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ミエス・カウート(高位の剣) - (2007/08/24 (金) 21:52:56) のソース
**ミエス・カウート(高位の剣)◆/Vb0OgMDJY D-3地区にある施設、映画館。 『闘争進化論~人類が繁栄した理由』などという、この島にいる大部分の人間が興味を持たないであろう内容の映画が上映されている施設に、今三人の人間がいた。 無論、その映画が目的ではない。 彼らの内二人は、非日常が支配するこの島において、ようやく再会できたという喜びを噛みしめており、残る一人はその邪魔にならないようにしながらも、その再会を祝福していた。 その残る一人、高嶺悠人は、先ほど知り合った相手――千影が持っていた短剣を手に取りながら思考に耽っていた。 この短剣は、間違いなく「永遠神剣」である。 契約者のマナ(精霊光)と引き換えに莫大な力を与える剣。 異世界ファンタズマゴリアにおいて、同種の剣を手に、望まぬ戦闘を強要されていた悠人には、間違えようのない武器である。(最も、短剣型というのは初めて見るが) 短剣の持ち主である千影は、悠人の同行者である衛との再会を喜び様々な話をしている最中であり、こちらに意識を向ける様子は無い。 なので悠人は手持ちぶたさもあいまって、色々と思案していた。 (この剣から感じられる力は、考えたくないけど……バカ剣よりも上だ) ファンタズマゴリアで悠人が手にしていた神剣「求め」、その力は人よりも遥かに高い戦闘力を持つスピリット達の中にあっても、更に高い力を持っていた。 だが、 (この剣からは「求め」よりも遥かに強い力を感じる。多分、俺とバカ剣ではこの剣の使い手には勝てない) そうなると、未だ再会出来ていないアセリアでも、この剣の使い手には敵わないだろう。 (いや……アセリアだけじゃない) 自分がこの島に来てから出会った相手の顔を思い浮かべる。 博物館で出会った、殺し合いに乗っている二人の少女――片方は献身を手にしていたが、どちらも身のこなしはほとんど素人のそれだった。 心強い仲間であるハクオロ――身体能力においては悠人と大差はないだろうが、技量と経験においては悠人よりも上だろう。 そのハクオロと共にいる仲間、瑛理子と観鈴――あの二人は戦闘力という点では大した事は無い。 そして今も共に居る衛とその姉である千影――やはり普通の女の子といって差し支えはない。 (遥さんは車椅子とか言っていたし、そもそも論外。近くで死んでいた二人は何ともいえないけど、少なくとも化け物じみてはいなかった) 悠人がこの島に来てから出会った相手は死体を含めて10人。(もう一人いたが遠目なので詳しくはわからない) その中で、戦闘能力者と呼べるのはハクオロ一人、死んでいた二人が仮に戦う力を持っていたとしても、三人。 つまり (この島にいる人間は、普通の人間のほう圧倒的に多い――って事になるのか) 少々強引な理論だが、余り間違ってはいないのではないかと思う。 仲間達の知り合いの話を聞いても、戦う力を持っているのはハクオロの知り合いの人間(?)のみ、つまり戦うことが日常な世界と、そうでない世界があるということになる。 そして、 (名簿に載っている名前を見ても、ほとんどが日本人だ) 今まで出会った中で名前がわかっている人間は、ハクオロを除いて全員日本人。 その日本人全員が、平和な日常の中にいたらしい。 そもそも悠人自身、ファンタズマゴリアに召喚されるまでは、日本で平和な日々を過ごしていたのだ。 ならばこの島にいる人間のほとんどが、ごく普通の一般人と考えて良いのではないだろうか。(最も悠人自身という例外が存在している以上、油断は禁物だが) (まあ銃火器が存在している以上は、その程度の優位は簡単にひっくり返るんだけどな) 狙撃を行ってきた相手からは逃げるしかなかったし、近い距離でも銃が相手では正面から勝つのは難しい。 そしてエスペリアを含めて、戦闘に秀でた人間――ハクオロによれば、カルラ、オボロ――もこの島では死んでいる以上、そこまでの優位性はない。 つまり油断は禁物ということだ。 しかし、悠人が考えるべきなのは、そんな当たり前のことではない。 (問題は……強い力を持っていても、「その程度」でしかないということだ) ハクオロにしろ、悠人が「求め」を手にしている限りは敵にはなりえない。 