらせようとするルイズに、ギーシュは頭を地面につけたまま問う。


「・・・ええ ヴァリエールの名にかけて」
「・・・・・・ありがとう」
そこまで言って、ギーシュはようやく血に塗れた顔を上げた。ルイズに肩を借りて
立ち上がると、ギーシュはギアッチョに向き直る。相変わらず膝は笑っているが、
その眼に迷いはなかった。
「・・・ギ・・・・・・ギアッチョ 僕は君にも謝罪しなければならない」
しかし口を開きかけたギーシュを、
「待ちな」
ギアッチョは押しとどめる。
「やれやれ・・・どーやらよォォ~~・・・ ケジメをつける『覚悟』だけはあるらしいな」
「ギアッチョ・・・ 謝らせてくれ、僕は」
というギーシュの言葉に被せてギアッチョは続ける。
「別にこいつの従者になったつもりはねーが・・・元はといえばオレがルイズの
使い魔として受けた決闘だ てめーはいけすかねぇ貴族のマンモーニだが・・・
貴族として貴族に謝ったってんならよォォーー 平民に謝罪なんかするんじゃあ
ねえぜ」
意外なギアッチョの言葉に、ギーシュは二の句が継げなかった。
「その代わり、だ 平民は平民らしくよォォーー てめーのツラを一発ブン殴って
終わりにさせてもらうぜ」
「・・・ギアッチョ・・・」
ルイズもギーシュも、この場の誰もが驚いていた。しかしギーシュはすぐに理解した。
まだよく分からないが、きっとこれが『覚悟』なのだと。貴族としての『覚悟』に、彼は
平民として応えてくれているのだと。
「・・・分かった・・・来たまえ、ギアッチョ!」
ギーシュはにこやかにそう答え、
トリステインの青空に、派手な音が鳴り響いた。



ギーシュは、学院へ向かって飛ぶシルフィードの背中で、風竜の主に問いかけた。
「・・・タバサ 『覚悟』って一体何なんだろう」
タバサは本からちらりと眼を外すと、
「意志」
一言短く、しかしはっきりと答えた。それが何を指すのか、ギーシュにはやはりまだ
分からなかったが――彼は今、不思議とすっきりした気分だった。


<==To Be Continued...

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