ぴちゃぴちゃぴちゃ。

下水道に、いろはが水を蹴る音が響く。

魔法で身体を強化しているため負担は減っているものの、先の騒動での疲労や沙々を背負ったままの行動は確実に彼女を蝕んでいく。
はぁ、はぁ、と息遣いも荒くなっていき、速度も目に見えて落ちてきたところで、いろはは徒歩に切り替えた。

先に潜ったアヴェンジャー...ディエゴを追いかけるのを諦めたわけではない。
だが、そもそも彼らがどの方向に向かったかがわからない以上、こうして体力を温存しようとするのは仕方の無いことである。

(沙々ちゃん...)

己の背で仮死状態にいる沙々のことを思い返す。
ハッキリいって、彼女にいい印象は全く無い。
出会いがしらに洗脳されて、セイヴァーと遭遇しいろはだけソウルジェムを浄化された時などは八つ当たり気味にキレ散らかして。
彼女を善か悪かで分類すれば間違いなく悪だ。
けれど、だからといっていろはが沙々を見捨てることはしない。
理由など単純。ここで彼女を見捨てれば彼女が死んでしまうから。
ただそれだけの為に、いろはは沙々を手放すことができなかった。

...それが、彼女の命運を分けた。

「はぁ、はぁ...」

息切れは更に増し、集中力も蹣跚となる。
よろよろとおぼつかない足取りで、それでも進むいろはの眼前に、隆々とした腕が曲がり角から突き出される。

「とまれ」

頭上からの声に従い、思わず足を止めてしまったいろはは、ほとんど反射的に顔を上げる。

声の主は男。整った顔立ちに、若干ウェーブのかかった髪の男だった。
いろはは思わず後方に飛び退き、クロスボウを構え戦闘態勢に入る。
が、戦闘態勢をとらない男の様子に、いろはは眉を潜めつつ、話を聞く為に一旦クロスボウを消した。

「...あなたは?」
「バーサーカー」

いろはは息を呑む。
バーサーカー、即ちサーヴァント。
男のスタンスがどのようなものなのかはわからない。
だが、サーヴァントという存在はいろはの警戒心を再び引き上げるのに十分すぎた。


バーサーカー―――ヴァニラ・アイスは考える。

バーサーカーという単語に対してこの反応。間違いなく聖杯戦争のマスターである。
ならば始末してしまおうか―――いや、ここでこの小娘を殺したところで、DIOとそのマスター、暁美ほむらがいない以上、自分の利にはならない。
そもそも。この小娘は何故、人一人分の重量を背負って下水道を利用しているのか。
普通ならば、地上を歩くはずなのにだ。
なにか下水道を利用しなければならない理由があるとすれば、それは...。

その疑念から、彼はいろはの始末よりも尋問を優先することにした。

「...貴様にいくつか質問がある」

ヴァニラはいろはの背中で眠る沙々を指差した。

「その小娘は死んでいるな。なぜこんな場所まで持ち歩いている」

ヴァニラの問いかけに、いろはは言葉を詰まらせる。
なぜ持ち運んでいるか―――その問いの答えとしては、魔法少女について語るのが最適だろう。
が、ソウルジェムの真実は沙々だけでなく自分にも大いに影響してくるものだ。
ソウルジェムさえあれば、たいていの怪我は治せる。しかし、逆に言えば、いくら怪我が軽傷でもソウルジェムを砕かれてしまえば死に至ってしまう。
そんな心臓部である秘密を話せるはずもなく。


「こ、ここから向かうのが私の家に一番近いからです。沙々ちゃんのことは家に着いてから考えるつもりです」

いろはは、そんな苦し紛れの嘘で乗り切らざるをえなかった。

「......」
「......」

沈黙する両者。
ゴクリ、といろはの喉が鳴った。

(...乗り切れる気がしない)

いろはがそう思うのも無理はないだろう。第三者から見れば不審者は自分のほうだ。
だからといって、いまさら撤回することなどもできず。嫌な緊張感がいろはの心臓を締め付けていく。