エスペリアが殺されたとはいえ、その手に「献身」がなかった事は悠人自身が確認している。 そして、銃火器程度では、神剣を手にしたスピリットやエトランジェには対抗出来ない。 つまり、この島のほとんどの人間(いやもしかすれば全てかもしれないが)は、神剣を手にした悠人やアセリアには敵わないのである。 そして本題はここから、つまり、 (この神剣の持ち主が仮にこの島に居て、この剣を手にした場合、それに匹敵する力を持つものはいない、ということだ) そういう結論になる。 それはつまりその持ち主が殺し合いを肯定した場合、それを止められないという事。 (少なくともこの剣は、目の届く範囲に置いておくべきだな) 幸いなことに、現在の持ち主である千影は衛の姉であり、仲も良い。 この場で同行を申し出れば、恐らく了承してもらえるだろう。 まあ、残るもう一人の姉妹――咲耶といったか、を探しに行くと言い出すかもしれないが、それに同行したってかまわない。 一度ハクオロ達に会うために公園に行かなければならないが、そのぐらいの回り道なら了解してもらえる、と思う。(最も、千影が工場に行かないと言い出した場合は瑛理子の説得が難しい気もするが) (そうと決まれば早速、そういえばこの剣をどこで手に入れたのかも聞かないとな) と思い、立ち上がろうとしたとき、 「悠人さん、お待たせ!」 話が一段落着いたのか、衛と千影が声をかけてきた。 一通り再会の喜びを噛みしめた後、衛くんは同行者――悠人くんというらしい、に声をかけた。 衛くんの話では、この島に来て比較的早くに出会って、力を貸して貰えるように頼んで以来、共に行動している相手らしい。 先ほどは驚かされたが、あの場合は仕方のない対応だと思う。 そういう意味では、頼りになる事がわかったという事でむしろ良かったのかもしれない。 その悠人くんは 「えっと、高嶺悠人だ。さっきはすまなかった」 と丁寧に挨拶をしてくれた。 「私は千影。呼び捨てにしてくれてかまわない……。 先ほどの事は気にしなくていいよ…。あの場合は仕方のない事だからね…。 むしろ礼を言わなければいけないね、これまで衛くんのことを守ってくれて有り難う、おかげでこうして再会することが出来た…」 こちらからも挨拶をしておいた。 ……まだどんな相手なのかはわからないけど、衛くんはあれで中々鋭いところもある。 その衛くんが信頼している相手(話によれば襲撃者からも守ってくれたらしい)なら、多分信用してもいいと思う。 「いや、俺も衛には色々と助けてもらっている。 多分、衛がいてくれたから、ここまで無事で居られたんだと思う。」 …先ほど衛くんと話していたとき思ったけど、衛くんは悠人くんのことを大分(それこそ兄くんと変わらないぐらいに)信頼しているみたいだ。 そして、どうやら悠人くんも衛くんのことを同じくらい信頼しているように見える。 「えっ? ボクは悠人さんに助けられてばかりだよ?」 ……最も、オボロ君のようなこともあり得る。 彼も間違いなく善良な人間だったのだろう。だが彼には譲れない目的があって、その為に四葉くんをその手にかけた。 だから、信頼出来る相手でも、信じきるわけには……いかない。 「ん…そんなことはないさ、俺は衛が一緒にいてくれたから、頑張ってこれたんだ。 ……衛がいなかったら、こんな風に落ち着いてはいられなかった。 衛のおかげで、……エスペリアの事も乗り越えられた。 だから衛にはとても感謝している」 ……はずなんだけど。 「え、いやボクは、その、悠人さんに慰めてもらったから、その……悠人さんのことを支えてあげなくちゃ、って思っただけだよ…」 ……ここまで衛くんと仲が良いのを見ていると、あまり警戒しようという気がしなくなってくるね。 「それが、とても救いになったんだ。 衛のおかげで俺は、俺のままでいられた。 だから、ありがとうな、衛」 ……しかし、なんていうのかな。 「う、うん。 えっと、悠人さんもありがとう」 微妙に居心地が悪いような気がするのだけど。 というか衛くんの頬が、微妙に紅潮しているように見えたんだけど…………気のせいかな。 悠人さんと千影ちゃんの自己紹介が終わったところで、悠人さんにお昼ご飯にしよう、と言い出してみた。 千影ちゃんは、ここにくるまでに色々大変なことがあって、とっても疲れてしまったんだって。 だから、ハクオロさん達のところに行く前に、丁度いい時間だし色々とお話をしながら、ご飯を食べておきたいといったら、悠人さんも賛成してくれた。 