ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

『女教皇と青銅の魔術師』-8

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匿名ユーザー

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タバサは最近、自分の使い魔におきた変化に困惑していた。

最近、妙に身体が重い。
私のことではない。使い魔のシルフィードのことだ。
先日ギュルケを乗せてルイズとその使い魔の尾行をした際に気がついた。
切り返し等の空中機動が以前より少し鈍っている気がする。

(なお、ルイズはあの使い魔にインテリジェンスソードを買い与えた。
 ギーシュの劣化ぶりを目の当たりにして、自分も使い魔に似るのではと危機感を抱いたらしい)

スタイルも多少変化しているような…ありていに言えば、太りはじめた?
ここ数日で特に普段と変わった食事は与えていない。
数日前にキュルケから、厩舎に置いておくとギーシュの使い魔が世話してくれると聞いて、あの子に伝えた。
次の日ぴかぴかになっていたので噂は事実なのだろう。
…ひょっとしてそこで何かもらっているのだろうか?


午後の授業を抜ける。
この時間、普通ならシルフィードはその辺を飛び回っている。
…何故厩舎に反応があるのか。
影からこっそりと様子を伺う。

いる。
厩舎前にでっぷりと(仮にも風韻竜についていい形容ではない!)寝そべっている。
ツバサをギーシュの使い魔が磨いている。何やら実に楽しそうだ。
シルフィードは、寸胴鍋に頭を突っ込んでいる。
しかも、空の寸胴鍋がいくつか周囲にある。
運動するべき時間にこれだけ食べて寝そべっていればそれは太る。当たり前だ。

(…シルフィード)
真後ろに立って思考で呼びかける。
びくん!と竜の巨体が震える。
(お、おねえさま…)
(説明を)
(…はい)


ギーシュの使い魔(ミドラーというらしい)とシルフィードを並べて尋問する。
この竜の飼い主だ、と名乗ると意外にもミドラーは大人しくなった。
数名の生徒に対する暴行(いや、強盗か)から推測していたよりは凶暴ではないようだ。
(何故ここにいるのか)
(このおねーちゃんが翼を洗ってくれるって言うからおねがいしてました)
杖で寸胴を指しながら訊く
(これは何か)
(細かいお肉とご飯をねって、ぶどうの葉っぱでくるんで煮たものだそうです。おいしかったです)
(そんなことは訊いてない)
(ごめんなさいごめんなさいおねえさまおこらないで)

ミドラーにも話を聞く。
どうやら洗っている間に逃げたりしないように与えていた餌がどんどんエスカレートしたらしい。
状況を聞くに付け、どうやらシルフィードがせがんだようだ。
この竜はどこにいるのか、どうやって飼い慣らすのかと訊ねてくるが、曖昧にスルーする。
竜自体を学院で初めて見たようだ。風韻竜がばれた様子はない。
ただの風竜としての知識を教えておけばいいだろう。

「喋れるなんていいなあ…」

その、肩を落としてシルフィードに呟いた台詞に、心臓が凍りつくようなショックを受ける。
(シルフィード!)
「しゃ、しゃべってなんかいません!」
もう駄目だ。



仕方なく風韻竜について説明する。
絶滅危惧種なので無用のトラブルを招かない為に風竜を装っていること。
人語で会話も可能、呪文詠唱、アイスブレスも可能。
人間に変身することも可能。
この子の為を思うなら秘密にしてほしい、と伝えると快諾してくれた。
さっきの台詞は「(テレパシーで)喋れるなんて(飼い主は)いいなあ…」という意味だったらしい。
簡単に動揺した自分を戒める。


気を取り直してシルフィードに訊く。
(今までどんなものを食べたか報告)
竜にはよくない食物だってある。
場合によっては薬草を飲ませる必要があるかもしれない。
(なすとピーマンとにんにくと、細かく砕いたお肉をまぜて焼いたものをいただきました。おいしかったです)
…この子はピーマンが嫌いだった気がするのだが…?
(見たことのない緑色の何かをいただきました。おいしかったです)
ミドラーに確認。たーめいやというものらしい。主成分は空豆か、なら大丈夫。
(くるみとぶどうのつつみ揚げをいただきました。おいしかったです)
…その組み合わせは初耳。おいしいのか。
(お肉とトマトと豆の入ったスープをいただきました。おいしかったです)
………
(あと今日はぴらみすというお菓子をくれるそうです)
すっかり餌付けされている気がする。
これはいけない。

私がミドラーに話をしようと振り向くと、彼女は四角錐の奇妙なケーキを運んできた。
ぴらみすとはこれのことらしい。
勧められるままに味見をする。
甘い。
独特の風味があって実に美味しい。
二人の使い魔のすがるような目を前に、わたしは考える。


これは、明らかに未知の調理。
私の知る限りの国には、このようなものはない。
つまりこのミドラーという使い魔は、私の知らない異国の出身。
彼女はシルフィードに餌付けして支配、という意思はなさそう。ただ餌を与えたいだけだろう。
シルフィードも彼女の料理を望んでいる。私のあげるサラダは残すくせに。
彼女との交流は非常に意義深い。
見知らぬ異国の薬や魔法ならば、母を治すことも可能かもしれない。
私には既存の知識だけでなく異国の知識も必要なのだ。
しかし主のいない場所で使い魔が他人に餌付け、というのは実に拙い。
………

決めた。
私は彼女達に伝える。
「このままではよくない。シルフィードは太りつつあるし、いつ毒性の食物が混じるかわからない」
がっくりする二人に、言葉を続ける。
「午後の授業が終わった後、私が同伴して毒見をしてもいいなら許可」
「シルフィードは晩御飯の減量と特別の機動訓練をすること」
歓声をあげて二人の使い魔は抱き合って喜んでいる。
ちょっとミドラーに嫉妬した。

料理の取り分は、4:6にしよう。

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