ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

slave sleep~使い魔が来る-2

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匿名ユーザー

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ルイズ・フランソワーズ!
          ブローノ・ブチャラティを呼ぶ①


彼、ブチャラティは戸惑っていた。
それは、初めてのバイトでどういった仕事をすればいいのかわからないといった単純な戸惑いとは比べ物にならないほどの戸惑いようだった。

あの最後の決戦。死に逝くトリッシュを救うために自らの残された時間を差し出し、もう全てをやりとげて死ぬとばかり思っていた彼は今・・・。

「ふーん。その、イタリアって言う国からアンタは来たのね?」
「ああ・・・。その通りだ。」
つい小一時間ほど前に出会った少女に質問攻めにされていた。
彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、通称ルイズの説明を聞き、ブチャラティはある程度自分の置かれた立場を把握しようとしていた。
ここは自分の生まれ育った国イタリアではなく、魔法を使う貴族(この世界ではメイジと呼ばれる)たちが暮らす土地、ハルケギニア大陸。
その大陸の中で、4つに分けられた国の一つトリステインの敷地内にあるトリステイン魔法学院。
そして自分はそのメイジであるルイズにサモン・サーヴァントによって召喚、契約した由緒正しき使い魔となったという、ぶっ飛びすぎてまともについていけるはずのない状況に立たされていたっ!!
だがブチャラティはあろうことか、そのトンデモな大展開をものの見事に『把握』して見せたのだった!普通ならすぐには把握できない状況をなぜこうも簡単に把握できたのか。それは彼もまたまともならついていけない世界を生き抜いて来たからなのだった・・・。


だがブチャラティは経験上、当たり前のことなのだろうが、用心深く最後の確認を行った。
「なあ、ルイズだったな。ちょっといいか?」
「なによ?まだ何かあるの?」

ズンッ

ヒュウウウン!!

まさにあっという間の出来事だった。突如彼の右腕からもう一つの『右腕』が現れ、ルイズに向かって鋭く襲いかかって来たのだっ!!

ピッタァァァァン

その右腕はルイズの顔面のほぼスレスレで止まっていた。その幅ティッシュ3枚分!!
見えていたなら悟った瞬間恐怖で立ちすくみ数分は動けない。だが、ルイズは!!
「・・・・?何よ?人の顔じろじろ見て。用があるなら早く言いなさいよ。」
「・・・汗ひとつかかないね・・・・。」
「は?汗?」
「い、いや、なんでもない。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・。

(『見えて』・・・いないのか・・?見えていないのならこいつはオレを狙う『スタンド使い』ではないと言えるだろう・・。
だがもしっ!!『見えてはいたが見えないフリをしている』としたら・・?相当の実力を持ち、場数をふんだギャングなら可能かもしれない。だが、何一つそれらしい動作をしないなんてありえるのか?目の前で不意にパンチの寸止め汗一つかかない奴なんているのか・・?
一滴でも汗をかけばこっちの物だったのだが・・・・・・。
 ・・・考えすぎか。やはり動揺してるのはオレのほうなのかもしれない。見ず知らずの女が、いきなりオレを蘇らせたんだ。
無理もないだろう。)
「ブチャラティ?ブチャラティったら!!・・もうっ!!なんなのコイツ!なんでこのヴァリエール家の三女が、由緒正しい旧い家柄を誇る貴族のわたしが、なんであんたみたいな辺鄙な田舎の平民を使い魔にしなくちゃいけないの…?」
深く落ち込むルイズ。だがブチャラティには素朴な疑問がまだ残っていた。
「そういえば、使い魔と一言で言うが、使い魔とは主にどういうものだ?奴隷みたいな物なのか・・・?」
「主人を守り、命令を絶対遵守する、そんな卑屈なものではないわ」
ルイズが真剣な顔で返す。
「そうか・・・。じゃあ最後の『質問』だ・・。」
「質問?」
「キミの話はだいたい『把握』した。ここが魔法の国だと言うことは『把握』した。オレはキミの召喚によって
この国に来てしまったのも『把握』した。キミのキスでオレは蘇生し使い魔になったこともなんとか飲み込もう・・・。
だがオレは最後に一つ、実に素朴な疑問に突き当たる。それは・・・。
 ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ 
どうやったらオレはイタリアに帰ることができるのかという疑問だ・・・。」

