ふたば系ゆっくりいじめ 1325 価値観の違い

『価値観の違い』

それは異様な光景だった。
百を超えるゆっくりが二つに分かれて対峙している。
一つは背後に森を背負っており、ゆっくり達は皆、枝や石などで武装していた。
もう一方は人間の育てている畑を背後としており、成体ゆっくりから赤ゆっくりも混ざっており、皆不安そうな顔をしている。
だが何よりも際立っているのは、そのどちらにも黒い帽子を被った巨大な饅頭―――つまりドスまりさが居るという事だ。
ドスを長にもつ群れが互いの親交を深めている―――様には見えない。
森側のゆっくり達の携帯した武器と、不安そうな畑ゆっくり達を見ればそれは明らかだ。
「まりさ!ドスの使命をわすれのたのかだぜ!ドスはゆっくりをゆっくりさせるのぜ!」
「ゆぅ……まりさはみんなをゆっくりさせているよ?」
「嘘をつくなだぜ!!それでもドスなのかだぜ!?」
大声で叫ぶ森側ドス(森ドス)と静かに答える畑側ドス(畑ドス)。

森ドスは生粋の野生であり、生まれてから今に至るまで、ずっと森の中で生活してきた。
ありすとまりさの番の7人姉妹の長女として生まれ、数匹の妹達は自然現象や野生動物の手にかかり死んだが、まりさは無事大人へと成長できた。
独り立ちし、自立した生活ができるようになり、そろそろ番を作ろうかと思っていたらドスへと変化していた。
ドスに会った事はなかったが、ドスの役割というのはなんとなく理解していた。
『ドスとして群れを治めゆっくりをゆっくりさせなければならない』
ドスとなったまりさは群れをつくり、有能なぱちゅりーを補佐としてたて、群れの個体数を調整し、冬篭りに備えて食料を備蓄し、外敵からゆっくりを守り、素晴しいゆっくりぷれいすを作り上げた。
だがそんな時、群れに酷い傷を負ったゆっくりが訪れた。
それは人間によって虐待を受けたゆっくりだった。
ドスは人間を見たことなかったが、聞くところによると人間は、ゆっくりをゆっくりさせない、とてもゆっくりできない存在らしい。
ドスの使命はゆっくりをゆっくりさせること―――。
ドスは決めた。
『人間によってゆっくりできないゆっくりを開放する』と。
人間はゆっくりを見るとすぐさま潰そうとしてくるらしい。
ドスは群れのゆっくりを『戦えるゆっくり』にするために、ゆっくりみょんの剣術を皆に教え、人間との戦いに備えた。
同時に偵察ゆっくりを森の外に送り、森の外のどこに人間がいるか調べた。
そして群れの訓練を終えた時、この森の麓に人間に捕まったゆっくりが大量に居るという情報を得、手始めにそこのゆっくりを開放する為、赤・子ゆっくりは一部のゆっくりに任せ、戦闘ゆっくり達と共に森を出てきたのだ。

一方の畑ドスは、なんと町で野良生活をしてたまりさがドスへと変化したものだった。
街での生活は過酷だった。
幼いときに駆除によって片親をなくし、父まりさの手によって育てられた。
あと少しで独り立ちというときに父まりさも駆除によって死んだ。
街ゆっくりはいつ死んでもおかしくないので、機会があればすぐにでも番を作り子を作る。
まりさもその例に漏れなかったが、その番と子供も駆除によって全滅した。
他にも、猫や烏、犬など……様々な恐怖を乗り越えまりさは成長した。
そしてある日ドスになったが、まりさは既に一つの結論に達していた。
まりさは、人間に飼われとてもゆっくりしているゆっくりを知っている。
中にはそれをかさにきて野良ゆっくりをいじめる飼いゆっくりもいた。
自分たちが恐れる動物でさえ人間を避け、同時に人間の元で暮らす動物はゆっくりしているように見えた。
ゆっくりしたお家。
ゆっくりした食べ物。
ゆっくりした暮らし。
その全ては人間が握っている。
『ゆっくりするには人間に気に入られなければならない』
ドスになったからといって人間に勝てるだなんて思わなかった。
長く街ゆっくりをやっていたまりさにとって、人間という存在は絶対的な力の対象となっていたのだ。
同時に同じような思いを持つゆっくりを集め、そのことを優しい人間に相談すると、郊外のこの農場を紹介してくれたのだ。
なのでドスたちがこの畑に居るのは、労働力として働く代わりに人間の保護を受けるというものだったのだ。
ちなみにこの畑の作物は『ゆっくりが作るゆっくりした作物』(完全無農薬天然栽培)という触れ込みのもと売買されている。