それで今は映画館の廊下にある椅子に座りながら、少し遅めのお昼ご飯を食べていた。 スーパーで色々な食べ物をディパックに入れておいたから、千影ちゃんにもわけてあげた、パンだけじゃ力も出ないしね。 それで色々と話をしたんだけど、まず 「とりあえず、千影はもう一人の・・・・・・咲耶って子を、探しに行きたいんだと思うんだけど、とりあえず俺と衛もそのつもりだったから、一緒に行動しないか」 って悠人さんは言い出した。 「と言っても、当てがあるわけじゃないから、一度北にある公園に向かって、仲間達と合流して、そのまま工場に向かう予定になっているんだが」 とボク達の予定を告げた。 それを聞いた千影ちゃんは、ちょっと困った顔をになった。 「出来るなら、共に行きたいのだけれど、……この近くに仲間がいるはずなんだ。 ……襲撃にあって離れ離れになってしまったけど、名前は呼ばれていないから、無事でいてくれていると思うんだ。 ……衛くんと離れたくはないけどね。 それと…………いや、なんでもないよ」 ……千影ちゃんにも仲間がいるみたいだ、それじゃあ心配だろうけど、でも折角再会できたのに、別れたくはないよ。 そう思っていたら悠人さんが、 「じゃあ、とりあえず伝えないといけない事があるから、一度公園までは行くけどその後、俺と衛、千影でこの近くで人探しをすることにするか。 衛もそれでいいか?」 って言ってくれた。 それはとても嬉しい……けど。 「悠人さん、それは大丈夫なの?」 ボク達は首輪を外す為に工場に行かないといけないはずなんだけど。 「……私としては願ってもないことだけど、本当にいいのかい?」 千影ちゃんも嬉しそうな反面、不思議そうにしている。 そう言ったら悠人さんが、 「まあ、瑛理子さんを説得出来ないことにはどうしようもないんだけどな。 ……衛だって折角再会出来たんだから一緒に居たいだろ。 それに、仲間を探すのは無駄にはならないと思うしな」 そう言った後、悠人さんは一息ついて、 「それに、この剣を見える範囲に置いておきたいっていうのもあるんだ」 と言った。 (何故だろう、神社で約束している事を……言わない方が良いと思ってしまった) 第三回の放送時に神社に居る、それは舞達との約束のはずだ。 けれど、あの約束の時に感じた不吉な予感。あれが先ほどよりも強くなっている。 そのせいで、約束のことを話せなかった。 そして、 正直に言おう、悠人くんの提案はとても嬉しかった。 私も、出来れば衛くんと、悠人くんには同行して欲しいと思っていた。 ただ、その反面、あっさりと承諾してくれた事に意外さを感じていた。 だから判りやすい(?)理由が出たことにむしろ安心を感じた。 「……その剣が欲しいのかい?」 とりあえず「時詠」とは言わず、ただ剣とだけ告げた。 「欲しいってわけじゃないんだけど、なんていうのかな。 ああ、そうだ、そもそも千影はこの剣をどこで手に入れたんだ?」 何やらよく分からない答えが返ってきた、 なので 「その剣は私の支給品だけど、それが何だい?」 普通に答えておいた。 「支給品……か」 悠人くんは何やら難しそうに考えこんでいる。 何だかよくわからないけど、とりあえず話を進めてもらうために質問しようとしたとき、 「それがもしかして悠人さんの言っていた、神剣ってものなの?」 横から衛くんが質問をしていた。 そしてその質問は、私が聞きたい事に近いものだった。 「ん、ああ、見たことのないタイプの剣なんだが、この剣から感じる力は間違いなく永遠神剣のものだな。 それで、千影はこの剣について何か知らないか?」 その、悠人くんの答えは、私にとっては予想外のものだった。 私は、あの神社で出会ったネリネくんのように、悠人くんも永遠神剣を支給されていて、それで時詠を――正確に言えばその魔力を狙っているものだと思っていたのだが、この反応はもしかすると、 「……強い力を持っている魔具ということはわかってる。…あと永遠神剣第三位「時詠」という名前の書かれた紙が一緒に入っていたよ」 ……「時詠」については知らないようだけど、この神剣について詳しく知っているのかもしれない。 「……第三位……か、それならこの力も納得いく…な」 そしてその答えで、私は自分の考えが間違っていないと確信した。 「すまないけど、詳しい話をしてもらえないだろうか」 そうして、それはかなえられた。 