コレット・ブルーネル&ライダー◆aptFsfXzZw








     かつて世界の中心に、マナを生む大樹があった。



     しかし争いで樹は枯れ、代わりに勇者の命がマナになった。
     それを嘆いた女神は、天へ消えた。
     この時、女神は天使を遣わした。
    「私が眠れば、世界は滅ぶ。私を目覚めさせよ」
     天使は神子を生み、神子は天へと続く塔を目指す。



     ……これが世界再生の始まりである。






     そして旅に出た神子は、今――――遥か遠い偽りの街に取り込まれ、悪魔と邂逅しようとしていた。






◆◆◆◆






 金属質の、無慈悲な破砕音が奏でられる。
 長いプラチナブロンドの髪が視界の端で靡いているのを見て、コレット・ブルーネルは自らの体が後方へと投げ出されていたことに気づいた。
 次の瞬間には、薄暗い陰を掻き分けて、微かな凹凸のある人造石の床が視界の左半分を埋め尽くした。どうやら、そちら向きに転んでしまっているらしいと、一拍遅れて理解する。
 痛いことは嫌だけど、何も感じられないのはやっぱり不便だな、と……赤く染まった掌を見て、いくらか呑気が過ぎるかもしれない感想をコレットは抱いた。
 薄くではあるが、両の掌が裂けていた。厳しい旅の中で苦楽を共にしてきた金色のチャクラムは、敵の一撃を受け損ね砕け散らせてしまった不甲斐ない持ち主に、その刃を立てていたらしい。

 世界再生の旅で、数々の悪漢や魔物を仲間と共に退けて来た経歴から、荒事にも慣れてはいるつもりだった。しかし容易く武器を砕かれ、成す術なく追い詰められている現状を、神子は不思議でも何でもないことと受け止めていた。

 記憶を取り戻したその時点で、聞いたこともなかった知識は完全な形で授けられている。故に、既に察しはついていた。
 今、自らに歪で巨大な剣の鋒を向ける男が、サーヴァントと呼ばれる存在であることを。

 サーヴァント。人々に語り継がれる伝説を成した英霊を、使い魔として再現した事象。
 コレットが有無を言わせず参加させられることとなったこの戦いにおいて、要となる力であり――かつて世界の命運すらも、左右した存在なのだ。
 言うなれば、かつて古代大戦を終結させた勇者ミトスが蘇り、自分の敵として立ち塞がっているに等しいということ。世界を救済し得るだけの力が破壊に用いられるのに、助けられてばかりの旅も道半ばの己が一人きりで相対すれば、こうなるのも当然の結末でしかなかった。

 ……それがわかっていても、抗わずには居られなかった。

 ここではまだ、死ねないから。
 この命を捧げるべき場所は、生まれた時から定められている。
 その約束を果たさなければどうなってしまうのかも、知っている。

 村の皆や、旅先で出会った人達や、仲間や、彼の――ロイドの笑顔が、脳裏を過ぎって。
 円の半分が欠けたチャクラムをそれでも握り締めて、言うことを聞かない体に難儀しながら――背に生えた翼の浮力を利用して、コレットは強引に起き上がった。

「……少し待て、セイバー。謝罪が要る」

 コレットが起き上がった瞬間、一息に踏み込もうとしていた剣士に向けて、その背後に控えていた青年が待ったをかけた。

「失礼。婦人の顔に傷をつけるのは本意ではなかった。その前に苦しませぬよう刈り取らせるつもりだったのだが……」
「……面目次第もございませぬ」
 マスターである男に一瞥され、伝説の化身であるはずの剣兵の英霊は仮面越しに、確かな謝意を口から放つ。

 一方、言われてからようやく、コレットは己が頬を浅く切っていることを発見していた。
 さぞや見事な切れ味なのだろう。おそらく痛みは元から感じなかったに違いない。しかし……

「……そのご様子だと、貴女が無くされているのは言葉だけではないようだな」
 血の雫を拭った手の甲へと視線を走らせた様子を見咎め、セイバーのマスターである青年は、コレットの状態を言い当てた。
 微かに動揺するも、必要もないことだと判断したコレットは逃げる隙を伺うために彼らを睨めつけるが――そんな油断、どこにもなかった。

「差し詰め、願いはその身を癒されることだろうか? ……いや、このような詮索も無躾か。改めて謝罪しよう。
 何にせよその目を見れば、貴女にも切実な事情があることは伺える。
 しかしそれは我ら一族も、このセイバーも同じこと。悪いが矛を収めるつもりはない」

 主の宣告と同時、セイバーから放たれる威圧感が再び増大する。
 その研ぎ澄まされた殺意の重圧に晒された瞬間、コレットは必死に保っていた己の戦意が崩れ去るのを耳にした。

 ――――死ぬ。

 そんな確信が、コレットの全身に牙を立て、何も感じなくなったはずの肌を粟立たさせる。
 裏切ってしまう。皆の希望を。
 損なってしまう。ここまで共に旅をして来た、仲間達の努力が勝ち取る未来を。

 もう――本当に二度と、逢えなくなってしまう。ジーニアスやリフィル、クラトスにしいな、ノイッシュにコリン、ウンディーネ……それから、ロイドに。

 ――辛いのに、涙も出ないや。

「……せめてその意気が貶められることがないよう、安らかに眠らせると約束しよう」

 ごめんね、ロイド、皆……

 …………ううん、やっぱり、諦めたくないな。

 誰か――――――助けて。

「やれ」
 青年の、涼やかというには冷た過ぎる声音が、一方的に処刑を命ずると同時。
 眩い白光が、廃工場に充満した宵闇を切り裂いた。

 それによって生じた一瞬の空白の後。絶対の死の予感を前に、それでも諦めきれずに瞼を開いていたコレットは、見た。
 突如として出現した白と黒、そしてマゼンタに塗り分けられた双輪の獣が、重低音の咆哮を轟かせながらセイバーとそのマスターに猛然と襲いかかり、彼らを後退させるその様を。
 絶望の淵に現れた、救世主のその姿を。

「……随分と遅いご到着だな。大切なマスターが危うく死ぬところだったぞ? 無能なサーヴァント」
 無人で疾駆するバイク、その更に奥から現れた人影に向けて、セイバーのマスターが侮蔑を隠そうともせずに呟いた。
 それを聞いて、コレットはどっと肩の力が抜けるのを感じた。
 助、かった……?

