世界一頭のいいれいむと、それを生んだれいむの話 10KB
小ネタ 差別・格差 野良ゆ 赤子・子供 現代 お話風を目指してみました
書いた人 ヤリまむあき
『世界一頭のいいれいむと、それを産んだれいむの話』
一、
ある所に一匹のれいむがいました。
彼女はこれといって特筆すべき能力が無い平凡な一ゆっくりなのですが、それなりに現在のゆっくりを取り巻く環境を憂いていました。
「ぷんぷん! どうしてれいむたちはゆっくりできないの!? にんげんさんはきしょうしゅばっかりひいきしてずるいよ!!
れいむたちゆっくりはびょーどーにゆっくりするけんりがあるんだよ!!」
要するに、さなえとかてんことかいった希少種ばかり優遇されているのは不平等だ、自分達もゆっくりさせろ、ということです。
自分本位な考えですが、れいむには希少種と自分達通常種の何が違うのか分かりませんでした。
同じゆっくりなのに一方は人間と上手く共存し、もう一方は迫害されるどころか遊び半分に殺されることすらある現状。
通常種がゆっくりぷれいすを見つけても、後から来た人間に強奪されてしまうのです。
おうち宣言を行っても人間は聞き入れてくれません。
ゆっくりのルールを守らないゲスな種族です。
「あのくずめーりんだってかわいがられてるのに、かわいいれいむがゆっくりできないのはおかしいよ!!」
さっきゆっくりは平等にゆっくりする権利があるとほざいたばかりの口でめーりんを見下す発言をしていますが、彼女の中ではそれが確定事項です。
自分達はただゆっくりしたいだけなのに、どうしてそれすらさせてもらえないのだろう。
「ちっともゆっくりできないよ……」
彼女の夫であるまりさは先日永遠にゆっくりさせられてしまいました。
胎生にんっしんっをしているれいむにおいしい物を食べさせてあげようと、通りがかった人間とゆうかにゃんからあまあまを恵んでもらおうとしたのです。
その時、まりさはこう言いました。
「やいじじい! しにたくなかったらあまあまをよこすんだぜ!! そっちのへんなゆっくりはとっととしぬんだぜ!!
ゆ? まりささまのつよさにおそれおののいてしーしーもらしそうなんだぜ?
げらげらげら!!」
そう言った次の瞬間、まりさは猛り狂った人間から攻撃を受けて餡子の塊に変えられてしまったのです。
なんと残酷な事をする人間なのでしょう。
「まりさ……」
幸いにも備蓄があったのでしゅっさんっするまでの食糧事情は大丈夫ですが、それから後の目処は立っていません。
れいむ一匹だけならまだしも、新しく生まれる赤ちゃんの食い扶持まで稼がなくてはならないから不安です。
「これからどうすればいいの……。れいむひとりじゃごはんとってこれないよ」
今のれいむは藁にも縋りたい心境でした。
二、
その夜、れいむの夢の中に靄がかかった光り輝くものが現れました。
「れいむ、れいむや……」
「ゆ、れいむはねむいんだよ……?」
寝惚け眼で目の前のそれを見ると、優しげな声で語りかけてきます。
「困っているようだね?」
「そうだよ! れいむはしんぐるまざーなんだよ!!
かわいいれいむがこまってるんだからあまあまちょうだいね!! たくさんでいいよ!!」
無遠慮に己の欲求を告げるれいむにそれは何処か不機嫌そうになりましたが、それも僅かの間。
心底れいむに同情したように労わります。
「可哀想に……。生憎これは夢だから、あまあまとかの形に残る物は残してあげられないけど、その代わり君の赤ちゃんについてのお願いを何か叶えてあげよう」
その言葉を聞いたれいむは悩みます。
赤ちゃんについてのお願いといっても、何を願っていいやら見当がつきません。
しばらく考えていましたが、結論を出します。
「ゆーん。それなら、れいむのあかちゃんのあたまをせかいでいちばんよくしてもらいたいよ!!