悠人くんの語った、異世界ファンタズマゴリアの物語。 永遠神剣、エトランジェ、スピリット、マナ、ドラゴン、魔法、そういった様々な神秘が織り成す物語。 それは、私にとっては――苦労したらしい悠人くんには悪いけど――とても楽しいと思う話だった。 魔法という力が日常的に存在して、空想の中の生き物が生きていて、人々が皆そのことを知っている世界とは、なんて心が躍る世界だろう。 そして悠人くんは「時詠」の事を警戒しているということで話は終わった。 その、とても楽しい話ではあったけど、一つ気になることがあった。 「その話を聞いた限りだと、私がこの「時詠」の契約者ということになるのかな」 神剣の力を使うには、スピリットかエトランジェが神剣と契約しなければならないらしい(スピリットの方は生まれながらに契約しているらしいが) つまり、「時詠」の力を使った以上、契約者は私ということになる。 のだが、 「……千影が契約者……のわりには、その、あまり強くなかったような気がしたんだけど」 と、失礼な答えが返ってきた。 「ああ、そういえば力が使えるなら、剣の声が聞こえるはずなんだが」 ……剣の…………声? 「……この剣は喋るのかい?」 これだけの力があるのだから喋るくらいはしてもおかしくないのだけど、剣が喋るというのは微妙に想像し辛いね。 「ああ、喋るといっても他人には聞こえないけどな。 第三位というくらいなら、普通に人格があるはずだと思うんだけど。 それで「マナを……マナをよこせ」とか「妖精を犯せ……マナを奪え」とか言ってこないのか?」 ……たとえ喋れるのだとしても、そんな声は聞きたくないね。 見ると、隣で衛くんも顔を真っ赤にしている。 それで漸く悠人くんも失言だった事に気づいたらしい。 少しの間、痛い沈黙が流れた。 が、衛くんが頑張って声を上げた。 「ひょっとして、誰でも使えるんじゃないの?」 「……それは、ありそうではあるんだけどな、……そうなると俺は何のために…………いやいい」 その内容は大分悠人くんにはキツイようだった。 だが、まあデリカシーに欠ける相手を慰める気は無い。 「そういえば、神社で襲撃してきた相手も神剣を使っていたよ。 彼女が言うには魔力を込めれば力が使えるらしい。 名前は確かネリネくんに「献身」と言ったかな」 なので追い打ちをかけておいた。 「……「献身」ってことは緑色の槍で、持ち主は耳のとがった女の子じゃなかったか」 しかし失敗した。 「そうだけど、知っているのかい?」 だがまあ重要な話なので答えておく。 「ああ、俺と衛もその子と仲間に襲われたんだ。そのときは「献身」っていう確証はなかったんだけど」 どうやらかなりの危険人物らしい、よく無事だったものだ。 トウカくんも大丈夫だろうか。 「なら、試しに悠人さんが使ってみたらいいんじゃないの?」 そこに衛くんが追撃をかける、まあ本人にその気はないのだろうけど。 「そうだね、私も「時詠」の事をもう少し詳しく知りたいしね」 という本心もあったので同意しておいた。 それを聞いて悠人くんは微妙な表情をしていたけど、 「まあ、それが一番解りやすい方法だな」 重要な事なので、駄々は捏ねなかった。 「さて、食事も終わったし、早速試してみるか」 と言って悠人さんが立ち上がった、 その後の話で、千影ちゃんの仲間の人は、ハクオロさんの知り合いのトウカっていう人だって判った。 羽みたいな耳らしいから間違いないと思う。 それで食事も終わって、「時詠」を使ってみることになった。 でもその前に気になる事が一つ。 「悠人くん……まだニンジンが残っているようだけど」 先に千影ちゃんが言ってくれた。 「あー、その、なんだ、これはな」 その悠人さんの反応はとても解りやすかった。 つまり、 「悠人さん……ニンジン嫌いなの?」 ということ。 「いや、その嫌いというわけじゃあないんだけどな、その、なんていうか苦手なんだよ」 なんて子供みたいな言い訳をした。 それが何となく可愛かったので 「だめだよ悠人さん、好き嫌いをしたら大きくなれないよ」 からかってみた。 「……今は、好き嫌いを言っていられる状況ではないと思うけどね」 千影ちゃんも、味方をしてくれた。 ――因みに、その後食べる食べないの騒動で彼らは30分以上の時間を費やした―― 「さて、それじゃあやってみるか。 衛、千影、一応離れておいてくれ」 悠人さんのニンジン騒動もおさまって、いよいよ「時詠」を試してみることになった。