「――知るか。俺は別に、サーヴァントだからマスターを助けに来たってわけじゃないからな」
 対し、先程何度か白光を放っていた箱を首から垂らした一人の若い男――白紙のトランプが変化した、コレットのサーヴァントであるはずの存在は、そんなことを宣った。

「……我が君。此奴、何やら奇妙にございます」
 不遜な返答に眉を寄せた自らの主に警告を発し、覆い被さっていたバイクを弾き返して一歩進み出たのはセイバーだった。
「この距離で、サーヴァントの気配を感じ取れませぬ」
「……成程。確かに、私の目から見てもサーヴァントとは確認できない。貴様を攻撃できているにも関わらずな」
 セイバーに弾き飛ばされた後も無人のまま自走したバイクを傍らへと控えさせ、コレットとの間に割り込むように歩んできた年若い男へと、青年は微かに険しさを増した表情で問いを投げる。
「マスターを助けに来たわけではないとも言ったな。ならば貴様は、彼女のサーヴァントではないということか?」
「いーや? 俺は確かに、その娘に召喚されたライダーのサーヴァントらしい。だがそんなことはどーだって良い。ただ……」
 そこで彼は――ライダーは、微かにコレットを振り返った。

「助けて欲しいって声が聞こえた。俺が来た理由は、それだけだ」

 ――この身から、声は。既に取り上げられているはずだというのに。
 自らに必要だからではなく、ただ、誰にも届かぬはずだった声が聞こえたから来たのだと――ライダーは、そう嘯いた。
 その時の眼差しと、安心させるようにして一瞬浮かべた笑顔を目にして。コレットは彼の存在に、覚えのない種類の、しかし確かな心強さを感じていた。

「お仕着せの役割なんかに従うつもりはない。俺のすることは俺が決める。おまえに文句を言われる筋合いはどこにもない」
「……随分と自由に物を言ってくれる。何なのだ、貴様は」
 青年の鋭い眼光に睨めつけられたライダーは、不敵に笑みを崩さぬまま白い箱を取り出して――それから一枚のカードを抜き取った。
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ……変身!」

《――KAMENRIDE DECADE!!――》



 それがコレットの、世界再生の旅における十人目の仲間(ディケイド)との、出会いだった。






◆◆◆◆






「……それで、決まったか? コレット」

 聖杯戦争というシステムから――厳密に言えばライダーに、だが――自宅として与えられたマンションの一室。
 その中で昨夜のことを思い返していたコレットは、ライダーの問いかけに微かに身を強ばらせた……気がした。実際のところは、自分にはそれを感じることができないのだから、わかりようもないのだが。

「この聖杯戦争で、おまえはどんな道を選ぶのか」
 ライダーは己のマスターであるコレットに、決断を求めて来ていた。

「おまえの方針が決まらなければ、俺からはこれ以上何もしてやれない。昨日みたいに、決着を先延ばしに逃げるぐらいしかな」
 あのセイバー達との戦いを振り返り、ライダーは言う。
「とはいえ昨日のでわかっただろうが、いくら俺でもサーヴァント同士の戦いとなっちゃ骨が折れる。悪いが考える時間ばかりおまえにくれてやることはできない」
「(うん……そだよ、ね)」
 机を挟んで対面する己がサーヴァントの言葉に、コレットはやや気後れしながらも相槌を打つ。

 昨夜は、巻き込まれたばかりで気持ちの整理がついていないというコレットの状況を看破したライダーが早々に撤退を選択したことで、戦闘行為そのものはあっさりと収束した。
 それでもサーヴァント同士の対決の舞台となった廃工場は更地となり、またライダーは今後も敵対するかもしれない主従に打撃を加えられることなく、徒に手の内を晒したのみで終わってしまった。今後も同じことを繰り返せば周辺への更なる被害を招き、加えて言えばライダーとコレット自身が聖杯戦争という状況に追い詰められるのを座して見守ることとなってしまう。

 それを避けるならば、どんな形であれ、方針を抱えることが必要だ。目的さえあれば、瞬間ごとにする決断もそれを見据えて行うことができる。節操なく破壊を撒き散らすことも、無意味に追い詰められることも格段に減らすことができるだろう。

 だから――自分がこの聖杯戦争の中でどのように振舞うべきなのかを、しっかり考えて自分で決めろと。コレットは昨夜、ライダーに告げられていた。
 与えられた猶予は一日。今この時こそが、その答えを問われる時だった。

「どうするんだ? 聖杯があれば、シルヴァラントとテセアラ、二つの世界を両方とも救うことができるかもしれないし……何よりおまえも、死なずに済むかもしれない」
 既にコレットの事情を把握しているライダーは、彼女の抱えた悩みをそのまま、直球で尋ねて来た。

 旅の中で天使化が進み、最早声を発することもできない身ではあるが――契約で結ばれたレイラインを介してか、自身のサーヴァントとは、コレットも久方ぶりに体験する淀みない会話が叶っていた。
 それに浮かれてしまったために、ライダーとの語らいでつい歯止めを効かせ忘れてしまったのかもしれないと、コレットの中を微かな後悔が過ぎる。

「(わたし、は……)」

 ――コレットは元居た世界において、世界再生の旅に身を投じた神子だった。

 生命の源であるマナが枯渇し、死滅の危機に瀕した衰退世界シルヴァラントにおける救世主。旅を終え天使となることで女神マーテルを目覚めさせ、世界をマナで満たして再生させるために生まれて来た血族の、当代の神子。
 コレットはもちろん、自らの世界を愛していた。そこで暮らす人々に飢えることなく、死の影に怯えることなく生きて欲しいと願い。そのために神子としての使命を果たそうと、心に決めていた。

 それでも、今の彼女には微かに後ろ髪を引かれる要因が二つ、存在していた。

 一つは世界の壁を越えて現れた仲間、藤林しいなの故郷テセアラ。互いに見ることも触れることもできずとも、確かにシルヴァラントと隣り合い、限られたマナをお互いに搾取し合う関係にあるもう一つの世界。
 衰退世界シルヴァラントのマナは現在、繁栄世界であるテセアラに吸い上げられている。神子の執り行う世界再生の真相とは、その関係を逆転させる儀式なのだという。
 故に、シルヴァラントが再生すれば今度はテセアラが滅亡へと向かう。それを阻止するための使命を帯びて、コレットの暗殺に差し向けられたのがしいなだった。