「無理よ…
サモン・サーヴァントであんたを呼び出したのは私。
だけど元の場所に帰す魔法なんて知らないし聞いたこともないわ・・。」
無情!それがルイズの語った現実だった!!ブチャラティは顔にすら表さなかったが、その真実を前に愕然としてしまった!!
「私だって元々人間なんて使い魔になられたって困るのよ。とりあえず来ちゃった物はしょうがないし、これからアンタには掃除や洗濯をしてもらうわ。」
「レスピンジェレ(断る)。」
「・・・何ですって!?」
「オレは使い魔にはならない。誰かにいいように扱われるのはもう嫌だといってるのさ。」
「ふざけてるのっ!?平民が貴族に逆らえると思ってるの!?」
「いやなら力ずくで止めてみればいいじゃないか。なんなら魔法を使ってみるかい?だがオレには、キミから逃げ切る策と自信があるっ!」

ドォオオオオオオ・・・。

ブチャラティは短時間でルイズの性格の分析はできていた。そしてさっき帰る時、他の生徒のように飛んで帰らなかった事をこう分析した。コイツは飛べないほどに、魔法が得意じゃないっ!
「やってやろうじゃない!!」
予想は的中!ルイズが怒りにまかせ突進してくるっ!!
「そう、そのまま向かって来い・・・。」
「ほらっ!捕まえ・・・!」
「"スティッキィ・フィンガース"。」

スッタアアアアァァァン!!!

気がついたらルイズは、何もないはずのところでつまづき、転んでいた。
その綺麗に転ぶ様には美しさすら感じられるほどの清々しい転び方だった!!
「ふみゃっ!・・・っつう~~・・何で何もないところで転ぶのよ・・・!」
否、そこにはなかったはずの物があった。
「あれ・・?なんでこんなところに"ジッパー"があるの・・?・・ハッ!!逃げられたっ!」
体制を立て直すルイズ。すぐにドアに向かったが!
「あれ?このドア鍵かかってるじゃない!!え?じゃあアイツは『どうやって』ここから消えたの!?」

一方、廊下。
タッタッタッタッ・・・・・・
(オレの命は、『あの日』すでに終わっていたはずだった・・・・。
あのヴェネツィアでの戦いからローマでの決戦までの奇妙な時間は、『運命』がオレを生かしたと、
オレにやりとげる時間を与えてくれたと感じていた・・。だが、『今この時』はどう説明すればいい?オレの終わった命はもう!
二度と戻ってこないと思っていたのにっ!横から現れた魔法使いなんかが、平然とそのルールを破るような存在と巡り合うなんて普通考えられないっ!
『運命』は奴らに巡り合わせて尚、オレに何をさせようとしてるのだ・・・・。)
逃げながら葛藤していたブチャラティ。だが逃げてる途中、二人の男女を見かけた。
一人は金髪のいかにもキザそうな少年!服装のセンスがどこかズレていたっ!
もう一人は控えめな印象の茶色のコートを着た女の子だった。
「ちょっといいか?」
「きゃあっ!!!」
予想外だった!茶色のコートの子がものすごく動揺しよろけたのだっ!!
だがそれでは終わらなかったっ!運悪くそのパワーで金髪の男が押されて後ろにのけぞったっ!!

バタンッ!!

「イタタタ・・・。」
「お、おいっ!大丈夫なのか!?耳元でフライパン同士をぶつけられたような驚き方だったぞ!?」
「君ぃ!何の恨みがあってケティを驚かせたんだっ!?平民が貴族を後ろから驚かせるなんて、
礼儀うんぬん以前の問題だぞっ!?」
金髪の男は少々プッツン気味に言い放つ。だがブチャラティは冷静に返した。
「そんなつもりはなかったんだが・・・。いや、それより君たち、すまないけどここの出口を教えてくれないかな。急いでいるんだ。」
「・・出口ならそこの角を曲がっていけば簡単だ。一本道だからな。」
「グラッツェ(ありがとう)。助かるよ。」
ブチャラティは去っていった。

「なんなんだあの失礼な平民は・・。ケティ大丈夫だったかい?あの平民に何かされなかったかい?」
「い、いいえギーシュさま。ただ『自分』で驚いてしまっただけです。だってあの方の声が・・・。」
「みぃ~~~
       ~~~っつけたわよぉぉぉぉ!!ブチャラティィィ!!!」

ドカッ
ミシッ
スタァァァン!!