あと、れいむににたあかちゃんにしてほしいよ!!」
れいむはまりさの事が好きでしたが、その短絡的な思考だけは気に入りませんでした。
だから、生まれてくる赤ちゃんには賢い子供になってもらいたかったのです。
それと、やはり可愛いれいむ自身に似た赤ちゃんなら言うことなしです。
他にもっと頼むべきこともあったでしょうに。
「それでいいのかね?」
「さっさとしてね! ぐずはきらいだよ!!」
「分かった。赤ちゃんが生まれてくるのを楽しみにしていたまえ」
そう言うと、何かはれいむの目の前から姿を消しました。
あまりに急なことだったのでれいむは何がなんだか分かりませんでしたが、どうせ夢だと思って気にしないことにしたのです。
三、
れいむがあの夢を見てから時間は過ぎ、遂に赤ちゃんが生まれるときがやってきました。
「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!」
歯を噛み締め涎を垂らして出産の痛みに耐えるれいむ。
その醜い形相は子供が見たらトラウマになりかねないほどです。
「うまれるよぉおおおっ!! かわいいれいむのかわいいかわいいあかちゃんうまれるよぉおおおっ!!」
めりめりと音を立ててまむまむから赤ちゃんが顔を出します。
普通ならこの時点で笑顔を浮かべながら生まれてくるのですが、この赤ちゃんは違っていました。
番いがいるならそのおかしさに気付いたでしょうが、れいむしかいなかったのでまだそれに気付く者はいなかったのです。
「ゆぅううううううううううっ!!」
そして赤ちゃんが飛び出します。
赤ちゃんは普段れいむが寝床にしていたふかふかさんに受け止められました。
生前のまりさがゴミ捨て場にあったゴミ袋を破って調達してきたものです。
「ゆっ……」
赤ちゃんがその中でもぞもぞと動いて、れいむに可愛らしい顔を向けました。
れいむが願ったとおり自分似の赤れいむです。
その口から発せられる挨拶を待っていると、赤ちゃんが口を開きました。
「ねえ、どうしてれいむを生んだの?」
四、
赤ちゃんの第一声を聞いたれいむは固まりました。
ゆっくりしていってね、ではなくいきなり自らの誕生を否定するような言葉だったのだから当然です。
「あ、あかちゃんなにいってるの?」
「言ったとおりだよ。どうして、れいむを生んだの?」
赤ちゃん言葉も完全に抜けていて明瞭な話し方をする我が子に若干の薄気味悪さを感じましたが、それでも気を取り直して話かけます。
「どうしてって、あかちゃんはゆっくりできるからだよ……? あかちゃんはかわいいからだよ?」
「そんな理由でれいむを生んだんだね」
赤ちゃんは底冷えする目でれいむをじっと見詰めます。
その視線が恐ろしくてれいむは目を逸らしました。
「れいむは、れいむなんかに生まれたくなかったよ。
それよりゆっくり自体に生まれたくなかったけど、その中でも何の取り柄の無いれいむに生まれたれいむはこの先どうやって生きたとしてもちっともゆっくりできそうな未来が見えないよ。
希少種やれいむ以外の通常種ならともかく、よりにもよって……」
赤ちゃんの話はとても難しい物だったのでれいむにはあまり理解できませんでしたが、我が子がとても悲嘆に暮れていることだけはその話し振りから分かります。
こんな時にはとにかくご飯を食べれば元気になる筈だと思い、とっておいた取って置きの生ゴミを取り出しました。
「あかちゃんはきっとおなかがすいてるんだね!! いっぱいむーしゃむーしゃしていいよ!!
だからそんなこといわないでね!! れいむまでかなしくなっちゃうよ!!」
母親の気遣いを感じた赤ちゃんは、溜め息をつくと悲しそうな顔で答えました。
「ここでれいむがたくさん食べたら、その後はどうするの? 無計画に食料を消費するだけで後のことは考えていないんだね」
「ゆ……」
れいむの頭の出来は十人並みで、決して賢くはありませんでした。
自分は赤ちゃんを喜ばせてあげたかっただけなのに、どうしてこんなことを言われなくてはならないんだろう。
そんなれいむを尻目に赤ちゃんはおうちから抜け出そうとしていました。
「どこいくの!」
気がついたれいむがお尻を銜えてそれを阻止すると、赤ちゃんは大人しくなりました。
体格差があるれいむを振り切って抜け出すことは困難だと判断したのでしょう。
「何で止めるの?」
「おかあさんだからだよ!! あかちゃんはまだうまれたばっかりなんだよ!?
それなのにおそとにでたらどうなるとおもってるの!!」
れいむは赤ちゃんが心配で止めたのです。
「どうなるって、多分死ぬんじゃないの」
「だったらなんででようとしたのぉおおお!!」
「死にたいから」
今赤ちゃんは何と言ったのでしょう。
死にたい?