「あ、あn「その女はDIO様...セイヴァーから託されたのか?」

たまらず口火を切ろうとしたいろはを遮るようにヴァニラは質問を続けた。

「あなたはセイヴァーの知り合いなんですか?」
「...答えろ」

いろははヴァニラ・アイスの不遜な態度に若干の不満を覚えるものの、バーサーカーという割には話を聞いてくれていることにはほんのちょっとだけ安堵した。

(DIO『様』...確かにセイヴァーのことをそう呼んでた)

様をつける以上、男はセイヴァーの所縁、それも慕っている間柄なのだろう。
となれば、なるべくこの男を、更に言うならセイヴァーへの不信感は見せるべきではないと察する。
現状、下手に戦って、体力も魔力も無駄に消費することはできないのだから。

「...はい。沙々ちゃんは、あの人がつれていってほしいって...」

これは嘘ではない。
セイヴァーは、『沙々のソウルジェムと時間泥棒を交換しよう』と提案しただけで、沙々の身体については完全に無視していた。
彼女の身体を誰かが保護しなければならない以上、いろはがつれて歩くのが道理というものだ。
だから、嘘はついていない...はず。

「......」
「......」

再び訪れる沈黙。
カチ、コチ、と時計があるわけでもないのに、なぜかそんな秒針の音が聞こえてくるようだ。
数十秒か、数分か、どれほど時が過ぎたかわからないが、やがて最初に動いたのはヴァニラ・アイスだった。

「そうか。ならばセイヴァーの場所を教えろ」

どうやら無駄な戦いをせずにすみそうだと、いろはは胸を撫で下ろす。

さて、次のステップとして、この男をセイヴァーと会わせていいものか、という問題が生じる。
もしもこの男が合流すれば、ただでさえ個人で強力な力を有しているセイヴァーが手を組むことで更に強化されてしまう。
セイヴァーがマスター・英霊以外の人間も構わず殺傷する性質であることから、彼らの同盟はおそらく市民にも影響を及ぼすことになるだろう。
けれど、ここでヴァニラの要望を断れば、せっかく振り払った不信感に纏わりつかれてしまう。
倒すにしても、自分のサーヴァントであるシュガーが離脱しており、且つ沙々の身体を庇いながらの戦いではとても勝利は収められない。

(うぅ...私、こんな人を騙すようなことはしたくないのに...)

言い繕って。顔色を伺って。相手に合わせて。周囲のご機嫌をとって。
そんな、かつての嫌いだった自分の経験がここにきて活きてくることになるなんて思いもよらなかった。
そのことを誇るつもりなど一切無いが。

「えっと、同じところにいるかはわからないですけど」

あらかじめそう切り出して、相手の不満感を少しでも和らげる。
そして、セイヴァーと遭遇した場所とは違う方角を示し、少しでも彼らの合流を遅らせ、あわよくば防ぐ。
それがいろはの頭の中で描かれた筋書きだ。

「なぁ...あんたさっきさぁ、Dioって言わなかった?」

それが叶うことはなかったが。

突然の男の声に、いろはは慌てて振り返った。

男―――マジェント・マジェントは曲がりなりにもアサシンとして呼び出されたサーヴァントである。
アサシンとしては最低クラスとはいえ、気が散っている者の隙を突く程度の隠密性は有していたため、彼らはマジェントの接近を許してしまったのだ。

「...なんだ貴様は」
「質問してるのは俺じゃね~かよぉ。Dioって言った?言ったよな?」

銃を突きつけつつ、こめかみを痙攣させているマジェントに対して、ヴァニラは無反応。
下っ端のクズなどイチイチ気にかけることはない―――そんな態度がありありと伺える。

「あんたの知り合いのDio様はさぁ、二回も俺を裏切ったんだ。えぇ?二回もだぜ?
一回ならまだ許せる。気の迷いや勘違いもあるしな。謝ってくれれば俺も許す。けどあいつは二回裏切ったんだぜ。ありえねーよなぁ、人間として間違ってる」

そんなヴァニラにお構いなしにマジェントはペラペラとおしゃべりに興じる。
自分が受けた仕打ちを語っているというのに、へらへらと笑いながら話す様を、いろはは不気味に思う。
なにがおかしいのか、それとも悦んでいるのか。いろはには、マジェントの真意がわからなかった。

