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断片集 玖我なつき

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断片集 玖我なつき



白く、淡く、やさしいまどろみ。ゆるゆると夢見心地と現世を何度か往復し、そして玖我なつきは目を薄く開いた。



一瞬。ここがどこだかわからない。
寝惚けているからだろうか。それとも、いつもの目覚めとは全然違うからだろうか。ぬくもりが隣にあるからだろうか。

「…………そうか。私は」

すこしかためのマットレス。薄く、そして一枚しかない白いシーツ。身を寄せ合う、愛するとそう誓った大切な人。
なつきが思い出し、潜っていたシーツの中から顔を出すと、そこに彼の碧色の瞳があった。
半瞬見つめあい、あたりまえのように唇を重ねて舌先をくすぐりあう。

「私は、どれくらい寝ていた……?」

もしかしたらもう何日も眠っていたのではないだろうか。そう思ったがそうではなかったらしい。
せいぜい5分か10分かと聞かされ、なつきはほっとしたような、しかし少し残念なような気持ちを抱いた。
状況はわきまえている。本当はこんなことをしてるべきではないとも。
けど、許されるならば――いや、許されなくとも自分がそれを許せるならばいつまでもこうしていたかった。

「放送のかかる時間までは、このままで……な」

それがこの時のなつきの妥協案。
残りは後5分もないだろうか。その少しの間だけでもこれをと、彼女は自分と他の色々なものに心の中で言い訳をした。



朝の、わずかな湿気を含んだ空気は心地よいもののひやりと冷たく、なつきはぬくもりを求めて肌を寄せ合う。
ぴたりと、間に何をはさむことなく、直接に互いの温かさを交換しあい、気持ちを渡しあい、やすらぎを受け取りあった。

「――風華学園校則第一条。恋愛禁止」

彼の耳元でつぶやき、なつきは悪戯っぽい表情で少し笑った。つられてか彼も小さく微笑み、その意味をなつきに問い返す。
風華学園は一つの学校でありながら、その実態はHiMEの素養ある者を集め管理する為の施設でもあった。
そして、HiMEの素養ある者は己の中に自分の命よりも大切な者が生まれた時に資格を得て、宣言をもって覚醒に至る。
故にそうなってしまわないよう、大切な者を作ってしまわぬよう、なつきはそれに従い、周りにもそれを強く戒めていた。
彼女だけは自覚的で、HiMEの宿命も、大切な者を失う悲しみも知っており、そしてそれが彼女の生き方だからだったから。

「お前のせいで、私は校則を破ってしまったな」

もっとも、それを除けば守っている校則の方が少ないのだとなつきは笑う。
しかしこの一つ。たった一つの校則を破ってしまった意味は、その他の全てを合わせても足りないほどに大きい。
もうこれを知ってしまったら戻れないのだから。離せと言われても決して離したくない。自分の命よりも大切なものができた。

「責任をとってくれよ?」

何か勘違いしたのか目の前の彼の顔が紅く染まる。それがおかしく可愛くて、なつきはまた唇を重ねた。
それに、その勘違いもあながち間違いじゃあないかも知れない。何故ならば――


「クリス」


――彼の優しい手をずっと握って離さないと、なつきはもう心に決めているのだから。



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