(ニンジンがどうなったのかはヒミツだよ) それでなにがあるか分からないので、千影ちゃんと一緒に離れておくことにした。 それで十分に距離をとったところで 「……「時詠」……力を」 と悠人さんが言った。 その瞬間、悠人さんの姿がテレビみたいに、一瞬ぶれた……ような気がした。 と思ったら次の瞬間、 悠人さんの正面、廊下とホールの壁がバラバラになった。 「……すごい」 なにがあったのかわからないけど、一瞬で壁にあんな大きな穴を開けるなんて、テレビでみたバズーカーでもなければ無理だと思う。 それをあんな小さな剣でなんて。 「……「タイムアクセラレイト」……まさかこれほどのものとはね、恐ろしいほどの力だね」 千影ちゃんもとても驚いているみたいだった。 これなら、多分どんな人が相手でも、何とかなると思う。 けど、そこで悠人さんが動かない事に気づいた。 「……? どうしたんだい、悠人くん?」 千影ちゃんも気になったみたいなので、二人で悠人さんのそばによっていった。 ……衛と千影が近寄って来た事で、俺はようやく緊張を解いた。 「どうしたの、悠人さん」 ……ここで下手な反応を返すわけにはいかない。 「ん、いや、今のは実は失敗なんだ」 なので、緊張している間に考えていた言い訳をすることにした。 「失敗? とてもそうは見えなかったけど」 「いや、俺は千影が言っていた能力を使うつもりだったんだけど、全然使えなくて、あげくマナだけが飛び出してあんなことになったんだ」 「え、でもあれはあれで成功に見えるけど?」 「衛……あれは制御出来ない爆弾みたいなものだ、危険すぎる。 ……それぞれのスピリットの色ごと得手不得手があるみたいに、俺と「時詠」は相性が悪いんだと思う。 千影のほうが制御できる分、使いこなしているんじゃないかな」 そう言って、千影のほうに向いて、「時詠」を差し出す。 「……威力では俺のほうが上だけど、危険すぎるからな。 千影が持っていたほうが役に立つんじゃないかな」 それを聞いて千影は少し考えていたようだった。 「だけど、使いようによっては役に立つのではないかな……」 「ん……それもそうだな、じゃあ危険な相手がいたときは、千影に借りる、ってことでいいか」 そうして待つこと数秒、千影は「時詠」を手に取った。 「うん……じゃあ私が持っていよう」 千影が「時詠」を手にしてから数秒たって、俺は二人に気付かれないように息を吐き出した。 (何とか誤魔化せたか……) 悠人は途方も無い恐怖を感じていた。 暴走? そんなものではない。 悠人は「完全」に「時詠」の力を引き出したのだ。 目の錯覚にしか見えないほどの一瞬、「時間を加速し」、壁に無数の斬撃を放ち、元の場所に戻ったのだ。 だが、 (あれは……危険すぎる。 あれを使えばこの島に敵なんて存在しない。 それは間違いない。 けど) あの瞬間、剣は莫大なマナを要求した。 恐らくもって数分、それで悠人のマナは尽きる。 だが、恐ろしいのはそんなことではない。 マナが尽きて、それで悠人が消えるというなら、悠人は「時詠」を持ち続けただろう。 しかしその程度ではない。 (俺は多分、アセリアのような……いやもっとまずい) 悠人は恐らくこの島にいる全ての人間を殺しつくし、マナを奪うだけの存在になる。 敵も味方も関係ない、そもそもそうなった悠人にとって敵など存在しない。 あるのは微小な魔力の塊のだけになる。 (俺と、多分アセリアの二人、体がマナで出来ている人間は、あの剣を持ってはならない) そう結論付けた、 あれだけ再会したいと思っていたアセリアに今は会いたくないと思ってしまった。 恐らく今のアセリアでは、「時詠」に触れただけで危険だからだ。 しかし、悠人の苦悩はその程度では終わらない。 (もし、もしだ、仮に「時詠」の力を使うしかないとなったら……俺はどうすればいい) 使わなければ、衛や千影が死ぬ。 だが、使ってしまえばこの島の全ての人間が死ぬ可能性が生まれる。 (そうなった時、俺は………………) 【D-3 新市街・映画館/1日目 午後】 【千影@Sister Princess】 【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア -この大地の果てで-】 【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE 銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルトのみ残数80/100)、バナナ(フィリピン産)(2房) 倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-】 【状態:左肩重傷(治療済み)、肉体的疲労大、魔力消費大、時詠使用による虚脱感、スカートに裂け目、精神的疲労小】 【思考・行動】 基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。時詠の能力使用は極力控える 0:失敗? そんなはずは・・・ 1:衛くん……何だか仲が良いね。 2:咲耶を探し出して守る 3:永遠神剣に興味 4:北川潤、月宮あゆ、朝倉純一の捜索 5:神社の事は…どうしよう。 6:『時詠』を使って首輪が外せないか考える ※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化) ※しかし、その約束に強い不安を感じています。なので衛と悠人にはまだ話していません。(話すかどうかは後続の書き手さんにおまかせします) ※トウカの事は確実に信用できると評価しました。 ※時詠を使用すれば首輪を外せるんじゃないかと考えています(ただし可能性は低いと考えています) ※千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。 但し魔力・体力の双方を消耗します。 タイムコンポーズ:最大効果を発揮する行動を選択して未来を再構成する。 タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。 他のスキルの運用は現時点では未知数です。 詳しくはwiki参照。 またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。 ※未来視は時詠の力ではありません。 ※銃火器予備弾セットが支給されているため、千影は島にどんな銃火器があるのか全て把握しています。 見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。 ※倉成武のPDA 情報携帯端末。簡単に言えばネット通信機能搭載の超小型パソコン。携帯電話も内臓されている。 また、静電充電機能で身に着けて歩行などすれば充電可能。ちなみに完全防水である。 ※ネリネを危険人物と認識しました ※四葉とオボロの事は衛と悠人には話してません(衛には話すつもりは無い) ※オボロの事があったので悠人を一応警戒しておく・・・のだがその気はほとんどない。 【偵察チーム】 【思考、行動】 基本方針1:襲撃者の北上につき急遽予定変更。映画館へ立ち寄ったあと、北上しD-2エリアの公園に移動し首輪チームと合流。 基本方針2:その後、トウカを探すため島の中央部へ。 基本方針3:映画館、学校、神社、新市街を経由して参加者の捜索、情報収集を行いながら15時までに工場へ。 ただし時間の経過によっては何箇所か立ち寄らずに、時間までに工場に着くことを優先。 思考1:映画館からD-2の公園へ移動し、ハクオロ達3名と合流。今後について話し合う 思考2:有益な情報を集める、特にタカノの事を知ると思われる4人を重視。また、可能なら鳴海孝之が持っているというノートパソコンを入手。 【備考】 ※ハクオロ、観鈴、瑛理子と協力状態。 ※北へ向かった車の襲撃者を警戒。探索はキャンセルし、映画館でメモの件を終えたら再度北上してD-2の公園にて三人と合流。 ※D-2が禁止エリアに指定された場合は映画館、C-3北のスーパーで合流。 ※工場にハクオロ達が居ない可能性も考慮。その場合レジャービル、プラネタリウムの順に移動。 ※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。 ※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。) ※島内部の電話が使える事を知りました(現在、レジャービルの電話番号を知ってます)。 ※車の一団はゲームに乗った者が徒党を組んでいると思ってます。 