「ヘヘッ、あいつはホント、ほんと...」

ピタリ、とマジェントの笑い声が止まり、表情も締まっていく。

「あいつは!二回も俺を裏切りやがった!俺は裏切ってねえのによぉ!!そんなクソ上司のケツは部下に拭ってもらわなきゃなあぁ!」

ドシュッ

突然の激昂と共に放たれる弾丸は、轟音と共にヴァニラの肩に着弾した。

「ッ!」

マジェントの豹変に、いろはは驚愕し思わず息を呑んだ。
そんな彼女をジロリ、と見やると、マジェントは今度はいろはに銃を突きつけた。

「ササがなんでそうなってるかは知らねえが、Dioに頼まれたってことはオメエもあいつの部下だな」
「ち、違いますっ!」
「違う...?貴様、命惜しさにDIO様を裏切るつもりか」
「えっ、いや、その...ああもうっ」

DIOに忠誠を誓う男。DIOを恨む男。
二人のDIOへの対極な関係性に挟まれたいろはは思わず地団駄を踏みそうになる。

どうしてこうも巡り合わせが悪いのか。いろはは己の不運を嘆きつつも、必死のこの場を収める方法を模索する。
マジェントの言葉を否定すれば、ヴァニラは敵になり、マジェントは味方になるかもしれない。
マジェントの言葉を肯定すれば、ヴァニラは味方になり、マジェントは敵になる。

選択肢は二つ、その上時間が無い。

そんな中、いろはがとった選択肢は

「私は、DIOさんと『対等』の関係なんです。だから、部下でも敵でもありません!」

前者『寄り』だった。

仕方なく選んだ答えだが、現状、いろはの言葉に嘘はない。
DIOがもちかけたのはあくまでも『取引』であり、いろはにも断る余地を残していた。
優木沙々のことを考慮しなければ、問題なく対等だといえるだろう。

(対等、か。思い上がりも甚だしいが、おそらく『友達』という言葉をそのままの意味で受け取ったのだろう。ならばDIO様の駒であることには変わりないか)

ヴァニラ・アイスはいろはの言葉を自分なりに解釈し、DIOの機嫌を損ねぬよう彼女へ向けていた殺気を抑えた。
さて、一方のマジェントはというと。

(ハハァ、なるほど。こいつもDioに騙されてるクチだな。俺のときもそうだった。優しく言葉をかけてくれるからその気になっちまうんだよなぁ~)

彼も彼なりにDioといろはの関係性を解釈し、いろはへの敵意を逸らした。
自分のときと同じだ。Dioは始めこそは優しく手を差し伸べてくれる。
だが、用済みになればそこまでだ。どれだけ頑張っていたとしても簡単に切り捨てる。
Dioにとっての他者とはそんな使い捨てのチューイングガム程度ものなのだ。

(けっ、Dioのヤツ、今度は可愛い女の子に手をつけやがって!どうせ俺のときみたいにこの娘も飽きたらポイだろうがよぉ~。
けどよぉ、もしも使い捨てのおもちゃが自分に牙を剥いてきたら死ぬほどビビルだろうなぁ~)

らしくなく、マジェントは間接的にDioへの嫌がらせの策を思いつく。
『恨みを晴らすと決めたら必ず晴らす』が故に、『Dioにやられたこと(裏切り)をそのまま返してやろう』という発想に至れたのだ。

では、どうすればいろはを味方につけることができるか。
簡単だ。自分がDioにされたことをそのまま伝えればいい。
いくら対等な関係を結んでいようと、散々人を利用し潰すような輩といつまでも肩を並べられるかと問われれば十中八九無理だ。
その程度のことはマジェントもわかっている。だから、伝えてやる。Dioがどれだけ最低最悪なヤツかを。
それで駄目なら沙々に洗脳してもらえばいい。

そのためにするべきことは、結局

「オメェが邪魔だよなぁ、パンツ野郎ォォォォ!!」

ダンッ。

再びの銃声と共に、ヴァニラ・アイスの肩口から血が流れ出す。

「や、止めてください!」
「およっ!お嬢さん、勘違いしてるかもしれねえけど、俺はオメーを助けてるんだぜ。なんせDioはロクな奴じゃねえ。ならソイツを様付けする奴もそうに決まってる」