折角生まれてきたというのに、赤ちゃんの目からは希望という名の光が全く感じられませんでした。
「野良ゆっくりに生まれてきた時点で禄でもないゆん生は決まったようなものだよ。
人間さんに拾ってもらって飼いゆっくりにでもなれれば話は別だけど、そんな奇特な人間さんがいると思ってるの?
精々虐待されるのが関の山だよ。もし虐待されなかったとしても、人間さんのルールに合わせて生活しなくちゃいけないんだよ。
ゆっくりにゆっくりのルールがあるように、人間さんには人間さんのルールがあるんだよ」
「なんでゆっくりしたれいむたちがにんげんさんのるーるをまもらなきゃいけないの!
ゆっくりしてないにんげんさんがれいむたちにあわせるべきだよ!!」
赤ちゃんは賢すぎたのです。
明らかに母親以上の知識を持ち、それ故自分の境遇がどうしようもない事を悟ってしまったのでした。
普通のゆっくりなら、人間のルールに合わせようという殊勝な考えをすることもなく気楽に生きていけたのでしょう。
母親が賢くなるように願いをかけた結果がこれです。
「お母さんは、本当に何も分かっていないんだね。人間さんのルールを守っていないかられいむ達は駆除されるんだよ。
生き物として最底辺の存在なのに、感情があって家族ごっこなんかしようとするから人間さんは面白がって虐待するんだよ。
希少種は人間さんの癇に障るようなことをしないから受け入れられているんだよ。
どうしてこんな簡単なことが分からないの?」
赤ちゃんが自分とは全く別の次元の思考をしているということだけはかろうじて理解できるのですが、その内容はれいむには受け入れがたい物でした。
「わからないけど、あかちゃんがあたまがいいことはわかったよ」
「……」
今の受け答えで赤ちゃんは完全にれいむを見限ったようです。
失望したような眼差しをれいむに向けると、
「さあ、おたべなさい」
と言いました。
その身は真っ二つに裂け、呆然としたれいむの前に転がります。
この先のゆん生を悲観して自殺をしたのです。
さあおたべなさいは一番手っ取り早い方法でした。
「あかちゃん……? ねえ、どうしてしんじゃってるの?」
確かに赤ちゃんをこの先ゆっくりさせてあげられる保障はありませんでした。
でも、せめて母親の自分をもう少し信じてほしかったのです。
おまけに死ぬ前の赤ちゃんが口にした言葉は、これからのれいむのゆん生に暗い影を落としていきました。
どう足掻いてもゆっくりであるからにはゆっくりできないと分かったからです。
理解したくなかった真理を突きつけられたれいむは、それからどのようなゆん生を過ごしていったのでしょう。
それは定かではありませんが、禄でもないゆん生であったことだけは確かです。
何時もと毛色の違う話を書いてみました。
本当の意味で頭がいいゆっくりって、こうすると思うんです。
ヤリまむあきでした。
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 飼って良い?
火桜冬風 -- 2018-11-10 19:28:48
- 世界一頭が良いって事は、人間にも手に余る存在になる可能性あったよね
ただ。ゆっくりれいむだから、出来る事が限られるから脅威にならないだろうけど -- 2016-09-13 08:00:20
- こんなに、分かりやすく話してくれてるのにチビれいむの話が理解出来ないとは
まぁ、知能があるとは言っても中途半端な知能だしな。 -- 2016-05-09 22:23:36
- 長文多い -- 2016-02-25 23:22:44
- この頭で「胴つきれいむ」だったらなぁ。本物の霊夢よりよさそうだ。 -- 2012-09-15 00:47:06
- 頭のいいゆっくり飼いたかったなあ・・・ -- 2012-08-03 22:21:31
- ゆっくりれいむじゃないこいつは霊夢だ -- 2012-07-27 12:57:18
- また読みに来てしまった……短いけど、インパクトあるんだよなぁ -- 2011-12-11 05:25:03
- なーんか熱く語ってるやつがいるけど、ゆっくりが野良で生まれた時点で寿命で死ねるのなんてまれ。
さらに能力もパッとしないれいむ種のゲスで頭が悪い(勉強ができるできないという意味ではなく生きるための賢さの話)。
そして子れいむが何を言いたいのかもわからないくらいに頭が悪い奴が、子の指南を素直に聞くか?答えは否だろう。