 コレットは、シルヴァラントの皆が大好きで。だから、世界再生の使命を放棄するなんてことはできない。
 でも、しいなを見ていれば……テセアラの人々も、シルヴァラントの皆と同じで、日々を懸命に生きていて。なのにマナが枯れてしまえばどんなに苦しむのか、コレットにもその時の顔がくっきりと想像できてしまって……
 コレット同様、しいなもシルヴァラントの現状を見て迷いを抱き、二つの世界がともに救われる道がないものかと今はコレットに賭けてくれている。彼女との約束で、世界再生の旅の最後の目的地・救いの塔で待つ、コレットの父である天使レミエルに、何か方法がないものかと尋ねるつもりではある。
 しかし、それでテセアラも救われるという保証などどこにもない――聖杯の力があればあるいは、と縋りたい気持ちは確かにある。

 ライダーが口にしたもう一つの理由……世界を再生する天使となることと引き換えに齎されるコレット自身の死を、もしも許されるのなら回避したい、という欲求と同時に。

「声や、感覚や、食べて眠ることも……おまえが世界を救うために支払った物も、聖杯を使えば取り戻すことができるかもしれないぜ」
 淡々とライダーは告げる。あくまで一つの事実、一つの選択肢として、修羅の道の果てに茂る蠱惑の果実を提示する。

「(……ダメだよ。使えない)」
 それでもコレットは、その願いに蓋をした。

「(ううん……もしかしたら使うかも、だけど……そっちを優先にはできない、かな)」
「……どーいう意味だ?」
 値踏みするようだったライダーの表情に、初めて胡乱げな色が足された。
 そんな彼に連れられて、今日一日巡った先々で目にした景色を思い返し、コレットは確認のための問いをかける。

「(ライダー。NPCって呼ばれている人達も、外から聖杯に拐われて来た、普通の人なんだよね?)」
「ああ。そういった記憶も全部消されて、返しても貰えないまま強制された役割を演じるしかない……な」
 微かな怒りを滲ませたライダーの返答に、コレットも万能を謳う願望器への嫌悪を抑えきれないまま、自らの考えを述べる。
「(だったら、その人達も助けなくちゃって思うの)」
「……そいつらも、か」
 先に続く言葉を予想できたのだろう。ぽつりと呟くライダーに、コレットは頷いた。

「(昨日の人もね、ライダー。多分、悪い人じゃないと思う)」

 そもそも何故、彼らに追われていたのかと言えば。記憶を取り戻した直後の心身の乱れに膝を折ったコレットを、あのセイバーのマスターが介抱しようとしたのが発端だった。
 それで偶然、背筋に発現した令呪を見咎められ、命のやり取りにまでもつれ込んでしまっていたが……元を正せばあの青年も、この偽りの街のNPCと目した相手を、それでも気遣うような人格者だったのだ。
 ただ、それでも提示された願望器に縋らざるを得ないような事情があるだけで。
 そんな彼らを単に倒すべき敵と断じてしまうことは、コレットにはできなかった。

「(他のマスターも、NPCも……わたしも。聖杯戦争に巻き込まれた人、皆で元の世界に帰りたい。だから……この聖杯戦争を破壊して、ライダー)」

 コレット自身も含めた、聖杯に拐われた全ての被害者の生還。
 この偽りの街を破壊し、騙られた住民達のあるべき人生(物語)を再生する――ライダーの話を聞いた上で一日考えた結論が、それだった。

 とはいえ現状、それを成すための方法は見当もつかない。故に最終的には、聖杯を使う可能性も一応視野に入れておく必要があるとコレットは考えた。

 ただそのためは、他のサーヴァントを全て倒す必要がある。
 しかし彼らは、英霊の写し身に過ぎず、聖杯から離れればどれだけの間存在していられるのかもわからないとしても。遠からずそれを失くす自分とは違って……目の前に居るライダーのように、間違いなく彼ら自身の、心がある。例え本物ではなくとも、偽物でもない彼ら自身の心が。
 叶うのなら、彼らも犠牲にしないで済む方法を探したいという気持ちが確かにあることも――つまりは結局、覚悟が決まったとはいえず、またもライダーに厳しい戦いを強いてしまうかもしれないと伝えたコレットへと、彼は険しい表情で尋ね返した。

「……良いのか? それで、本当に」
「(うん……あのね、ロイドが言ってたの。目の前の人も救えなくて、世界再生なんかできるわけないって……だからわたし、まずは目の前にいる人から助けなきゃって)」
「どーかな。おまえに情けをかけられた全員が、救われたと思うとは限らないぜ。例えば昨日のアイツとかな」
「(うん、そだね……でも、きっとこんなやり方は間違ってると思うから。叶えた後に、その人の中に後悔が生まれないようなやり方を、探して欲しい)」
 そんなに強い想いが本物なら……どんなに困難でも。神様はきっと、その人に幸福な道を残していてくれるはずだと、コレットは信じていた。
 だから、この選択が自分の望みを押し通すために他者の願いを踏み躙るような行為になるのだとしても。これだけは譲れなかった。

「(元々、わたしの願いは……シルヴァラントが再生されて、皆が救われるって分だけなら、わたしだけでも叶えられるから。テセアラのことはまだわからないけれど、レミエル様達にお願いしてみたら済むかもしれないことで、誰かを殺すのなんて、嫌だもん)」
「……おまえは?」
「(わたしは……そのために生まれて、ちゃんと生きてきたから。もう、だいじょぶだよ)」

 そう、それで良いのだ。
 そのために、苦しい思いをしている世界中の皆から大切にして貰った。なのに今更、犠牲になるのは他の人に押し付けますなんて、そんなの、ダメだ。
 もちろん、もしも聖杯を使うことになって。その時、聖杯に余力があるのなら、願わずにはいられないだろうけれど……それを一番に据えるなんてことは、できない。

「……だいたいわかった。それがおまえの答えなんだな?」
「(うん……ごめんね、ライダー。折角助けてくれたのに何だか、台無しにしちゃうようなことを言って。
  でもお願い。勝手なのを許して貰えるなら……あなたの、力を貸して)」