お互いにゆっくりを目指してそれなりの結論を出したドス同士だった。
だが、その溝は深かった。
「どうしてドスが人間と一緒に居るんだぜ!!人間はゆっくりしてないんだぜ!ゆっくりを苦しめる存在なんだぜ!!」
「そうだよ!そんなんにんげんといっしょにいるなんてゆっくりしてないどすだよ!!」
「そんなどすといっしょにいるなんて、おお、あわれあわれ!」
「ゆっくりしてないよっ!」
森ドスのゆっくり達も畑ドスとそのゆっくりを非難する。
「それは一部の人間さんだよっ。ここの人間さんはとてもゆっくりさせてくれるよっ!」
「しょうだよっ!おにーしゃんはゆっきゅりしちぇるよっ!」
「とかいはなおにいさんとどすをぶじょくするなんてとんだいなかものねっ!」
「そうだよっ!」
畑ドス側も負けてはいない。
「ゆゆっ?あのゆっくりたちはとてもゆっくりしてるよ?」
「にんげんはぜんぶわるいやつじゃないの?わからないよー?」
「わからないみょん!どういうことなんだみょん?」
だんだんと森ドス側のゆっくり達にざわめきが広がりつつある。
こっちにもドスは居るが、あっちにもドスが居る。
元より森ドスにとってコレは予測していなかった事だった。
森ドスが聞いたのは虐待を受けたゆっくりである。
そのゆっくりが人間のことを悪く言うのは当然であるし、ドスも人間の事をよく知ろうともしなかった。
群れのゆっくりも、人間の事をあまり知らずにここまで事を進めてしまったので、当然といえば当然である。
一方の畑ゆっくり達はいろんな意味で人間を知り尽くしたゆっくりである。
同時に、ゆっくりする為には人間と上手くやっていかなければならないと理解した頭のいいゆっくりでもある。
しっかりと自分自身で判断し、畑ドス側に居るので迷いなどはなかった。
「ゆぐぅ……まりさ!本当にそれでいいのかだぜ!人間に媚売って自分たちだけゆっくりするだけでいいのかだぜ!?」
ゆっくりはゆっくり全てをゆっくりさせる。
森ドスにとってはそれが全てだった。
「全てのゆっくりをゆっくりさせるなんてできないよ。まりさが面倒見切れる範囲内で、人間さんとゆっくりできるゆっくりと一緒にゆっくりしたいよ」
畑ドスの考えに理解を示すゆっくりはほんの一握りだ。
それ以外のゲスや頭の悪いゆっくりがここに入り込めば、たちまち人間との関係は悪化し、畑の群れは崩壊するだろう。
畑ドスはそれだけは防ごうと思っていた。
「ドススパークやゆっくりオーラは何の為にあるのだぜ!?ゆっくりをゆっくりさせる為!ゆっくりをゆっくりできないものから守るためなのぜ!!」
森ドスは帽子の中からキノコを取り出し掲げてみせる。
ドススパークやゆっくりオーラの発生源となるキノコは、大きく立派に育っており、森ドスの帽子の中には未だ幾つかのストックがあった。
「まりさはキノコさんをもってないよ」
「ゆあっ!?」
畑ドスの返答に森ドスは驚愕する。
「人間さんと一緒に暮らすため、キノコさんを生えないようにしてもらったよ。それにキノコさんはもう、人間さんが別の畑で作ってるから特別じゃないよ」
畑ドスがお帽子を取った。
「!!」
「ゆゆっ!?どすのあたまさんが?!」
「はげまんじゅううううううぅぅぅ!?」
畑ドス自ら頭を焼き、キノコを生えないようにしたのだ。
自分が人間に逆らう意思がないこと。
何とかして友好的な関係を作りたいと思っていることを精一杯アピールした結果である。
自分のゆっくりできることを犠牲にした、畑ドスの精一杯の誠意だった。
そのかいあって何とか今の状態を作り出すことができたのだ。
なお、頭頂部は焦げ目だけが残り、金髪の髪の毛は帽子からはみ出た部分しかないのだ。
この畑ドスの姿を見た森ドスは結論を下した。
「そうなのかだぜ……わかったのぜ……」
「ゆぅ。わかってくれたんだね。まりさ達はまりさ達のやり方があるんだよ。森のみんなはこれからも森の中で『まりさはドス失格なのぜ』……ゆ?」
よく見ると森ゆっくり達の様子もさっきとは違ったものになっている。
完全に、畑ドスとゆっくり達を見下したものだ。
「ゆぷぷっ!はげあたまのどすのむれのゆっくりなんてゆっくりできないねっ!」
「ゆっくりできないゆっくりはせいっさいなのぜっ!!」
「しょせんにんげんにこびをうるいなかもののどすとゆっくりね!」
「まりさはドスとしての誇りも使命も忘れたおろかなドスなのぜ……!そんなドスは……真のドスの名の下に制裁するよっ!!」
森まりさがキノコを口に運ぶ。
「ま、まりさっ!!」
「無能なドスが口を開くんじゃないのぜ!!まりさはこれから人間を制裁してゆっくりによるゆっくりの為のゆっくりプレイスを作るのぜ!!」
「そうだよ!れいむがゆっくりスタめのゆっくりぷれいすだよっ!!」
「じゃまをするどすはしぬんだねー。わかるよー!!」
「むのうなどすとゆっくりはしねだみょん!!」
どうやら畑ドス達を完全に敵とみなしたようだ。
「ど、どすぅー!!!」
「わ”、わがらなあああああ!?」
畑ゆっくり達は自分たちに向けられる殺意に完全にすくみあがっている。
「どぼうじでわがっでぐれないのおおおおおぉぉぉ!?まりさ達はまりさ達のやり方でゆっくりするよっ!!こんなところでドススパークを撃ったら人間さんに殺されちゃうよ!!帰ってね!!森に帰ってもうここには来ないでね!!」
「煩いんだぜ!!無能などドスはゆっくりしねっ!!むーしゃ!むーしゃ!行くのぜ!ド―――」