突然走ってきたルイズ!あまりのスピードにギーシュと呼ばれた彼は全く対応できず
吹っ飛ばされたっ!!
「ウギャッ!!」
「よくも逃げてくれたわねっ!!変なトリックまで使って!もう許さないっ!
どうこらしめてくれようかしら!?」
「ま、待ちたまえ!ミス・ヴァリエール!!」
ギーシュが止める。ルイズはここでようやく人違いだったことに気がついた。
「あ、あれ?ギーシュ!?・・・ま、紛らわしいわねっ!」
「勝手に間違えたのは君だろうにっ!!・・・はっ!そうか。さっきの平民!
ハハ~ン・・。なるほど。使い魔に逃げられたってわけだな?
やれやれ。使い魔一匹満足に扱えないとは、流石『ゼロのルイズ』だな。」
「グッ・・。」
「彼ならそこの角さ。一本道だから簡単に見つかる。」
その次だった!ルイズがギーシュの襟を掴んで引きずる!
「ちょっと手伝いなさいっ!!」
「うわっ!な、何をするだぁーー!ケ、ケティ!また明日会おう!!」
「あ!ギーシュさま!!」

走り抜けるルイズ!引きずられるギーシュ!
そして思わぬ人物とぶつかった!

ボッヨォォォン

ルイズは妙に弾力のある物に大激突した!
「うわわわ・・。あ!アンタは!」
「あら、ルイズじゃない。おカワイソーに。貧弱な体格だと耐久性も貧弱になるから困るわよねぇ」
そこにいたのは褐色肌のボンッキュッバンッ
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー!!
グンバツのボディーを持つ女ッ!!最も気の会う親友、ちっこいメガネっ娘タバサと共に登場だっ!!
「フンッ!デカ過ぎると動くのが大変じゃなくって?ツェルプストー!」
「なんですって!?」
「STOPだレディー達。ミス・ツェルプストー。今そこを通っていったミス・ヴァリエールの使い魔と
会っただろう?彼に用があるんだ。」
止めに入ったギーシュ。だがキュルケの一言は予想外っ!

「・・・?何のこと?ここは誰も通っていかなかったわよ?」
「ええ!?」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・。

「な、何を言っているのさ。彼に会っただろう?一本道なんだから見失うはずがないっ!」
だがキュルケは一貫して、
「いいえ。私はここを『人っ子一人』通るとこを見なかったわ。タバサもそうよね?」
コクコク。無言で肯定する。
「ギーシュ!?ブチャラティは本当に『この道』を選んで通ったの!?」
「バ、バカなっ!確かに見たんだっ!よく探してみるんだ!」

トリステイン魔法学院 正門前
「ここまでくれば安心か・・・。」
ブチャラティはすでに正門のところまで到達していた。
「『元の場所に帰す魔法なんて知らないし聞いたこともない』か。だが逆に言えば、『ないとは決まってないから探せば見つかるかも』だ。ひとまずここを出て、そういう関連に詳しい人を探して、
帰る方法を探す。『来れた』のだから『帰る』ことが出来なきゃだな。」
そして出ようとした瞬間だった!

「逃がさないよッ!!」

まさに魔法!気がつけばブチャラティは空に浮かんでいたっ!
「うわっ!(しまった!空中ではジッパーは作れないッ!腕を伸ばしても無理そうだぞ・・!)」
ギーシュが空に向けて杖を掲げながら呆れ気味に言った。
「全く。平民が貴族の手をここまで煩わせるんじゃあないよ。さ、終わったよ。ミス・ヴァリエール。」
「次はせいぜい迷惑かけないようにね。行きましょ、タバサ。」
「・・・・・・・・。」
ブチャラティは浮かびながら、不意に空を見る体制になった時だった。
「ば、バカなっ!?オレの眼がまたおかしくなってしまったのかっ!?
いやっ!現実だ!月が・・。月が・・・・。

月が『二つ』あったッ!!」
ブチャラティは今度こそ言葉でなく心で理解した。自分は異世界に来てしまったのだと。
自分のあまりに歪みすぎてる『運命』にほんのわずかながら、『恐怖心』すら
抱いていた・・・。
                               To Be Continued・・

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