 マスターでありながら、コレットはサーヴァントに頭を下げるしかできない。
 心理的な理由だけではない。そんな要因を無視しても、そもそもコレットには本当の意味で、ライダーを命令に従わせるだけの権利がないのだ。
 何しろコレットは、肉声を発することができない――即ち、絶対命令権である令呪を使うことができないのだから。
 もしここでライダーが、呆れたことを言う図々しいコレットを見捨てて出て行ってしまうとなっても。コレットには彼を止める資格も、術もないのだ。

 ――だが。

「……昔。ある悪魔が、いくつもの世界を巡る旅をしていた」
 ライダーが開いた口から放たれたのは、コレットの懇願に対する返答ではなかった。

「そいつには使命があった。世界が滅びる未来を変えるという使命が。
 そのためにそいつは訪れた世界で出会った者達と力を合わせて、それぞれの世界を脅かす邪悪と戦った。
 だが、それは間違いだった。そいつは仲間と力を合わせるのではなく、悪魔として彼らを破壊しなければならなかった」

 ライダーは語る。世界が滅びる未来を変えるため旅に出たという――天使となる神子によく似た宿命を背負った、悪魔となる破壊者の話を。

「創造は破壊からしか生まれない。滅びの未来を覆すには、一度全てを破壊するしかなかった。
 だから悪魔は、かつて仲間だった者達と争って、その全てを破壊して……そして最後に、自分自身を破壊した。
 悪魔が死んだことで、悪魔に破壊されたものは全て再生された。今度は定められた滅びの運命なんかもない、そこに住む者達の決断次第でどうとでも転ぶ真っ白な未来を許された世界が。
 だが、悪魔は死んだままだった。そいつが悪魔として死ぬことが、無数の世界を再生するためのたった一つの方法だったからな」

 ……悲しい物語だと、コレットは感じた。
 自分達、マナの神子が背負うそれと似ていて。だけど神子と違って、その悪魔の使命は、どんなに彼が苦しんでいる最中でも、誰にも感謝されたりしない。
 ただ延々と、自らの手でこれまで繋いで来た絆を断ち切って、孤独に死んでいくための戦い――その末に、かつて繋がっていた者達の平穏だけでも、守るための。

 結果として世界再生を成し遂げられたことは、彼にとってこの上ない報酬であり、救いだったのかもしれない。
 だとしても……死の間際、悪魔の胸に去来したのは、本当に達成感だけだったのだろうかと、想いを馳せずにはいられない。
 もしかして、だから彼は、コレットに――

「……それでも、かつて悪魔と旅をした仲間達は、それを良しとしなかった。旅の先で出会った仲間達も、悪魔のことを忘れなかった」

 しかし。コレットの予想に反して、ライダーの話はそこで終わりはしなかった。

「旅は間違いだったはずなのに。彼らは、使命を終えて消えた悪魔を取り戻すために戦った。
 ……その中の一人が言っていた。世界と誰かの命を天秤にかけるのなんて間違いだ。目の前にいるたった一人の笑顔も守れないなら、世界中の人を笑顔になんてできるはずがない……あの時も、九のために一を切り捨てて終わるような物語を受け入れなかったのは、そんな気持ちがあいつらにあったからなんだろうな」
「(……素敵な人達だね)」
 まるで、ロイドみたいな。
 彼にもそんな仲間がいたのだということに、コレットは胸の内が熱くなるのを感じていた。

「そんな仲間達のおかげで、復活することができた悪魔はもう一度旅に出た。今度は使命なんか関係なく、自分の意志で。及ばずながら人間の自由のために戦って、世界の壁を越えまた新しい仲間を作って、色んな奴らの物語を繋げて……それで今は、おまえの前に通りすがっている」
 予想の通り。ライダーがコレットに伝えていたのは――彼自身の、物語だった。

 薄々、彼がかつてコレットと似た運命を生きたのだということは察し取れていた。
 願いを抱えて聖杯の呼びかけに応じるという仕様上、サーヴァントは非業な最期を遂げた者も多いという。だからライダーも、その生前の無念から、同じ境遇を辿るコレットに聖杯を掴むよう促そうとして、こんな話をし始めたのではないかと思っていたが……違った。

「……サーヴァントっていうのは、相性の良い相手やよく似た性質を持つマスターのところに召喚されるらしい。
 ならきっと、あいつらとよく似た仲間を持つおまえのことも……俺と同じで、仲間が放っておいてくれやしない。
 だから、もしもだ。もしおまえが、ここで自分を助けることまではできなかったとしても……心配するな。おまえの仲間は、そんなところで終わる物語を認めたりしない。
 シルヴァラントもテセアラも、コレットのことも。きっとロイド達は、全て救うことを諦めない――俺は、そう信じてる」
「(ライダー……)」
 直接会ったこともないロイド達のことを、それでもライダーは信じてくれている。
 かつて使命のために犠牲になろうとした己を救った仲間と、よく似ているからと。
 それが、妙に嬉しくて……こんな体じゃなかったら、少し泣いてしまっていたかもしれないほどの感情を、コレットは心に覚えていた。

「だからおまえは、自分の信じた道を行け。そんな自由ぐらいは、俺が護ってやる。ロイド達の分も、ロイド達のところに還してやれるまで――それが勝手に決めさせて貰った俺の願いだ。だから、おまえが謝る必要なんかない」
「(うん……ありがと)」

 ――彼は最初から、コレットの選ぶ答えがわかっていたのかもしれない。
 何しろこの英霊は、かつて同じ宿命を生き抜いたのだから。

 だから、答えを導くまでの迷いもわかっていて。それを晴らさせるために、敢えて意地悪な選択肢も提示して。
 それでも選んだコレットの願いを、今度は後押しするために。誰のためでもなくコレットのために戦うと、仲間としての決意を表明してくれた。
 そして――仲間の持つ優しさを信じろと、コレットに希望を与えるために。彼は、自らの物語を教えてくれたのだ。



「……そーいや、忘れてたな」

 大きな目標も決まって、後はそれを実現するための手段を模索して行こうということで、話が纏まった頃。ふとライダーが、そんな呟きを漏らした。

「(どしたの?)」
「今日一緒に売り込みに行った時には出さなかった写真がある。一番出来が良いんだが、羽が生えてたおまえが写っちまってるんじゃ、他人に見せるわけにはいかなかったからな」