バフンッ

森ドスがドススパークのために大きく口を開けた時、森ゆっくり達が居る場所めがけて何かが飛んで行き、ドスの目の前で破裂した。
「ゆゆっ!?」
それは赤い霧を作り出し、森ゆっくり達を包み込んだ。
「な、なんなのぜこれは!?よく見えないのぜっ……ゆぅっ……ぎいぃ!?」
途端に、全身に走る激痛。
「ゆんぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁ!?!?」
森ドスの悲鳴を皮切りに、それは森ゆっくり達にも伝染していく。
「い”っ、い”ぢゃい”い”い”い”い”い”い”い”い”ぃぃぃぃぃ!!あんござんばい”ぢゃい”よ”お”お”お”お”お”お”お”ぉぉぉぉぉ!!」
「ゆんぎゅぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「び、びえないいいいい!!!おべべがびえないいいいいい!!いだいいいいいいいい!!!」
「がらっ!がらっ!!かはっ!!がはっ!!」
「ゆぶぶぶぶぶっ!!ゆべえええええええ!!」
霧ではなく煙玉。
煙の成分は辛味成分を凝縮した『ゆっくりの群れ駆除用辛味煙幕』。
赤・子ゆっくりならば即死。
成体でも数分で死亡。
ドスであっても数十分で死に至る。
数分後。
森ドスはむーしゃむーしゃしていたキノコを口に含んだまま地面に倒れ付していた。
目は真っ赤ですでにかすれており、舌と涎と涙をだらだらと垂らし、しーしーを大量に漏らしている。
続いてなにやら白い雨のようなものが降ってきた。
それは中和剤で、既に人間が近くまで来ており作業を始めていた。
なおドスは死んでいない為中和剤はかけられない。
「ゆげっ……み”み”んな……」
ドスが目を向けた場所にあったのは大量のゆっくりの死骸だけ。
どのゆっくりも餡子を吐き散らし、涙と涎としーしーにまみれ、苦悶の表情を浮かべて息絶えている。
人間がその死体を袋につめる。
実に淡々とした作業だった。
「あ”……あ”……あ”……」
「まりさ……」
その近くに畑ドスが近づく。
「どうして帰ってくれなかったの?どうして人間さんに関わろうとなんてしたの?森の中でゆっくりしていれば、ずっとゆっくりできたのに……」
畑ドスが悲しそうに言う。
ドスは他の畑ゆっくり達はその場から立ち去らせており、この凄惨な場面を見なくてよいようにしていた。
「ど、どず……ば……ゆっぐいを……ゆっぐり……ざ、ぜ……」
「ゆっくりしてたよ?まりさ達の群れはとてもゆっくりしてたよ?羨ましかったよ……。でも……もう……みんな死んじゃったよ。きっと残った子供達も人間さんに殺されちゃうよ。人間さんは容赦しないよ。みんな……みんな……死んじゃうよ?」
「ど、どぼじ……で……?ばでぃざば……ゆっぐり……を、ゆっぐ……り……」
「……ここは森じゃないんだよまりさ……。まりさとまりさ達は同じゆっくりだけど全然違う場所に生きてるんだよ……。まりさはその境界線を越えちゃったんだよ……。そうしたら、もう、ゆっくりできないんだよ……でも、まりさ……ありがとう。ごめんね……」
「ゆ”っ……ゆ”っ……ゆ”っ……」
森ドスは死んだ。
その時、雨が降ってきた。
人間が作業を中断し戻って行く。
雨が降ればゆっくりの死骸は全て溶けてしまう。
作業の手間が減るのだ。
「ドス。帰るぞ。……残念だったな」
人間の一人がそう言って引き上げて行く。
「……」
ドスは呟く
同じゆっくりだったのに、最後までお互いに交わせなかった言葉を。
「まりさ……ゆっくりしていってね」
帰ってくるはずのない返事を待つかのように、畑ドスはいつまでも雨の降る草原に佇んでいた。




読んでくださりありがとうございました、
前回の投稿でもご指摘がありましたが、最大の悩みが『ゆっくりの言葉』が書けないのです。
なんか、普通の人間が話ってるっぽくなってしまう(以前の『あるドスのゆっくり』でもご指摘がありましたが)。
他の皆様が書かれているようなゆっくりの豊な言葉(主にスカッとする悲鳴や命乞いw) をしっかりと書けるようにしたいです。



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最終更新:2010年07月27日 17:13
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