ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

主人の能力【序章】

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洗濯物を洗い終えたシーザーはちゃんと干してから元の部屋へと向かった。
無論、小さな『主人』を起こしにである。
シーザーは昨日までのルイズの言動を今まで口説いてきた女性と比較して一つの結論に達した。

 あのタイプは自分の思ったとおりにならないと途端に癇癪を起こす、と

そしてそれは正解であった。




「おい、起きないか」
「う~ん…もうちょっとだけ…」
シーザーの起こすための台詞は、ルイズの幸せそうな寝顔で前述の暢気な言葉で返ってきた。

 どうにも彼女は朝が苦手なようだ。
 年齢をしっかり尋ねたわけではないが10~14歳ぐらいだから起きるのが苦手なんだろうとシーザーはそう結論付けた(実際は違うのだが)。

ちなみにこのやり取りは10分近くされており、いい加減焦れてきたので実力行使で起す事にした。

具体的な提案としては毛布を引っぺがすという提案である。
そしてシーザーはその具体案に沿って行動を起した。
そして引っぺがされたルイズは慌ててベッドから身を起し、
「ひゃうッ!ななな何するのよ!この公爵家の三女にこんな狼藉を働いて只で済むと思ってないでしょうね!?」
まだ寝惚けているのか目の前の人物も上手く認識出来ていないようだった。
「おはよう、シニョリーナ」
「はえ?……って誰なのよあんた!」
「朝一番でそれかい?そして俺の名前はシーザー・A・ツェペリだ」
毛布を引っぺがされた怒りによって頭がすっきりしてきたルイズは段々目が覚めてきたのか目付きがハッキリしてきた。
そして開口一番起してくれたシーザーに対しておはようでも、ありがとうでもなく次の言葉が口から出てきた。
「ああ、使い魔ね。昨日、召喚したんだっけ」
少しだけシーザーはカチン!と来たが子供の言う事に目くじらを一々立てていても仕方が無いと思い何も言わなかった。
しかし、次の彼女の言葉には度肝を抜かれた!
「服」
ただの一言、あくび交じりでそうシーザーに命じた。
それに対してシーザーは間抜けにも口をポカンと開けて、溜息にも似た心境を吐き出した。
「ハァ?」
しかしルイズはそんなシーザーには一瞥もくれずに身に纏っていたネグリジェをだるそうに脱ぎ始めていった。
シーザーは目の前に起こっている事について付いていけず、頭の中が真っ白に漂白されていた。

 目の前の子は一体何をしているんだ?そもそもいきなり服って何だ?何で脱ぐんだ?

などなどシーザーは疑問が次々と浮かんでいたが、体は勝手に行動を起していた。
つまり、ルイズの椅子に掛かっていた制服を投げて寄越していた。
「下着」
「………それも俺がやるのか?」
「当たり前でしょー、そこのクローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」
まるっきり召使の扱いである、舌打ちをしてシーザーは言われたクローゼットの引き出しを開けた。
たしかに女性物の下着がぎっしり入っていた。
これが変態ならば息を荒げて興奮しているだろうがそこは女性との付き合いが豊富なシーザーである。
確かに一部は子供の下着としては派手な奴もあったがルイズは如何せん子供であった。
クローゼットから出した下着を適当に見繕ってルイズに投げた。
「服」
「さっき寄越しただろう」
「着せて」
一体何様のつもりなんだろうかとシーザーは思った。
何しろ彼の兄妹もルイズの年齢位には少々手間取っていたが一人で服を着ることは出来ていたのだから。
そんな気持が目に表れていたのだろう。それに気づいたルイズは唇を尖らせて言った。
「平民は知らないだろうけど、貴族は下僕が居る時は自分で服なんて着ないのよ」
いくら女性に対して優しいと自覚しているシーザーもこれには呆れ半分怒り半分で抗議した。
「服ぐらい自分で着ないか」
「あっそ。ご主人様に生意気な使い魔にはお仕置きしなくちゃ。朝ごはんヌキね」
ここに来てから何も口にしていないシーザーにこれは堪えた。
仕方ないので、渋々ルイズの服を着せていった。