Dioへの罵倒をマジェントは嬉々として語る一方で、ヴァニラへ銃を向けるのも忘れない。
銃とはそれだけで脅威となり牽制になることを彼は知っている。
しかも、既に二度撃たれているのだからなおさらだ。

「......」

しかし、ヴァニラ・アイスは、撃たれた肩に手を添えるだけで、依然変化なし。
恐怖も、激昂も。銃への感傷は一切見受けられない。

「...試してみるか」

ヴァニラが肩口に添えていた手が握り締められる。

「てめえ!妙な真似をするんじゃ」
「フンッ!」

マジェントが警告と共に引き金を引く寸前、ヴァニラは傷から手を離し掬い上げるように振るった。
と、同時に、マジェントの右肩の肉は抉れ、血が噴出した。


―――マジェントの考えは間違っていない。

いくら英霊とはいえ、同じ英霊であるマジェントの武器は通用するし、着弾し血が流れる以上、ダメージはある。
だが、それが通用するのは『人間』までだ。
ヴァニラ・アイスは違う。生前からの主より授かった血により、既に人間を辞めている吸血鬼。

だから、物質を回転させて投げる技術などなくても、撃ち込まれた弾丸を素手で放つ程度のことはできるのだ。

「ふむ。この程度では足りんな」

ヴァニラは先ほど遭遇した敵、バーサーカー(カーズ)のことを思い返す。
彼には己の能力であるクリームはほとんど通用せず、弱点もあっさりと看破されてしまった。
いや、最初に戦ったランサーとアサシンのときもそうだ。
自分のスタンドは、未だ上位の実力者達に対して通用していない。
当然だ。
如何に強力な能力を有していようとも、それひとつだけであれば、いくらでも手を打つことができる。
ましてヴァニラの『自分がスタンドに隠れている間は外の情報を一切認識できない』という欠点があるならなおさらだ。
だから、ヴァニラはサブウェポンを作ってみた。
吸血鬼由来の筋力任せの投擲という力技の遠距離攻撃を。
現状、人間相手にさえ足止めが精精といったところだが、牽制程度ならあまり問題はないだろう。


「い、痛てえっ!なんだ何がおきやがった!?」

突然の痛みに尻餅をつきうろたえるマジェント。
己の傷口に手を当てた数秒後に手にした弾丸を見て、自分が撃ち込んだ弾丸を投げ返されたのだとようやく気がついた。

(まさかコイツもジャイロみてえに鉄球の技術を持ってやがるのか!?けどよぉ、ソレの対策はもう知ってるんだぜぇ!)


「『20th センチュリーボーイ』!!」


スタンドを身に纏わせ、両掌と両膝を地面につける。
ピクリとも動かない彼のその姿は、見方によっては降伏にも思えた。

「ふんっ!」

再び、ヴァニラの投げつけた弾丸が、マジェントに着弾する。が、それは彼の皮膚を滑り地面へと伝達していく。

「......」

ヴァニラが歩きながら近づき、マジェントに蹴りをお見舞いする。が、そのダメージは再び地面へと伝道していき、マジェント本人には一つの傷とて生じやしない。
ヴァニラは懲りずに手刀、回し蹴り、踵落とし、マジェントの銃を拾っての銃撃とこれでもかと攻撃を加えるも同じ結果の繰り返し。

これこそ、マジェントのスタンド『20th センチュリーボーイ』。
如何な干渉さえ通さぬマジェントの絶対防御である。

(物理的な攻撃は通じないか。ならば)

ヴァニラも己のスタンド『クリーム』を発動し、その中に身を隠す。
彼のスタンドの口の中は暗黒空間となっており、主たるヴァニラ以外の存在を許さず、如何な物質とて分解してしまう。
まして動かない相手などいいカモだ。クリームの欠点も欠点なりえない。

「暗黒空間にバラ捲いてやる」

絶対防御の『20th センチュリーボーイ』と一撃必殺の『クリーム』。
最強の盾と最強の矛。



ここに、両雄が激突する!