 昨日召喚されると同時、ライダーはまず牽制を宝具に任せ、戦いの現場を撮影していた。それがあの時の発光の正体だった。
 サーヴァントでありながら、ライダーはその特異なスキルのために聖杯から役割が与えられている。遠縁のコレットを居候させている、スノーフィールド在住のフリーカメラマンというのが今回の役割なのだそうだ。
 元々写真を撮るのが趣味だというライダーにとっては、聖杯戦争中でもフットワークが軽いこともあって好都合な役割だそうだが、当然カメラマンとして生活していくには写真を売り込む必要がある。
 そのために今日はコレットを伴い、数社のマスコミへ営業に行っていたのだ……結果は、いずれも不採用だったが。

 コレットからすると、ライダーの写真は芸術的で素敵と思えるのだが、どうも歪んだり謎の光が写り込んだりしているようではジャーナリズムに好まれないらしい。
 そして帰宅直後は酷評に憤懣やるかたない様子だったライダーの一番の自信作は、しかし、どうやら自分のせいで売り物にはできなかったようだ。

「(ごめんね……)」
「だから、謝る必要なんかないって言ってるだろ。そもそも俺は写真を撮りたいから撮ってるだけで、別に金が欲しいわけじゃないんだからな」

 そう言いながら荷物を漁っていたライダーは、目当ての写真を見つけ出すと――抜き取ったそれを、コレットへと差し出した。

「どの道神秘の秘匿とやらがある時点で、聖杯戦争に関わる写真なんか売りに出せるわけがない……とはいえ俺が持ってたって仕方ないからな。やるよ」
「(あっ……うん)」
 言われるがまま受け取っても、コレットも自分が襲われているだけの写真を貰っても――と、困惑したところで。
「(……ライダー)」
「なんだ?」

 ライダーが手渡してきた歪んだ写真には――そこにいるはずのない、鳶色の髪の青年の姿が映り込んでいた。
 サーヴァントと対峙するという絶望的な状況の中、なおもコレットを見捨てず庇って立ち向かおうとする彼の姿が。

 ライダーの写真の歪みだとは、わかっているのに。彼ならきっと、そうするのだろうということがありありと想像できて。

「(ありがと……大切にするね)」

 未来の希望を暗示するようなその紙切れを、コレットはぎゅっと抱きしめた。
 握っているという感覚もないまま。それでも既に失われたはずの暖かさを、確かにそこで覚えて。






◆◆◆◆






 ……旅の途中に訪れた新たな世界は、月に広がる電脳空間だった。

 魔法石の世界を訪れた時のように、予め役割とともに必要最低限の知識を与えられた状態で招かれたこの世界での自分は、“擬似サーヴァント”とカテゴライズされる存在であるらしい。
 厳密には未だ生者ながら――一応、死んだこともあるにはあるのだが――願望器を求めて古今東西、三千世界より招かれた英霊を従えし者どもによる殺し合いの参加者とされてしまったのだ。

 はっきり言って、付き合ってなど居られない。使命も既に終えた今、気に食わないお仕着せの役割を果たす義理などないのだから。
 どんな大層な理想を掲げようが、自ら人を傷つけることを是とする輩に従うことなどありはしない――サーヴァントとしての知識を与えられた時点では、彼はそのように結論していた。

 だが……助けを呼ぶ声を、無視できるような性分でもなく。そして自らのマスターとして宛てがわれた少女が、私利私欲で誰かを傷つけるようなことのない優しい心の持ち主であったから。
 彼女にも、従者として仕えるつもりなどありはしないが――かつての己とよく似た宿命に生きる少女の助けぐらいには、なってやりたいと思った。



 ……そうして。差し出した写真を抱きしめる己のマスターの姿に、おそらくはあの赤い服の少年がロイドなのだろうと見当をつけ、ライダーは考える。

 コレットが誰より信頼――というよりも、おそらくは慕っている少年のことを。
 本当に彼なら、コレットを神子の宿命から救うことができるのか――二つの世界を救うことができるのか、と。
 答えは、すぐに下された。

「――できるさ。俺達にだってできたんだからな」

 顔も知らないロイド達を信じることに、ライダーは躊躇いを覚えなかった。

 ……本来ライダーは、知人だろうが他人だろうが、人を信じることができなかった。
 似通った宿命を背負ったコレットのことはともかく。弱い彼には、他人の痛みをわかることができなかったからだ。

 故にライダーは、一人の友のことを信じると決めた。
 あいつは……優しいだけが取り柄の、バカだったから。

 だから。そんな友と同じような言葉を吐いたロイドのことなら、彼が実現を目指す理想なら、ライダーにも信じることができたのだ。

(待ってろよ、ロイド・アーヴィング。コレットは必ずおまえ達の世界へ……あるべき物語の中へ、無事に還す)

 それこそが、この世界に与えられた“擬似サーヴァント”というそれではなく、コレットの十番目の仲間となった自分が、果たすべき役割であると。
 ライダーのサーヴァント、門矢士――又の名を仮面ライダーディケイドは、誰にお仕着せされるでもなく。

 自らの意志で、歩むべき道を見出していた。













【出典】仮面ライダーディケイド
【CLASS】ライダー
【真名】門矢士
【属性】中立・善
【ステータス】筋力C+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A
【クラススキル】
騎乗:A++
 騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
 A++ランクともなれば、竜種を含む全ての乗り物を乗りこなす。

対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
偽悪:D
 自らの属性を混沌・悪に偽装する。また日頃の言動が相手に悪印象を与え易くなる。
 但し相手に素性を尋ねられてから、「通りすがりの仮面ライダー」と名乗った場合、その声を聞いた全員に対して効果を喪失する。

単独顕現:E-
 単体で現世に現れるスキル。本来はある特殊クラスしか持ち得ないこのスキルの影響で、ライダーは生者でありながら擬似的にサーヴァントとして召喚されている状態にある。
 このスキルは宝具『全てを破壊し繋ぐもの』と『伝承写す札』が主体として備えているため、ライダー本体は即死攻撃に耐性を持たない。また宝具を発動しなければサーヴァントとしてのステータスを獲得できず、認識もされない。
 一方、ライダーの場合は"どんな世界にも現れうる"時空の旅人としてこのスキルを有しているため、次元戦士としての特性と合わせて"世界による干渉・世界を介した干渉"を、その世界に顕れた際に世界から与えられた"役割"以外はことごとく無効化することができる。
 この"役割"はあくまで通りすがりの一時的な飛び込み先に過ぎず、ライダーはその物語を無視することもできるが、今回はコレットの声が聞こえる状態を維持するために、疑似サーヴァントであることをそのまま受け入れる道を選んだ。
 SE.RA.PHにおいて彼が与えられた役割は二つあり、一つは先述通り疑似サーヴァントとして聖杯戦争に参加すること。もう一つは生者であることから他の参加者同様に課された、スノーフィールド市民としてのロールである。