服を着せ終わったシーザーはルイズと共に部屋を出ると、三つの似たような扉から火の様に赤い髪の女性が出てきた。
こっちはルイズと違い、むんっと匂ってくるような色気も身長もある。
特筆すべきは彼女の胸であった。大きさもさることながら、ブラウスの一番と二番のボタンを外していたので胸元が覗いている。
褐色の肌も健康的でありながらも色気を出す特長となっている。
ルイズとは何もかもが正反対な女性、それがシーザーの第一印象であった。
そんな彼女はルイズを見ると、チェシャ猫の様にニヤリと笑った。
「おはよう。ルイズ」
それに対してルイズは顔を顰め、あからさまに嫌そうな声で応えた。
「おはよう。キュルケ」
一先ず挨拶を帰ってきたので満足したのか彼女はルイズの傍に居たシーザーに興味が移った。
「それがあなたの使い魔?」
そうシーザーを指差しながら誰が聞いてもわかるぐらいに馬鹿にした口調で言った。
「そうよ」
「あっはっは!ほんとに人間なのね!すごいじゃない!」

 何故人間で悪いのだろうか。
 確かに人間の能力には限界があるのは認める、認めてやる。
 しかしそのために人間は様々な技術を発展させてきたのだ、それは人間にしか出来ない。

シーザーが自身の考えに没頭していた間に両者の会話は使い魔談になっていた。
「『サモン・サーヴァント』で、平民を喚んじゃうなんて、あなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」

そう言われたルイズの頬瞬時に白から赤へと変化した。
「うるさいわね!」
「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ~。フレイムー」
キュルケは勝ち誇った声で自身の使い魔の名前を呼んだ。
そうするとキュルケの部屋からのっそりと大きな赤いトカゲが現れた。
現れた途端、廊下がむんとした熱気が辺りを包む。
シーザーはいきなり怪物が出てきたことにより、後ずさった。
大きさはトラほどもあり、尻尾は燃え盛る炎でできていた。口からは息をするごとに火炎が溢れている。
こんな本の中でしか見たこと無い怪物を見て、シーザーは尋ねた。
「傍に居て熱いとは感じないのかい?」
「熱い?あたしにとっては、涼しいぐらいね」
「これってサラマンダー?」
ルイズは悔しそうに唇を噛みながら尋ねた。
「そうよー。火トカゲよー。見て?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?
ブランドものよー。好事家に見せたら値段なんて付かないでしょうねー。」
嬉々としてキュルケは目の前の使い魔について講釈をしていく。
「そりゃよかったわね」
苦々しげにルイズが言った、歯軋りもしかねない勢いである。
「素敵でしょ。あたしの属性にぴったり」
「あんた『火』属性だもんね」
「ええ。微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。
でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね」
キュルケは得意げに胸を張った。負けじとルイズも胸を張るが、如何せんボリュームが足りない。
それでも負けじとルイズはキュルケに睨みつける、本当に負けず嫌いのようだ。
「あんたみたいにイチイチ色気振りまくほど、暇じゃないのよ」
しかし、誰が聞いても負け惜しみも甚だしいのは丸わかりだった。
負け惜しみとわかっているので、言葉を向けられたキュルケは余裕の態度でにっこりと笑った。
そして、シーザーの方を見つめる。

「あなた、お名前は?」
「シーザー・A・ツェペリさ、シニョリーナ」
「ふ~ん、聞きなれない変な名前ね」
「この名前は俺の誇りだ。それを侮辱しないでくれ」
そのことを聞いたキュルケは目を大きくした。
「…じゃあ、お先に失礼」
そして、その体に似合わない可愛い動きの使い魔と共に颯爽と赤髪を掻き揚げて去っていった。
キュルケの姿が見えなくなるとルイズは拳を握り締めた。
「くやしー!なんなのよあの女!自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!」
「別にいいだろう、召喚されたのが人間でも」
「よくないわよ!メイジの実力は使い魔を見ろと言われているのよ!?それに人間でもメイジと平民は狼と犬ほどに差が有るわよ!」
後半の部分は得意げに指を立てながらシーザーに言った。
それに対してのシーザーは冷めた考えをしていた。

 犬…ね。
 別に狼だってイヌ科の動物だろうに…

と、シーザーは思ったが口には出さなかった。どうにも今のルイズには火に油を注ぐ様なものだろうと考えたからだ。
「…そうかい。ところでさっきゼロのルイズと言っていたけども、『ゼロ』ってなんだい?苗字のようなものかい?」
「違うわよ!私の名前はルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。ゼロは単なるあだ名よ」
「あだ名の事か。彼女の『微熱』はなんとなく肌で感じたが、君はどうして『ゼロ』なんだい?」
「知らなくていいことよ」
ルイズが何処と無く怒ったような、バツが悪そうな感じで言った。
それに対してシーザーはつい、忌憚無い意見を言ってしまった。
「胸のことかい?」
途端にルイズの平手が飛んできたので、それをかわす。
「かわすな!」
「ちょっとしたジョークじゃないか!」
この平手がシーザーは引っかかったが、小さな事だと思い無視した。

←To be continued

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