ガ オ ン。

クリームがマジェント・マジェントを通り過ぎた。

勝負は、一瞬だった。

「...これでも殺せないか」

抉れていたのはマジェントではなく、その側にある地面。

軍配は、盾にあがった。


『20th センチュリーボーイ』は、外からのダメージだけではなく『呼吸』や『栄養』のような生きるのに必要な最低限のものすら排除する。
排除しても主たるマジェントを決して死なせない、真性の絶対防御である。
加えて、英霊化した際に他のサーヴァントの能力や宝具も完全遮断するように反映されたため、クリームの暗黒空間の分解による消滅さえ拒絶したのだ。
マジェント・マジェント。多くの者に下っ端のクズと称されたこの男は、防御力においては間違いなく最高であることがいまここに証明された。


「......」

ヴァニラ・アイスは考える。果たしてこの男を消滅させる方法は本当にないのかと。
いや、方法はある。それはヴァニラも既に気づいている。
物理的に攻撃したときもクリームで飲み込もうとしたときも、彼の受けたダメージの変わりに周囲の地面が抉れている。
つまりだ。このまま攻撃し続け、伝達するものがなくなればどうなるか。
あるいは、魔力を消費させ続ければどうなるか。
ただ、この方法では自分も魔力を大幅に消耗する持久戦になってしまう。
無論、これが前述したDIOの障害になりうる強者たちならば躊躇い無く持久戦に臨んだだろう。
だが、ここにいるのは奴らに遠く及ばない下っ端のクズだ。しかも、一向に防御の構えを解かないあたり、最早打つ手がないのだろう。

しかも、仮に殺したところで、マジェントの魂が暁美ほむら或いはスノーホワイトに渡るわけではなし。
果たしてこの男をいまここで、己の多大な魔力を消費してまで消す価値があるかと問われれば答えはNo。
これ以上の戦いはせっかく溜めた魔力の無駄遣いにすぎない。

「女」

ヴァニラがくるり、といろはへと振り返る。

「DIO様はこの先にいらっしゃるのだな?」
「は、はい。ただ時間が経ってるので、絶対とは...」
「そうか」

それだけを告げると、ヴァニラはいろはにもマジェントにも目をくれず、その場を後にする。

(まもなく陽が昇り始める...それまでには一度DIO様のもとへ馳せ参じたいものだ)


狂信者は行く。ただひとつ、己の信じる者の為に。

たとえそれが独り善がりの愛だとしても、躊躇うことは決してない。



【C-2 下水道/月曜日 早朝】


【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態] 額に傷(小)、出血(小) 、肩に銃創(微)
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様に聖杯を献上する
1.DIO様の元に馳せ参じる
2.DIO様に歯向かう連中を始末する。特にカーズは障害になりえそうなので必ず殺す。
3.暁美ほむら...あのケツの青い小娘がなぜDIO様のマスターに...
4.マジェントは積極的に狙う予定はない。殺せるときに殺しておくか程度の優先順位。

[備考]
※スノーホワイトとの契約は継続中ですが、魔力供給を絞られています
※物を力づくで投げる方法を把握しました。
※いろははDIOの部下であると認識しました。
※どの方向に向かっているかは後続の方にお任せします。



しーん、と静寂が包み、いろはは動かないマジェントと共に取り残される。

どうしたものかと戸惑ういろはは、マジェントの身体を見て眉を潜める。

(この傷...さっきの人からつけられたものだけじゃない)

よく見れば、彼の身体は至るところが傷だらけで、出血も止まりきっておらず、ああしてまともに動けたこと自体が不思議に思えるほどだ。
もしもこれらの傷がDIOにつけられたものだとしたら、彼がDIOをあれだけ恨むのも無理はないかもしれない。