【高嶺悠人@永遠のアセリア -この大地の果てで-】 【装備:今日子のハリセン@永遠のアセリア、トウカの刀@うたわれるもの、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾14/15+1)】 【所持品:支給品一式×3、バニラアイス@Kanon(残り9/10)、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、 予備マガジン×7、暗視ゴーグル、FN-P90の予備弾、電話帳】 【状態:精神状態は普通、疲労軽程度、左太腿に軽度の負傷(処置済み・歩行には支障なし)、「時詠」に対する恐怖】 【思考・行動】 基本方針1:衛と千影を守る 基本方針2:なんとしてもファンタズマゴリアに帰還する 0:俺はどうすれば……。 1:北上した襲撃者を警戒。三人が心配。 2:アセリアと合流したい、けど今は…… 3:咲耶を含む出来る限り多くの人を保護 4:ゲームに乗った人間と遭遇したときは、衛や弱い立場の人間を守るためにも全力で戦う。割り切って容赦しない。 5:ネリネをマーダーとして警戒 6:地下にタカノ達主催者の本拠地があるのではないかと推測。しかし、そうだとしても首輪をどうにかしないと…… 7:エスペリアを殺した相手を積極的に探すつもりはない、但し出会ったら容赦するつもりはない 8:涼宮茜については遙の肉親と推測しているが、マーダーか否かについては保留。 9:そういえば、何で「くん」づけで呼ばれているんだ? 【備考】 ※バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。 ※衛と本音をぶつけあったことで絆が強くなり、心のわだかまりが解けました。 ※上着は回収しました。 ※レオと詩音のディパック及び詩音のベレッタ2丁を回収しています。 ※遺体を埋葬、供養したことで心の整理をつけました。 ※ハクオロとの会話でトウカをマーダーでないと判断、蟹沢きぬについては保留 ※エスペリアを殺した相手を殺すつもりは(一応)ない ※原作の四章、アセリアルートから連れてこられた、アセリアはハイロゥが黒く染まった(感情が無い)状態だと思っている ※千影から、ネリネの名前を聞きました ※「時詠」の力を使うことに強い抵抗と恐怖を感じています。 【衛@Sister Princess】 【装備:TVカメラ付きラジコンカー(カッターナイフ付き バッテリー残量50分/1時間)】 【所持品:支給品一式、ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】 【状態:精神状態は正常、疲労軽程度】 【思考・行動】 基本方針1:死体を発見し遙や四葉の死に遭遇したが、ゲームには乗らない。 基本方針2:あにぃに会いたい 基本方針3:これからは自分も悠人さんの支えになってあげたい 0:悠人さん……なんか様子が。 1:プラネタリウムで別れた三人が心配。 2:悠人の足手まといにならぬよう行動を共にする。 3:咲耶にも早く会わなきゃと思う。 4:ネリネをマーダーとして警戒。 5:鳴海孝之という人を悠人と共に探して遙が死んだことを伝える。 【備考】 ※悠人の本音を聞いた事と互いの気持ちをぶつけた事で絆が深まりました。 ※遙を埋葬したことで心の整理をつけました。 ※瑛理子から、鳴海孝之の情報を得ました。 ※TVカメラ付きラジコンカーは一般家庭用のコンセントからでも充電可能です。充電すれば何度でも使えます。 ※ラジコンカーには紐でカッターナイフがくくりつけられてます。 ※スーパーで入手した食料品、飲み物は二日程度補給する必要はありません。 ※医薬品は包帯、傷薬、消毒液、風邪薬など、一通りそろっています。軽症であればそれなりの人数、治療は可能です。 ※日用品の詳細は次の書き手さんにまかせます。 |132:[[If...~I wish~ -you- ]]|投下順に読む|134:[[戦の前。]]| |132:[[If...~I wish~ -you- ]]|時系列順に読む|134:[[戦の前。]]| |121:[[小さな、とても小さな奇跡。]]|高嶺悠人|139:[[朝焼けと青空の境界線を越えて]]| |121:[[小さな、とても小さな奇跡。]]|衛|139:[[朝焼けと青空の境界線を越えて]]| |121:[[小さな、とても小さな奇跡。]]|千影|139:[[朝焼けと青空の境界線を越えて]]| ----