次元戦士:A
 通りすがりの仮面ライダー。
 数多の並行世界を渡り歩いた経験から、同ランクの心眼(真)相当の洞察力を発揮することができるスキル。
 また異世界やそれに類する空間内において、その特定領域内でのみ適用される法則による影響をランクを問わず一律無効化し、ルールに縛られない活動が可能となる。
 ただし、その世界から与えられた"役割"を完全に受け入れてしまった場合は対象外となり、今回の場合はサーヴァントとしてマスターに現界や力の行使を依存するという制限を受けることとなった。

星光の写影:A
 星の歴史のように輝く英雄の伝説を、自らを投写機として再演するスキル。
 カメンライドした仮面ライダーの保有スキルを一時的に再現し、獲得する。
 ただし、再現できるのはそれぞれの仮面ライダー自体に関する能力のみで、担い手である変身者自身の素質までは模倣できない。


【宝具】

『全てを破壊し繋ぐもの(ディケイドライバー)』
ランク:A 種別:対界、対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

 ライダーを象徴する変身アイテム、次元転換解放機が宝具化したもの。ライダーを未知の鉱物ディバインオレの鎧に身を包んだ戦闘形態である、仮面ライダーディケイドへと変身させる。
 変身後のライダーは疑似サーヴァントとしてのステータスと共に、世界の破壊者として、"世界に対する特攻"を獲得する。
 これにより、ライダーは自身の攻性干渉に対する、純粋な実数値以外のあらゆる防御・耐性・遮断・修正・復元・非実在性等の阻害要素を、それを成立させる物語(セカイ)の設定(ルール)ごと種別・ランクを問わずに全て破壊することができる。
 また、ライダーのクラスでは変身中のライダーの能力・兵装しか行使できないが、騎乗関連の能力のみ本来の姿である激情態の仕様を再現しており、カメンライドを介さずに『伝承写す札』で直接他の仮面ライダーの騎乗兵装の召喚・再現が可能となっている。


『縹渺たる英騎の宝鑑(ライドブッカー)』
ランク:C+ 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:10人

『全てを破壊し繋ぐもの』と番となる、ライダーのもう一つの象徴となるアイテム。
 無限の空間であるクラインの壷に通じ、無数に内包する『伝承写す札』を任意に出納できる本型のブックモード、限定的な多重次元屈折現象を引き起こした攻撃を可能とする剣型のソードモード及び銃型のガンモードの三形態を持つ万能兵装。
 この宝具はクラインの壷に通じているため事実上無尽蔵の魔力炉を内包しており、武器として用いる場合は実質魔力を消費せず多重次元屈折現象(アタックライド)を行使でき、更に事実上弾数制限が存在しない。
 但し、クラインの壷が通じていない他の宝具やライダー本体にその魔力を供給することはできず、また内包した魔力炉に無尽蔵の貯蓄があっても瞬間出力の問題から、擬似真名解放(ファイナルアタックライド)発動時には相応の魔力消費を要求されてしまう。


『伝承写す札(ライダーカード)』
ランク:E-~EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人

『縹渺たる英騎の宝鑑』のクラインの壷内に収納されている、仮面ライダーの伝説そのものを結晶化した宝具。
『全てを破壊し繋ぐもの』を用いてそれぞれの真名を解放することで、歴代の仮面ライダー達それぞれの伝説を完全に再現する能力を得られる。

 但し、仮令擬似サーヴァントであるとしても、ライダーのクラスとして現界する場合カメンライド及びフォームライドに分類されるカードは、ディケイド自身のカード以外はクウガ~キバの九人の仮面ライダーの内、サーヴァントとして召喚された時に選択した三人分までしか『縹渺たる英騎の宝鑑』から取り出すことができない。
 今回の召喚ではアギト・響鬼・キバの三人を選択しているため、他の仮面ライダーへの変身、及びその騎乗物を除く固有能力の行使は不可能である。


『世界を駆ける悪魔の機馬(マシンディケイダー)』
ランク:A 種別:対界、対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:10人

 大型二輪車の形をした次元移動機である、ライダーの愛車。ライダーが騎乗せずとも意思一つで無人走行も可能とする上、常時現界している代わりに性能を落とし宝具としての気配を絶つことができるため、日常生活でも他のサーヴァントに感知されることなく使用可能。
 本領発揮時にはライダー本体同様、特定領域でのみ適用される異界法則に縛られず、更には聖杯戦争の範疇を逸脱しない限りであればミラーワールドや既に展開された他者の固有結界内といった、ライダーが認識し得たあらゆる異空間への侵入、及び脱出を可能とする。
『縹渺たる英騎の宝鑑』同様クラインの壷に通じているため無尽蔵の魔力炉を内包しマスターの負担を要求しないが、『伝承写す札』によって他の騎乗宝具に変化している間はその限りではない。


『次元王の九鼎(ケータッチ)』
ランク:EX 種別:対界、対人(自身)宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:1000人

『全てを破壊し繋ぐもの』を予め解放している状態でのみ解放可能な、ライダーの誇る最強宝具。
 仮面ライダーディケイドを並行世界の王者とされるコンプリートフォームへファイナルカメンライドさせ、更に紋章(ライダーズクレスト)に触れることで対応する仮面ライダーの最強フォームを分身体として召喚可能とするファイナルカメン端末。
 コンプリートフォームとなったライダーは筋力、耐久、魔力、対魔力の値が一ランク上昇し、更に召喚した分身の力をライダー本体にも上乗せで付加することができる。
 最大で九人の最強フォームを同時召喚・一斉攻撃することも可能であり、一サーヴァントという規格の中では最高峰の一角に食い込む大火力すら発揮できる切札中の切札。