ならば、いろはがすることはひとつだ。

「およっ。さっきの奴はどこいった?」

パチリ、と目を覚ましたマジェントは、キョロキョロと辺りを見回す。
そこには既にヴァニラ・アイスはおらず、いろはが側にいるだけだ。

「あの...」
「あん?」
「ちょっと動かないでくださいね」

いろははマジェントの肩口にそっと手を添える。

「おめえなにやって...あ?」

マジェントの傷口が桃色の光に包まれ、痛みがみるみるうちに消えていく。

「け、怪我が治ってく?」
「沙々ちゃんのサーヴァントなら、わかりますよね?これが私の魔法の一部なんです」
「へーえ、スッゲェ」

純粋に関心するマジェントだが、遅れて疑問を抱く。

「なあ、なんで俺を治すんだよ。俺まだ頼んでねーぜ?」

マジェントはまだいろはからの信頼を得る手順を踏んでいない。
そして、それを得るのはなによりもDioへの復讐のためだ。
だが、この娘は躊躇い無く己の魔法を使い、マジェントを癒している。
マジェントは同盟を結ぶマスターでなければ、いろはと主従関係にあるサーヴァントでもないのに。
だから彼は純粋に不思議だった。
ウェカピポのように仕事上、上から組まされた訳ではなく、Dioのようになにか利益があると踏んで手を差し伸べた訳でもなく。
彼女が勝手に自分を治療してくれているこの状況が、不思議でたまらなかった。

「ササは魔法は迂闊には使えないって言ってたけど、お前はどうなんだよ」
「...そうですね。確かに、魔法は有限です。今回の件でもそれを思い知らされました」
「だったらなんで」

「あなたが辛そうだったから。それ以上に理由はいりませんよ」
「――――――!!」

いろはがマジェントに向けた微笑みに、マジェントの心臓がドキリと跳ね上がった。

いろはの言葉は、受け取り方の是非に関わらず、彼女の行動の真意をそのまま伝えていた。
いろはがマジェントを治しているのは、Dioのような打算などなく、彼を気遣ったが故の行動だと。

そんな彼女の純粋な善意は、Dioへの復讐に囚われていたマジェントの氷塊の如き心に亀裂をいれた!

「う、うぅ...」

突如、マジェントは両指で目元を隠し呻き声を上げ始める。
そんな彼の様子に、いろはは慌てて容態を探る。

「ど、どうしたんですか?どこか痛むんですか?」
「ちげえよォ~嬉しいんだよォ~うえーん」

困惑するいろはを他所に、マジェントは指で目をこすりつつ泣くマネを始めた。

「シクシクシク...嬉しいよォォォ~ポカポカするよォォォ~うえ~ん...『ガンジス川の濁流』」

マジェントの握っていた手が開かれ、ドブ水がボタボタと零れ落ちた。

「っちゅーギャグを思いついたんだけど...批評してくれる?」
「え?えっと...」

いろははますます困惑してしまう。
いきなり泣くマネを始めたと思ったら、ドブ水をガンジス川に見立てたネタを披露して、おまけにそれを批評しろという。
わけがわからない。いろはには、マジェントの意図が全くわからなかった。

「その、ごめんなさい。よくわからなくて...」

下手に嘘をつけば、それが判明した時に更に彼の心を傷つけてしまうかもしれない。
結局、いろはは自分の思ったことを伝えるしかなかった。

「そうか...そうかァ」

せっかくのネタを理解してもらえなかったマジェントだが、その顔は意外にも笑顔だった。

マジェントが思いついたギャグを披露する時に批評を頼むのは、なにもただ賞賛されるためだけではない。
この批評を通じて、相手がどの程度自分を見てくれているかを知りたがっているのだ。
笑ってくれるならそれで問題なし。別に面白いと思われずとも、なにかしら感想を言ってくれるだけでも、こちらを見ていてくれた証になるので構わない。
一番最悪なのは、ウェカピポのような一瞥もくれずに無反応であることだ。
そういう奴はこちらを見下し自分を路傍に転がる石ころ程度にしか見ていないからだ。

いろはは反応してくれた。どころか、マジェントを傷つけないように言葉を選び、ギャグにも真摯に向き合ってくれた。
そんな彼女の思いやりはこれ以上なく彼の心を鷲掴みにしてしまった。

「イイ奴だなぁ、おまえ」
「???」

なぜ褒められているのかがわからない、とでもいうような仕草に、ますますいろはへの信頼を深めていく。
マジェントの中には、もはやウェカピポやDioに裏切られた経験による信頼への恐怖は微塵も残っていなかった。