親のプライドによって殺されるだろうし、聞いても理解できず失敗して親子共倒れだろう。
生きるための努力なんていうものは、環境が整って初めてできるものだと思う。
俺たち人間ならともかく上記のようなゆっくりにその環境があるとは到底思えない。
と、過去の感想に熱く突っかかってみる。 -- 2011-10-20 04:45:45
- それかきめえ丸だなあれならなってもイイ -- 2011-10-05 21:43:24
- さなえになりたい -- 2011-10-05 21:41:17
- ↓ライダーを汚すな。 -- 2011-09-30 22:43:22
- お前らは本当につまらない存在だな。
そんな事より俺ステキあきなんだけどさ、俺と一緒にゆ虐タイダーシリーズ考えないか?ゆ虐タイダーは仮面ライダーをパクって復活した俺が今度餡庫に投稿するヒーローの話なんだけど。
お前ら好きだろ?ヒーロー様とかさ。 -- 2011-09-30 05:53:28
- 赤ちゃんにボロクソ言われる親か……面白かった -- 2011-09-28 15:40:45
- 子れいむは生れ落ちて最初の問答ですでに親でいぶを深く失望してるんだよ。自殺を決意するほどに
あかちゃんはゆっくりできる?誰が?もちろん親でいぶが。
要するに親をゆっくりさせる道具としてお前を産んだんだよと言われたわけで、
この時点で親でいぶは子れいむの庇護者でもなんでもなくむしろ潜在的な敵といえる
都合が悪くなれば容赦なく子れいむを見捨てたり潰したりするだろう
子れいむにとって最大の、もっとも性質が悪い敵とは人間でも捕食種でもなく自分の親なのだろう -- 2011-01-30 22:52:46
- いやいやどのみち一年ももたずに死ぬ饅頭ごときが生きる努力とか無駄なことしなくていいから
自分から死んでくれた方が人間にとってもいい。駆除する手間がはぶけるし
野良を拾うくらいならペットショップで綺麗でかわいいゆっくりを買ったほうがいいよ! -- 2011-01-24 16:57:26
- ボロがでるかどうかは子れいむの手綱の執り方次第。親れいむの頭は十人並って書いてあるから、特別馬鹿でもないし。世界一賢い頭脳を駆使すればできないことじゃないはず。それに、結果的に生きることが可か不可かの話はしていない。あくまでどういう姿勢を見せるかという話。
ゆっくりそのものが怠慢者でも、より良く生きて長くゆっくりするために怠惰を抑えれる奴が優秀なゆっくりだと思うんだ。そして自分を客観的に見れる子れいむなら怠惰を抑えるのはむしろ得意分野じゃないだろうか。
いきててもゆっくりできないからすぐ死んでゆっくりするってのは、可能性と努力の放棄だし、他の生命だって生きててゆっくりできないことはある。
けど、↓の人と俺の考えはそんなに違わない気がする。
子れいむがある種の怠慢者であることには賛成。 -- 2011-01-24 13:02:58
- 子れいむがいくら指南したってゲスでいぶじゃすぐにボロが出るから無理
そもそもゆっくりという種そのものが怠慢者なわけで
ゆっくりする為に自殺するのはある意味もっともゆっくりらしい行為とさえいえる -- 2011-01-22 22:34:14
- ↓それは賢い子れいむの指南で回避できるものが多い。
世界一賢いわけだし、生まれながらにして十分な知識も持っているから親のまずい行動には助言や制止を出せば良い。
ものごいをするにも、親を暴走させず、世界一賢い自分が人間をムカつかせず興味をひける芸を考案すれば、虐兄に会わん限り潰されたりせず食っていけるはず。
そういうのを生きる努力と言う。能力があるくせに、自分は何もしてないのに親のせいで死ぬんだ、というのは何もしていない怠慢者の発想。
親れいむも子が自分よりずっと賢いことは理解してるから変なプライド持たずに従えば生き残るくらいできそう。 -- 2011-01-22 18:26:30
- 努力以前にゲス親のせいで死ぬ確率が恐ろしく高いんだけどな
最低限、子ゆになるまではどうしても親の庇護が必要だし
この親でいぶでは食糧調達は困難。お決まりのお歌や恐喝まがいの物乞いくらい平気でするだろう
そこで確実に潰される。親もろとも。無駄な努力の甲斐もなく親のせいで。 -- 2011-01-21 22:04:14
最終更新:2010年04月12日 13:03