【weapon】
  • 上記宝具及び、『伝承写す札』で召喚・再現できる各仮面ライダー由来の兵装
※『伝承写す札』は原則ムーンセルがディケイドが使用しているところを観測したカード(映像作品で使用描写のあるカード)のみ実装されている。今回の場合で言えば、トリニティ、バーニング、紅、ドガバキのフォームライドカードは保有していない。
 但しファイナルアタックライドのカードについては劇中同様、同名のカードでも複数の必殺技の中から状況に応じて任意に選択し発動することができるため、映像作品でディケイドが使用していない技も設定と実際に描写された公式媒体が存在するのなら特に明記せずとも再現可能。
 また、先述の通り、ライダーのクラス補正によりクウガ~キバの九つの世界の仮面ライダーが保有していた記録のある騎乗兵装の類は例外として、その大部分を今回の召喚でも持ち込むことができている。
 具体的にはゴウラムやオートバジン、ジェットスライガーやキャッスルドラン等は映像作品でアタックライドカードが使用されていなかった、もしくは今回の召喚におけるカメンライド先として選択されなかった仮面ライダーの騎乗兵装となるものの、アタックライドで召喚・再現できる宝具として関連カードと合わせて持ち込むことができている。
 なお仮面ライダー電王自身が担い手というわけではないデンライナーやキングライナーは持ち込めておらず、一方でゼロライナーやガオウライナー、ネガデンライナーのカードは持ち込めたもののサーヴァントの宝具に過ぎないため、キャッスルドランともども「時の砂漠」へ侵入する権能を失っている。


【人物背景】

 真名、門矢士。
 素性不明で本人も過去の記憶がないまま、光夏海とその祖父が営む写真館にいつの間にか居着いていた謎の青年。
 ある日、突然始まった世界の崩壊に際し、そこに現れた『紅渡』から並行世界が互いに融合し消滅の危機に瀕していること、「世界を救うためにはディケイドが九つの世界を巡らなければならない」という使命を伝えられ、 仮面ライダーディケイドとして仮面ライダーの世界を巡る旅に出ることとなった。
 時に悪魔や破壊者等と罵られながらも、訪れた世界が直面する『滅びの現象』を各々の世界の仮面ライダーらと協力して打破し、幾つもの世界を滅亡の危機から救った士だったが、やがて訪れた「ライダー大戦の世界」で次々と仲間が消滅していく中で再会した紅渡に、それらの行いは使命を曲解してしまっていた誤りであったと明かされることとなる。

 彼やその仲間から自分の本来の使命である「破壊による全ての世界の再生」を宣告された士は遂に、『世界の破壊者』という使命とその運命を受け入れる。
 その後は並行世界に存在する全ての仮面ライダーを次々と襲い破壊して行ったが、最後は新たな仮面ライダーであるキバーラとの戦いでわざと倒された。
 士の死と同時に、ディケイドによって破壊されていた仮面ライダーが復活し、更に『滅びの現象』によって消滅していた世界までも全てが再生を遂げる。
 ディケイドの真の使命とは、「仮面ライダーの世界を一度破壊し倒されることで、消える運命にあった仮面ライダーの物語を永遠の物にする」ためのものだったのだ。
 物語が再生したことによって、全ての並行世界も『滅びの現象』から解放され変わらぬ存続を許されたが、ただ一人――この使命のためだけに生まれた物語を持たない装置である仮面ライダー、ディケイドこと門矢士は、世界再生のために捧げられた生贄として、消滅したままであった。

 しかし、物語を持たなかったはずのディケイドは真相を知った仲間達の想い、誤りであったと断じられていた旅の中で出会った者達との絆を自身の撮っていた写真に込められたことで「仮面ライダーディケイドの物語」を得て、他の存在同様に再生、復活を遂げる。

 その後のスーパーショッカーとの戦いや、魔宝石の世界、さらには沢芽市に出現した地下帝国バダンとの戦いに、世界の破壊者ではなく「人類の自由を守る」仮面ライダーの一人として通りすがり、新たな物語を繋ぐために旅を続けていることが確認されていた。



 そんな旅の途中、彼が此度訪れたのは、月の眼により偽りの聖杯戦争が再現された特異の世界。
 異世界から招かれたマスターの一人である、コレット・ブルーネルという少女のサーヴァントとなることが、彼に与えられた役割であった。
 使命を終えた今、お仕着せの役割に従う義理はない。故に従者の役を与えられようと、自由を愛する彼がその立場に束縛されることはない。

 ただ――かつての己と同じ宿命を背負った、妹と同じ年頃の少女の助けになりたいという感情だけを理由にして。
 助けを求める彼女の声を聞くために、サーヴァントという役割を敢えて受け入れて。
 仮面ライダーディケイドは、新たな戦いに臨む決意を固めた。


【サーヴァントとしての願い】

 コレットの十番目の仲間としての役目を果たす。


【基本戦術、方針、運用法】

 このライダーは正式なサーヴァントではなく、その特質から「コレットのサーヴァント」という役割を与えられた異世界からの訪問者、擬似サーヴァントである。
 そのため役割に合わせて半霊化するなど存在が変質している部分も多いが、彼はれっきとした生者であり、肉体を魔力によって作っていないため、通常のサーヴァントとの差異が多く存在する。

 第一に言及すべきは霊体化ができないことであり、加えて睡眠や食事などの生理現象の維持を必要とする点が上げられる。彼の場合は更に、最低限とはいえ既に社会的な立場も与えられてしまっているなど制約は多い。
 また厳密には「仮面ライダーディケイド」の状態が擬似サーヴァントであるため、通常時のライダーはサーヴァント特有の気配を持たない代わりに、他のサーヴァント特有の気配を感知することもできない。
 一方、現界の維持にマスターの魔力を一切消費しない擬似とはいえサーヴァントであり、宝具の行使にはマスターからの魔力供給を必要とする点には変わりはなく、無制限な変身は不可能となっている。

 それらを差し引いて純粋にサーヴァントとして見た場合、並行世界に存在する仮面ライダーの力を受け継ぎ、その物語を守るために戦った世界の破壊者という存在の特異性もあってか、騎兵クラスの該当者としても異例なほどに豊富かつ強力な宝具を所有している。
 しかし擬似とはいえサーヴァントという規格を役割と共に与えられ、それに応じて個体能力の調整を始め様々な変質が起こっている。カメンライドできる仮面ライダーの姿が限られていることは最たる弱体化要素として挙げることができるだろう。
 他にも騎兵のクラス故、宝具の強力さと引き換えに個体能力は抑えられており、純粋な白兵戦では本職の三騎士クラスには及ばず、強力な宝具ほど魔力消費や神秘の秘匿の観点から運用が限られる等、実際にはその潜在能力を基準値として見るのは非現実的だろう。