「なあ、えっと...なんて呼びゃあいい?」
「私の名前ですか?...いろは。環いろはです」
「イロハか。イロハイロハ...よしっ、覚えたぜ!」

マジェントは満足げにいろはの名を呼び、頬を緩ませた。
そんな彼の嬉しそうな笑顔に、いろはもつられて笑い返した。

「イロハ。俺の名前はマジェント・マジェント。マジェントって呼んでくれよ」
「はい、マジェントさん!」
「おうっ!」

自分の名前を呼ばれたことで、更に笑みが深くなるマジェント。

もしも、マジェントのマスターである沙々がこの光景を見ればきっと思っただろう。
マスターの私の名前はしばらく覚えようともしなかった癖にこの差はなんだと。

(ウェカピポでもDioでもなかった。俺の本当の運命の糸はきっとこの子に繋がってたんだ!)


マジェントは笑う。
三度の裏切りに荒みきっていた心を溶かしてくれた彼女との出会いに感謝して。

いろはは笑う。
自分が助けた人が元気を取り戻した様子を見て。

互いになにかが解決した訳ではない。それでも、心が少し軽くなったのなら、二人の出会いもきっと無駄ではないだろう。







【C-2 下水道/月曜日 早朝】


【優木沙々@魔法少女おりこ☆マギカ~symmetry diamond~】
[状態]肉体死亡状態、魔力消費(中)、『悪の救世主』の影響あり(畏怖の意味で)
[令呪]残り3画
[ソウルジェム]無
[装備]
[道具]
[所持金]一人くらし出来る程度
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯狙い
0.―――
1.セイヴァーはヤバイ奴。どうにか逃げ出したい。
2.でも、ソウルジェムの浄化はどうしたら……
3.見滝原中学には通学予定。混戦での勝ち逃げ狙い。
[備考]
※シュガーのステータスを把握しました。
※セイヴァー(DIO)のステータスを把握しました。
※暁美ほむらが魔法少女だと知りました。
※ほむらの友人である鹿目まどかの存在を知りました。
※いろはの洗脳が解除されたことに気づいていません。
※肉体から魂が離れた影響で、一時的死亡状態です。ソウルジェムが彼女の肉体に触れた時、意識を取り戻します。



【環いろは@マギアレコード】
[状態]肉体ダメージ(大)
[令呪]残り0画
[ソウルジェム]有
[装備]いろはのソウルジェム(穢れ:なし)
[道具]
[所持金]おこづかい程度(数万)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の調査。戦いは避ける。
0.アヴェンジャー(ディエゴ)たちを追いかける。
1.沙々のソウルジェムを取り戻す。
2.時間泥棒を探す……? まだ早計に決めたくない。
3.マジェントさんと協力する。たぶん、悪い人じゃないよね?
4.バーサーカー(ヴァニラ・アイス)さんには要注意。
[備考]
※『魔女』の正体を知りました
※セイヴァー(DIO)のステータスを把握しました。
※暁美ほむらが魔法少女だと知りました。
※アサシン(マジェント)、アヴェンジャー(ディエゴ)のステータスを把握しました。
※少女(ほたる)がアヴェンジャー(ディエゴ)のマスターだと勘違いしています。



【アサシン(マジェント・マジェント)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]魔力消費(大)、肉体ダメージ(中~大)いろはへの好意
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯狙い。ディエゴの殺害優先?
0.優しくしてくれるからいろはについていく。スキになってきたぜ。
1.もうDioとは関わりたくないから、いろはと仲良くしてDioに間接的な嫌がらせをする。
[備考]
※Dioに似たマスター(ディオ)とそのサーヴァント(レミリア)を把握しました。
※バーサーカー(シュガー)の砂糖により錯乱状態ですが、時間経過で落ち着きます。
→錯乱状態は落ち着いてきてますが、場合によっては再び悪化するかもしれません。
※ほたるがマスターである事を把握しました。
※沙々の肉体に魔力(生気)がないのを感じました。
最終更新:2018年12月30日 13:56