黒井先輩と愉快なオカルト研究部


Although


「む……」
妙なデジャヴに捕らわれる
放課後の特別棟4階、何故俺はここに足を運んだんだろう?
あの隅の空き教室には何もないと、頭の中でモーグリくんが叫んでいるんだが…

選択肢
1、行ってみる <<
2、帰る

頭の中の豚に膝蹴りをかまして、空き教室へ向かう
ああ、なんかうつ伏せになった頭から血が溢れてる、ごめんなモグ

ガラガラっとドアを開ける
そこには────────

「……あら、こんにちは、貴方は……」
驚きと期待で微笑む、黒髪の女子がいた
「あ、ええーと……こんにちは…あれ?」
またデジャヴだ、この人、どっかで……いや
ここで会った気がするんだよな、ありえないけど
「えーと、どこかで会った事ありますっけ?俺たち」
「ふふ……いいえ、気のせいでしょう、それよりクッキーは如何?」
微笑みながらテーブルの菓子箱を手に取る彼女
「あ……いや……んじゃあ一つ……っ!?」
と、歩み寄った瞬間、頭の中で鼻血ダラダラのモグが跳ね起きた
───食べてはいけない、それを食べてはいけない、食べるんじゃねえ!
………………語尾のクポはどうした?
「あーいや、遠慮しときます……」
「あら……ふふふ」
ますます顔を綻ばせる黒髪の女性、その髪は窓からの夕日を浴びて───
んんーーどうにも、さっきから物凄い既視感が……
「ええーと、あなたは……あ、俺2年の○○っていうんですけど」
彼女が一年だったらとんでもなく恥ずかしい自己紹介だが
どう見ても1年には見えない
(↑制服で見分けがつく場合は上の2行カット)
「ええ、そうね……名前は、もう必要でしょうね」
「へ?」
「私は3年の黒井真名といいます。よろしくね、○○君」
初めて聞く名前だった、やっぱりこれが初見だろう。
「よろしくお願いします……それで、黒井先輩はここで何を?」
「ええ、それは……」
その時、開いたままだったドアからダンボールが入ってきた
いや、ダンボールを山積みにして抱えてきた誰かが入ってきた
「あれ、青島さん?」
「…!?」
俺の顔を見てビクッと固まる青島さん、その反応はちょっとショックだぜー?
「ああ、ありがとうマリナちゃん、いつもの所に置いておいて」
「…………はい」
答えつつ俺の顔から目を逸らさない青島さん、おいおい恋始まったのか?
というかちょっと怖いなここまで凝視されると
青島さんはずっと俺の方を見たまま教室の奥へ歩いていって……
机に腹をぶつけた
「…っ!」
「うわ、大丈夫?」
崩れかけるダンボールの山を横から支える
「ありがとう…………。先輩、彼は……」
「ええ、すごいでしょう。どうやら抵抗力がずば抜けているようね」
買ってもらったばかりのおもちゃを、初めて他人に見せて自慢したように
黒井先輩は青島さんに嬉しそうな笑顔を向ける
「え?えーと、一体何のことですか……?}
一応聞いてみる
「ふふ……貴方がここに来たことは、偶然ではない、ということかしら」
「?いや、偶然ですよ?」
そう、偶然だ、放課後に特別棟4階の隅の空き教室に来るなんて
本来は絶対に有り得ない事だ、だから
……あれ?本来有り得ないからこそ、
だったらこれは偶然じゃないって事になるのかな?
「ふふふ……」
頭がこんがらがってきた、この事を考えるのは一旦やめよう
「えーと、まあ偶然じゃないかもですけど
それで結局ここはどういう場所なんですか?」
さっきの質問をもう一度してみる
「ここは……」
「ここは、オカルト研究部です」
しゃべりかけた青島さんを制す様に黒井先輩が説明する
青島さんが伏せ目で言葉を飲み込む、すごく残念そうだ
「はぁ……オカルト」
て割にはあまり、名前から想像する様な不可思議な物がないんだけど
いや、さっきのダンボールの中にそういうのが入ってるのか?
それはそうと、ちょっと電波な空間に入ってしまったかもしれない
「そうだったんですか、ええっと、俺お邪魔しちゃいましたか?」
「いいえ、実は貴方をこの部に勧誘しようと思いまして」
ニコニコと黒井先輩はそんなことをいう
「はぁ…………はあ!?」
いやいや、オカルト研究部かー
ちょっと俺にしては色が強すぎるというか、向いてないんじゃないかなー
というか積極的に遠慮したいな
「えーと、いや、俺あんまりそういうのには」
半歩後ずさる俺を流し目で見ていた青島さんがドアを閉める
「先輩、洗脳が手っ取り早くて」
!?手っ取り早くて何だよっ!?
というか洗脳って何!?その顔だと本気に聞こえちゃうよ青島さーーん!!
「あらあら、ダメよまりなちゃん。
私は木偶の坊が欲しいわけじゃないもの
自分の意思で、やってもらわないとダメなの、ね?」
とてもとても良くない会話が主語抜きで行われてる気がする
「…………イエッサー」
とりあえず助かったらしい。
青島さんは門衛の様にドアの脇にずれた
「○○君、貴方に無理強いは出来ないけれど……
私は、貴方しかいないと思っているわ」
「う…………?」
何が俺しかいないと思ってるのかわからないけど
その甘美な言葉は、俺の撤退に待ったをかける
蝋のような肌と吸い込む様な瞳で、俺に微笑む黒髪の上級生
彼女の申し出に、俺は

1、オッケー  <<
2、ノー

「うーん……俺なんかにどんな価値があるのかわからないですけど
そこまで言われるとちょっとその気になっちゃいますね」
「ええ、貴方ならきっと。それでは、入部してもらえるのね?」
「あんまり部活動とか出来るタイプじゃないんですけど、頑張ってみます」
黒井先輩の目が一層細まる。
ああ、その顔はとても綺麗なんだけど────
「うっ…………」
何故かたじろぐ俺
「そうね、それでは、これから特に用事のない放課後は
ここに来てもらえるかしら?」
「今日はちょっと、活動内容をスムーズに理解させる準備がありませんから
明日以降に説明しますね」
「あ、はい」
なんだ、毎日必ず顔出せとかじゃないのか。
これなら面倒臭がりの俺でもなんとか大丈夫かな……?
「それでは、改めて。よろしくね、○○君」
「よ、よろしくお願いします」
「……よろしく」
こうして、俺は晴れて(←????はぁ??)オカルト研究部の一員になった
…………………………ガラじゃないなぁ。

最終更新:2007年03月13日 11:56