 また能力の相性上、「特定の性質を持つ・持たない者への耐性」や「問答無用の無敵・不死」といった搦手や性質的条件に頼る相手には文字通り滅法強いが、対粛清防御を始めとする一定ランクや割合分ダメージを削減あるいは無効化するスキルや宝具、はたまた一定回数復活することができる命のストックを持つといった、性質ではなく有限実数値に拠る強さを誇る相手には通常のサーヴァント同様に苦戦を強いられることとなる。

 単体で勝ち進むことも充分視野に入れることのできる強力なサーヴァントではあるが、情報収集等の弱点解消やライダー自身がどのような役割でも万能な活躍を期待できる、集団戦でこそ真価を発揮するタイプのサーヴァントであるとも言えること、そして何より最終目標から考慮すると、目的を同じくする仲間を早期に発見することが安定性を増す必勝パターンになると言えるだろう。

 なお、ライダーは前述通り生者であり擬似サーヴァントに過ぎないが、これまたこの世界においてはその役割に合わせて在り方が変質しているため、脱落すれば他のサーヴァント同様『■■■』が残ることとなる。



【出典】テイルズオブシンフォニア
【マスター】コレット・ブルーネル
【マスターとしての願い】
 聖杯戦争に巻き込まれた人々を、可能な限り元の世界に生還させる。
 ……もしも聖杯に余力があれば、テセアラを衰退させず、自分が犠牲にならなくてもシルヴァラントを再生させられる手段を得たい。

【weapon】
 チャクラム(破損中・使用不可)

【能力・技能】
 天使化した影響で魔術を扱えるようになっており、元は純粋な人間ながら一流魔術師にも遜色しない魔力供給をサーヴァントに可能とする。
 視覚と聴覚以外の感覚や声を失っているため、事実上当人の戦闘力は失われているが、天使の羽を用いた飛行等一部の能力は残されている。また、天使化の影響で食事と睡眠が不要(正確には、不可能)。
 但し、『■■■■』すると――――

(なお当企画内では、参戦時期直後の救いの塔で発声できなくなっていたコレットの声がロイドに聞こえたのは、アストラル体(霊体)となっていたイガグリ老やアリシア同様、クルシスの輝石の侵食によって心身分離に近い状態となっていたためであると解釈し、それに近い状態にある現在のコレットは同じく半霊体かつ因果線で繋がっているライダーにのみ、その術を知らずとも本来の声が届く範囲内で念話が可能となっている)


【人物背景】

 衰退世界シルヴァラントにおけるマナの血族の末裔。宝玉「クルシスの輝石」を握って生まれたことで神子として育てられ、十六歳のある日に神託を受け世界再生の役目を背負うことになる。
 神子という立場からイセリアの学校では浮いている存在であったため、友達になってくれたロイド・アーヴィングに単なる幼馴染以上の仄かな想いを抱いていた。

 世界再生の神子として各地の封印を解き、救いの塔を目指す旅に出ることになったコレットは、ロイドを始めとする仲間達と共に故郷イセリアを出発。人類を虐げる邪悪な闇の一族・ディザイアンによる妨害を受けながらも、それらを退け世界再生のために旅を続ける一行の前に、やがてコレットの命を狙う暗殺者・藤林しいなが現れるようになる。
 人間でありながら世界再生を拒もうとする彼女の存在を不可思議に思っていた一行は、後に恩義ある町のためディザイアンと戦った成り行きで同行することになったしいなからシルヴァラントと隣り合うもう一つの世界・テセアラの存在を知らされる。
 現在シルヴァラントが衰退し滅びに向かっているのはテセアラにマナを吸われているからで、コレットの世界再生の旅が完遂されてしまえばその関係が逆転してしまう故に、現在のテセアラを守るために差し向けられた刺客こそがしいなの正体だったのだ。

 真相を知ったコレットはシルヴァラントもテセアラも、等しく救われる方法がないものかと心を痛めるようになるものの、二つの世界を等しく救う具体的な解決策が見えないまま、救いの塔へ――世界を再生する天使となるために、人間としての死が定められた場所へと向かうその時を、迎えつつあった。
 ……永遠の別れが訪れることを、ロイドに云えないまま。



 封印を解くに連れて天使として肉体が変化し始めると、紫色に輝く光の羽を纏って空を飛べるようになるなど超常的な力を得、視覚や聴覚も強化されたが、代わりに味覚や痛覚に触覚、眠気や疲労、果ては言葉など人間としての営みを徐々に失っていくことになった。
 最終的には精神や記憶まで喪失し、世界の再生と引き換えに、コレット・ブルーネルという人間の少女は事実上の死を迎える運命を定められている。
 そんな宿命の中で育てられた影響からか自己犠牲心や責任感が非常に強く、原作中での選択肢では一貫して「危険よりも人の命を気遣う」ことを好む。


【参戦方法】
 救いの塔に赴く前日、ハイマで偶然拾った白紙のトランプに導かれて参戦


【令呪】
 うなじの下側(胸のクルシスの輝石の対となる位置)に刻まれた、三つに分割可能な形で描かれた八枚羽型


【方針】

 聖杯戦争に巻き込まれた全員の脱出を最大の目標とし、そのための手段を模索。他の可能性が見つからない場合には、最終手段としてサーヴァントのみを倒すことで聖杯獲得を狙う。
 当面は志を同じくする同盟相手を探したい(……が、コレット自身は喋れないため、他者に悪印象を持たれ易くなるスキルを持つ上に指図されることが死ぬほど嫌いなライダーに交渉役を任せるしかなく、やや苦戦が予想される)。
 なお、コレットはライダーが擬似サーヴァント――未だ生きた人間であることを告白されておらず、現時点ではその事実を認識していない。











第九階位(カテゴリーナイン):炎の記憶 投下順 第十一階位(カテゴリージャック):雷電姫&欠陥電気(レディオノイズ)
時系列順
GAME START コレット・ブルーネル OP2:オープニング
ライダー(門矢士)

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最終更新:2017年02月28日 23:12